最近は、買い物をするとき、現金ではなくキャッシュレスで支払う人が増えていますよね。しかし、「キャッシュレス」とひと言で言っても、さまざまなタイプがあり、それぞれの仕組みをきちんと理解しているという人は少ないのではないでしょうか。そこでマイナビニュースは、中学生を対象に開催された、ソニー株式会社主催のキャッシュレス教育プログラムに注目! 10月29日に、埼玉県の川口市立西中学校で行われた出張授業に潜入してきました。

中学校学習指導要領には、2021年度から「計画的な金銭管理」が新設されたのだとか。そこで、金融経済教育の一環として、金銭管理に関する知識と判断力を身につけ、キャッシュレス決済を正しく活用できるようになることを目指し、ソニー株式会社と電子マネー事業者が教育プログラムを開発。

西中学校の授業では、非接触ICカード技術「FeliCa(フェリカ)」の開発を行うソニー株式会社の前原美波さん、FeliCa技術を活用した電子マネー「Suica」を運営するJR東日本の武藏祥輔さんが講師を務め、「キャッシュレスとはいったい何なのか」「利便性や価値」「メリットや気をつける点」などを解説しました。当日は、195名の中学2年生とともに、キャッシュレスについて学習。生徒の皆さんはとても活発で、積極的な発言が飛び交う授業となりました!

講師プロフィール

そもそも、キャッシュレスって何だろう?
世の中にある「キャッシュレス」と呼ばれるもの

授業は、企業と連携した授業づくりを専門とするNPO法人企業教育研究会の関谷紳吾さんの進行のもと、スタートしました。関谷さんは、中学生にさっそく、「買い物をしたりサービスを受けたりするときに、どのような方法でお金を支払いますか?」と問いかけを。

当日進行を務めた企業教育研究会の関谷紳吾さん

当日進行を務めた企業教育研究会の関谷紳吾さん

すると、「現金!」「Suica!」「クレジットカード!」「図書カード!」などの声が続々と上がり、開始早々、にぎやかな雰囲気でいっぱいです。

お金の支払い方には様々な方法があります

今回の出張授業で学ぶキャッシュレス決済は、紙幣や硬貨を使わない支払い方法。講師を務めるJR東日本の武藏さんは、同社が提供しているSuicaもそのひとつだと教えてくださいました。

FeliCaを採用しているサービスの例

Suicaは、鉄道やバスに乗車するときだけでなく、買い物などにも利用できます。ICカードやスマートフォンを改札機や電子マネーの決済端末にかざすだけで支払いが済むので、非常に便利です。では、なぜ、“かざす”という行為だけでオッケーなのか? このことについては、ソニーの前原さんが詳しく説明してくださいました。

なぜ「かざす」だけでオッケー? 仕組みを解説!

ソニー株式会社 前原 美波さん

Suicaには、ソニー開発のFeliCaという非接触IC技術が使われています。そのため、非接触イコール「かざす」で支払いが完了するのだそう。この仕組みを中学生にわかりやすく伝えるため、前原さんは、「今日はかなりレアなものを持ってきました!」と、Suicaの中身がわかるスケルトンのカードを生徒の皆さんに配ってくださいました。貴重なものを手に、みんな、「へ~!」「すごい!」などと驚きの声を上げています。

Suicaの中身がわかるスケルトンのカード

「カードを見ると、周囲を何かがぐるっと周っていますよね。それはコイルと呼ばれるもので、アンテナです。そして、その先には丸いものがついていて、丸の部分にはICチップという小さなコンピュータのようなものが入っています。つまり、改札機や決済端末にSuicaをかざすと、カードのなかのコイルに電気が流れて、その電流がICチップを動かし、コンピュータが高速で計算を行います。これは、皆さんが理科で学習する原理、電磁誘導を応用しています。これにより、Suicaでの支払いは一瞬で完了するのです。また、大切な情報を扱うため、安全にやりとりし、安心して使えるよう、高いセキュリティも実現しています」(前原さん)

生徒の皆さんは、この話に興味津々。ふだん何気なく利用しているSuicaに、これほど高性能なテクノロジーが仕掛けられているとは、思いもよらなかった様子です。

キャッシュレスとは、お金の“記録”のやりとり

Suicaの中身と仕組みを理解したうえで、次は、キャッシュレスで支払う際の「お金の動き」について学びます。

「キャッシュレス決済では、お金に関する“記録”をやりとりしています。『何月何日にコンビニで5,000円をチャージした』など、利用履歴を確認することで、自分がいくら使っているのかを把握できます」そう説明してくださったのは、JR東日本の武藏さん。

キャッシュレスってどうやってお金をやり取りしているの?

このとき、生徒の皆さんに、「現金をSuicaなどのカードに入金する“チャージ”を行ったことがある人?」と尋ねると、とても多くの手が上がりました。それほど、チャージをしてキャッシュレスで支払う行為は、中学生にも馴染みがあることがわかります。

“チャージ”は、前もって支払いをする「前払い」という方法。そして、そのほかにも支払いの仕方はあるということも、生徒たちは教わりました。

キャッシュレスの支払い方法は3つある!

現金や、デビットカードで決済を行うのは「即時払い」、クレジットカードで支払うのは「後払い」。以上のように、支払いには「いつ支払うのか」によって三つの方法があるのです。つまり、「前払い」は「過去」。「即時払い」は「今」。「後払い」は「未来」。この内容を、生徒の皆さんは、事前に配られたワークシートに書き込んでいました。

生徒の皆さん

続いては、キャッシュレス決済の手段についての説明が。かざすだけでよい「非接触決済」、カードを読み取り機に挿入する「カード決済」、スマートフォンに表示されるコードを読み取る「QR・バーコード決済」。これらが、代表的な手段です。

何が便利? メリットは?

キャッシュレス決済について、だいぶ理解が深まった様子の中学生。今度は、キャッシュレスで支払うことで、自分たちにどんな利点があるのかを考えます。進行役の関谷さんが促すと、今回も次々と手が上がり、「支払いが早く済む」「コンパクト」「お金を出す手間が省ける」など、たくさんの回答が寄せられました。

キャッシュレスの利便性や価値とは?

このほかのメリットとしては、「お金の記録が残るから管理しやすい」という面もあります。そこで、その点を生徒の皆さんにわかりやすく伝えるため、何とここで、川口市立西中の山田先生の、Suicaの利用履歴が披露されることに。プロジェクターの大画面に、「〇月〇日に〇〇駅で100円利用」などの買い物の履歴が映し出されると、生徒たちは大盛り上がりでした!

生徒の皆さん

また、キャッシュレス決済は、使う側の消費者だけでなく、お店にも利点があることも特徴です。たとえば、

  • 現金管理の手間と収益の管理が簡略化される
  • 海外からのお客さまへの対応がしやすい
  • 感染症対策として、お客さまとの接触機会を減らせる

など、お店側にも多くのメリットがあるのです。

キャッシュレスを利用すると、どんないいことがあるか考えてみよう!

生徒の皆さん

2時限目は、6人1班になってグループワークを行いました。テーマは、「キャッシュレスを利用することで、それぞれにどんなよいことがあるか?」。4人の架空のキャラクター(消費者、店舗の人)の立場になって「よいこと」を考えます。

キャラクター

【消費者】キャッシュレス決済を利用する立場 【店舗の人】キャッシュレス決済を導入する立場

全員が、お金の使い方や管理の仕方について、違った悩みを抱いています。では、消費者や店舗の人がキャッシュレス決済を利用すると……? 生徒の皆さんの考えは、以下の通り。

たとえば3班は、
「後藤すぐるさんは、混雑しているコンビニでもスムーズに会計できるようになる」
「鈴村まほさんは、会計を素早く終わらせられる」

5班は、
「相原のぞみさんは、家計簿ノートではなくネット上に正確に記録できる」
「濱田ゆうきさんは、細かい計算ミスが少なくなる」
などの答えを発表。

ほかの班も、意見を交わしたうえで、それぞれの考えを発言していました。

使いすぎや不正利用。このことには気をつけて

多くの人にとって便利なキャッシュレス決済。しかし、利用の際は、気をつけなくてはいけないこともあります。

「今いくら使っているのかを把握していないと、使いすぎにつながります。また、落としたカードを悪用されるなどの不正利用も起こりかねません。紛失した場合は警察にすぐに連絡するなどのことを心がけてください」( JR東日本 武藏さん)

生徒の皆さん

自分が使うときのことを想像しながら、生徒の皆さんは、このアドバイスに真剣に耳を傾けていました。

講師の方々、中学生、先生に感想を直撃!

ソニー株式会社 前原さんソニー株式会社
前原さん

授業は、学校で習う理科の内容と、Suicaのような非接触電子マネー決済の技術につながりを感じてもらえるよう、構成しています。学校で得た知識が日常生活に活かされていることを実感できると思います。将来皆さんがキャッシュレス決済を活用する際の手助けになると嬉しいです。

JR東日本 武藏さんJR東日本
武藏さん

キャッシュレス決済にはいろいろなタイプがあるので、正しい使い方を勉強して、今後の生活に役立ててほしいです。

生徒さん学年委員のFさん

今まではあまり考えずに改札機でSuicaをピッとしていたのですが、今回ICチップを見せてもらって仕組みを理解できました。大人になるにつれて、どういう支払い方法にするのかはよく考えていきたいです。

生徒さん学年委員のNさん

キャッシュレス決済は、自分たちだけでなく、お店側にもいいことがあるのだなと知りました。自分自身は、将来、使いすぎや不正利用に気をつけたいです。

山田先生山田先生

日頃からSuicaを使っている生徒は多いので、今日お聴きした内容は身近に考えられたと思います。また、ソニーやJR東日本という、名前を知っている企業の方から話を聞くこともできて、生徒たちにとって貴重な時間でした。

「将来はキャッシュレス80%」ますます便利な世の中に

年々、キャッシュレス決済を利用する人は増えています。しかし、「世界主要国におけるキャッシュレス決済比率」(2022年)のデータによると、日本は実は36%でまだまだ低い数値なのだとか。この現状に対し、経済産業省は、「将来的にはキャッシュレスを80%に」という目標を掲げています。「人々と企業の活動」に深く関わる「決済」を変革することで、現金に係るインフラコストの削減や業務効率化・人出不足などの課題解決につながります。

各企業は、キャッシュレスの啓発や利便性向上など、キャッシュレス化推進のためにさまざまな取り組みを行っています。今後、キャッシュレス決済がますます広まり、さまざまな立場の人や社会にとって、よいことがもっと増えていくのでしょう。

キャッシュレス決済の仕組みや利便性、今後の展開にいたるまで、多岐にわたる学びを得られた今回の出張授業。生徒の皆さんは終始意欲的で、多くのことを学習できました!

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