「自動車は止まっている時間が約9割」と言われていることをご存じでしょうか?実は稼働時間の方が圧倒的に少なく、活用されずにガレージや駐車場に停められているというのは少しもったいない気もしますよね。
そこに目を付けたのが、家電メーカーのシャープです。2024年9月に開催されたシャープの技術展示イベント「SHARP Tech-day」で、“止まっている時間”にもフォーカスしたEV「LDK+ (エルディーケープラス)」を初お披露目。まるでリビングのような“くつろぎ空間”を演出する車内が注目を集め、SNSでも「乗ってみたい!」との反応が殺到したのです。
そこで今回は、LDK+の開発者を直撃し、実際にコンセプトモデルを体験させていただきながら、「なぜ今、シャープがEVを作ったの?」「商用化は本当にするの?」など、気になる疑問をぶつけてみました!
コンセプトは「リビングルームの拡張空間」。座席の傾きも数度単位でこだわり
お話を伺ったのは、Next Innovation I-001プロジェクトチームに在籍する西川さんと藤井さん。
そもそも西川さんはクラウドサービスの開発に、藤井さんは太陽光発電や蓄電池の商品企画に携わっていましたが、シャープがEVの商品化に向けて同プロジェクトチームを立ち上げる際、招集されて参加しました。各部署から精鋭メンバーを厳選しているとのことで、シャープのEVに対する本気度が表れています。
--どうして、家電メーカーのシャープがEV事業に?
これまでシャープは、さまざまな商品やサービスを通してカーボンニュートラルに貢献する取り組みを実施してきました。そんな中、日本の二酸化炭素排出量において高い比率を占める自動車を次の一手として定め、EVを手がけることになったんですよ! |
--でも、EV普及の伸びは鈍化しているような……
カーボンニュートラルを実現しようと思えば、やはり最終的にはEVが求められるのではないかと考えています。時勢にとらわれず、しっかりと将来的な目標を見据えてプロジェクトを推進しています! |
--今日は「LDK+」を体験できると聞いて、楽しみです!どんな車なんですか?
「LDK+」は、自動車の“止まっている時間”にフォーカスしたEVです!コンセプトは「リビングルームの拡張空間」。止まっている間の車内を部屋の拡張空間として活用できれば、これまでにはなかった自動車の新しい価値を創出できるのではないかと考えました! |
自動車の稼働率を調べた調査では「約9割が停まっている状態」との結果もあるのだとか。シャープはそこに目を付けたのです。「LDK」に空間を足すから「LDK+」。ネーミングにも納得です。
--こだわりがいっぱい詰まっていそう!
後部座席が180度回転し、臨場感あふれる65型の大型液晶ディスプレイで映像をお楽しみいただける点は、大きな特長のひとつです! |
両サイドの液晶シャッターを閉じれば、完全プライベートな空間になりますので、映画鑑賞やリモートワーク中のオンライン会議などにも使えますよ! |
中からも外の景色が遮断されるので、趣味や仕事に落ち着いて集中できそうです。
座席は、大人2人がゆったりと座れるサイズ。目の前に大型ディスプレイがあるから、映画館のカップルシートのような雰囲気も。テーブルは格納が可能で、展開時はリモートワーク、格納時は映画鑑賞など、幅広い利用シーンに対応しています。まるで“未来の秘密基地”のようで、ワクワクしますね!
さらに、座席の傾きをリラックス用と作業用とで分けて設定していることもポイントです。どの角度がそれぞれのシーンに適しているのか、数度単位で調整しました。 |
リラックス用の角度で座ると、くつろぎ過ぎて足を投げ出しそうになりました(笑)ちなみに、角度は変更可能です。
ほかにも、快適な空間を演出できるよう、シャープが培ってきた技術であるプラズマクラスターを搭載しています! |
プラズマクラスターの消臭効果はニオイのこもりがちな車内ではとてもありがたいところ。
--いろいろなところにシャープの技術が隠されていそうですね!一方で、一番苦労されたところはどこでしょうか?
プロジェクト始動直後は、家電で培ってきた家の中の快適な空間づくりに関する知見は有しているものの、自動車の知識はまだまだでした。そこで、すでに台湾で自動車を販売している鴻海科技集團(Foxconn)や国内向け商用EV事業を手掛けるスタートアップ企業であるFoloflyのご協力のもと、EV制作における知見やノウハウを提供いただき、開発を進めました。 LDK+にとって重要な室内空間については、何度も実証実験を繰り返して居心地を試しながら追求していきました! |
「LDK+」を体感してみると、狭すぎず持て余さない3畳ほどの絶妙な広さに居心地の良さを感じてずっと座っていたくなりますが、その背景には地道な試行錯誤があったのです。
数年後には商用化!快適でサステナブルな暮らしを提案できるEVを目指して
--「LDK+」は、これが完成系なんですか?
あくまでコンセプトモデルですので、まだまだ進化します!シャープ独自のAIやセンシングの技術などを用い、人・住空間・エネルギーをつないだ快適でサステナブルな暮らしを提案できるEVを目指します! |
--具体的には、どういうこと?
例えば人とのつながりでいえば、AI搭載の家電が日常の暮らしを通して学習した情報を車と連携すれば、その人に合った空調や照明の明るさに自動で調節できるようになります! |
暑がりの人には涼しく、寒がりの人には温かく。温度調節がラクになりそうです。
次に住空間とのつながりですが、大型ディスプレイによって自宅の駐車場に止まっている車の中と家の中とのシームレスなコミュニケーションを可能にし、あたかも隣の部屋にいるような安心感を提供します! |
家の中から車内を見守れるなら、子どもの遊び場にするのもいいかも。
最後にエネルギーとのつながりですが、EVに搭載している蓄電池と太陽電池が家全体と連携することで、AIが最適なトータルエネルギーマネジメントを提案します! |
万が一の災害時に停電になれば、EVの蓄電池にためた電気を家で使うこともできるようになるといいます。
--かなり夢のある話ですが、商用化の目途は立っているんですか?
数年後の商用化を目標にしています!どうしてもシャープは家電のイメージが強いので、「車は作れないだろう」と思われがちですが、先述した鴻海科技集團(Foxconn)やFoloflyに引き続きご協力いただき、ブラッシュアップしながら開発を進めています! |
--どのあたりをブラッシュアップしているんですか?
現時点でお伝えできることは残念ながら少ないのですが、自動車としてのサイズ感については、まだまだ改善の余地があると考えています。「自家用車としては大きい」「部屋として使うにはもっと大きくてもよい」など、多様なご意見を頂戴していますので、検討を重ねている段階です。 |
--とはいえ、EVの普及には大きな壁が今なお立ちはだかっていますよね……
車体価格をガソリン車並みの水準にすることも重要だと思います。また、充電インフラの整備不足が課題ですが、シャープとしてはEVとV2H※システムを合わせて家庭に普及させることで、その解消に寄与したいですね! |
※Vehicle to Homeの略称で、EV(電気自動車)に搭載されたバッテリー(大容量電池)にためた電気を家庭内で使える仕組みのこと。
航続距離の短さも指摘されていますが、自動車業界は凄まじいスピードで変化しているので、ゆくゆくは最先端のバッテリー技術によって解消されるかもしれません。そういった技術を逐一キャッチアップしながら、開発に取り入れていきたいです! |
カーボンニュートラルの実現と、止まっている車の車内空間を活用した快適な暮らしの提案の両立に注力していきたいと力を込めました。
車を買ったら、居心地の良い部屋まで付いてくる。シャープの「LDK+」がEV普及の追い風に?
今回体験した「LDK+」は、自宅に止まっている車の中という、いわばムダになっているスペースを活用するアイデアが画期的です。「もう一部屋ほしい」。そんなニーズにも応えられるソリューションのように感じました。車を買ったら、居心地の良い部屋まで付いてくる。そう捉えれば、購入を検討する価値はあるのではないでしょうか。
カーボンニュートラル実現に向け、「『LDK+』を含むたくさんの電気自動車が街中を走る未来が来てほしい」。藤井さんや西川さんたちは、そんなビジョンを描いています。
[PR]提供:SHARP