里芋や季節の素材を使った芋煮を作り、食べながら親睦を深める「芋煮会」は、山形県の秋の風物詩のひとつ。「芋煮」とひとことで言っても、地域によって使われる材料や調味料はそれぞれ異なるそうです。そんな全国のさまざまな芋煮を食べ比べできたり、棒鱈(ぼうだら)の入った「芋棒煮」を味わえるイベント「中山町誕生70周年記念 元祖“全国”芋煮会in中山2024 supported by ヤマザワ」が、10月13日に山形県中山町で行われました。

全国の8つの芋煮が集結するとあって、当日は県内外から約3,000人もの参加者が集まりました。今回はその様子とともに、イベント主催者である中山町観光協会を対象に実施したインタビューもご紹介します。

中山町誕生70周年を記念して、恒例行事「元祖芋煮会in中山」がパワーアップ

芋煮会は東北地方を中心に、秋に各地で行われる季節行事。「芋煮会」は江戸時代に最上川舟運に携わる船頭や商人たちが、船着き場で棒鱈と里芋を材料に煮て食べたのが始まりとされています。その発祥の地は中山町と言われ、同町では毎年秋に「元祖芋煮会in中山」を開催してきました。

今年は、中山町誕生70周年を記念して、“全国”の冠を付けて「中山町誕生70周年記念 元祖“全国”芋煮会in中山2024 supported by ヤマザワ」と名称を変更。中山町の棒鱈入り「北前いも煮」はもちろん、全国の芋煮を食べ比べできるものにパワーアップしました。

会場となったのは、日本百名山のひとつ・月山と、蔵王連峰を一望できる最上川中山緑地。全国の芋煮が集結するとあって、イベント開始前から入口には多くの人が集まっています。天気は秋晴れで、まさに芋煮会日和。具材の煮えるいい匂いが漂い、期待は高まるばかりです。

  • 日本百名山のひとつ・月山を望む最上川中山緑地が会場

午前10時。オープニングを告げるドドーンと迫力ある玄蕃太鼓の音が会場に響き渡ります。続いて、中山町の佐藤町長がステージに上がり開会宣言。子どもたちによるあおぞら太鼓、女性団体連絡協議会による最上船頭唄が会場を盛り上げます。

芋煮を提供するブースでは、もくもくと湯気が立ちのぼり、お出汁のいい香りが鼻孔をくすぐります。日本には各地の特色を持つ多くの芋煮がありますが、今回、用意されたのは「山形芋煮」「北前いも煮(中山町)」「庄内芋煮」「仙台芋煮」「岩手芋煮」「福島芋煮」「津和野芋煮(島根県津和野町)」「いもたき(愛媛県大洲市)」の八種類の芋煮。その中の「北前いも煮」「津和野芋煮」「いもたき」は「日本三大芋煮」と称されています。広場では、家族や友人同士で、あつあつの芋煮に舌鼓を打つ姿が見られました。

「山形芋煮」は、山形ではスタンダードな醤油ベースで牛肉が使われた芋煮です。いつもは豚肉の芋煮を食べているという参加者は、「牛肉を使った甘い味付けの芋煮がおいしい」と大絶賛。棒鱈が特徴の「北前いも煮」は、「魚のだしがおいしくて、骨も一気に食べられるのがいい」と、しみじみ味わう参加者もいました。

「福島芋煮」「庄内芋煮」「仙台芋煮」は、豚肉を使った味噌ベースの芋煮。「岩手芋煮」は、鶏肉を使用し醤油で味付けしているのが特徴です。

東北地方以外の芋煮にも注目が集まりました。「いもたき」は愛媛県大洲市の郷土料理で、鶏肉を使用した醤油ベースの芋煮。島根県の「津和野芋煮」には、鯛でとった出汁が使われています。津和野芋煮を初めて味わった参加者は、「鯛の風味がすごい。魚介系のだしが強く芋煮じゃないみたい」と、箸が止まらない様子でした。

芋煮を提供するブースはどこも大盛況。多くの人に楽しんでもらえるようにと2,400食用意した芋煮でしたが、イベント終了を待たず、早々に完売となりました。

来場者の投票でグランプリを決める「未来の芋煮レシピコンテスト」も開催

同イベントのもうひとつの目玉が、「未来の芋煮レシピコンテスト」の最終審査。同町では、町の芋煮会文化を未来に継承していくことを目的に、4月から「未来の芋煮レシピ」を募集していました。今回は、応募65作品の中から、一次審査を通過した3つの入賞作品を発表。さらにその中から来場者の投票により、最優秀作品(グランプリ)が決定します。

一次審査を通過した入賞作品は、「体に優しい山形の夏-秋野菜芋煮」「ヘルシー! 洋風チーズ風味芋煮」「スンドゥブ風豆板醤いも煮」の3つ。これまでにない新しい芋煮が試食できるとあって、配布ブースは大行列。200食用意された芋煮セットは、あっという間になくなりました。

  • 入賞作品の「スンドゥブ風豆板醤いも煮」(左)「ヘルシー! 洋風チーズ風味芋煮」(右)「体に優しい山形の夏-秋野菜芋煮」(中央)

最終審査によってグランプリに選ばれたのは、寒河江市の木村美恵子さんが考案した「体に優しい山形の夏ー秋野菜芋煮」でした。"春・夏にも芋煮をたくさん食べよう&より身近に"をコンセプトにした新しい芋煮で、山形の野菜と山形牛が使われています。受賞者の木村さんには、賞状やカップ、町内の温泉施設「ひまわり温泉ゆ・ら・ら」ペア宿泊券、副賞目録、アンバサダー認定書が贈られました。

  • 未来の芋煮レシピコンテスト表彰式。寒河江市の木村美恵子さんの作品が最優秀賞に選ばれた

会場には、フードの販売のほか、三和缶詰株式会社のパインサイダーがデザインされたバイクや、中山町商工会青年部のキャラクター「すもものしずくちゃん」のブースも。すもものしずくちゃんも登場し、子どもたちと触れ合う一場面もありました。

  • 中山町商工会青年部キャラクター「すもものしずくちゃん」

  • 山形ではおなじみのご当地サイダー「パインサイダー」がデザインされたバイク

そのほか、ステージではプロサッカークラブ「モンテディオ山形」の長谷川洸選手のトークショーやじゃんけん大会も開催。芋煮の提供はもちろん、バラエティに富んだプログラムも大好評で、大盛り上がりの中、イベントは終了しました。

  • ステージイベント(モンテディオ山形長谷川選手トークショー)

「芋煮会発祥の地として、多くの方に芋煮を味わってもらいたい」- 主催の中山町観光協会にインタビュー

今年から、中山町だけでなく全国八大芋煮を食べ比べできるイベントとして新たな第一歩を踏み出した中山町の芋煮会。次はイベントを主催した中山町観光協会に、中山町の芋煮会の歴史や、八大芋煮を取りそろえた芋煮会を行うことになった経緯、そして今後の展望について聞きました。

――「元祖芋煮会in中山」が始まった背景や、これまでの歴史について教えてください。

中山町観光協会:中山町は江戸時代、最上川舟運の船着き場として栄えていました。荷待ちの間、船頭や商人たちが、鱈を天日干しして乾燥させた棒鱈と里芋を煮て食べたのが芋煮会の始まりと言われ、中山町が芋煮会発祥の地と言われる所以です。中山町が芋煮会発祥の地であることを町内外に広めるため始めたのが「元祖芋煮会in中山」です。

――名前に"元祖"とついていますが、他の地域の芋煮会との違いや、「元祖芋煮会in中山」ならではの特長を教えてください。

中山町観光協会:他にはない棒鱈を使用した「芋棒煮」を提供していることが最大の特長です。以前は、文献どおりの味付けのままで振る舞っていましたが、近年、現代風の芋棒煮「北前いも煮」を開発し、商品化をしました。現代風に食べやすくし、さっぱりした味わいが特長で、町の新しい特産品ブランドとして、レトルト商品にもなっています。

――2024年度では、なぜ名称を「元祖“全国”芋煮会in中山2024 supported by ヤマザワ」と変えて開催したのでしょうか? 名前に込めた想いや背景などあれば教えてください。

中山町観光協会:これまでは町民をメイン参加者として実施していましたが、今年はちょうど中山町誕生70周年ということもあり、これを機に町外からの参加者を増やしたいと考えました。中山町だけでなく、全国の八大芋煮を食べ比べできることも特徴で、「芋煮会」=「中山町」と認知度を上げ、関係人口の拡大に繋げていければと思います。企業にスポンサーとなって頂くことで、イベントの規模も拡大できればという思いもあります。

――「元祖“全国”芋煮会in中山2024 supported by ヤマザワ」の開催当日の会場の雰囲気や、来場者からの反響を教えてください。

中山町観光協会:ほかにはない「日本八大芋煮の食べ比べ」に大きな反響がありました。そのためか、これまでと比べて町外ならびに県外からの来場者が増加しました。

皆様からの期待も高く、朝10時の開場前には、かなりの行列ができていたほどです。おかげさまで大盛況となり、2,400食用意した芋煮は完売しました。「いろいろな地域の芋煮を一度に味わえるのがいい」という嬉しい声も頂きました。

――開催を通じて感じたことや、思い出深いエピソードはありますか?

中山町観光協会:八大芋煮が集合するという初めての試みであったため、想定通りに進まないこともありました。メインとなる芋煮の提供も、芋煮販売を生業とする事業者が見つからず、当日の芋煮作成者がなかなか決まらないという問題もありました。しかし、町内の飲食店を中心に協力を得ることができ、レシピ参考のもと、当日は無事に八大芋煮を作成して頂くことができました。

「未来の芋煮レシピコンテスト」の入賞作品も、山形県立山辺高等学校「食物科」の生徒さんが調理して下さったものです。皆様からの協力があったからこそ、開催できたと感謝しております。

――今後、「元祖芋煮会in中山」をどう盛り上げていきたいですか? 将来の展望や想いを教えてください。

中山町観光協会:「日本八大芋煮の食べ比べ」に期待し、来場頂いたお客様が予想よりも多かったことがわかりました。芋煮もありがたいことに予想以上の売れ行きでしたが、お昼には早々に売り切れてしまったため、「芋煮のイベントなのに、芋煮が食べられないなんて」というお叱りの声も頂戴してしまいました。

今後は提供数を増やすなど、需要に応えられる体制づくりをして、多くの方に中山町の芋煮をはじめ、全国の芋煮をたっぷり味わって頂けるようにしたいと思っております。また、来年も「未来の芋煮レシピコンテスト2025」を実施する予定です。今年のように、元祖芋煮会in中山で最終審査をすることはまだ決まっておりませんが、前向きに検討したいと思っております。

――ありがとうございました!

芋煮を通して各地の食文化への理解を深める「元祖“全国”芋煮会in中山2024 supported by ヤマザワ」

日本の八大芋煮が大集結した「元祖“全国”芋煮会in中山2024 supported by ヤマザワ」。老若男女問わず多くの人が集い、各地の芋煮の食べ比べを楽しんでいました。

普段、食べ慣れている芋煮とは全く違う各地域の芋煮に驚きつつも、皆、笑顔であるのが印象的でした。芋煮を通して、さまざまな地域の食文化を共有するきっかけにもなったのではないでしょうか。

また、現代風にアレンジした「芋棒煮」が食べられるのも、「元祖“全国”芋煮会in中山2024 supported by ヤマザワ」ならでは。江戸時代から続く芋煮の長い歴史をしみじみ実感した人も多かったようです。

主催の中山町観光協会によると、来年はさらにパワーアップして開催したいとのこと。今から来年の秋の予定が待ち遠しいですね。

「元祖芋煮会in中山」を詳しく知る

芋煮会発祥の地 中山町観光協会公式HP

[PR]提供:中山町観光協会