感性を呼び覚ます、音楽との新しい出会い方
横浜にオープンした、誰もが音楽・楽器の楽しさを発見できる体験型ブランドショップ「ヤマハミュージック 横浜みなとみらい」。ニューヨークのメトロポリタン美術館に生まれた、音を通じて子どもたちの創造性を育む「インタラクティブ・ミュージカル・ステーション」。場所もジャンルも違う二つの空間に共通するのは、感性を呼び覚ます音楽との新しい出会い方という「Key」でした。


横浜にオープンした、誰もが音楽・楽器の楽しさを発見できる体験型ブランドショップ「ヤマハミュージック 横浜みなとみらい」。ニューヨークのメトロポリタン美術館(MET)内に生まれた、音を通じて子どもたちの創造性を育む「インタラクティブ・ミュージカル・ステーション」。場所もジャンルも違う、この二つの空間に共通するのは、感性を呼び覚ますような「音楽との新しい出会い方」を提案していることである。

新しい空間はコラボレーションから生まれる

二つの空間づくりはどちらも前例のないプロジェクトだった。横浜の体験型ブランドショップは「立体音響×楽器×映像」の融合をはじめとした体験企画や、フロア間のシームレスな導線づくりという新しい挑戦であったし、インタラクティブ・ミュージカル・ステーションは美術館という公共の場所で、多様な子どもたちがみな等しく楽しめる体験を生み出すという難しい旅だった。また、どちらも期間限定ではなく常設の施設。メンテナンスやオペレーションの難度は、ポップアップストアをつくるよりはるかに高い。

そうした中でどちらのプロジェクトにも必要だったのは、多様なプロフェッショナルとのコラボレーションである。体験型ブランドショップの場合は社内の技術者やデザイナー、そして現場の店員、社外のさまざまな専門業者たち。インタラクティブ・ミュージカル・ステーションの場合はMETの教育・音楽の専門チームや空間設計を担当する建築事務所の人たち。これらのプロフェッショナルが結集し、それぞれの知識と経験を総動員して立ち向かう瞬間が何度もあったという。

  • ヤマハ株式会社 コーポレート・マーケティング部 豊田真規

「この仕事をしていて感じるいちばんの喜びは、やはり社内外のプロフェッショナルな人たちと一緒に仕事ができること。企画段階から現場で運営するところまで、それぞれのエキスパートが専門知識を持ち寄り、妥協なく力を合わせたからこそ、この店舗を実現できたと思います」と、豊田は言う。横浜のケースもニューヨークのケースも、時にチーム内で意見が分かれることはあったが、メンバー全員で「訪れる人たちを笑顔にしたい」という想いを共有しながら議論を重ね、少しずつアイデアをかたちにしていったのだ。

  • ヤマハ・コーポレーション・オブ・アメリカ デザインR&D マネージャー 鷲尾和哉

子どもに学ぶ、常識にとらわれない遊び方

試行錯誤の歳月を経て、二つの空間は無事オープンした。豊田と鷲尾は、日々ユーザーが彼らの生み出した空間を訪れ、そこで楽しく過ごす姿を見ながら、良い意味での“想定外”に見舞われている。

体験型ブランドショップでの驚きは、なによりも想像を超える多くの人が気軽に体験や試奏をしてくれることだ。一般的な楽器店では、試奏するためにはスタッフに声をかける必要があるし、静かな店内で音を出すことに気が引けて遠慮する人も少なくない。しかし、みなとみらいの店舗では、誰もが気軽に楽器を手に取ってくれる。例えば、1階でバイオリンの音の振動に驚いた人が、2階のカフェでアーティストの生演奏を聴き、そのまま自分でも試奏をしてみて、「おもしろい」「キレイな音が出ない」と笑いながらも、さらに興味を持つこともある。いろんな側面から音楽体験ができるオープンな空間で、初めてのバイオリンを楽しんでくれるのだ。

一方、インタラクティブ・ミュージカル・ステーションで鷲尾が感じた驚きは、子どもたちが想像以上にパワフルでエネルギーに満ちあふれていたことだ。「Marimba Woods」は、マレットを持ってさまざまな種類の木でつくられた音板をたたく楽器だが、子どもたちは音板だけでなく、ガラスや床といった楽器以外の場所もたたき始めてしまうのだ。「もちろん、楽器や床を傷つけてしまわないかとヒヤヒヤする気持ちもありますが、そうやって新しい音を自発的に探そうとしている子どもたちの姿こそ、自分が実現したかったことが叶った証しでもあるのです」(鷲尾)。

Photo by Paula Lobo, courtesy of The Met

鷲尾にとってもうひとつの発見は、アナログ楽器の魅力だ。インタラクティブ・ミュージカル・ステーションの隣にはデジタルデバイスで遊ぶゾーンもあるが、デジタルの体験では子どもの反応がパターン化されがちだという。一方、アナログ楽器では、たたき方が少し違えば音の反響も異なるため、音の奥行きを全身で感じることができる。「アナログの体験を通して、リアルな音の現象を肌で感じることの大切さをあらためて知りました」(鷲尾)。

豊田も「Music Canvas」を訪れる子どもたちを見て、「子どもは大人が知らなかった遊び方をする」ことに気づいたという。常識や既成概念にとらわれずに音を楽しむ子どもたちから、二人は日々、新しい学びと発見を受け取っているのだ。

感受性の器を広げ、「好き」と向き合う

ヤマハミュージック 横浜みなとみらいと、ニューヨークのインタラクティブ・ミュージカル・ステーション。ここで、人々は日常生活ではできない方法で自らの感性を育み、感覚を呼び覚ましている。では、豊田と鷲尾にとっての「感性を育む体験」とは一体、どのようなものだろう?

豊田は、「素直に感情が動く体験」こそが自らの感性を育むと考えている。「私自身、自分が素直に『楽しい』『好き』とか、自分の感覚を純粋に楽しめる瞬間をすごく大切にしています」。音楽活動をしたり、イベントに行ったり、そんな中で自分の感情が素直に動き、自分の感性を知る。「そういった意味でこの場所も、誰かの『素直に感情が動く』瞬間をつくることで、『好き』を増やしたり、目標を後押ししたり、訪れる人たちのこころの豊かさにつながるといいなと思っています」(豊田)。

一方の鷲尾にとって、感性を育むとは「感受性の許容値を広げること」だ。「自分の感受性の器を広げることができれば、ひとつのものに対してもいろんな視点からおもしろさを見いだせるし、見るたびに新しいことに気づくことができる。豊かな感性を持っていれば、シンプルな衣食住のすべてにおいて、ささいなことでも感動できる。それが、こころ豊かなくらしにつながるのかなと思いますね」(鷲尾)。

人々の感性を育む空間をつくるためには、まずなによりも、自分自身の感性を磨き続ける必要がある。自分の「好き」を大切にし、自らの感受性を広げる豊田と鷲尾がつくる空間では、今日も新たな音楽との出会いが生まれているはずだ。

(取材:2024年5月〜2024年6月)


感性を呼び覚ます、音楽との新しい出会い方 #1 見て、聴いて、触れる「360°の音楽空間」

感性を呼び覚ます、音楽との新しい出会い方 #2 子どものためのシンプルで奥行きのある音体験

The Key
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