生まれ育った地元や応援したい自治体に寄付をすると、返礼品としてその自治体の地場産品などを受け取ることができる「ふるさと納税」。制度の開始以来、利用する人は年々増えています。今回の記事では、経済アナリストの森永康平さんと泉佐野市ふるさと納税担当者によるトークセッションを実施。昨今のふるさと納税事情について経済トレンドを交えながらお話しいただきました。

意外と知らない? ふるさと納税の仕組み

「ふるさと納税」は、進学や就職などでふるさとを離れても、納税先を自分で選び、地元自治体にも納税できる制度があっても良いのではないかという問題提起をきっかけに2008年に誕生しました。

ふるさと納税って?

“納税”という言葉が使われていますが、実質は自治体への寄付。寄付金額は確定申告を行う際に、その一部が所得税および住民税から控除されます(原則として自己負担金2,000円を除いた寄付金の全額が控除対象)。そして、寄付に応じて自治体から返礼品を受け取れるのが一番の特長。寄付先となる自治体は生まれ故郷に限らず、自分が応援したい自治体を自由に選べます。

【特別対談】経済アナリスト・森永康平と泉佐野市ふるさと納税担当者が「ふるさと納税」の魅力を語る

ふるさと納税という言葉は聞いたことがあるけど、なんとなくしか理解できていないという人は多いはず。そこで今回は、「ふるさと納税ってどんなメリットがあるの?」という素朴な疑問に答えていただくため、経済アナリストの森永康平さんと泉佐野市成⾧戦略室 ふるさと納税担当理事の塩見健さんによる特別対談を実施。昨今の経済状況などのテーマを交えながらふるさと納税のあれこれについてお話しいただきました。

-プロフィール-

森永康平さん×塩見健さん

経済アナリスト 森永康平さん(左)
証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。その後、業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。

泉佐野市成長戦略室 ふるさと納税担当理事 塩見健さん(右)
1995年(平成7年)に泉佐野市役所へ奉職、土木関係、社会教育関係、市税賦課関係として固定資産税業務を経て、2017年(平成29年)から現在のふるさと納税を担当。

ふるさと納税のメリットを理解するためにまずは知っておきたい、昨今の経済状況

――近年、政府に対して「増税ばかりで税金の無駄遣いをしている」ような印象を持っている人が多い気がしますが、実際のところはどのような状況なのでしょうか?

森永さん:増税ばかり、ということはありません。ただ、消費税導入時から何度も税率の引き上げがあったり、税金ではありませんが社会保険料も上がったりし続けています。多くの消費者にとっては、保険料って勝手に天引きされていて、感覚的には税金と同じような印象になってしまっているんですね。直近で大きく増税されたということはありませんが、ここ30年くらいで保険料も含めて家計の負担が高まっているというのが実情だと考えています。負担が増える一方で、所得はあまり上がっていませんし、足元ではそこに物価高も乗っかっています。

塩見さん:自治体の様子を見ていても、家計における税に対する負担感は少なくありません。自治体としても課題に感じているところですね。

森永さん:そもそも国の税金の考え方と、自治体の税金の考え方って違うんですよね。国は通貨を発行できますが、自治体はできません。そのため、自治体は税収のなかでやりくりするしかないと考えるのは理解できます。しかし、国は通貨を発行できるにも関わらず、国の国策も税収の範囲内でしか実行できないと思い込んでいる節があります。国の中枢にいる人たちですらそう考えていて、地方自治体は税収を無駄遣いしていると思っているんですね。その考えが改められない限り、今後も税収を増やすべく緊縮的な政策のもとに、家計の負担は引き続き高まっていくと考えます。

家計が苦しい状況のなかで台頭してきた「投資」という考え方

――近々で大きく増税されたわけではないものの、保険料などの社会保障費も含めて家計における負担は大きくなってきており、今後もその傾向は続いてしまうんですね。こういった状況のなかで、「投資」に興味を持つ人が増えてきている印象ですが、いかがですか?

森永さん:投資を始める人が明確に増えたのは2024年からです。新NISAをきっかけに投資を始めた人が一気に増えました。たまたま年始から日米の株式市場の調子が良かったため、投資に対して好印象な人が多いのだと思います。また、日本株に関していえば、ここ10年の日経平均は比較的右肩上がりでしたから、最近投資を始めた人は投資に対してポジティブな印象を持っているでしょうね。

森永さん:しかし、少し前にはリーマンショック、その10年くらい前にITバブル崩壊、さらに10年前に日本バブルの崩壊と、だいたい10年サイクルでドカンと大きな下落局面を迎えます。今投資にポジティブな印象を持っている人はそれらを知らない層が多いので、今後株価の下落局面が訪れた時は、従来の日本人的な投資への考えに逆戻りする可能性はありますね。

投資に並ぶポテンシャル? ふるさと納税のメリットとは

――なるほど、最近投資を始めた人はいい印象を持っている人が多いんですね。では、今回のテーマでもある「ふるさと納税」についてはいかがでしょうか?

森永さん:ふるさと納税は投資ではありませんが、貰えるものが決まっているという意味では確実なリターンが期待できるものなので、そういう意味でお得ですよね。しかし、ふるさと納税をすることで節税できると考えている人がいますが、これは間違いです。

森永さん:ふるさと納税は、住んでいる自治体に収める税金の一部を別の自治体に寄付して、その金額が控除されるもので、いわば納税先が変わるという仕組み。そこに自己負担金が2,000円かかります。返礼品の金額は寄付金の3割までと決まっていますが、何もしないで10万円を納付するのと、ふるさと納税を利用して10万円寄付して3万円分の返礼品を貰えることを比較すれば、お得なことがよくわかりますね。

塩見さん:自己負担金を2,000円納めていただくことで、返礼品として自治体の地場産品などを寄付者の方にお送りすることができます。日用品から普段スーパーで買えないような贅沢な食材まで、幅広い返礼品が用意されています。

――どうせ納税するなら、2,000円を払って返礼品を貰えるほうがお得ですよね。消費者のメリットはズバリ「お得」だと思いますが、事業者にもメリットはあるのでしょうか?

塩見さん:地元の事業者さんを知っていただけることですね。たとえば、泉佐野市はタオルが有名で、日本のタオル産業発祥の地なのですが、あまり知られていません。ふるさと納税を通して全国津々浦々の寄付者の方に、返礼品としてタオルをお送りすることで事業者さんのことを知っていただく機会になっています。本来、各々の自治体がPR合戦になるようなことは自治体運営において、ほとんどあり得ないことなのですが、ふるさと納税ではそれをやっていいんですね。自分の自治体のことを全国に向けて発信する場として、ふるさと納税に力を入れています。

森永さん:ふるさと納税をきっかけに成長した産業などもありますか?

塩見さん:たくさんありますね。たとえば、地元だけで展開している食べ放題の焼肉屋があるのですが、そのお店のタレで付け込んだお肉の返礼品『秘伝の赤タレ漬け牛ハラミ肉』がどのふるさと納税サイトでも上位にランクインするほどの人気になりました。地元のいち食べ放題焼肉屋からスタートし、今では年々設備投資を重ねて自社ECサイトで直売も始めています。従業員数もどんどん増えていますよ。

塩見さん:類似するケースはほかにもたくさんありますし、そういう頑張ってくださっている事業者さんを泉佐野市では全力でサポートしたいと考えています。事業者さんと一体になって泉佐野市の活性化に取り組んでいるところですね。

森永さん:ふるさと納税でのそういうエピソードってあまり一般の方々には知られていませんよね。自分がやっているふるさと納税が、自治体を通して地元の産業を盛り上げることに繋がっているという事実は、とても大事なこと。ぜひ、多くの人に知っていただきたいですね。

近年人気の返礼品は日用品!? 最新のふるさと納税返礼品トレンド

――応援がしっかりその地域へ届いている実感は、ふるさと納税へのモチベーションの1つになりそうです。最近はどのような返礼品が人気なのでしょうか?

塩見さん:いわゆる「ふるさと納税の返礼品らしい」贅沢な食材はずっと人気ですが、最近では日用品も人気ですね。

森永さん:家計における税や保険金の負担感が高まっていますし、実質賃金は26カ月連続でマイナスを記録しています。1991年から続く過去のデータからも、こんなにマイナスが長く続いたことは一度もありません。

森永さん:国内総生産の構成要素である民間消費もかれこれ1年間ずっとマイナスになっていて、これはリーマンショック以来なんです。リーマンショックは世界的な金融危機でしたから理解できますが、現在はそうではありません。多くの専門家はコロナが収束すればリベンジ消費やリオープニングを背景に消費が活発になると予想しましたが、蓋を開けてみれば真逆の結果です。データを見ても非常に家計に厳しい状況になっていますから、なるべくお得なものを、という消費目線が強くなっていった結果、ランキングのなかにも日用品が増えてきたのだと思います。

塩見さん:昨今の為替変動で原材料費の高騰などから日用品の価格も上がっているので、トイレットペーパーなどの消耗品も順位を上げています。この4月以降は昨今のお米不足もあり、いろんな自治体でお米がランキングに入ってきていることも、昨年とは違う傾向ですね。毎日消費していくようなものが選ばれるようになってきた印象はあります。本市の日用品の代表の泉州タオルは丈夫なので毎年買い換える必要はありませんが、毎年泉州タオルと決めて買い換えられるリピーターの方も多いです。この日用品の波に乗っている印象はあります。

――最後に、ふるさと納税によって得られるメリットとは何なのでしょうか?

森永さん:シンプルに、どうせ納税するのであれば、ただ納税して終わるより「返礼品が貰えたほうがお得」ということですね。選ぶ楽しみというのも大いにあると思います。ふるさと納税をしたことがない方のなかには、1つの自治体は返礼品として1つ名産品があるくらいなのかな、と思っている方も多いかもしれません。でも実は、本当にたくさんの返礼品があるんですよ。お得というのも大きなモチベーションですが、いろんな自治体の名産を発見できるというのも、大きな経済効果をもたらす要因になっていると思いますね。

塩見さん:新制度になってから、本当にいろんな自治体がふるさと納税に力を入れるようになったのではないかと思います。泉佐野市では、地元の企業さんがいろいろなアイデアを出して頑張ってくださったり、新たに地場産品を作る取り組みを行ったりしています。ニーズも見ながら、ふるさと納税の選択肢に泉佐野市を選んでいただけるように今後も取り組んでいきたいと思います。

森永さん:ふるさと納税によって、地域の事業者が拡大していくことになるのであれば、生産も増えるし、雇用も増えていく。どこまでをふるさと納税の効果だとカウントするかという考慮すべき点はありますが、ふるさと納税の波及効果は消費者が「ちょっと得をした」というレベルにはとどまらず、大きな経済効果になりうるのではないでしょうか。

泉佐野市のふるさと納税って? その歴史と特徴

●泉佐野市のふるさと納税 その歴史

大阪府南部に位置する泉佐野市は、1994年(平成6年)に開港した「関西国際空港」の対岸にあり、世界と日本を結ぶ玄関都市であり、3つの日本遺産を有する人口約10万人のまちです。地場産品には水なす、玉ねぎ、泉州タオルがありますが、実は現在でも借金が1,000億円近くあり、2013年(平成25年)度まで財政健全化団体でした。

税外収入確保のため、泉佐野市がふるさと納税に力を入れ始めたのは制度開始から5年目の2012年(平成24年)。2014年(平成26年)にはピーチポイントを返礼品に導入して大きな話題となることで、その年の寄付は前年の10倍にもなりました。2017年(平成29年)には全国で初めて年間寄付受入額が100億円を突破。2017年(平成29年)から2019年(令和元年)まで3年連続で寄付受入額が日本一となり、2018年(平成30年)の寄付受入金額497億円は単年度寄付額の日本一です。累計寄付金額は1,300億円を超え、これも日本一となっています。

これまで泉佐野市は、投資的事業の抑制やごみの一部有料化、各施設使用料の見直し、花火などのイベント中止、職員数減、市長らの給与報酬削減や特別職の退職金廃止と身を切るような改革を行っています。ふるさと納税による税外収入によって、抑制されていた行政サービスも近隣地域並み、子育てや教育、防災といった分野では近隣市町以上の行政サービスを提供することができるようになりました。

一方で「泉佐野市のふるさと納税と言えば、裁判をやってなかった?」と思う方もいるかもしれません。ふるさと納税は、制度改革によって「返礼品は区域内で生産・製造・加工されたものに限定する」という「地場産品規制」がなされました。これは、資源の豊富な自治体は制度がスタートした時点から大きな寄付が望めますが、資源の乏しい自治体は寄付が望めない、実は非常に不公平な規制です。

泉佐野市は、日本一の寄付金額を得ている責任として、この不公平な制度改革に異を唱えました。結果として泉佐野市は「ふるさと納税指定制度」スタート時点から不指定を受け除外されますが、法の不遡及を理由に不指定解除を求めて国との裁判に踏み切ります。裁判は最高裁までもつれ込みましたが、泉佐野市が勝訴。無事にふるさと納税制度に復帰を果たし、国からの不合理な関与から地方自治を守ることができました。

●泉佐野市のふるさと納税 どんなことをしているの?

多くの寄付を集めることに成功している泉佐野市。ふるさと納税の理念を大切にする独自のポリシーに基づいて返礼品を用意しています。

泉佐野市の特徴1

泉佐野市の事業者の創意工夫による返礼品の数々

泉佐野市では3,000件を超える返礼品を取り揃えています。これらは地元の事業者さんが地場産品基準に従って提供いただいている品々です。市内で加工された肉製品、130年以上の歴史ある泉州タオル、大阪有数の産地である泉州玉ねぎや水ナスなど、市内事業者が思いを込めてお届けしています。

泉佐野市の特徴2

地場産品がないなら、創ってしまおう!「#ふるさと納税3.0」

ふるさと納税を活用した地場産業の活性化を目的として、ふるさと納税制度と補助金制度を組み合わせた「#ふるさと納税3.0」を実施しています。事業者から実施したいプロジェクトの提案を受け、ふるさと納税型クラウドファンディングで寄付を募ります。集まった寄付額を原資として、事業者へプロジェクトに係る初期費用を、補助金として最大100%補助します。これにより事業者は設備投資を行い、新たな返礼品やより磨き上げた返礼品をご提供できるようになり、寄付される方は、それらの返礼品を受け取ることができるようになります。

名称のうち「3.0」とは、返礼品を対象とした寄付を「ふるさと納税1.0」、課題解決を目的とするクラウドファンディングや災害支援による寄付を「ふるさと納税2.0」と考え、それらを複合したものとして「3.0」としました。また、本市と同様に地場産業の活性化に力を入れる全国の自治体への拡散を願って「#」をつけ、「#ふるさと納税3.0」としました。

2020年(令和2年)度の開始時は9件のプロジェクトに対して5.5億円のご寄付が集まりましたが、4年目を迎えた2023年(令和5年)度は、29件のプロジェクトに51.3億円のご寄付をいただくまでに成長しました。この成果を受け「#」に込めた願いのとおり、この取り組みは全国の地域に合わせて形を変えながら広がりを見せています。なお、京都府京丹後市や大阪府泉南市などでは同じ名称で制度が実施されています。

泉佐野市は「家計を助けるふるさと」へ。シティプロモーション『“森永卓郎のファイナルアンサー”』始動!

近年、経済の低迷や物価高により、お金のやりくりに苦しむ人は増え続けています。そんな時代だからこそ、泉佐野市は「家計を助けるふるさと」として自治体の役割を果たしていきたいと思っています。私たちと一緒にメッセージを伝えていただくのは、経済アナリスト・森永卓郎さんです。

⚫泉佐野市と森永卓郎さんのご縁

森永卓郎さんは、泉佐野市がふるさと納税の制度変更で困難な状況にあった2019年(令和元年)から2020年(令和2年)にかけて、一貫してふるさと納税制度および泉佐野市にエールを送ってくださいました。当時、とても勇気づけられたことを鮮明に覚えています。これまで直接お話しさせていただく機会はありませんでしたが、この度、お声がけをさせていただきご出演いただく運びとなりました。

⚫森永卓郎さんについて

経済アナリストとして、数々のメディアに出演。著書多数。2023年12月にステージ4のガン宣告を受けてからは「命あるうち、世に問いたい」という強い想いで、日本社会に対し「本当のこと」をメッセージし続けています。近著『ザイム真理教』『書いてはいけない――日本経済墜落の真相』『がん闘病日記』の3冊は全てベストセラーになっています。

⚫泉佐野市シティプロモーション特設サイト

“森永卓郎のファイナルアンサー”
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