皆さんは「プロンプター」という機械を知っているだろうか? 例えば、演説や講演を行うとき、紙の原稿やパソコンの画面を見ながらではどうしても顔がうつむき加減となり、見栄えが良くない。そんなときにプロンプターがあれば、聴衆の方を向きながら、原稿を読みあげることができる。
そう、プロンプターとは、簡単にいえば「原稿を、カメラ目線に配置して表示することができる装置」ということになる。ここまで説明すれば、使ったことがなくても知っているという人もいるかもしれない。
そして本稿で紹介するのは、Elgatoが発売するPC周辺機器として使える「プロンプター」製品―――ずばり「PROMPTER」(43,992円)だ。今回は、筆者が実際にいくつかのシーンで使用してみたので、その使用感をレビューしていこう。
Elgatoの「PROMPTER」ってどんな製品?
Elgatoといえば、日本ではゲーム実況配信向けの映像キャプチャ機器のメーカーとしての認知度が高い。プロンプターはビジネスユース向けの商品という印象が強いので、まだピンときていない人もいるかもしれない。そこでまずは「PROMPTER」が、「どんな製品」で「何に使えるのか」を解説するところから始めたいと思う。
「PROMPTER」は、デバイスとしては、液晶ディスプレイ装置である。PCと接続すると、そのPCにとっての追加画面として機能する。画面サイズは9インチ。アスペクト比はほぼ16:9で、画面解像度は1,024×600ピクセル。最近流行の携帯型ゲーミングPCの画面に近いサイズ感だ。
接続方式はUSB-C端子のみに対応する。商品には2メートル長のUSB-C端子/USB-A端子のケーブルが付属するので、こちらを用いて接続することになる。接続様式はUSB3.0となり、伝送帯域は最大5Gbpsとなる。USB2.0接続には対応していない点に注意したい。また、HDMI端子やDisplayPort端子は非搭載である。
ちなみに特殊な映像伝送方式であるため、Windowsの「ディスプレイ設定」で表示解像度や拡大縮小率の変更は行えない。本機で表示する画面が小さいと感じた場合は、アプリ側の表示拡大率を調整する必要がある。このあたりのテクニックについては後述したい。
どうやって反射させて原稿を読めるようにしているの?
本体ともいうべき本機の液晶パネルは、実は、底面側に配置され、そして液晶パネルに相対する位置関係で、斜めに鏡が実装されている。
そう、ユーザーは、「PROMPTER」の液晶パネルを直視するのではなく、この鏡に映った鏡像の方を見ることになるのだ。液晶パネル自体には反転された映像が表示される。
そして、この鏡こそが、本機をプロンプターとして形作っているキーポイントとなる部位である。この鏡は「ハーフミラー」という部材で、表面から見れば液晶パネルを反射して表示する「鏡」(ミラー)そのものだが、裏面からはただ光を透過する透明ガラスなのだ。
つまり、本機の液晶パネルに原稿を映せば、ユーザーは鏡に映った表示を見ることで、カメラ目線を保ちながらトークが行えるというしくみだ。
どう設置する? システムアップも簡単!
ここからは、基本的な使い方や設置の仕方などを紹介していこう。 「PROMPTER」の本体自体は、W224xH219xD282(mm)という大きさなので、24インチクラス以上の液晶ディスプレイであれば、設置ができそうだ。
「PROMPTER」の底面部にカメラの三脚によく採用されている1/4インチのネジ穴があるので、しっかりと常設したい場合は市販されている卓上カメラスタンド(卓上三脚)などを利用するといいだろう。ちなみに、Elgatoからも純正品がリリースされている。
土台を机の縁に挟み込んで固定するタイプのガッチリした卓上スタンドの「MASTER MOUNT L」(6,277円)だ。
ただしこのマウントは垂直方向に伸縮するタイプなので、設置した「PROMPTER」の位置については上下方向でしか調整ができない。もし液晶ディスプレイの上に載せるような使い方をしたい場合は、別途取付位置を水平方向に伸ばせる(オフセットできる)市販の「カメラプレート」を用いると設置できた。
実際に本機を使うには、Webカメラの準備も必要になる。すでに持っている物があればそれで問題ないだろう。もしちょうどいいWebカメラを探しているのであれば、Elgatoから純正Webカメラ「FACECAM PRO」(47,085円)がリリースされているので、こちらを選ぶのも良かろう。
Webカメラは持っていない人もスマートフォンやデジタルカメラ、あるいはビデオカメラがあれば、「PROMPTER」に付属するアタッチメントを駆使し、ハーフミラーの裏側に設置すれば、カメラとして活用できる。
また本体上部の左右には、2つのコールドシュー(電気的な接点を持たないカメラアクセサリーを取り付けられるソケット)が搭載されており、ここに手持ち(あるいは別売り)のマイクやLED照明などを組み付けることも可能。アイディア次第で、どんどん本格的なプロンプター環境にシステムアップできるのも「PROMPTER」の魅力である。
ゲーム実況配信に使えば人気向上間違いなし?
「PROMPTER」がオンライン会議や原稿を読み上げるシーンなどに便利そうだということは、ここまでの紹介で理解いただけたと思う。しかし、この「PROMPTER」の本来おすすめされている使い方は、それではない。むしろクリエイター向けを謳っており、例えばそう―――ゲームの実況配信である。
ゲーム実況配信では、視聴者からのコメントがリアルタイムで送られてくる。そのため、ゲームに関する話だけでなく、視聴者からのコメントへ反応していくのも楽しみの1つなのだ。通常はそうしたコメントを、ゲーム画面を表示している液晶ディスプレイとは別の、配信状態(オンエア)チェック用に用意したノートPCや携帯端末の画面でチェックすることが多い。……つまり、うつむき加減でそうした別体端末の画面を覗き込んでしまうことになるのだ。
もし、そのコメント欄(チャット画面)を「PROMPTER」に表示し、ここに実況者を捉えているWebカメラを設置すれば、コメント欄を読むときには必然的にカメラ目線となって、視聴者との距離感が縮まること間違いなし!
そしてなにより、「PROMPTER」を設置することで、オンエアチェック用の別体のノートPCや携帯端末は不要となり、メインでプレイしているゲーム画面の上にコメント欄を表示できることで“見やすくなる”という直接的なメリットもうれしい。
ゲーム実況配信ではこう使え!
というわけで、ここからは、筆者が実際のゲーム実況配信で「PROMPTER」をどう活用したのか……を紹介したいと思う。
まず本機を液晶ディスプレイにつなぎ、設置スタイルとしては「PROMPTER」をゲーミングディスプレイの中央の上にレイアウトするパターンで行った。
準備としてはこれだけ。 あとは、いつものようにYouTubeのサイトでライブ配信の設定を行い、それが終わったら、OBSなどの配信ソフトを起動するだけ。「PROMPTER」を使う上で、普段と違ったことをするところといえば、チャットウィンドウやコメントウィンドウなど、配信中にカメラ目線でみたいウィンドウを、本機の画面に配置することぐらいだ。
例えばYouTubeであれば、YouTubeライブの管理ページに飛び、そのページの右端にある「トップチャット∨」の右横のメニューから「チャットポップアウト」を選択。すると、独立したチャットウィンドウが飛び出すので、これを、「PROMPTER」の画面に持っていき、全画面表示をするといい。
あとは、普通に配信を開始して、ゲームをいつものようにプレイして、おしゃべりをして、時々、チャットウィンドウをチェックするような、いつものゲーム実況配信をするだけだ。
上でも述べたように、ゲームプレイの最中、チャットを読み上げるときは、自然とカメラ目線となる。筆者にとっては、大きく視線をそらさずにチャット画面をチェックできることに、強い便利さを感じた。
そのほか、実際に使っていて気づいたのは、「PROMPTER」の画面は9インチで、解像度もそれほど高いわけではないので、設置位置や視力の関係性によっては、画面が細かすぎると感じることがあったこと。しかも、本機は前述したように特別な様式で接続されているため、「ティスプレイ設定」からの画面拡大率を調整出来ない。とはいえ、安心されたし。
今回のような、チャットウィンドウを本機に表示するケースでは、そのチャットウィンドウ自体がWebブラウザからの表示となっているはずなので、そのWebブラウザの表示のズーム率変更を調整することで、任意の拡大率でチャットウィンドウを表示できるのだ。
マイクロソフトEdge、Google Chromeであれぱ、表示拡大率のアップ/ダウンを[Ctrl]+[+]、[Ctrl]+[-]のキー操作で行える。ちなみに拡大率を初期化したい場合は[Ctrl]+[0]だ。この仕組みを活用して文字を大きく表示すれば、やや遠目に本機を配置してあっても問題なし。くっきりと見える。
それと、筆者は、ゲームジャンルによっては、部屋を真っ暗にしてゲーム実況配信をすることがあるのだが、その場合、「PROMPTER」にセットしたWebカメラの映像が通常より暗くなっていることに気が付いた。これは、よく考えれば当たり前。ハーフミラーは「表面からは反射」「裏面からは透過」の光学特性なので、「ハーフ」の名前の通り、光を半分しか通さないのだ。
なので、部屋を真っ暗にしてのゲーム実況配信を行う場合は、「PROMPTER」側のコールドシューに顔面を照らすようなLEDライトを取り付けるか、室内照明を少し明るくした方がいいだろう。
カメラ目線頻度を上げるために、アナタなら「PROMPTER」をどう使う!?
製品としては、筐体に小型サイズの液晶モニターとハーフミラーを組み付けたシンプルな製品だが、さすが多数の配信関連周辺機器をリリースしてきたElgatoの製品だけあって完成度は高かった。
特に1台のお気に入りのメイン・ディスプレイを主に活用し、オンライン会議やライブ配信では、別の端末を定期的にチェックしているようなスタイルのユーザーは、「PROMPTER」をかなり便利に使えると思う。
筆者は、仕事用のPC環境は多画面環境なのだが、ゲーム実況配信をやる環境は、メインモニターが1台の環境だったので、今回の「PROMPTER」は、本当に便利で楽しく使うことができた。4月に入ってからの筆者のゲーム実況配信ではほぼ全て本機を使っている。
そんな筆者が、今回の記事本編では紹介していない、おすすめの「PROMPTER」を1つ最後に紹介しておきたい。それは、「PROMPTER」の画面に、ゲームの攻略サイトやマップの情報を表示する使い方だ。筆者は一度クリアしたゲームを、さらに深く探索するために2周目以降をプレイする場合などは、そうしたサイトを“つまみ見る”ことが多いのだ。これらを本機の画面に表示すると、カメラ目線の頻度が上がるのだ。
あとは、そのゲームのフレームレート表示やCPUやGPUの負荷率などのステータス画面。それこそ、高頻度にチェックしておきたいSNSの画面を表示するのもいいだろう。このように、プロンプターという製品ジャンル名にこだわらない使い方を模索しても面白いと思う。気になった方は、ぜひチェックしてみてほしい。
ちなみに筆者としては、もし「PROMPTER」のバリエーション製品を出してもらえるのであれば、画面サイズを13インチ~15インチにして、解像度もフルHDくらいまでに上げたモデルが欲しいと思った。そして、ディスプレイ部を脱着すれば、モバイルディスプレイとしても使えるようになったりすれば、さらに人気が出るのではないだろうか。
[PR]提供:Elgato