子宮頸がん検診で異常が見られた場合に、子宮頸部を拡大観察する検査「コルポスコピー」が、子宮頸がんの早期発見に高い効果があるとして世界中で注目されています。今回はフランスのコルポスコピー事情やコルポスコピー用カメラの使用感や操作感について、フランスコルポスコピー・子宮頸部膣病理学会会長のザビエル・カルコピーノ(Xavier Carcopino)教授(以下、カルコピーノ先生)に話を聞いた。

  • ザビエル・カルコピーノ(Xavier Carcopino)先生

フランスでは1980年代から約60%の女性が子宮頸がん検査を受けている

カルコピーノ先生が勤務するマルセイユ大学北部病院は、地中海に面し温暖で過ごしやすいフランス南部の港湾都市マルセイユにある。フランスでは首都パリに次ぐ約86万人の人口を擁する大都市で、近郊の都市圏を含めると150万人以上の人々が生活する。歴史も古く紀元前から交易中継地として栄えており、日本でたとえるならば京都と大阪を併せたような都市と言えそうだ。

――カルコピーノ先生のご所属やお立場について教えてください。

カルコピーノ先生:「科学博士号を持つ産婦人科医としてマルセイユ大学北部病院に勤務しながら、マルセイユ大学医学部のコルポスコピー部門の責任者として教壇に立っています。また、フランスコルポスコピー・子宮頸部膣病理学会の会長、及び欧州コルポスコピー連盟の次期会長でもあります」

  • マルセイユ大学北部病院

――フランスにおける子宮頸がんの罹患状況や検査の実施状況などを教えてください。

カルコピーノ先生:「フランスでは年間で約3,000人の女性が新規で子宮頸がんに罹患します。亡くなるのは年間約1,000人です。フランスは1980年代から子宮頸がんのスクリーニング検査(※)を開始していますが、受診率は低位のまま約60%で推移しており、患者数や死亡者数は検査開始以降で大きな変化がありません。

※スクリーニング検査:症状の現れていない方に対して病気の可能性があるか調べるために行う検査です。

フランスでは、25歳から30歳までの期間に3年毎の細胞診検査の受診ができます。それ以降は、65歳になるまでの間に5年毎のHPV検査の実施を推奨しています。

検査は欧州の中でも国ごとに受診状況にばらつきがあります。スクリーニング検査の実施率は、フランスを含めた西ヨーロッパでは比較的高く、医療事情が比較的悪い東ヨーロッパでは低い傾向が見られます」

コルポスコピーは診断の質を高める必要がある

――婦人科の1日あたりの外来患者数や、コルポスコピー検査数についてお教えください。

カルコピーノ先生:「当院の婦人科では、1日に約150人の患者さんが外来受診に訪れ、そのうち約10件でコルポスコピー検査を実施しています」

――先生の婦人科には日本人の患者は訪れますか?

カルコピーノ先生:「日本人の患者はほとんど来ません。稀に来る場合でもフランス人と結婚した方など、基本的にフランスに移住している方です」

――コルポスコピーにはどのような課題があると考えていますか?

カルコピーノ先生:「コルポスコピー診断の質を高める必要があります。それには検査を行う医師の知識や技術の向上が不可欠で、医師に適切なトレーニングの機会を提供しなくてはなりません。

撮影する画像の高画質化も求められますし、撮影から所見の入力に至るまでの検査のプロセス全体を効率化して、医師の負担を軽減する必要があると考えます」

ワンストップで対応できるコンパクトなコルポスコピー用カメラを期待

――今回、カルコピーノ先生にはコルポスコピー向けカメラに触れていただきました。使用した感想についてお聞かせください。

カルコピーノ先生:「コンパクトサイズで人間工学に基づく扱いやすいデザインです。バッテリーを内蔵してケーブルレスで撮影できるので取り回ししやすく、しかもとても高画質な画像と感じました。

撮影対象の患者さんから距離を保って撮影でき、コルポスコピー検査中のカメラの取り扱いが簡単です。また、スマートフォンのように液晶モニター上でタッチして操作できるのも便利でいいですね。あとは血管を見やすくするグリーンライトに簡単に切り替えできる点も良いですね」

――機器の改善や期待することはありますか?

カルコピーノ先生:「カメラの液晶モニターサイズはもっと大きいほうが私の好みに合います。あとはカメラスタンドに設置して使う時、シャッターボタン押下時の振動をもっと低減して安定させてほしいです。

画像の撮影から所見入力に至るまでのプロセスを、ワンストップで対応できるオールインワンのコルポスコピーデバイスを開発してほしいです。コンパクトかつ扱いが簡単なままで実現してくれるのを期待しています」

――ありがとうございます。

コルポスコピー用カメラの普及が子宮頸がん減少の鍵になる

カルコピーノ先生の言葉をもとに、日本とフランスの年間の子宮頸がん罹患者数と、年間死亡者数を比べると、フランス人の罹患率や死亡率は日本人よりも遥かに低いことがわかる。

日本は約1万人が罹患し、約3,000人が亡くなっていて、フランスでは約3,000人が罹患し、約1,000人が亡くなっている。日本の人口約1億2,500万人に対して、フランスの人口は約7,000万人なので、人口あたりで見るとちょうど半分くらいだ。

カルコピーノ先生は子宮頸がん検査の受診率が60%からなかなか伸びないことを気にしていたが、日本での受診率は35%程度とされ、フランスよりもさらに低い。これは、日本における子宮頸がんの罹患者数が現状より更に多い可能性を示唆している。受診率が上がれば罹患率も死亡率もぐっと下げられるはずだ。

カルコピーノ先生はコルポスコピー用カメラの性能向上によって診断の質が高まることを期待していた。受診率が急に上がらなくても、カメラの進化によって子宮頸がんの早期発見と処置につながれば、死亡率はぐっと下がるはずだ。

また受診率を上げるには、女性を検査の場に連れ出すだけでなく、婦人科のキャパシティも上げていかなければならない。コルポスコピー用カメラが普及すれば、医師の手間を軽減し、見落としや判断ミスを減らし、この状況が好転していくに違いない。世界の医療現場で命を救う活動に貢献するカメラの普及が待ち望まれる。

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