PCを自作するときに起こる“ケーブル配線問題”。複数のケースファンやLEDを装着する凝ったPCに仕上げようとするほど、接続するケーブルが増えてまとめ上げるのが大変になっていく。
現在はPCケースの裏側にまとめる、いわゆる「裏面配線」が主流となり、ケースの内部は美しく見せやすくなったが、その分裏面にケーブルが集中して、マザーボードのファンやLEDコネクタにうまくケーブルを回し込むのが難しくなっている。
ケーブルが多すぎて側面パネルが閉まらない、ケースファンの電源ケーブルが微妙にマザーボードのファンコネクタに届かず延長ケーブルを買ってきた、アドレサブルRGBのケーブル配線が面倒でLEDを光らせるのを諦めた、なんて経験を持っている人もいるだろう。
そんな問題を解決してくれるのが、CORSAIR(コルセア)が新たに開発した「iCUE LINK」だ。
ケーブル配線とデバイスのコントロールが劇的にラクになる注目のシステムで、今回はその利便性を活用した自作PCの組み立てに挑戦する。冷却やLEDにこだわりたい人ほど、導入したくなるハズだ。
ファンの連結や数珠つなぎが可能な「iCUE LINK」
CORSAIRは、メモリ、SSD、CPUクーラー、電源、PCケースなど自作PC関連のパーツから、マウス、キーボード、ヘッドセットなどゲーミングデバイスまで幅広く取り扱っているメーカーだ。CPU、マザーボード、グラフィックスカード以外は同社製品でPC環境を整えられるほど充実している。
従来から「iCUE」という同社製品を一括で管理できる便利なアプリを提供していたが、それをハードウェアまで広げたのが「iCUE LINK」だ。現在はケースファンや簡易水冷クーラーなど冷却デバイスを中心に展開しており、デバイス同士をデイジーチェーン接続(数珠つなぎ)でき、それを「iCUE LINK システムハブ」で一括管理できるのが最大の強み。
一般的なLED内蔵ファンは、ファンの電源とLED、2つのケーブルが存在している。そのため、冷却と見栄えを充実させようと複数のファンを装着する場合、ケーブル配線が煩雑になってしまう。その点、iCUE LINKではファンの電源とLEDが1つのコネクタにまとめられており、さらにファン同士は連結も可能。
複数のファンを取り付ける場合も、最小限のケーブル接続で済ませられる。しかもケーブルは「iCUE LINK システムハブ」に接続すればOKなので、マザーボードのファンコネクタやLEDコネクタの位置を気にする必要がなくなるのもよいところ。
「iCUE LINK システムハブ」は、2つのiCUE LINK用コネクタがあり、1つで最大7基、合計14基のiCUE LINKデバイスを制御できる。幅52mm×奥行き52mm×高さ18mmとコンパクトなので、PCケースの裏面にも余裕で設置が可能だ。単体で販売されているほか、簡易水冷クーラーやファンのスターターキットにも付属する。
なお、iCUE LINK システムハブを動作させるにはマザーボードのUSB 2.0ピンヘッダ(制御用)、CPUファン端子(モニタリング用)へのケーブル接続、そして電源ユニットのPCI Express用6ピン電源ケーブル接続(電源供給用)が必要となる。
「iCUE LINK」対応の簡易水冷クーラーやファンを活用した自作プラン
ここからは、「iCUE LINK」を活用した自作PCを組み立てていこう。 iCUE LINK対応デバイスからは、36cmクラス簡易水冷クーラーの「iCUE LINK H150i RGB」、12cm角ファンの「iCUE LINK QX120 RGB Expansion Kit」、3種類5本のケーブルをセットにした「iCUE LINK Cable Kit」を用意した。
ここからは、ほかのパーツに触れていこう。大型の簡易水冷クーラーを使うこともあり、ゲームもクリエイティブな作業もこなせるハイエンド構成を目指した。選択したパーツは以下の通りだ。
スペック表
カテゴリー | メーカー名・製品名 | 実売価格 |
---|---|---|
CPU | Intel Core i9-13900K(24コア32スレッド) | 90,000円前後 |
マザーボード | MSI MPG Z790 CARBON WIFI(Intel Z790、ATX) | 53,000円前後 |
メモリ | CORSAIR DOMINATOR PLATINUM RGB DDR5 CMT32GX5M2B5600C32(DDR5-5600 16GB×2) | 20,000円前後 |
グラフィックスカード | MSI GeForce RTX 4060 Ti VENTUS 2X BLACK 16G OC(NVIDIA GeForce RTX 4060 Ti) | 74,000円前後 |
ストレージ | Micron Crucial T700 CT2000T700SSD3JP(PCI Express 5.0 x4、2TB) | 53,000円前後 |
CPUクーラー | CORSAIR iCUE LINK H150i RGB(簡易水冷、26cmクラス) | 41,000円前後 |
PCケース | CORSAIR 5000D Airflow Tempered Glass Black(E-ATX) | 22,000円前後 |
電源ユニット | CORSAIR RM1000x Shift(1,000W、80PLUS Gold) | 24,000円前後 |
ケースファン | CORSAIR iCUE LINK QX120 RGB Expansion Kit(12cm角) | 7,500円前後 |
iCUE LINKケーブル | CORSAIR iCUE LINK Cable Kit | 9,000円前後 |
合計 | 393,500円前後 |
クーラーとファンの設置場所がポイント
CORSAIR 5000D Airflow Tempered Glass Blackは、標準で前面と背面に12cm角ファンを搭載しているが、LEDはなく、マザーボードのファンコネクタに接続する一般的なもの。今回はiCUE LINKに対応する12cm角ファンは「iCUE LINK QX120 RGB Expansion Kit」の1基だけ用意しているので、見栄えを意識して前面の12cm角ファンと交換することにした。これで前面からLEDの光が見えるようになる。
そして、簡易水冷クーラーは天面に設置。ファンは上部に排気する方向で取り付けている。前面ファンと簡易水冷クーラーのファンはデイジーチェーン接続できるので、最小限のケーブル接続で済む。iCUE LINKの強みが出る部分だ。
iCUE LINK システムハブはケースの背面に設置した。底面がマグネットになっているので、ケースにくっつけられるのが便利。前面ファン、簡易水冷クーラーとの接続を1コネクタにまとめられるのがナイスだ。
iCUEでファンの回転数やLEDを一括制御
完成した自作PCをさっそく使ってみよう。iCUE LINK対応デバイスは「iCUE」アプリで一括制御できるのが便利だ。ファンや水冷ポンプ個別の回転数制御をはじめ、キャンバス機能を使えば一括でLEDの発光色や発光パターンを制御できる。ワンクリックでLEDを統一できるのはとてもラクだ。映える自作PCの写真もすぐに撮れる。
ただ、今回の構成ではマザーボード上のLED制御は別になる(MSIのMSI Centerアプリが必要)。MSI MPG Z790 CARBON WIFIは、バックパネル上部のドラゴンが光るだけでそれほど目立たないので、今回はUEFI上であえてオフにした。iCUEによるLED統一を優先している。
また、なかなか考えられているのがiCUE LINK システムハブの照明設定ウィザードだ。今回は前面と簡易水冷クーラー合わせて4基のiCUE LINK対応ファンが装着されているが、iCUEアプリ上では「QX RGB ファン#1」~「QX RGBファン#4」と表示される。
「QX RGB ファン#1」が、実際どこに取り付けられているファンなのかわかりにくいのだが、照明設定ウィザードではファンごとに発光色を変えて表示してくれる。アプリ上と実際のファンがどうリンクしているのか視覚的に確認できるのだ。前面ファンだけ回転数を高めたい、LEDの発光色を変えたといった場合にとても役立つ。
このほか、ユニークな機能として「タイムワープ」がある。これはLEDの発光によってファンが回っているのに、止まったりゆっくり動いているように演出できるというもの。見るだけで楽しいので、ぜひ導入したら一度は試してほしい。
PCMarkと3DMarkで性能チェック
カンタンに性能チェックもやっておこう。定番のPCの基本性能を測る「PCMark 10」、3D性能を測る「3DMark」、ストレージの速度を測る「CrystalDiskMark」を実行する。
比較対象がないので分かりにくいが、PCMark 10は、Web会議/Webブラウザ/アプリ起動の“Essentials”で4,100以上、表計算/文書作成の“Productivity”で4,500以上、写真や映像編集“Digital Content Creation”で3,450以上が快適度の目安となっているが、すべて2倍以上のスコア。特にDigital Content Creationのスコアは高く、クリエイティブな作業も十分こなせるパワーを持っていると言える。
また、3DMarkもGeForce RTX 4060 Tiの性能を十分引き出せており、最新ゲームも楽しめるPCに仕上がっている。CrystalDiskMark 8.0.4cは、シーケンシャルリードで12,351.87MB/sとほぼ公称通りの性能を発揮。現役最速クラスの速度を見せた。
自作PCの楽しさがアップする「iCUE LINK」
「iCUE LINK」は、ケーブル接続を劇的に減らせる画期的なシステムだ。筆者はLED満載のハデなPCも好きだが、LED用のケーブルがケース内部に増えるのを嫌って光らないパーツを選びがちだ。その点、iCUE LINKならファンの電源とLEDが1つのコネクタにまとまっており、しかもデイジーチェーン接続できるので配線処理も非常にラク。iCUE LINKケーブルは抜き挿しもカンタンなので、あとからケーブルを這わせる箇所の変更もしやすい。
また、iCUEアプリならiCUE LINK対応デバイスだけではなく、CORSAIRのメモリ、マウス、キーボードも制御できるので、LEDの発光色や発光パターンの統一もカンタンに行える。CORSAIRのパーツやデバイスで固め、LEDも含めた演出を楽しむのもよいだろう。
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