突然ですが、みなさんは「タンザニア」と聞いてどんなイメージを抱きますか? 大自然を思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。確かにタンザニアにはアフリカ最高峰のキリマンジャロをはじめ、豊かな自然が広がっています。

また、タンザニアは南半球に位置しているので、3月ごろに暑さのピークを迎え気温は31~32度まで上がりますが、湿度が低いので、エアコンがなくても比較的過ごしやすいそうです。

とはいえ、近年は都会化が進み、これまで過ごしやすかった環境が変化し、困ったことが起きているとのこと。そんな中、日本人が立ち上げた新しいサービスが注目を集めています。

新サービスを手掛けるのは、世界170か国以上の国々で空調事業を展開するダイキン工業の子会社Baridi Baridi(バリディバリディ)。今回はそのCEOである朝田 浩暉さんにインタビュー。Baridi Baridiがタンザニアで展開する新サービスについて、現地の様子や取り組み内容、そして海外で活躍する姿に迫ります!

きっかけは、「アフリカで新しいビジネスを作ったらどうや」という一言

今から約4年前、ダイキンの社員としてアメリカに駐在していた朝田さんは、帰国後、会社を辞めて起業するつもりだったそうです。退職の意向を伝えた朝田さんに、当時のグローバル担当役員がこんな言葉をかけてきました。「アフリカで新しいビジネスを作ったらどうや」と。

具体的なことはもちろん、実際にビジネスするかどうかも決まっていない状態からのスタート。グローバルでチャレンジできるチャンスだと感じました。

朝田さんの大きな挑戦が始まりました。それは試行錯誤の連続だったそうです。

そもそも、アフリカには行ったことすらありませんでした。どんな人が暮らしていて、どんな課題があって、どんなビジネスなら受け入れられるか全然わかりません。まずは、 現地でどうエアコンが使用されているかを知ることから始めました。

タンザニアで起きていたこと。過ごしやすかった環境に変化が!

朝田さんが赴任したタンザニアは、人口6,000万人ほどの国。最大の商業都市ダルエスサラームには、近年次々と高層ビルが立ち並び、街中に軒をつらねるヘアサロンやカジノに多くの人々が集まり、趣味やおしゃれを楽しんでいます。

都会化が進み生活が便利になる一方、これまでなかった困りごとも出てくるように。

かつては低い建物がほとんどで、風通しがよく、エアコンがなくても快適に過ごすことができたそうです。しかし、高層ビルが建設されたことで風通しが悪くなり、これまであまりなかった暑さを感じるようになってきていました。

――エアコンが必要な環境に変わってきたんですね。

そうです。建物にはエアコンが設置されるようになっていましたが、なぜか使われずに放置されているエアコンがたくさんあったんです。暑いのでエアコンを使いたいはずなのに、使われていないという状況。何か大変なことが起きているなと感じました。

壊れても修理しないで放置!? 悲しすぎるタンザニア独自の事情

使いたいはずなのに、使われていないエアコン。その背景には、どんな事情があるのでしょうか。

調べてみると、エアコンが使われていない原因が大きく2つあることに気づきました。1つ目は月々の電気代の負担が大きいことです。タンザニアには省エネ規制などがないため、設置されているのは省エネ性能が低いエアコンが大半でした。省エネ性能が低いエアコンは電気をたくさん使うため、月々の電気代が高くなってしまいます。それが負担になり、エアコンを使いたくても使えない状況になっていました。

――電気代が高いせいで暑くてもエアコンを使うのを我慢してしまっているんですね。うーん……ちょっと気持ちがわかります。

そうですよね。ただ、日本で普及しているような省エネ性能の高いエアコンに替えるだけで、使う電気の量は大きく変わるんです。

――どのくらい変わるんでしょうか。

なんと半分以下になります。

――え! じゃあ、どうして省エネ性の低いエアコンを買ってしまうのですか。

シンプルにエアコン本体が安いからです。省エネ性能の高いエアコンは低いエアコンの2倍くらいの値段になります。

――うぅ……2倍ですか。でも、毎月かかる電気代が半分以下になるんだったら、省エネ性能が高い方がお得ですよね。

そうなんです! 本体が2倍といっても、電気代が半分以下になるので、省エネ性能が高いエアコンの方が本当はお得なんですが、タンザニアでは基本的に「今」がとても大事にされます。先のことはあまり重要視しません。なので、後々の電気代のことは考えずに、今お得だと思う価格の安いエアコンが選ばれます。使い始めてみたら、思っていたより電気代が高いなと……。

――これはもう理屈ではないようですね。

それに加えて、2つ目の問題が、エアコンが故障した時にすぐに直してもらえないということです。

――日本ではメーカーに連絡すれば修理の人が来てすぐに直してもらえますが、タンザニアでは違うんですか。

はい。タンザニアでは、修理を呼んでもなかなか来ません。来たとしても、ちゃんと修理できる技術者がほとんどいませんでした。

――え? 呼んでも来ないんですか。

タンザニアの技術者の多くは工具を持っていません。もし修理の依頼があれば、誰か知り合いから工具を借りることになります。もし借りれなかったら工具がないので来ません。修理を依頼してから1週間経っても来ないのは当たり前です。

――いつ修理に来てくれるかわからないというのはつらいですね。

やっと来たとしても、ちゃんと修理できる技術者がほとんどいないんです。修理が不十分で、直してもまたすぐに壊れてしまうなんてことも珍しくありません。

――うわぁ。それは困りますね……。

さらに、タンザニアは日本よりエアコンが故障しやすい環境です。都会化が進みながらもまだまだ未舗装の道路が多く、道路から舞い上がる砂塵が原因でエアコンが故障することが多いです。

――砂塵ですか!? 砂塵で壊れるというのは、日本ではあまり聞いたことがありません。

タンザニアではよくあることです。ひどい場合は、新しいエアコンを設置してから1~2か月程度で壊れてしまうケースもあるようですよ。

省エネ性能の低いエアコンが使われることで月々の電気代が高くなるのに加えて、故障しやすい環境。さらに壊れても直す人がほぼおらず、エアコンを使えずにいるとのこと。問題は根深いようです。

――逆にいうと、電気代を抑えられる省エネ性能の高いエアコンが使われるようになって、故障した時にきちんと修理ができる技術者がいれば、タンザニアで起きている「エアコンを使いたいのに、使えない」という困りごとは改善されるということですね。

その通りです。その第一歩として私たちが取り組んでいるのが、エアコンの購入コストと電気代を抑えて、故障してもすぐに修理されるエアコンのサブスクリプションサービスです。

「エアコンのサブスク」でタンザニアの人々の困りごとを解決

「エアコンを使いたくても、使えない」という困りごとを解決するために、朝田さんがCEOを務めるBaridi Baridiがはじめたのが、定額でエアコンを使うことができるサブスクサービス。エアコンの購入代はかからず、据付代と月々の電気代、定額のサブスク費用だけで利用することができるそうです。

タンザニアの人々にとって、電気代が高くなることが深刻な問題でした。省エネ性能の高いエアコンを使えばよいのですが、本体代が高い……。そこで、エアコン本体の価格は当社が負担し、月々の利用料から本体代を少しずつまかなっていくことで、省エネ性能の高いエアコンを利用できるようにしました。さらに、サブスクサービスにはメンテナンスやクリーニング代も含まれているので、万が一壊れても安心です。故障の連絡があれば、1~2日で修理する体制を整えました。故障したままエアコンが放置されるということはありません。

――なるほど! それであれば初期費用を抑えた上で、「高い電気代」「故障してもすぐ直せない」という問題を一気に解決できますね。お客様の評判はどうでしょう。

よくいわれるのは、電気代が安くなったという声ですね。それから、品質をほめてくださるお客様も多いですよ。「以前のエアコンは効きが悪くて、18度に設定しても暑かった。今は26度設定でも快適だ。」そんなことをおっしゃってくださいます。

――まさに、タンザニアの人の困りごとに応えるサービスですね。

そうですね。私たちはエアコンを売っているというより、お客様の困りごとを解決する仕組みを作っています。もちろんお客様の困りごとはそれぞれですので、例えば、商業施設の管理者、病院の経営者、アパートの大家さん、それぞれがどういうメニューを求めているか。これからも、それぞれの困りごとに合わせてアップデートして、喜んでもらえるメニューを提供していきたいです。

「エアコンのサブスク」が広がることの大きな意味

タンザニアの人の困りごとを解決している「エアコンのサブスク」。この仕組みが広がっていくことには、とても大きな意味があると朝田さんは考えています。

私たちとしては、エアコンの普及を目指しているわけではありません。ただ、現実にタンザニアでもそうだったように、世界では省エネ性能の低いエアコンが普及することで、高い電気代に困っている人がいますし、地球環境に大きな負荷をかけることに繋がります。安いものが売れていき、後々に高い電気代や地球環境の悪化というツケを支払うことになる。これは空調業界の構造的な問題だと思います。「エアコンのサブスク」は、この問題を解決する1つの方法になると考えています。

2050年までに世界のエアコンの台数は約3倍になり、そのために大量の電力がさらに必要になるとされています。世界中で、省エネ性能の低いエアコンがさらに普及していくと、地球環境への負荷も増していくことに。「エアコンのサブスク」は、購入代をかけずに、省エネ性能の高いエアコンを利用できるというもの。この仕組みが広がれば、環境負荷の大きなエアコンが普及してしまう現在の構造が変わるかもしれません。

困っている人に寄り添いながら、地球環境の負荷も抑え、きちんと儲ける仕組みにすることで継続的な取り組みにできます。省エネを広めていくことは、世界的空調メーカーであるダイキンの責務です。地球環境への負荷を軽減することに貢献していけるようになれば幸せなことですね。

よいものを長く使ってもらえる仕組みで、世界を変える!

最後に、今後の展望について朝田さんにお聞きしました。

まずは、タンザニアで「エアコンのサブスク」を成功させることです。おかげさまで今では、サブスクサービスに興味を持つ人が増えてきました。これからもお客様に寄り添いながら、サービスのアップデートを繰り返していきたいですね。

サブスクというサービスの性質上、管理面のアップデートも不可欠。顧客管理はもちろん、エアコン導入後の管理や仕組みづくりも含めて、「Baridi Baridiのサブスクサービス」をバッケージ化していくそうです。

お客様が本当に必要とするサービスであれば、たとえ小さな商圏でも儲かる仕組みにできると思います。タンザニアで成功を収めたら、アフリカの他国やアジアにも展開していくつもりです。安いから売れていくのではなく、お客様と繋がりを持って、よいものを長く使ってもらえるような仕組みが広がれば、タンザニアに限らず世界の空調市場全体が変わってくるはず。そこまで目指していきたいと思っています。

――4年前から始まったタンザニアでのチャレンジですが、これまでを振り返ってどうですか。

こうやって振り返ってみると、とてもありがたい機会をいただいたなと思っています。常に自分の実力以上のチャレンジをさせてもらっていて、たくさん失敗もしますし、恥もかきます。ただ、大きな目標に向かって一歩ずつですが前進している実感があり、信じて一緒に働いてくれる仲間もいます。ここでチャレンジさせてもらえるのは非常にありがたいと思います。

朝田さんの挑戦はまだ始まったばかりですが、確実に歩みを進めているのがわかります。世界中でBaridi Baridiのサブスクサービスが利用される日も、そう遠くないかもしれません。

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人も地球も快適に。「空気で答えを出す会社」世界を舞台に挑戦をし続ける、ダイキン工業

タンザニアの困りごとを解決するダイキン工業の「エアコンのサブスク」サービス。人の快適と地球環境貢献を両立させようとする志の高さだけではなく、同時に企業規模拡大を目指せる、理にかなった経営戦略です。さらに人を信じ、人の成長を促す人材の登用・抜擢は、ダイキン工業独自の経営手法となります。今後もダイキン工業のグローバルな取り組みから目が離せません。

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写真:中島祥太

[PR]提供:ダイキン工業株式会社