少し前の休日、東京・白金にある八芳園で行われた友人の結婚式に参列したマイナビニューススタッフS。緑豊かな約1万坪の敷地面積の中にある日本庭園、四季を感じる美しい料理の数々、壮麗な建築物、そして披露宴から引き出物までセンスの高い婚礼儀式に、すっかり心を奪われ、ファンになってしまいました。
そこで八芳園について調べていたマイナビニューススタッフS。どうやら興味を惹かれる記事を発見した様子。創業80年を迎えた八芳園は、今年から「交流文化ルネッサンス、はじまる。」をスローガンに掲げ、「交流文化創造」をテーマとして取り組むそう。
記事には、歴史の中で培ってきた"ワンストッププロデュース"を強みとし、観光産業の中に創出する新たな市場「交流文化創造」をリードすると紹介されています。八芳園が創出する"観光"とは、地域へ人を促すだけでなく、人と人とが交流する文化としての"観光"であるとのこと。その中で、地域の魅力を体験する場を創り上げるために、初の地域雇用を試みた取り組みを行ったそうです。
これを知ったSは、「これは取材して、記事にせねば!!」とさっそく八芳園の担当者へ突撃することにしました。
株式会社八芳園
取締役社長
1970年福岡県生まれ。ブライダル企業へ就職し、サービス、営業、企画、広報を経験後、2003年に八芳園入社。2007年取締役営業支配人、2008年常務取締役総支配人、2013年取締役専務総支配人、2021年10月取締役社長に就任。2023年秋には、交流文化創造をリードする新会社を設立し、観光産業に本格参入する。
人と人、地域と地域……様々な"縁を結ぶ"
八芳園の強みと伝統を生かして次の時代へ
――現在、総合プロデュース企業としても注目されていますが、事業の転換に至ったきっかけを教えてください。
井上:八芳園は、2023年で創業80周年を迎える企業です。『日本のお客様には、心のふるさとを。海外のお客様には、日本の文化を。』を企業理念に掲げ、我々は国民食生活の奉仕者であり、日本観光の奉仕者であろうと80年を築いてきました。
さらに今後迎える100年を築いていく上で大事なのは、企業理念に沿って、時代に応じた事業を企画して遂行し続けていくことだと思っています。創業者は料理人で、料理を軸に宴会事業などを展開していく中で、特に婚礼事業は大きく育っていきました。
――食をベースに、事業を広げ、企業力をつけていったのですね。
井上:15年ほど前からはインバウンドも増加し、八芳園もそれを取り込んできたのですが、特に、MICE(*1)事業に参入する中で、「新しい日本を見せてほしい」「もっと新しい東京を見せてほしい」というリクエストがありました。
この要望に応えるべく、日本の地域文化の伝え方や見せ方などを工夫できるのではないかと、観光プロデュースのコンテンツを作り始めていったという経緯があります。そのうちに2020年に東京オリンピック・パラリンピックが開催され、ホストタウン(*2)アピール実行委員会に参画し、食文化交流の企画やプロデュースを担当しました。ここでの取り組みを単発で終わらせずに、継続していく事業体を作ろうということで、地域産品の磨き上げや食の開発を行うセクションを新たに作り、今に至ります。
*1 MICE:Meeting、Incentive Travel、Convention、Exhibition/Eventの頭文字であり、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称。
*2 ホストタウン:東京2020オリンピック・パラリンピックの開催をきっかけに、地域の活性化を推進するため、事前キャンプの誘致などを通じて大会参加国との人的・経済的・文化的な相互交流をはかる地方公共団体を登録する国の制度。
地域プロデュース事業によって生まれる、産業の垣根を超えた繋がり
――観光プロデュース事業では、どのような地域や団体と連携されているのでしょうか?
井上:自治体のほか、大学や高校も含めて、12カ所と連携協定を結んでいます。その中で、自治体は交流人口、関係人口、移住人口の増加を目標に掲げています。交流人口の増加については、お祭りやイベントを開催することで観光産業が担えるのですが、関係人口はどこがどのように担うのかがいまいち見えづらいところがありました。また、関係人口が増え、その地域に通うようになれば、いずれ移住を考えるようになります。この関係人口の増加の部分を、連携協定している八芳園が考えなければならないのだろうと考えました。
――それは大変な取り組みですね。
井上:八芳園が単独で達成するのは不可能です。ですから、連携協定した12カ所の自治体や教育機関と共に産業を創生した方が良いのではないかと思うようになったんですね。そして、飲食業界、ホテル業界、観光業界という似た産業同士が横軸で繋がって、地域文化を中心にした産業を再構築することで自治体などを支えていくことができるのではないか、と考え、八芳園は"交流文化創造"をリードする企業になりますと4月24日に記者発表会を開いて宣言をさせていただきました。
産業名を再定義しただけでなく、『交流文化ルネッサンス、はじまる。』というスローガンも掲げました。このスローガンの元で、数珠繋がりに産業が繋がることで新しい価値創造になると考えています。今はちょうどこのスタートラインに立ったところです。
――地方の魅力は様々ありますが、それを八芳園のプロデュース力でどのように伝えていくのでしょうか。
井上:我々のパーパスとして、「日本を、美しく。」という言葉を設定しました。人間の作るものは、自然美には叶いません。また、文化はサステナブルになることで希少価値を持つようになります。例えば、美しい夕陽の中で二人きりで楽しむダイニング、寒い雪国で美しいスターダストを見るなどのシーンがあるでしょう。このような日本的なラグジュアリーを八芳園から発信していきたいですね。
また、地域文化を中心に据えて交流していく時には、東京から地域に向かうだけでなく、地域から東京に持ってきてイベントを行う機会も出てくるでしょう。その際には、日本庭園があるという部分でふさわしいだろうと考えています。
――白金台のプラチナ通りにポップアップ型ショールーム「MuSuBu」も展開されていますね。
井上:「MuSuBu」では、地方自治体と地域の住民の交流が生まれ、地域の交流文化が磨かれていくのを目の当たりにしました。
以前、こんなことがありました。山形県長井市はけん玉の産地なのですが、この文化をMuSuBuのポップアップショ―ルームに持ってきたことで、おじいちゃん、おばあちゃんと子どもたちの間で、教える、学ぶ、会話するというコミュニティが生まれたんです。 コロナによってコミュニティは一度分断されてしまいましたから、新しいコミュニティを作る必要性があると思っています。この時、文化を真ん中に置くことで、交流がしやすいのだろうと感じさせられました。
――地域と東京だけでなく、世代間交流も生まれるんですね。交流を通した産業の創出成功事例として『マツシゲート』がありますが、このような取り組みも増えていくのでしょうか。
井上:徳島県松茂町にある『マツシゲート』は、カフェやものづくりなどがある地域を繋ぐ交流施設です。実は、藤井というスタッフを現地で地域雇用しています。藤井は、2019年にホストタウン事業との出会いをきっかけに八芳園と包括的連携協定を締結した徳島商業高等学校出身で、在学時には八芳園とさまざまな取り組みをともに行っておりました。
――高校生の頃には八芳園との取り組みですでに交流があった方なんですね。地域雇用は、八芳園として初の取り組みなんでしょうか。
井上:地域雇用は初の試みです。実は、日本には地元が大好き、地元に貢献したいと考える若い方が少なからずいるんですよね。でも、教育施設や雇用がなかったりして、地元を離れてしまう。地域活性化に繋がるような若い方の活動の場を作ることも八芳園の役割ですね。
2025年には半年間の休館を経て、さらなる成長と新しい取り組みへ
――2025年には大規模な改装をされるとのことですが、今後、どのようなビジョンが描かれているのでしょうか。
井上:まず、1つ目に、日本を美しくしようということで、原点である日本庭園をベースに、日本の文化が凝縮された八芳園をもう一度整えていくことです。2つ目に、SDGsの観点から自然エネルギーなどを取り入れた環境に優しい施設づくりをしていくこと。 そして3つ目に、男女ともに働きやすい環境を整えていくことがあります。
今の八芳園では、正社員の55%が女性で、宴会場や調理場にいたっては約8割が女性です。女性が多い職場のため、キッチンの高さや重労働負担の軽減など、働きやすい環境に整えていきます。半年間、休館をしてこの3つを行う予定としています。
――休館までするのですか!! そこまでして、庭園や建物だけでなく、働く環境もリフレッシュさせるのは大胆な決断です。
井上:今の日本のビジネスシーンは、もう一度、土台を作り直す時期に来ていると思っているんです。時代には変わり目がありますが、それは竹の節目のようなもの。節目があるから、もう1回伸びるんですよね。八芳園は、この節目を作っていく役割を担っていきながら、自分たちもより伸びていきたいですね。
――新しい環境になると、また新しい取り組みが生まれていきそうです。
井上:社会の変化、自然環境変化によっても、節目が入り始めている時期だと感じます。気温や天候の変化によって採れる果物に味の変化が起きたり、漁場では昔獲れた魚が獲れなくなってきたりしています。食を中心とした事業展開をしているからこそ、この変化を肌身で感じています。このような社会問題が様々にある中で大切なのは、その産業の中でトップになることを目指すのではなく、その産業や企業が培ってきた知見と、隣の産業や企業の知見が横軸で繋がることで、様々な社会課題を解決していくことなのではないでしょうか。
創業80年を迎え、今後迎える100年のために、新たに舵を大きく切ろうとしている八芳園。今後の取り組みと成果が楽しみです。
|INFOMATION
江戸時代から続く四季が織りなす美しい景観の日本庭園を舞台に、1943年、飲食業としてスタートしました。そして、今春からは『交流文化ルネッサンス、はじまる。』というスローガンと共に、『交流文化創造』に取り組みをはじめました。全国各地の魅力を発信するポップアップ型ショールーム「MuSuBu」の展開、コンテンツ開発・イベントプロデュースに取り組むための新会社の設立等、変化と進化から目が離せません。
ぜひ、一度、八芳園の日本庭園に、そして『交流文化創造』を目にするために、東京・白金の地へ足を運んでみませんか。
[PR]提供:八芳園