カシオのアナログ電波ソーラーウオッチ、OCEANUS(オシアナス)。なかでも、上質な仕上げと薄く美しいフォルムを追求する「Manta」の最新作「OCW-S7000」シリーズがいよいよ発売された。OCW-S6000から1年8カ月ぶりとなる「満を持して」の登場だ。そこで今回は、このOCW-S7000のデザインの魅力を本作の商品企画担当者、そしてデザイナーに話を聞きつつ、写真とともに紐解いていこうと思う。OCEANUSの美しさを改めて感じてほしい。

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「OCW-S7000」というモデルを物語る3つのコンセプト

本題に入る前に、OCW-S7000シリーズのラインナップについて改めて紹介しよう。今回登場したのは、計3モデル。まず、標準モデルともいえる「OCW-S7000-1AJF」(198,000円)。広告などでも目にする、いわゆる“ヒーローモデル”だ。煌めくザラツ研磨や耐摩耗性と発色を高める処理TIC(チタンカーバイト)を使用したチタン製のケースとバンドといった伝統的なMantaの仕様に加え、オシアナス・ブルーの蒸着を施したサファイアガラスベゼルが美しい。

  • OCW-S7000シリーズ3モデルのラインナップ

  • 広告などに使用される、いわゆるヒーローモデル、OCW-S7000-1AJF

そして、ブルーのグラデーションが存在感を主張する「OCW-S7000A-2AJF」(214,500円)。世界限定1500本のリミテッドモデルだ。

  • ダイヤルのグラデーションが目を引くOCW-S7000A-2AJF。世界限定1,500本

最後は、チタン製のケースとバンドに耐摩耗性に優れた処理DLC(Diamond-Like Carbon)を施した人気のブラックモデル「OCW-S7000B-2AJF」(236,500円)。スタンダードなモデルとはひと味違った、個性を求める方にオススメだ。

  • 人気が高いブラックモデルのOCW-S7000B-2AJF

  • 強化皮膜処理としてTICカーバイトを使用したOCW-S7000-1AJF(左)とDLCを使用したOCW-S7000B-2AJF(右)

さて、今回お話を伺うのは、OCW-S7000の商品企画を担当されたカシオ計算機の佐藤貴康氏と、デザインを担当された藤原陽氏。お二人とも、今まで数々のOCEANUSモデルを手がけてきたベテランである。

写真からおわかりのことと思うが、OCW-S7000シリーズはクロノグラフとしてのイメージを強く前面に打ち出したデザインだ。それはまるで、ここ最近(たとえば「OCW-S5000」のような)ラグジュアリーな路線から、まるで「電波ソーラークロノ」としての原点に回帰したかのような印象さえ受ける。

佐藤氏「今回のOCW-S7000を開発するにあたり、私たちは3つのポイントを製品のコンセプトに据えました。その1つめは“薄型ムーブメントを使って、OCEANUSのフラッグシップ王道のフォルムをブラッシュアップすること”。

2つめは、仰るように“ クロノグラフの追求”。そして3つめは、“サファイアガラスの蒸着で見せるオシアナス・ブルー”です」

  • カシオ計算機 時計BU 商品企画部 佐藤貴康氏

なるほど、上の3モデルには確かにその3要素が強く、またバランスよく込められている。では、順に詳しく伺っていこう。まずはフォルムのお話から。

佐藤氏「OCW-S7000では『OCW-S5000』で開発した薄型ムーブメントを使用しています。これは当社の高密度実装技術を集約した超薄型ムーブメントで、機械パーツも精度と耐久性の社内のOCEANUSとしての規格(※)を確保しながらギリギリまで切り詰めて使用しました」

※G-SHOCKをブランドに持つカシオの社内規格はシビアなことで有名。

この薄型ムーブメントで、OCW-S5000では厚さ9.5mmのスリムケースを実現。ただし佐藤氏曰く、今回(OCW-S7000)はとくにケース厚に関して厳しい制限を設けていなかったという。

佐藤氏「10mm以下には収めたいとは思っていましたが、それより、デザイナーや設計のスタッフにはOCEANUSのフラッグシップであるMantaの“王道デザイン”をブラッシュアップしてほしかったのです」

---でも、結果的にOCW-S7000もケース厚は9.5mmになりましたよね?

「今だからできた」ウオッチデザイン

佐藤氏「そうなんですよ。Mantaだととくに、スタッフが自然と薄く作ろうとしちゃうんです(笑)。社内的にもマンタ=スリムケースというイメージが定着しているので。薄くしなければ、という意識がすべてのスタッフに働いてしまうんですね」

  • わずか9.5mmのスリムなケースは、フラッグシップであるMantaの名に恥じぬ完成度

9.5mmのケースは見るからに薄く、まさに“Elegance(エレガンス), Technology(テクノロジー)”。OCEANUSのブランドコンセプトを象徴するようなデザインだ。もちろん、その端々にはデザイナーの思い入れと苦心が集約されている。

藤原氏「特に、ケースをぎりぎりまで削ぎ落とし、美しい3D造形ができたときは、嬉しくて思わず佐藤にメッセージを送ってしまったほどです」

佐藤氏「来ましたね。夜中にも関わらず『完璧なのができたぞ! 』って(笑)」

藤原氏「ケースの形状は、ドーム型の風防から円錐状になだらかなカーブを描くようケース上面を落としつつ、両サイドにザラツ面を作ることで、薄さと立体感を両立させました。」

  • カシオ計算機 開発本部 デザイン開発統轄部 第一デザイン部 藤原 陽氏

  • 風防の頂点から、あらゆる方向へなだらかな美しいカーブを描くフォルム

その形状は、まるでスポーツカーのフロントノーズような流線型だ。たとえればデ・トマソ パンテーラのよう(我ながらスーパーカー世代らしいたとえ方)!(※著者の個人的感想です)

  • 流麗でありながらスピード感あふれるラグの線と面の構成!

藤原氏「ラグの先端は、シャープな印象を与えるために、日本刀の切っ先の様な形状にしています。この形は結構前のモデルから一貫してやっていますね。また、ケースの面は基本的には2次曲面で構成しています。これは、精度の高いザラツ面と金属の反射を美しく見せるため。しかし単調な印象にならないよう、面構成を工夫しています」

  • 9時側のケースサイドも見どころ。フィンのような造形は、ケース左右のバランスを取りつつ研磨面の美しさを見せる役割も担う

---ボタンも複雑な形状で見栄えがしますね。

藤原氏「これは以前からやりたかったのですが、加工技術の面で叶いませんでした。それが現在は加工技術が進化したおかげで、できるようになったのです」

  • 複雑な形状のボタンは、押し込み時の力のかかり具合や指への触感が考慮されている

佐藤氏「Mantaのデザインのスタイルが確立したのは『OCW-S1400』というモデルからです。その発売が2009年ですから、もう14年も前。では、そのMantaのスタイル(Elegance)を最新の技術(Technology)を用いて、造形をさらに良くできないか。OW-S7000は、そんなテーマを背負ったモデルでもあるのです」

  • スーツの袖にぴったり収まるスマートさ

  • カン足の裏側は曲面を描きながら抉(えぐ)れている。これも時計が美しく手首にフィットするポイント

  • ベゼル外形はマンタオリジナルの16面体で、12時、3時、6時、9時の正位置に辺が来るので、ケースの収まりが良い。「12面体ほど角ばらず、24面体ほど細かくない。」と藤原氏

  • バンドはManta定番のものを採用。これも藤原氏のデザインだ。バンドメーカー、設計とで吟味を重ねて作り上げたバンドデザイン

なぜクロノグラフなのか? タキメーターは必要なのか?

---次に、クロノグラフスタイルを選んだ理由についてお聞かせください。

佐藤氏「OCEANUSは、世界初の電波ソーラークロノグラフであり、いわばブランドの原点です。したがって、クロノグラフにはデザイン面でも、機能面でもこだわりがあります。まず目が行くのは、ベゼルに刻まれたタキメーター。もちろん、実際に使えます」

タキメーターとは、時計のストップウオッチ機能で一定距離の移動時間(秒数)を計測、針が止まった位置のタキメーターの数値を読み取ることで、平均時速がわかるというもの。

---ただ、私はいつもクロノグラフを見るたびに思うのですが、今の世の中でタキメーターを使う人がどれほどいるのでしょうか?

佐藤氏「OCW-S7000のタキメーターは、もちろんきちんと使えます。が、正直にいってしまえば使う人はほぼいないでしょう。それでも搭載しようと決めました。タキメーターがあった方が、精密感やカッコ良さでデザインが締まるから……と、そんな理由も確かにあります。しかし、一番大切な理由は“タキメーターがあることが正統派クロノグラフの行儀作法だから”。

OCEANUS、とくにMantaを選んでくださるお客さんは、物の本質を見抜く眼と、こだわりを持っていらっしゃると私たちは考えています。ダイバーズウオッチならISO規格の防水であるべき、とかですね。今回はそういう方の心をくすぐるクロノグラフMantaにしたかった。 なので、タキメーターは使う頻度はほぼなかったとしても、いざ使う必要が生じたときにしっかりと使えることが重要なんです」

そのために、タキメーターのデザインも端々まで熟考、追求したという。

藤原氏「数字のフォント、文字詰め、目盛りの線の太さ、長さ、徹底的に追い込みました」

  • フォント、文字詰め、目盛りの高さ……あらゆる要素が度徹底的に熟考されたタキメーター

佐藤氏「クロノグラフを重視した点は、機能にも現れています。先ほどお話した通り、ムーブメントはOCW-S5000と同じものですが、制御系のプログラムは新しいものに変更。OCW-S5000は9時位置のインダイヤルがワールドタイムで、操作モードもワールドタイムを優先したものになっていました。しかし、OCW-S7000では9時位置のインダイヤルがストップウオッチ(60分積算計)になった関係で、操作モードをクロノグラフ優先に替えたのです。

  • 9時位置の60分積算計

  • 6時位置のインダイヤルに注目。「ST」モード表記(ストップウオッチ)が12時側にあるのがわかる

また、時刻の表示状態からでも2時位置のボタンを押した瞬間にストップウオッチの計測を開始する『ダイレクトスタート』という機能があるのですが、計測を開始するとすべての針が一斉に回転して12時位置を指します。(※12時側のサブダイヤルを除く)。このように視覚的な精緻感も加えています。ちなみに6時位置のモード針は、OCW-S5000では『ST』(ストップウオッチ)の表示が1時位置にあったのですが、OCW-S7000ではこのダイレクトスタートで針を真上に向かせるために、12時位置に変えています」

青の世界、オシアナス・ブルー

そして、コンセプトの3つ目は、OCEANUSの顔ともいうべき、オシアナス・ブルー。

佐藤氏「OCEANUSはやはり、サファイアガラスの蒸着で表現するブルーがお客様の定評をいただいているブランドなので、これも手を抜けないポイントです」

なお、オシアナス・ブルーについて、デザイナーの藤原氏は以前のインタビューで以下のように語っている。

藤原氏「私自身、海が好きなんですよ。とくにロタ島(サイパンとグアムの間)の海の色が好きで。深みを帯びた濃い青が、太陽が傾くとともに紫へと変わっていく。それが本当にキレイなんです。これはオシアナス・ブルーの原点ともいえる色ですね」

【参照】 魅惑のブルー - OCEANUSのアイデンティティ「青」へのこだわりを聞く

この「紫へと変わっていく青」、サイパンとグアムの間、ロタ島付近の海の色にちなんだ『ロタ・ブルー』こそ「オシアナス・ブルーの原点」と語る藤原氏。そういえばOCW-S7000のブルーも、若干マゼンタ(鮮やかな赤紫色)に寄せた、輝く青だ。これもまた、原点回帰的な要素の1つかもしれない。

  • 黒を上手く使うことで、青を印象的に引き立たせている

  • 青と黒のコントラスト、光から影へのグラデーション。オシアナス・ブルーはもはや世界観だ

佐藤氏「また、限定モデル(OCW-S7000A-2AJF)とブラックモデル(OCW-S7000B-2AJF)にはサファイアガラスベゼルに加え、ダイヤルにもブルーから暗色へのグラデーション蒸着を施しました。限定モデルでは夏らしいリゾートの海をイメージ、ブラックモデルでは、DLCのブラックとも相まって海中から水面を見上げるイメージの、深みのある青に仕上げました」

---以前からMantaの限定モデルでは、ほぼ緑に近いなど冒険的なオシアナス・ブルーが使われてきましたね。

佐藤氏「そうですね。今回の限定モデルも、リゾートの海をイメージしたターコイズブルーのような青を使っています。針とインデックス、カレンダー枠に使用したゴールドは太陽に煌めく砂浜のイメージ。これもリゾートの海を意識したカラーです」

オシアナス・ブルーは色という概念を越えて、もはやOCEANUSの世界観の1つとなっている。海は世界であり、その表層から深層までの膨大な空間は、無限の時間を内包しているのだ。原点を見つめ直し、クロノグラフの矜持を携えて誕生した最新のManta、OCW-S7000。着ける者を奮い立たせるそのフォルムと青の輝きを、今すぐ店頭でご確認あれ。

  • Manta OCW-S7000には、お二人をはじめ開発スタッフの情熱とこだわりが凝縮されている

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[PR]提供:カシオ計算機