『孤狼の血』(2018年)『孤狼の血LEVEL2』(2021年)などの映画作品で、容赦のないバイオレンス・アクションと、人間心理を巧みに描き出す演出手腕を発揮した白石和彌監督が、『仮面ライダーBLACK』(1987~88年)のリブート作品を手がけるというニュースは、熱心な仮面ライダーファンのみならず多くの映画ファンをも驚かせた。

2022年10月に全10話が配信された特撮ドラマ『仮面ライダーBLACK SUN』(Prime Video)では、白石監督が追い求める「正義と悪の境目」というテーマを打ち出し、大人の視聴者層をメインターゲットとしたシリアスなストーリーが繰り広げられた。そして、白石監督の意気込みに応えるかたちで、日本映画界、テレビドラマ界の最前線で活躍する大物俳優たちが結集。かつてない豪華な顔ぶれが「仮面ライダーの世界」で、自身の存在意義をかけ、激しくうごめきあう濃密な「人間群像」を築き上げている。

  • 中村倫也(なかむら・ともや) 1986年生まれ、東京都出身。2005年俳優デビュー。2014年に舞台「ヒストリーボーイズ」で主演を務め、第22回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞。『石子と羽男-そんなコトで訴えます?-』(2022年)をはじめとするテレビドラマや舞台、CM、映画など多方面で活躍。映画『日本で一番悪い奴ら』(2016年)『孤狼の血』(2018年)に続いて、白石和彌監督の手がける配信ドラマ『仮面ライダーBLACK SUN』(2022年)に秋月信彦/仮面ライダーSHADOWMOON役で出演し、話題を集めた。7月からは主演ドラマ「ハヤブサ消防団」(テレビ朝日系)がスタートする

ここでは、大人のための変身ベルト玩具「CSM変身ベルト 世紀王ムーンドライバー」の発売を記念し、仮面ライダーBLACK SUN/南光太郎(演:西島秀俊)と共に「創世王」候補のひとりとして生きることを宿命づけられた男・仮面ライダーSHADOWMOON/秋月信彦を演じた中村倫也に取材を敢行。話題の映画・テレビドラマに多く出演し、幅広い年齢層から親しまれる中村は、本作の原点というべき『仮面ライダーBLACK』および『仮面ライダーBLACK RX』(1988~89年)で活躍した元祖「シャドームーン」に強いリスペクトを捧げていた。

配信開始前に行った今回のインタビューでは、中村がかつて「シャドームーン」から感じた強いインパクトや、令和の時代にリブートされた仮面ライダーSHADOWMOONを演じるにあたっての心がまえを尋ねている。

――中村さんに本作『仮面ライダーBLACK SUN』の出演オファーが来た経緯からお聞かせください。

数年前、プロデューサーの方から「白石和彌監督と西島秀俊さんで仮面ライダーBLACKをやろうと思ってるんですよね~」とお話がありまして、そのときすぐに「ええっ!? シャドームーン演りたい!!」って言ったんです。あとになってから、あのとき雑談っぽくそんな話をしたのは、僕に「仮面ライダー」への興味があるかどうか、探りを入れていたからだったとうかがいました。でも、最初に「やる」と決まったときは僕のスケジュールが合わなくて、出演するのは難しいな……ということだったんですが、撮影開始が延びたためスケジュールが合い、めでたく正式にオファーをいただきました。

――仮面ライダーSHADOWMOON/秋月信彦を演じることが決まって、どんなお気持ちを抱かれましたか。

やりたいと手を挙げたものの、シャドームーンだぞ……、そんな簡単に演じられるもんじゃねえぞ、という思いがすごくありました。何といっても僕が子どものころ、あまりのカッコよさにしびれていた存在でしたから、やりたいからって簡単にやっちゃいけない。憧れのキャラクターを自分が演じることへの「覚悟」を決めなければ、というのを最初に思いました。白石さん、西島さんが取り組まれるんですから、昔の『仮面ライダーBLACK』をそのままリメイクするだけの作品にはなるはずがないぞと。そんな中で、もしシャドームーンを違う俳優さんが演じたとしたら、ぜったい僕がヤキモチを焼くだろう。そんな思いもあったから、仮面ライダーSHADOWMOON/信彦役はもう一生懸命演じよう、と心に誓いました。

――中村さんが子どものころテレビで観ていたという「シャドームーン」の印象について教えてください。

銀と黒、緑のカラーリングがカッコよかったですし、今でいうダークヒーローの存在感が強烈でした。信彦としての人格を失って仮面ライダーと戦っていたけど、死の間際に人間の心を取り戻し、子どもを助けて息絶えるという……。圧倒的な強さを備えた「悪の戦士」という印象があり、そこから最後に変化を見せる。子ども心にものすごくカッコいいなと、衝撃を受けました。

――中村さんが強烈に覚えているシャドームーンは、『仮面ライダーBLACK RX』第22話「シャドームーン!」第27話「大逆襲!影の王子」でゴルゴム崩壊から奇跡的に復活を遂げたシャドームーンなんですね。ゴルゴム世紀王だった過去の栄光を捨て去り、RXへの闘争心のみで生きているあのときのシャドームーンには強さと凄み、そして「哀愁」が合わさり、強い魅力がありました。

『BLACK』と『BLACK RX』には、シャドームーンに改造された後の「秋月信彦」がそんなに出てこないですよね。今回の『仮面ライダーBLACK SUN』では信彦の心の動きなどをガッツリ押さえていて、光太郎との対比も含め、人物像がより深く描かれています。そういうところも、僕が今回思い切ってチャレンジできる要因のひとつだったかなと思います。

――信彦は、西島秀俊さん演じる南光太郎と幼少時からの友人という設定です。西島さんとは実年齢がかなり離れていますが、信彦と光太郎との関係性を表現する際に意識していたことは何でしょうか。

信彦と光太郎の見た目の年齢が違っているのにはちゃんとした理由があって、台本を読んで納得した上で臨んでいます。確かに西島さんとは年齢差がありますが、演じるにあたってはあまり意識をせず、遠慮なく接していました。ストーリーの中で「現代」と「過去」が交互に出てきて、今こうなっている状態なのは過去にこんなことが起きたからだ、と説明されていきます。現代パートに出てくる信彦は、ある信念が怨念に変化した、言ってみれば「怨霊」みたいなつもりで演じていました。光太郎とは、幼なじみとか同年代とかを越えた「運命的な関係」が見せられたらいいなと思っています。

――『仮面ライダーBLACK SUN』で、中村さんが特に注目してほしいと思われるポイントを、ぜひお聞かせください。

怪人も人間も含めて『仮面ライダーBLACK SUN』という世界の中で、みんなが「すったもんだ」やっている部分に着目してください。それぞれの「欲」や「思惑」「思想」「信念」がどこでどうすれ違って、かけ違って、衝突になるのか……みんな一生懸命がんばっているんだけど、ちょっとミスったり、誰かを傷つけたりする。何かを手に入れるため、汗をかきながらもがいている人たちの「ドラマ」に注目してもらいたいです!

仮面ライダーSHADOWMOONの自動変形変身ベルト「CSM変身ベルト 世紀王ムーンドライバー」(44,000円/税込)は、プレミアムバンダイで2023年6月8日16時から予約受付がスタートする。

(C)石森プロ・東映 (C)「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT

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