G-SHOCKのスポーツライン「G-SQUAD」(ジースクワッド)から、最新作「GBD-H2000」が発表された。前作「GBD-H1000」からデザインを一新しただけでなく、機能面でもマルチスポーツに対応し、睡眠状況の解析をも可能にした。今回は完全新作として生まれ変わった本作について、開発陣にお話を伺った。

時計としての快適な装着感と高機能を両立
  • 心拍計とGPS機能を搭載したG-SQUAD「GBD-H2000-1A9JR」

  • 4色のカラーをラインナップ。価格は各55,000円

まず、今回の取材にご対応いただいた企画開発統轄部のみなさんについてご紹介しておこう。

企画部 小島一泰氏。「GBD-H2000」では商品企画を担当。センサーを搭載したG-SHOCKやPRO TREKの商品企画を行っている。

企画部 吉井正勝氏。「GBD-H2000」ではモジュールの企画を担当。「MASTER OF G」シリーズのエンジン部分などに携わる。

開発部 川口洋平氏。搭載するデバイスやセンサーのアルゴリズムを担当。センサーの選定や評価なども行う。

開発部 松江剛志氏。「GBD-H2000」ではBluetoothやGPSを担当。電波時計の標準電波も含めた無線通信全般に携わる。

  • 各部門のエキスパートが勢揃い! 左から松江氏、川口氏、吉井氏、小島氏

---「GBD-H2000」は前作から大きく生まれ変わったとのことですが、どのような部分が新しくなったのでしょうか?

小島氏 “タフ”な自分になるためのワークアウトをサポートするG-SHOCKとして根本から機能とデザインを見直しました。前作のGBD-H1000では重量が101gだったのですが、本作では軽量化を行い63gまで軽くし、日々の使いやすさを追求しているのがポイントです。

  • 「 GBD-H1000」(左)との比較。小型化されているのがひと目でわかる。
    なお、液晶画面のサイズはほぼ同じ

---4割近くも軽くなったのですか!

吉井氏 軽量化の主要な要因の一つはGPSアンテナの小型化です。GBD-H1000で採用していたベゼル全体をアンテナとして使う『ベゼルアンテナ』から、薄い金属の内蔵アンテナにしたことで、大幅な軽量化に繋げています。

  • 左は「GBD-H1000」のベゼルアンテナ。右は「GBD-H2000」の内蔵アンテナ。
    右のアンテナはなんと重量約1/20(0.55グラム)になっている

---それでもGPS受信性能としては問題ないのですか?

松江氏 樹脂製のインナーケースに特殊な材料を混ぜ込むなどしてアンテナの特性を向上しています。また、アンテナ、回路、ソフトといったGPS受信システム全体を刷新し、同じ衛星からL1/L5という2つの周波数信号を同時受信できるようにしたことで、位置精度をアップすることができました。今回の製品でGPSの受信モードはLOW、NORMAL、HIGHと3種類用意していますが、2つの周波数信号を同時受信する高精度モードはHIGHに設定するとお使いいただくことができます。

---「GBD-H1000」では裏ぶたがステンレス製でしたが、今回はカーボン繊維強化樹脂の背面ケースになっていますね。これも軽量化のポイントですか?

小島氏 はい、これも軽量化と強度を両立しているポイントです。G-SHOCKブランドである以上、20気圧防水は必須性能。しかし、このモデルは裏面にハートレートセンサー(LEDライトとフォトダイオード)を搭載し、心拍計測に必要な窓を含めガラス用の穴が4つも空いているため、かなり苦労しました……。

  • ハートレートセンサー。 GBD-H1000では、発光用と受光用の窓が同じだったが、本製品は精度を優先して別々に配置されている

川口氏 ハートレートセンサーは、光を当てるLEDとその光を受けるフォトダイオードがきちんと壁で仕切られていることで、より精度が向上します。そこで外装担当者が苦労して、G-SHOCKの厳しい規格を担保しつつ、この4つの窓構造を確立してくれました。

小島氏 カーボン繊維強化樹脂製の裏ぶたは、フォルムが曲線装着時の腕馴染みもいいです。実は私は古くから(時計の)ランナーモデルを手がけてきたのですが、肝心なのはサイズ感と装着感だと実感していて……。なので、GBD-H2000にはその思いを注ぎ込みました

  • ボタンの形状やグリップのモールドにもこだわりが見られる。背面ケースはカーボン繊維強化樹脂製

  • ケースやバンドなど樹脂部分はバイオマスプラスチックを使用。なお、耐久性能は従来の樹脂と同等だ

  • フィット感を高めるソフトウレタンバンド可動範囲も広い

  • バンド裏側にも有機的なデザインのモールドを施して、装着感を高めている

---機能面では、マルチスポーツの計測に対応しましたね。

吉井氏 ランニング、トレールランニング、バイク(自転車)、プールスイミング、オープンウォータースイミング(※1)、ウォーキング、ジムワークアウト、インターバルトレーニングの8類のスポーツに対応しています。これらのアクティビティのログは、時計に記録され表示されるだけでなく、対応アプリ「CASIO WATCHES」と連携することで詳細に確認することが可能です。

---スイミングも対応しているのは驚きです…!

吉井氏 時計の画面でも確認できますが、「CASIO WATCHES」では、より詳しくワークアウトを確認することができます。プールスイミングであれば、ストロークやSWOLF、泳法まで分析することも可能ですよ。

  • 「GBD-H2000」が計測と分析に対応するアクティビティ8種

  • カシオ時計の標準アプリ「CASIO WATCHES」と連携することでアクティビティのログも詳細に確認できる

---開発のポイントについて教えて下さい。

小島氏 今回はお客様にストレスなくお使いいただけるユーザーファーストの考え方でものつくりに取り組みました。“より時計的な視点や感覚”で商品化することを目指しました。

吉井氏 電池寿命に関しても、アクティビティや睡眠計測を行わず、GPS計測や心拍計測機能などを使わなければ、通知や歩数計測などのスマート機能だけの使用であれば約2か月ご使用になれます。

  • 液晶モニタの周囲はソーラセル。メインの充電方式はUSBケーブルでの充電だが、ソーラー発電で時計表示は行い、完全なバッテリー切れを防ぐ

  • 一週間の歩数の目標達成度をグラフで一覧表示(水、木、火は目標達成できてなく、日曜は装着していなかったことがわかります)。GPS計測や心拍計測などを行わず、歩数計測や通知だけで使う場合は約2か月間充電不要

---「GBD-H2000」は睡眠中の計測と分析が可能だけでなく、アクティビティでの消費カロリーでは3大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂肪)の消費比率など細かく分析できるんですね。

  • 「睡眠計測」分析結果。睡眠を細かく分析することが可能。

  • 「使用エネルギー源」計測結果

吉井氏 睡眠計測では、ワークアウトや日中に受けた負荷要素から、睡眠によって心身がどれだけ回復したかを確認できます。また、トレーニング分析結果として消費される各栄養素の割合を知ることができますので、トレーニングを行う際の各栄養素の摂取や目的に応じた運動強度設定の目安になりますよ。

  • 睡眠状態から身体の回復を分析。写真の例ではいい感じで回復出来ているようだ

トレーニング分析に、実績と信頼のあるポラール社のアルゴリズムを採用!

こういった機能を搭載するには、多くの被験者からのデータ収集と分析が不可欠です。そこで、スポーツ・フィットネス関係のデータとノウハウを持っている業界大手のポラール社(※2)に声をかけ、ポラール社としても初の試みとして社内の体制を整えていただきアルゴリズムの供給が実現しました。

吉井氏 ポラール社には、各分析結果に関する論文など科学的な裏付けもありますので、分析結果の信頼性に関しては安心できると思います。

---心強いですね。ただ、多機能ゆえに使いこなせるか不安という方もいそうです。

小島氏 そんな方のために、不要な機能やスポーツの表示を(時計から)オフにできる機能を搭載しています。これは対応アプリ「CASIO WATCHES」から簡単に設定可能です。画面に表示しないようにするだけなので、必要なときは戻せます。画面表示の順番も入れ替えられるので、自分だけの使いやすい環境にカスタマイズできますよ」

  • 興味のないスポーツなど不要な項目を非表示にすることで、圧倒的に使いやすくなる

  • ウォッチモード時に表示される機能(ウィジェット)などもカスタマイズできる

本格的に体を鍛えるプロのアスリートから、健康的な生活を送りたい普通の人まで、幅広くお勧めしたい「GBD-H2000」。気温も暖かくなり、身体も気分も活動的になってきた今、もっとも注目したい一本だ。

  • タフネスなあなたになるためのワークアウトを「GBD-H2000」がサポートします!

※1 海や川、湖など「プールのような施設以外」で行われる水泳競技。
※2 世界のトップアスリートたちのトレーニングを支えるウェアラブルデバイスメーカー。本社はフィンランド。

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