2020年度に小学生のプログラミング教育が必修化され、約3年が経とうとしています。

しかし、マイナビニュースが実施したアンケートによると、プログラミングを学ばせたいとは思いつつも、具体的な必要性や子どもへの教え方が「わからない」という人も多いようです。

親御さんたちのなかでも、まだ戸惑いがあることがわかります。

そこで今回、小学生のお子さんがいるマイナビニュースのママ社員2名に、プログラミング教育への素朴な疑問や、親としてのリアルな声をヒアリング。その意見をもとにレノボ・ジャパンが東京書籍と開発したプログラミング教材『みんなでプログラミング』の監修者であり、技術教育の専門家でもある信州大学教育学部学部長・村松浩幸先生にお話をうかがいました。

●プロフィール

 村松浩幸(むらまつひろゆき)さん
信州大学 教育学部学部長 博士(学校教育学)。「オモシロイを形に」をテーマに、プログラミングも含めたテクノロジーの学びの研究に取り組んでいる。NHK高専ロボコン審査委員長、日本産業技術教育学会長としても活躍中。『みんなでプログラム』監修者として、コンセプトづくりから基本的な枠組み考案やワークシート作成まで、多面的に制作をサポート。

 Sさん
現在小学4年生のお子さんを持つママさん。今後のスキルに必要ではと考え、小学1~3年生までプログラミングに関する習いごとをしていた。現在は中学受験を見据えて勉強の講座に切り替えている。

 Kさん
現在6歳のお子さんを持つママさん。この春から小学生なので、プログラミング教育について興味はあるものの、具体的に何をどうすれば良いのか分からず、検討中。

難しく考えずに、まずは子どもが楽しめることから始めてみよう

――まずはおふたりの家庭における、お子さんとプログラミング教育との関わりについて教えてください。

Sさん:コロナ禍で自宅待機の際、当時まだ1年生だった息子がマイクラ(マインクラフト)にハマり(笑)、それをベースにしたプログラミング学習やロボットプログラミングを一時期、学ばせていたことがあります。おそらく自治体や学校によって取り組み方が異なると思いますが、現在学校では特にプログラミングの授業はしておりません。

Kさん:私の子どもはこの春から小学生ですが、通っていた保育園では水泳や英語などの習いごとに加え、去年からプログラミングが導入されました。しかし、さすがにまだ早いのではと思い、様子を見ておりました。ただ、簡単なプログラミングが学べる人気ゲームのオモチャを買い与えたところ、勉強というより遊びとして楽しんでいるようです。

――お子さんの将来にとってプログラミング教育は必要だと思いますか?

Sさん:極端かもしれませんが、「論理的思考を養う」という意味では、これからの時代に必要なスキルだと思っています。私たち(40代)が子どもの頃とは違い、今は何かを「作りたい」と思った時、頭の中のアイデアをアウトプットできる技術や手段がプログラミングなのではないでしょうか。

Kさん:必要かどうかというより先に、私がプログラミングについて分かってないので、子どもがいろいろ尋ねてきても「答えられるのかな……」という不安はあります。子どもは新しいことを覚えるのが好きなので、私も子どもと一緒に勉強しないといけない分野なんだな、と今から思っています(笑)。

Sさん:でも、私たちの子どもの頃と違って、今はゲームとかアニメを入り口にしたプログラミング講座がいっぱいあるから、今の子たちにとっては入りやすくていいかもしれない。

Kさん:そうですね。

――親の視点から見て、プログラミング教育に対する要望や意見はありますか。

Kさん:そうですね……。お恥ずかしながら要望も何も、まだ具体的に自分の中でどんな勉強をするのかイメージができていない、というのが正直なところです。

Sさん:私も同じです。そもそも親が教育を受けていないので、そこで何が行われるかもわかっていないですし、聞かれたら困るんじゃないかなと(笑)。「必要だ」とは頭でわかっているんですけど……。

――もし、お子さんが「本格的なプログラミング学習をしたい」「将来の職業として学びたい」と言ったらどうしますか?

Sさん:そこは職業選択の自由というか、1つの道として選ぶのはアリだと思います。

Kさん:私もまったく抵抗はありません。むしろ「よく選んだね」と応援してあげたいです。

――ここまでのおふたりの話を聞いて、村松先生からはいかがでしょう。

村松先生:いやいや、おふたりとも立派です! 率直な不安を述べられてましたが、すでにプログラミング教育の世界に十分関わっていらっしゃいますよ。

SさんKさん:ありがとうございます。

村松先生:というのも、今、世の中がものすごい速度でドンドン変わってきています。実は今回の座談会に合わせて、ニュースなどでも話題の AIチャットサービスに「プログラミング教育の重要性」について尋ねたところ、このような回答が返ってきました。

このAIチャットサービスを動かしているのもプログラムですし、大学入学共通テストでは令和7年度以降、「情報」という“プログラミングを扱う教科”が追加されます。また、科学・技術・工学・芸術・人文科学・数学を統合的に学ぶ「STEAM教育」という教育も今、注目されており、おふたりのお子さんが中学・高校に上がる頃には、社会がもっと変化していることでしょう。

もちろん、そういったプログラミングに関する認識は必要かもしれませんが、私はあまり難しく考えず、楽しんでもらうだけでも全然違うと思います。大人から見ると遊んでいるように見えても、子どもたちにとっては常に大きな気づきや発見がある。ですから、親御さんも難しいことを考えず、お子さんと一緒に楽しんでほしいですね。

SさんKさん:そのようにおっしゃっていただくと少し気が楽になります(笑)。

大人が普段やっていることを子どもでも簡単にできるツールとは?

――お子さんが楽しみながらプログラミングを学べる教材はいろいろありますが、手軽に始められるものとしておすすめなのが、「みんなでプログラミング」です。

「みんなでプログラミング」とは……?

レノボ・ジャパンが教科書の最大手である東京書籍と開発し、すでに多くの学校で採用されているプログラミング教材。村松先生が全面的に監修を務め、文部科学省の新学習指導要綱に準拠。AIなどの先端テクノロジーも体験できます。「小中学校用プログラミングツール」と「高等学校用プログラミングツール」の2つがあり、どの年齢層でも楽しめる柔軟かつ幅広い内容となっています。

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レノボ担当者:
学校で採用されている教材をご家庭でも使えるようにしています。小中学生向けの教材は、キャラクターを目的の場所まで動かす手順をプログラムにするような簡単なものから、データをみてコンビニの経営方針を考えるなど、順番に進めていくことで実用的にプログラミング的な思考を身につけられるような構造になっています。レベルに合わせてステップアップしていくので、プログラミングが初めてのお子さんでも、自分のペースで学べるでしょう。またオンラインなので、自宅から気軽に学ぶことができるのもポイントです。

――せっかくなので、おふたりにもチャレンジしてもらいましょう。

今回挑戦したのは「小中学生向けコース」の初級レベルのもの。キャラクターに指示を出して、フラッグのあるマスを目指します。このステージでは、キャラクターに対し、どういうことをしなければいけないのか、正しく順番に指示を出すことがポイントだそう。

Kさん:簡単そうに見えるけど、右向き・左向きが加わると、意外と難しい! 自分がいまどっちを向いているのかわからなくなりました(笑)。

Sさん:こういうのって子どものほうが得意だったりするので、ゲーム感覚で夢中になってやりこみそう!

元々用意されているステージだけでなく、自分でステージを作ったり、ほかの人が作ったステージを遊んだりすることもできます。「作る側」の体験をすることで、子どもたちの思考力はどんどん伸びていくと思いますよ。

――「みんなでプログラミング」は村松先生も監修をされています。携わるうえでどんなところを意識して製作されましたか。

村松先生:基本的には今のように実体験で学ぶスモールステップ(※細分化された目的を達成していく手法)と、学校の授業などで学ぶ用の紙のドリル型(※反復していく学習法)で構成されています。ワークシートは『みんなでプログラミング』で学んだことが、自分たちの身の回りの生活とどう関わっているのか考えさせるような内容になっています。

また、ステージが進んでいくと、都道府県の人口などデータをもとにグラフを作るといった内容が登場します。これは「データサイエンス」といって、統計学などのさまざまなデータをどう社会に役立てていくかという学問の1つで、その基礎が『みんなでプログラミング』には用意されています。

つまり、大人である私たちが普段やっているようなことを、子どもでも簡単にできちゃうようなツールに仕上がっているんです。始めはゲーム感覚で、楽しみながら学んでくれたらうれしいですね。

「遊ぶ側」から「作る側」へ

――村松先生に色々とお話をうかがいましたが、子どもにプログラミング教育を学ばせるうえで、何かコツはありますか。

村松先生:プログラミング教育において、大事なポイントは2つあります。

まず、プログラミングを覚えることで「遊ぶ側」から「作る側」に回ることができるということ。コンテンツをただ享受するユーザーではなく、クリエイター側になることで子どもたちは実に多くのことに気づいていきます。

たとえば、フラッグまでたどり着くというミッションに対し、前に進む・右を向く・左を向くなど、いくつかの動作が必要だったように。自分が普段何気なく遊んでいるゲームの裏側を考えることに、楽しさを感じるようになるかもしれませんね。

そしてもう1つ、先ほど親御さんの立場から不安を語ってもらいましたが、それは学校の先生も同じなんですね。そんな時に使える魔法の言葉が、「先生もわからないな」なんです(笑)。

Kさん:なるほど。

村松先生:さらに「じゃあ、○○さん、教えてよ」と続けることで、「教える側」と「教えられる側」の立場が入れ替わるんです。もしクラスにプログラミングがわかる子が1人でもいれば、たちまちその子が先生になるんですね。

Sさん:たしかに!

村松先生:それをそのまま親御さんにも当てはめてください。わからなくていいんです。「わからない」とはっきり言うことで、お子さんと一緒になって考え、なおかつお子さんの「教える」能力、「伝える」能力を養うことも出来る。一方的に教えるのではない、まさにそこがプログラミング教育の面白いところなんです。

今の世の中は新型コロナウイルスをはじめ、予測できないことが山ほどあるじゃないですか。そんな中、先生や親御さんが「答え」を与えるのではなく、子ども自身が「答え」を見つけていく。その過程をサポートする、という考えをぜひ持って欲しいですね。

Sさん:親として「教えなければいけない」「わかってないといけない」ではなく、別の支援の仕方があるんだということを改めて学びました。

Kさん:先生のお話と『みんなでプログラミング』で、私の中のプログラミングに対するハードルがかなり下がりました。「勉強」という感覚ではなく「子どもと楽しむ」という視点で考えることが大事なんですね。

Sさん:息子に今度「お母さんに教えてよ~」って言ってみようと思います(笑)。

Kさん:私もこれから子どもがプログラミングを始める際には、その方法でサポートしていけたら良いなと思いました。

村松先生:プログラミングはまさに機械とのコミュニケーション。新しいテクノロジーをむやみに恐れるのではなく、過度にハマり込むのでもなく、良い距離感を保ちながら使っていくと未来は明るいかなと思います。

――みなさん、本日はありがとうございました!

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