ここ数年、世の中が目まぐるしく変化し、変わりゆく日常についていくのに精一杯になってしまうことがある。心が置いてきぼりになってしまったり、「なんだか疲れた。つらい」と感じたり、漠然と不安に襲われたり……。なかなか気軽に家族や友達、パートナーなどに話せない状況だと、一人で鬱々としがちですよね。

そんなあなたの悩みや不安を相談できる場所があることを知っていますか? 専門家をお迎えして、悩みや不安を抱えた時の向き合い方、どんな相談窓口があるのかなど、詳しく教えていただきます。

悩みや困りごとを一人で抱え込まないで。
あなたをサポートできる場所があることを知ってほしい

こんなこと、誰にも相談できない。どうすればいいのかわからない。昨今の働き方や生活様式の変化に伴い、ふと孤独を感じてしまうことってありますよね。でもそう感じているのはあなただけじゃありません。

今回、相談窓口を運営し、多くの方の悩みや困りごとを聞いてきたNPO法人 自殺対策支援センター ライフリンク副代表の根岸さんをお迎えし、悩みや困りごとに関する向き合い方から対処法までお話を伺いました。

――実際にどのような方から、どのような相談を受けることが多いのでしょうか?

「年代も悩みごとも、実にさまざまです。例えば、“仕事で思うように力が発揮できない”“職場で叱責された”“仕事も家庭もうまくいかない”など、仕事や家庭、子育て、仕事と家庭の両立、人間関係……。子どもからの相談だと、いじめや進路相談などもあります。最近は電話よりもSNSで相談を受けることが多く、特に10代~30代前半の若い世代はSNSでの相談が増えています。電話や窓口に行くよりも、SNSの方が敷居が低いのかもしれないです」。

――年齢や背景が違っても、誰もが何かしらの悩みを抱えているということですね。コロナ禍の影響もあって、相談件数が増えたと伺いました。

「最初の緊急事態宣言後は、1.5倍近く相談件数が増えました。家庭内で虐待を受けていた子どもやオンライン授業で孤独を感じる大学生、職場を解雇された方など、追い込まれたりしんどくなったりする方が増えた印象です」。

――悩みや困りごとがあったときは、自分自身でどのように向き合い、対処していけばいいのでしょうか?

「接点=誰かとつながれる場、気持ちを切り替えるものを持つことが大事かなと思います。悩みごとって考えるなと言われても、考えないようにするのが難しいもの。仕事でも家庭でも、映画や読書などの趣味でも何でもいいので、何かほかに気を向けられることがあれば、少なくともその時間は考えなくて済みます。『マインドフルネス』もそのひとつの方法ですし、自分に合った切り替え方を見つけていただきたい。そして、つらい時、しんどい時は、 “ほかの人に比べたら自分はたいしたことがないんじゃないか”と他人と比べたり、“こんなことを言ったら、相手が困惑するんじゃないか”などと躊躇 (ちゅうちょ)しないで、信頼できる周囲の人に話してみたり、私たちのような相談窓口を利用してみてください」。

つらい時に、そのつらいわけを話すのはなかなか難しいことではありますが、誰かに話すことで何か変わることがあるかもしれません。

――悩んでいる人や困っている人に対して、周囲の人の対応の仕方についても教えてください。

「もし相手が話をしてくれた場合は、しっかり耳を傾けると同時に、しっかり耳を傾けようとしていることが相手に伝わるように接していただけたらと思います。悩みを人に話すというのは、とても勇気がいることです。自分の弱みを見せることでもあり、自分自身を情けないなと感じている人も少なくありません。ですので、相手の気持ちを否定せず、まずは受け入れること。解決策を見つけなくても、そのまま聴くということが大事です。話をしていくうちに、相手も自分の中でモヤモヤしたものが整理されて気づくこともあるでしょうし、聴いてくれる人がいるということで気持ちに変化がうまれることもあるはずです。相手の気持ちを否定せず、気持ちを受け止めた自分自身が感じたことを、 “私はこう思う感じたけど、そのことについてあなたはどう思う?”というところから、会話を進める方法もあると思います。

「ただ2人だけのやり取りになってしまうと、お互い行き詰まってしまうこともあるので、そんなときは“あなたのことが心配で、でも私だけだと不安だから専門家に相談してみるのはどうか”などと、提案してみてください。身近な人のことばは、背中を押してくれるもの。相談窓口を紹介するなど、相談された側もそれを全部一人で抱え込まないように注意したいところです」。

悩みや困りごと、生きづらいと感じる状態は誰にでも起こりうること。特別なことではありません。当事者になることもあれば、周りの人がそうなることも。どちらの立場にもなりうることだからこそ、それぞれの立場での対処法を理解しておくことが大切です。

――相談をしてくれる場合は、サインを出してくれているので気づくことができますが、悩んでいることすら全く気づかないような場合はどうすればいいのでしょうか?

「周りが気づくのには、やはり限界があります。そこで、いま子どもたちに“本当にしんどい時には誰かにSOSを出していいんだよ”という『SOSの出し方教育』が行われているところもあります。何かあった時に“自己責任でなんとかしなくちゃいけない”、“自分で克服しなきゃいけない”だけでは行き詰まってしまうので、“困った時は、あなたが相談できそうと思える人、できれば3人に相談を。それでもだめなら私のところに相談しに来て”と子ども達に伝えています。大人になってからも、このことをおぼろげにでも覚えていてくれれば、困難な場面での対応の仕方が変わってくるのではないかと思っています」。

心のSOSを感じたら。
相談窓口では、温かくあなたの悩みや気持ちをお聴きします。

なんだか生きづらいな、気分が落ち込む、身体がしんどいなど、その変化は心のSOSかもしれません。自覚していなくても身体がSOSを出していることもあります。そう感じたら、まずは身近な人に、それが難しければ第三者である相談窓口へ、あなたの気持ちを声に出して相談してみましょう。

  • 電話相談ができる「#いのちSOS」

  • SNSで相談ができる「生きづらびっと」

根岸さんが副代表を務めるNPO法人自殺対策支援センター ライフリンクは、その名の通り“命のつながり”に関する活動をしています。法律制定のための署名活動や自殺の実態を調査して自治体と連携したり、自殺に対する誤解や偏見をなくすような啓発活動をしています。また、SNSや電話による相談事業にも取り組んでいます。悩みや困りごとを抱えている方の気持ちを聞き、抱えている問題を一緒に考えて解決へ向けてのサポートをしています。

#いのちSOS

生きづらびっと

  • 厚生労働省のウェブサイト『まもろうよこころ』では相談窓口を紹介している

また厚生労働省のウェブサイト『まもろうよこころ』では、年齢や性別に関係なく、生きづらいと感じるほどの悩みや不安を抱えている方のために、電話やSNS(LINEやオンラインチャットなど)での相談窓口をわかりやすく紹介しています。24時間365日、誰でも無料&匿名で相談できたり、18歳以下の子どもや10代20代の女性のための相談窓口、生活困窮、法律・金融問題など、悩みや困りごとに応じた専門的な相談窓口もあります。相談できる場所がたくさんあるので、自分に合った相談方法を選んでまずは思いを声に出してみてください。

電話で話したい

SNSで話したい

まもろうよ、こころ

根岸親

根岸 親 さん(NPO法人 自殺対策支援センター ライフリンク/副代表)

自殺予防や自死遺族ケアなどの自殺対策を行っており、SNSの相談窓口の開設など、自殺予防・防止のための啓発活動に取り組んでいる。「#いのちSOS」では電話相談だけでなく、SNSからも相談を受け付けている。HPはこちら


[PR]提供:厚生労働省