「Dog & Cat First(すべては犬と猫のために)」を理念に、250種類以上のペットフードを提供している企業 「ロイヤルカナン」。同社では、“一頭一頭の犬と猫の真の健康”を目指し、個々の犬と猫の品種、年齢、身体のサイズ、ライフスタイル、健康や疾病状態に合わせたフードを手掛けている。

そんな同社が近年、ペットフードの提供のみならず、「ペットのためのより良い世界」の実現に向けて、社内外のさまざまな活動をしていることをご存じだろうか。本記事では、いちペットフードメーカーが目指す「ペットのためのより良い世界」について深堀りしていくとともに、それらの実現を支えているロイヤルカナンの多様な社員の方々についてインタビュー。獣医療関係者をパートナーとするベテリナリー事業部の部門長・岩﨑智哉さんに話を聞いた。

  • ロイヤルカナン ジャポン合同会社 ベテリナリー事業部 部門長・岩﨑智哉さん

ロイヤルカナンが目指す「ペットのためのより良い世界」とは

――ロイヤルカナンが目指す「ペットのためのより良い世界」とは具体的にどのようなものですか?

ロイヤルカナンは、ペットに関わるすべての人々に、正しい知識と適切な行動を啓発するとともに、個々の犬と猫で異なる栄養ニーズをきめ細やかに満たすことで、一頭一頭の犬と猫に、目に見える、実感できる“真の健康”を提供しています。そうすることで、ペットにとってより良い世界をつくることを目指しています。

――「ペットのためのより良い世界」の実現に向けて、ロイヤルカナンではどのような取り組みをしていますか?

ペットフードメーカーであるロイヤルカナンでは、科学的、栄養学的な観点からフードを開発・提供し、一頭一頭の犬と猫の“真の健康”の実現に向け取り組んでいます。

一方で、「ペットオーナー・ペットペアレントをはじめとしたペットにかかわる人々に、正しい知識と適切な行動をしていただけるようになっていただきたい」と思っても、私たちがそれらの人たち一人ひとりに話していくことはできません。そのため、我々のパートナーであるステークホルダーへの支援や協働を通じてその想いを伝え、広げていくことで「ペットのためのより良い世界」の実現を目指しています。

――ロイヤルカナンにとってのパートナー・ステークホルダーはどのような方になりますか?

ペットオーナーに信頼できる情報を伝えてくれる方たち、具体的には、獣医師やアニマルケアスタッフ、ペット専門店のスタッフ、ブリーダーを含む、犬と猫の専門家の方々です。そして、ロイヤルカナンもその一員だと考えています。

――ペットフードだけでなく、ペット業界全体を巻き込んで取り組まれているのですね。ステークホルダーの方への支援や協働に積極的に取り組まれている理由を具体的に教えてください。

ペットが健康かどうかは、実は非常にわかりにくいものです。ペットは言葉で不調を伝えられませんし、生存のために不調を隠そうとする習性があります。

人も見た目は健康に思えても、実は病気が進行しているということがありますよね。「真の健康」とは、“見た目が美しく健康的である”というだけではなく、“ペットが生涯にわたり健康で幸せであること”だと私たちは考えています。その判断にはやはり専門家の目が必要ですし、ステークホルダー同士で情報提供や共有などをしていけば、ペットにとってより正しい判断ができるようになっていくと思います。

それを実現するために、多様な社員がステークホルダーや地域社会とのつながりを強化しコラボレーションなどが可能になるよう、人への投資や支援にも積極的です。そこで利益を関係者で分かち合ってこそ、ペットを取り巻くエコシステムが社会の中で長期的継続的に成長していくことになると考えています。

「ペットのためのより良い世界」の実現に向けたベテリナリー事業部の取り組み

――岩﨑さんが所属されているベテリナリー事業部では、どのような活動をされていますか?

動物病院や獣医療関係者向けの事業部なので、予防や病気に対するケアが必要と診断された犬や猫をサポートする「食事療法食」などを展開しています。具体的には、世界中の獣医師や獣医大学と協働して開発した、さまざまな病気やライフステージに合わせた専門性の高いフードをラインナップしています。

ですから、ベテリナリー事業部では、獣医師やアニマルケアスタッフなどが主要なパートナーになります。彼らに向けて、 ロイヤルカナンが持っている専門知識をシンポジウムやセミナーなどを通して伝える活動もしています。

食事が犬と猫の健康に深く影響していることは経験的に実感されていますし、科学的にも証明されています。ペットは同じフードを365日、もしかしたら一生同じフードを食べる可能性もありますから、そういった面でもペットの健康にとって大切なロイヤルカナンの食事療法食で満たせる栄養学的な知識を動物病院に伝えていく活動も併せて行っています。

さらには、ペットが動物病院で健康診断を定期的に受診することを推進する活動も業界全体の視点から推進しています。疾病やリスクの早期発見を行い、健康な生活を一日でも長く過ごせるようになることは我々の望みであり社会的な使命だと考えています。

――それらの取り組みに対して、反響はありましたか?

活動を通して、「ペットのためのより良い社会」に近づけている実感があります。例えば、今年で設立10周年を迎える一般社団法人Team HOPEへの支援。これはペットの健康診断を推進する活動で、ロイヤルカナンはファウンディングパートナーとして、団体設立当初より支援を続けています。

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犬と猫は人の4倍以上の早さで歳を取るため、年1回の健康診断は、人に置き換えると4年に一度しか受診していないのと同じことです。そのため、人よりも頻繁に、可能であれば年2回以上、ペットに健康診断を受けさせることをお勧めします。

ロイヤルカナンではこのペットの健康診断の推進を「Team HOPE」と協働して行っており、現在では全国の動物病院の4分の1にあたる2,500を超える動物病院がともに推進を行うメンバーとなってくれました。Team HOPEによる調査でも、愛犬・愛猫に健康診断を受けさせるペットオーナーが着実に拡大しているという結果がでていることは嬉しい反響のひとつだと感じます。

また、ありがたいことにロイヤルカナンは、日本の獣医療関係者の方々より“療法食のリーダーカンパニー”として認知いただいています。日本のペットは小型で、他国に先駆けて長寿・高齢化していますが、近年では日本発案の「小型犬向け療法食」や「高齢期用療法食」が世界で発売されるようになりました。グローバル企業でありながら、ローカルニーズに応えることができていることも、ロイヤルカナンの社会貢献意識の高さだと感じます。

多様性があるからこそできる提携や協働

――「ペットのためのより良い世界」の実現に向けてロイヤルカナンでは、さまざまなバックグラウンドを持った社員の方々が働かれていると伺いました。まず、岩﨑さんがロイヤルカナンに入社した経緯について教えてください。

私は大学卒業後、広告代理店で働いていました。その後、MBA取得するためにスペイン・アメリカに行ったのですが、その頃に人々の生活の中での喜びのかたちが変化していることに気づきました。具体的には、物や金銭的な満足度より、ペットや植物のある暮らしの中での癒しや心理的満足感を求めていると感じました。アニマルヘルス業界に飛び込んだのは、それがきっかけです。

ロイヤルカナンはペットフード業界、特に食事療法食ではとても有名で、食事がペットの健康には大切だという意識が非常に印象的でした。また、会社としてのミッションも明確で、世の中に対しての意義や価値がはっきりしているほうが、やる気のあるメンバーも集まる。自分自身にとっても、新しいことに挑戦できるのではないかと考えて、入社を決めました。

――現在ベテリナリー事業部には、どのようなメンバーがいらっしゃいますか?

さまざまなパートナーと多角的に連携していく必要がある部署なので、高度な専門性を持った多様な社員が在籍しています。動物病院への訪問を行う学術営業メンバーは、全員が獣医師資格を保有。動物病院での勤務経験があるメンバーも多数在籍しています。

そのほか、マーケティングやセールス戦略、デジタル推進、動物病院のビジネス拡大をサポートするコンサルティングなどのチームには、獣医師以外の専門性を持ったメンバーも多数います。キャリアのバックグラウンドもさまざまで、言うなれば「粒ぞろいの粒違い」な部署ですね。

――多様な人材がそろっているチームならではの課題や部署をまとめるうえで意識されていることはありますか?

多様性があるチームは、下手をすると「烏合の衆」になってしまう可能性もあります。背景が異なっているからこそ、誤解が生じやすい危険もあります。

そのため、メンバーには「どんな悩みでも相談していい」と伝え、「失敗は減点しないので、新しい挑戦をしよう」をチームのスローガンとしています。そしてそれらを習慣的に行えるよう、毎週の会議で「Help Needed」という、相談事をシェアして解決に適した人にサポートしてもらうということもやっています。

私は、失敗してもそこから学べばいいし、多様性のあるメンバーだからこそ、柔軟で前例にとらわれないアイデアをどんどん実践してほしいと考えています。メンバー一人ひとりの可能性を信じて任せていますし、本当に問題が解決できないときは、私が全力でサポートする気持ちで取り組んでいます。

――メンバー育成という観点での取り組みにはどのようなものがありますか?

ロイヤルカナンでは、ペットにとってより良い世界を実現するための方法をチームで模索しながら、それぞれの専門知識を相互に共有したり、他部署とも積極的に協働したりして、同じ目標に向かって取り組んでいます。

そのうえで、より成長できる学びの場を提供しています。例えば、ベテリナリー事業部の学術営業メンバーは獣医師出身のため、一般的に言う営業職の経験はありません。そのため、外部より講師を招いて専門的な価値提案営業スキルが身につく育成プログラムを3年前から始めました。

そのほか、せっかく粒違いのメンバーが集まっているからこそ、様々なキャリアプランを描くことができるのもロイヤルカナンの魅力だと考えています。獣医師資格を持ちながら、ビジネス戦略やマーケティングなど、それまでの経験を活かしつつ、ビジネスパーソンとして企業の成長に貢献できる可能性がどのメンバーにもあります。

その可能性を一人ひとりに気付いてもらうために、「VADプログラム(Veterinary Associate Development Program)」を今年スタートさせました。将来、こんなキャリアもあるよ、こんなポジションも描けるよ、というのをすべてマップに出して、そのためにはどんな学びが必要なのか、会社としてどんなサポートができるのかを、マネージャーと相談して育成プログラムを作っていくものになります。「やったことがないからできない」ではなく、「やれるようになるためにはどうすればいいのか」を、話せる機会を作っています。

ロイヤルカナンの信念と、理想の実現に向かう原動力

――ロイヤルカナンとして、そしてベテリナリー事業部としての今後のビジョンをお聞かせください。

まずはやはり、ペットの健康寿命を延伸すること。ペットと家族の時間をなるべく長く、そして健康な状態で過ごしていただきたいですから、そのために動物病院をはじめとしたペットを取り巻く関係者全体の知識の底上げをして、ペット産業が健全に持続していくことに貢献していきたいと思います。

それには栄養学に基づいた良質なフードを提供していくことだけでなく、パートナーとの継続的な協働が必要です。常に変化し続けている現代において、ペットのためのより良い世界の実現のために、積極的な変革を進めていきたいと考えています。

ペットのためのより良い社会には、ベテリナリー事業部が関係する獣医療関係者の役割はとても大きいと考えています。ペットの健康状態を見守るのにもっとも信頼できるパートナーは、かかりつけの動物病院です。仮に今は病気がなくても、人でいうところの生活習慣病のような、犬や猫の品種やライフスタイルによって予見されることを想定できるのは、動物病院ならではだと思います。

犬や猫の品種やライフスタイルに合わせて、食事療法食を提供してもらったり、指導をしてもらったりすることができる動物病院という場所で、ぜひかかりつけ医を見つけてもらって、気軽に通ってほしい。そして、0歳から一生涯を見てもらうような環境にしていきたい。これが私たちの願いです。

ペットの明日と将来をつくる食事について、専門的なアドバイスをもらえることが当たり前の世の中になればと思います。日本の動物病院を、病気になってから行く場所にとどまらず、ペットについての相談を気軽に定期的にできる場所にすることが、ベテリナリー事業部のビジョンです。

――ロイヤルカナンのビジョンが実現することが楽しみです。本日はありがとうございました!

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「Dog & Cat First(すべては犬と猫のために)」を理念に、250種類以上のペットフードを提供しているロイヤルカナン。ペットフードメーカーという垣根を超えて、今後もさまざまなステークホルダーと協働をしながら「ペットのためのより良い世界」の実現に向け取り組んでいくと岩﨑さんは力強く語ってくれた。コロナ禍でペットオーナーが増加傾向にあるいま、すでにペットを飼っている人、そしてこれから飼う可能性があるという人は、いま一度「ペットのためのより良い世界」について、考えてみてはいかがだろうか。

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