日本人の2人に1人が罹患するといわれている、がん。いざ自分ががんになった際、どのような治療をするのか興味がある方も多いのではないでしょうか? 現在、がん治療において「バイオ医薬品」が登場し、治療効果が飛躍的に向上しています。一方で、治療費は高額になる傾向にあります。

その中でバイオ医薬品の新薬と同等の効果と安全性が確認されていて、薬価の低い「バイオシミラー」が注目を集めています。薬価が低いということには、患者さん自身の経済的な負担を小さくするだけではなく、今の社会保障システムを未来の患者さんも受け続けることにつながるかもしれません。

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今回、バイオシミラーの普及活動を行っている日本バイオシミラー協議会で、実際に乳がんを体験された患者さんの立場として桜井なおみさん、臨床医の立場として原文堅先生をお招きし、がん治療の課題やバイオシミラーへの期待についてお話を伺いました。

<座談会参加者>
(左)原 文堅先生
がん研有明病院 乳腺センター乳腺内科 副部長。
日本乳癌学会 理事・国際委員会委員長、日本臨床腫瘍学会「乳腺」領域 学術集会部会 部会長・ガイドライン委員会 委員なども務める。
(中央)桜井 なおみさん
一般社団法人CSRプロジェクト代表理事、キャンサーソリューションズ 代表取締役社長。
自らのがん経験や社会経験を活かし、小児がんを含めた患者・家族の支援活動を行っている。
(右)黒川 達夫
日本バイオシミラー協議会 理事長
(対談日:2022年10月28日)

乳がん患者さんに福音をもたらしたバイオ医薬品。
しかし、高い価格が問題に。

黒川:乳がんに対するバイオ医薬品が登場して20年以上経ちます。

原先生:乳がんにはいくつかタイプがあります。中には悪性度が高いタイプもあり、そのタイプに有効なのがバイオ医薬品です。現在では治療の中核を担う医薬品となっています。

桜井さん:私が乳がんに罹患したのは2004年。当時、乳がんに対するバイオ医薬品が登場し、投与予定の患者さんが同じ病室内だったので私の耳にも入ったのですが、患者さんに、「高い薬」という費用の話をはじめにされていたのが強く印象に残っています。

原先生:それまでの乳がんの治療は、比較的安価な薬剤でしたが、バイオ医薬品は高額です。現在は多くの患者さんにバイオ医薬品が使われることで個人のみならず医療保険財政の逼迫まで発展しています。

桜井さん:高額療養費制度を使用しても治療を継続すれば一般的な年収の患者さんで年間100万円程度の負担になります。それが5年続ければ500万円と大きな負担に。平成30年度に実施された患者体験調査(厚生労働省委託事業:国立がん研究センターがん対策情報センター)でも、経済的な理由で治療を諦めてしまう人達が約5%いることがわかっています。

一般の医薬品に対してはジェネリック。
バイオ医薬品に対してはバイオシミラー

黒川:一般的な医薬品の新薬に対してジェネリック医薬品が登場しているように、バイオ医薬品の新薬に対してはバイオシミラーと呼ばれる薬価が低く抑えられる医薬品が登場しています。

桜井さん:バイオシミラーは元々あるバイオ医薬品と同等の有効成分を持った薬です。以前患者さんとの勉強会で、原先生が本当にわかりやすく説明されていましたね。

原先生:バイオ医薬品の同等性/同質性を説明する際に身近な例としてラーメンのお話をしました。有名店の本家と暖簾分けの店があるとします。本家のラーメンでも毎日仕込んでいるから、日によって味のブレが当然あります。でも、味のブレはある程度均一で美味しいので、多くの人が並んで食べています。 暖簾分けの店もまったく同じです。本家と同じように美味しく、価格も安い。もちろん味にブレはあるけど、本家に劣るものではありません。 バイオ医薬品も同じで、微生物や細胞が作った複雑なタンパク質だから、新薬もバイオシミラーも、どうしてもブレがでてくる。ただ品質管理が厳格に規定されており、その範囲内で作られていると説明をしました。

桜井さん:みんな、スープまで飲み干すように理解していました(笑)。

患者さんの負担と国民医療費の軽減のために今できること

黒川:日本でがんに罹患される方は年間約100万人。その方々ががん死ではなく天寿を全うできるような状況に医療は進歩しています。しかし、国民医療費が逼迫し、すべての患者さんが最善の治療を享受できる持続可能性が課題となっています。

桜井さん:日本では当たり前の国民皆保険制度ですが、この制度を維持するために真剣に考えて実行しないといけない時期に来ていると思います。

原先生:より良い新薬を全員が使えるように、同じ効果なら薬価の低い薬を使用して、少しでも医療保険財政改善に貢献すべきですね。

桜井さん:以前行った患者さんとの勉強会で最後に出てきた言葉が「未来のために」でした。そのために、今できることをしないといけません。その1つとしてバイオシミラーを知っておくことは大切だと思います。

バイオシミラーを広く知ってもらうために

バイオシミラーについて詳しく知りたい方は、下記よりご覧ください。

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