コロナ禍は、日常を大きく変えてしまいました。デジタル化やオンライン化、社会理念や価値観の変容などが急速に進み、新たな生活様式への適応が急務に。今後、変化のスピードは加速度的に増し、さらに予測困難な時代を迎えるといわれています。
そんな未来を生きる子どもたちが自らの人生を切り開いていくには、どのような力や学びが求められているのでしょうか?本連載は、一人ひとりの可能性を追求し、その能力を最大限に伸ばす「KUMON」の提供でお送りする企画「KUMON FUTURE LAB」。各分野のフロントランナーに密着取材します。
第6回は、外務省官僚からベンチャーに転職し、脱炭素に向けて最前線で活動している前田雄大氏にお話をうかがいました。
CO2排出量を実質ゼロに
誰も明確な答えを持っていない目標への挑戦
━━本日はよろしくお願いいたします!改めて前田さんの現在の活動内容について教えてください。
シグマクシスというコンサルティングファームに所属しておりまして、そこで私は脱炭素の専門家として、社会におけるエネルギーの在り方を変革していく「グリーントランスフォーメーション(GX)」の領域を担当しています。 企業様や自治体様の脱炭素活動を支援させていただいております。 |
━━外務省を飛び出して、“世界一脱炭素に熱い男”としてご活躍ですが、どのような力が役立っているとお考えですか?
二つありまして、一つ目は、思考の枠にとらわれないクリエイティビティですね。 というのも「脱炭素」という領域自体が、社会が初めて取り組む課題。これまでも「低炭素」や「省エネ」といったトレンドはありましたが、CO2の排出量を実質ゼロにするというのは思い切った変革です。 世界のエネルギー構成の約8割が化石燃料で、経済を回すとCO2を排出するのが当たり前の状況下において、誰も明確な答えを持っていない目標を達成するには、思考の枠の一歩外に出て試行錯誤しなければなりません。 |
━━二つ目の力はどういったものでしょうか?
物事を俯瞰して見る力です。 全体像を俯瞰して根底に流れている原理原則をつかまないことには、表面で起きている変化を見誤ってしまいます。 |
━━挙げていただいた二つの力は、将来の予測が困難な時代において、より一層必要な力だと感じました。
間違いなく必要でしょう。世界が不安定になっている中、脱炭素に限らず、前例踏襲だけでは通用しません。 これからを生きる子どもたちは、思考の枠にとらわれないことが重要ですし、そのためにも物事を俯瞰して原理原則をつかむ力を身につけてほしいですね。 原理原則をつかめば、小さな変化から予測を立てることができ、対策を打てるはず。そして、どう対策を打つかというところでクリエイティビティが問われます。 |
物事を俯瞰して見る力とクリエイティビティを育んだ
公文式の反復学習
━━物事を俯瞰して見る力と思考の枠にとらわれないクリエイティビティ。それらは、どのようにして培われたのでしょうか?
まず、物事を俯瞰して見る力は数学の勉強によって培われたように思います。最初の頃は公式を丸暗記していたのですが、「二次関数のグラフは点の集合体なんだ!」という原理原則に気づいてからは微分などの理解も飛躍的に深まりました。 そこからは解の公式を暗記するのではなく、導き方の原理原則を探究するようになったのです。原理原則がわかれば、応用がききます。 |
━━ちなみに、どのように学習して原理原則を探究されていたのですか?
「よくわからないまま受け入れる」ということはしませんでしたね。 原理原則を探究するには、反復学習によって基礎をしっかりと理解しておくことが条件です。そうでないと、原理原則を探究する前に時間がかかりすぎてしまって、勉強がイヤになりかねません。 私も幼少期はKUMONに通い、反復学習を繰り返していました。 |
━━前田さんの原体験は公文式学習にあったのですね。
3歳の頃からKUMONに通っていましたが、算数の教材を中心に、熱心にプリントを解いていた記憶があります。 丸をつけてもらえることがうれしくて、ある種のゲーム感覚で楽しみながら取り組んでいましたね。 |
━━公文式のどのような点が良かったとお考えですか?
第一に先取り学習ができていた点ですね。おかげで、学校の授業では良いスタートダッシュを切れました。 これが成功体験となり、「勉強が得意」という自信につながったことで、勉強が苦にならなくなったんです。 |
それに反復学習によって十分に理解してから、少しずつ次のステップに進めるように設計されていたので、どんな単元にも抵抗感を持たず、つまずくことはありませんでした。 「できた!」という成功体験は、とても大切です。それが「がんばろう!」という好循環を作り、伸びていく。 加えて、頭の回転が速くなったように感じますね。 |
━━どのようなときに実感されましたか?
外務省で働いていたときに英語を習得しなければならなかったのですが、その際、頭の中に“回路”があることを実感しました。 一般的な日本人の回路は「英語で入力して、日本語に変換して、日本語で咀嚼して、日本語を英語に変換して、出力する」ため、2回ある変換プロセスのせいでコミュニケーションが遅くなりがちです。 いかに「英語で入力して、英語で咀嚼して、英語で出力する」かが大事と考え、シャドーイングでトレーニングしたのですが、効果は絶大でした。 |
「英語で入力して、英語で出力する」といういわゆる英語脳ができたのですが、振り返ると、公文式学習の反復による経験から演算回路ができていたからではないかと思うのです。 幼少期から鍛えていたことで、あらゆる情報処理が速くなった気がします。実際、開成中学の受験時にも計算処理を速く行う必要があったのですが、そこでも公文式で鍛えた演算力が役立ったと思いますね。 |
━━一方で、思考の枠にとらわれないクリエイティビティについてはどのように培ったのでしょうか?
公文式によって、型を作れたことが大きかったですよね。 基本を把握しているからこそ王道を外したアイデアを出せるのであり、応用は、基礎を一通りこなして初めてできるもの。型を極められているから、型を破れるのです。 そういう意味では、思考の枠にとらわれないクリエイティビティも公文式が基礎を作ってくれたと思います。 |
基礎なくして、応用力は身につかない
勉強をイヤと思わせないことが鍵を握る
━━前田さんは、どのような教育が理想だと思われますか?
「基礎をサボらない」というのは、どんな時代でも変わらない鉄則だと思います。勉強だけでなく、スポーツでも同じことが言えますが、努力をせずにサボっていては高い壁を越えられません。 先ほども申した通り、反復学習をがんばってこそ、型を作れます。 |
ただ、反復学習だけでは、前例がないものへの対応が難しいことも事実。 型破りが求められている時代ですので、子どもの教育プロセスにおいては、反復学習の後にちょっとひねってあげる瞬間を増やしてあげるのが良いのではないでしょうか。 |
━━「反復学習の後に」というのがポイントなんですね。
いきなり創造性を養おうとする風潮がありますが、それは難しいでしょう。基礎を無視しては、応用力は身につきません。 |
━━最後になりますが、これからの時代を担う子どもたちを育てる親世代に向けてメッセージをお願いいたします。
先取り学習をさせてあげてください。 先行して学ぶことで心理的に余裕が生まれ、そこで自信をつけられれば次のステージに進みやすくなりますし、何より勉強が嫌いになりません。勉強をイヤと思わせないことが鍵を握ります。 子どもの好きなものが何かを観察し、それと勉強を結びつけてあげるのも良いですね。好きなものなら反復が苦になりませんから。 |
もちろん、どんなに順調でも、壁にぶつかるときは訪れます。そんなときは、親が子どもの目線に合わせてサポートしてあげると良いでしょう。その都度、原理原則に立ち返ることを教えてあげるのも有効です。 そうすると、子どもたちは自分なりの壁の乗り越え方を自然と知っていくはずです。 |
━━幼少期からの反復学習が努力できる素地を作り、クリエイティビティの醸成にまで影響を与えているのは驚きでした。前田さん、本日は貴重なお話、ありがとうございました!
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予測不可能な未来だからこそ、どんな時代でも自ら考えて「生き抜く力」と、それを育むための「学習」を。「KUMON」は、教室でも自宅でも、一人ひとりの可能性を追求し、その能力を最大限に伸ばし、未来の可能性を広げられる場所を提供します。
公文式学習とは?
学年に関係なく、一人ひとりの力に合った教材を指導者が選定し、生徒が自習で教材を解いていくスタイルの学習。指導者は生徒に「答えを教える」のではなく、生徒が「自分で解けた」という状態へと導く。また、結果だけではなく、行動や努力といった過程についても「具体的にほめてあげる」ことを大切にしている。自分で解ける状態になるまで反復練習するため、次のステップに進んでも自力で挑戦できる。その結果、「自習力」「学習習慣」「ものごとを粘り強くやり抜く力」「集中力」「自分で考える力」「自己管理する力」などの「力」が身につき、学年を越えた未習の内容も自習で解けるようになるといった特長がある。
Photo:伊藤 圭
[PR]提供:公文教育研究会