G-SHOCK 40周年を機に復刻して進化を遂げた『G-B001』。伝説のモデルとしてファンの記憶に刻まれる『DW-001』がどんな経緯を経て『G-B001』に生まれ変わったのか、商品企画を担当したカシオ計算機 企画部 第一企画室 井ノ本脩氏に詳しく伺った。

どこがどのように進化したのか?

『G-B001』誕生のストーリーについては、別記事 『レジェンドモデルが帰ってきた - 時を経て復刻した「G-B001」発表会から』ですでにお伝えした通り。そこで、ここではディテールの写真も含め、より深く紹介したい。

  • 左からグレー×ゴールドの『G-B001MVB』(税込33,000円)、イエロー×レインボー『G-B001MVE』(税込44,000円)、ブラック×シルバーの『G-B001MVA』(税込34,100円)

なお『G-B001』の機能や仕様についても、別記事 『G-SHOCK、あの「ジェイソン」が着脱式ベゼルをまとって現代に甦った』をご覧いただければ幸いだ。

---「元になった『DW-001』から今回の『G-B001』へと進化した点を教えてください。

井ノ本氏「大きく分けて、次の3点が挙げられます。構造、モジュール(機能)、そしてバンドの進化ですね。」

  • カシオ計算機 企画部 第一企画室 井ノ本脩氏

井ノ本氏「まず構造については、『DW-001』のカプセル型の外装でモジュールを包み込む「カプセルタフ」というコンセプトで開発された耐衝撃構造を再解釈して、カプセル型でありながらそれを”開ける楽しみ”を追加しました。」

  • 上下からカプセルのような外装でモジュールを包み込む『DW-001』の「耐衝撃構造」を『G-B001』でも踏襲している

  • 1994年発売の『DW-001』(左)と復刻進化した『G-B001』(右)。性能の差は『G-B001』が圧倒的に上ながら、サイズはほぼ変わらない

井ノ本氏「すでにファンの方には周知いただけているであろう、2色整形ベゼルを外すと別のデザインのステンレスベゼルが現れる、という構造です。ここには、人気モデル「GA-2100」などでも使用されているカーボンコアガード構造が採用されています。」

  • カプセルは開けたくなるもの。それはカプセルトイ(ガチャガチャ)からの発想という

井ノ本氏「2番目のモジュールについては、現代モデルらしく今回新たにBluetoothによるモバイルリンク機能やワールドタイム、残照機能付きLEDバックライトを搭載しました。これも、現在の高密度実装技術があればこそ実現したといえます。

そしてバンドは、スライドレバーによる交換式を採用しました。イエローのモデル『G-B001MVE』には交換式のベゼルとバンドが付属するので、これらを付け替える楽しみも味わっていただけます」

  • 『G-B001』シリーズで使用されている主なパーツ

  • バンドもスライドレバーによる交換式に進化している

マスクを着けるもよし! 外してもよし!

---カプセルを開ける、つまり樹脂製のベゼルを取り外せますが、ステンレスベゼルが露出した状態での使用もアリなのですか?

井ノ本氏「もちろんです。この状態での耐衝撃性能もG-SHOCKとしての社内基準を満たしています。いわば2Wayで使えるので、お使いいただくシーンに合わせて異なるビジュアルで使い分けていただけます。」

  • 樹脂ベゼルを装着した状態で使っても良し

  • 樹脂ベゼルを外した状態で使っても良し。この状態でもG-SHOCKとしての耐衝撃性能は維持される

  • 3時位置と9時位置の差し込み部分。ここに専用の取り外し器具を差し込んでベゼルを取り外す

  • ステンレスベゼル露出状態の『G-B001MVA』(左)と『G-B001MVB』(右)

---ちなみに、このベゼルは顔でいえばマスク部分に当たりますが、これを着けるか着けないかは、ちょうど現在の社会問題に重なりますね。ひょっとして、社会へのメッセージが込められた奥深い演出……。

井ノ本氏「ではまったくありません。ただの偶然です(キッパリ)」

---ですよね(そりゃそうだよ)。ところでステンレスベゼルは、どうせならもっと突き抜けたデザインにしてしまう手もあったのでは?

井ノ本氏「実はそのような案もあったのですが、あまりにもやりすぎてしまうとモデルが変わってしまうので……」

---こんなの俺たちの『DW-001』じゃない! と反対意見がでたら困りますもんね。

井ノ本氏「そうなんです。そもそも今回復刻するモデルとして『DW-001』を選んだ理由は、G-SHOCKファンが長く支持してくださっているモデルだから。なので外観はあくまで大きく変えずに、今だからこそできる進化を込めたものにしたかったんです。そんなわけで、最終的にはケースの円形フォルムに収まりの良い形になりました」

---それでもせめてベゼル下部の穴の形は変えようということですね。発表会では、ロボットをイメージしたレトロフューチャーデザインということでしたが。

  • ステンレスベゼルのスリット形状。ちなみに、マスクの下にスリット形状があるデザインで筆者が思い出すのは大空魔(略)

井ノ本氏「デザイナーがこだわって上手くまとめてくれました。ちなみに、スリット形状の穴からはなかの文字板がちらりと覗いて見えるんですが、ここもデザインのポイントですね。とくにグレー×ゴールドの『G-B001MVB』の文字板は蒸着を使用しているので、角度によってキラリと光るんですよ」

  • 『G-B001MVB』の文字板は蒸着を使用。クリア素材のベゼルも001シリーズでは初となる

新しい個性の数々にリスペクトを込めて

---そしてカラーといえば、イエローモデルのレインボーIP! これも代表的な進化ですね。

  • 今回のメインモデルは、やはりイエローの『G-B001MVE』だ

  • この強烈な個性を放つマスクにより、某映画のキャラクターの愛称で呼ばれることも多い

井ノ本氏「イエローはG-SHOCKが初めて時計に持ち込んだカラーのひとつで、『DW-001』でも人気色でした。そのため、イエローモデルにはとくに気合が入っています。レインボーIPもその特別仕様のひとつです。」

  • 「『G-B001MVE』にはひときわ力が入っています」

井ノ本氏「レインボーIPを使った理由は、見た目のインパクトや技術進化のアピールに加え『DW-001』がサーモセンサーを搭載していたことにちなんだ”ヒートグラデーションのイメージ”もあります。外見だけでなく、こういった新しい個性も、実は『DW001』へのリスペクトが込められているんですよ」

  • レインボーIPは「チタンマフラーの焼け」に代表されるヒートグラデーションのイメージを重ねている

  • ベゼルの隙間から、レインボーIPがちらりと覗く。井ノ本氏のお気に入りポイントなのだとか

  • こんなところからもチラリ

  • 左上の液晶窓は、ブロックが積み重なる点灯パターンを採用。1秒ごとにグラフィックが変化する

  • 『G-B001MVE』にのみ付属する交換用のベゼルとバンド

  • これらを装着すると、また大きくイメージが変わる。ユーザーの性別や年齢層を大きく拡げるギミックだ

  • 奇抜で目立つデザインになっている

---最後にバンドですが、これも開発には苦労されたとか。

井ノ本氏「『DW-001』のバンドの付け根付近にはメタルパーツがインサート整形されていました。またラグの内側には、時計がぴったりと腕に沿うように支えるショックアブソーバーがセットされていたのです。

これらもモデルの強烈な個性ですから、もちろん再現するつもりでした。しかし『G-B001』にはこれに加えてバンドの交換システムを搭載するという仕様が決まっていて、どう両立させるかで悩みました」

---なるほど、メタルパーツをインサートするとスライドレバーの搭載スペースとバッティングしそうですし、スタビライザーがあるとバンドのスライドスイッチが隠れてしまう……。

井ノ本氏「はい。そこでバンドのインサート部品材をファインレジンに置き換え、ショックアブソーバーは形状を”コの字”にすることでスライドスイッチを操作できるようにしました。また、(ショックアブソーバーの)材質もより強度のある樹脂に換えています。

  • 『DW-001』のメタルパーツ(補強材)が見えるバンドデザインを踏襲。インサート材をファインレジンにすることで、強度確保に加えカラー表現の幅を広げた

  • 「カプセルタフ」が開発コンセプトの耐衝撃構造とショックアブソーバーの装着、スライドレバー式バンド交換構造をすべて実現!

  • コの字形のショックアブソーバー越しにスライドレバーを操作できる

井ノ本氏「バンドに限らず『G-B001』は、あらゆる課題を設計や製造担当のチームが徹底的に仕様を詰めてくれたおかげで実現できたモデルなんです」

井ノ本氏の言葉を聞けば聞くほど、『DW-001』へのリスペクトとそのファンに応えたいという情熱が伝わる。

G-SHOCKが培ってきた技のデパートともいえる『G-B001』。オリジナルの『DW-001』を知る世代はもちろん、純粋な最新作として受け止める世代にとっても、見逃せないモデルとなるに違いない。ちなみに発売日は、2023年1月「27日の金曜日」だ。

  • 「最新技術で生まれ変わった『001』をぜひ店頭でご覧ください !」

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