人工知能(以下AI) はあらゆる産業界に革命をもたらしており、医療分野でも様々な領域で取り組みが始まっている。しかし、まだテクノロジーが届いていない領域もあり、内視鏡手術に関しても医師の知識と技術にすべてが任されているのが実情である。

そんな中、AIを内視鏡手術に活用し、手術中の医療事故を排除するシステムの研究を始めた大学が福岡工業大学だ。そこで使われるコンピューターはユニットコム(パソコン工房)が提供しているという。どのような研究なのか伺ってきたので紹介しよう。

内視鏡手術をAIがサポート

福岡工業大学は、福岡県福岡市に位置する私立大学で、「情報」「環境」「モノづくり」の3分野を主体にした教育を実践。社会貢献できる人材育成を続けている。「For all the students」を合言葉に、学生の可能性を広げるためのサポート体制を持っているのも特徴で、同大学が持つ教育環境のなか、多くの優れた人材が社会へと輩出されている。

そんな福岡工業大学において、産学連携による先進的な取り組みを進めているのが、今回紹介する徳安 達士教授だ。

  • 福岡工業大学 情報工学部 情報システム工学科 教授
    大分大学 医学部 客員教授 徳安 達士氏

「現在は腹腔鏡下胆のう摘出術(LC)という内視鏡を使った術式にAIを活用するソリューションを開発しています。LCは国内で年間約12万件の症例があり、その中の約600件で胆道損傷による医療事故が発生しているのが現状です。その医療事故のほとんどが担当医の誤認によるもので、『見えてはいるのに、正しく診れていない』という状況が起きています」と語る徳安教授。

内視鏡手術は手術による傷口が小さく、患者の回復が早いこともあり、現在広く普及している。その一方で施術部位の見分けがつきにくく、カメラ映像を参考に医師の技術や経験に頼る部分も大きいため、医療事故への対策が課題だった。

LCでは胆道損傷を未然に防ぐために「総胆管」「胆のう管」「肝S4の下縁」「ルビエレ溝」の4つの解剖構造をランドマークとして確認することが推奨されている。しかし、これらには患者による個人差もあり、脂肪や炎症のある症例では熟練した医師であっても判断が難しいこともある。徳安研究室では、医療事故のない手術の実現を目指して、AIがリアルタイムに内視鏡手術映像を分析し、医師にランドマークを示すシステムを開発している。

いち早い社会実装を目指す

「2021年末から2022年春にかけて、実際の手術室でシステムを活用する実証実験を行いました。現在はその時のデータを振り返りながら、課題と対策について検討を続けています」という徳安教授。

同プロジェクトチームではいち早い社会実装を目指し、システムをブラッシュアップする段階にまで入っているのだ。

「このシステムが完成すれば、AIによる情報教示によって、執刀医を知覚的にサポートすることが出来るようになり、執刀医にとっては医療事故への不安の解消、患者やご家族には手術への安心感をもたらすなど、多くのメリットが生まれると考えています」

スピード感のある社会実装を目指す今回のAIシステム開発では、開発に使うコンピューターへの要求も当然高くなる。そしてこの研究を支える数々のコンピューターやITインフラを提案したのがユニットコム(パソコン工房)だ。

「この研究が始まった2017年頃、当時のコンピューターでは、1回の演算に1週間かかっていました。現在、最新のコンピューターでは同様の演算がたった1日で終わります。ただし、このコンピューターは導入コストが高く、頻繁に使うので消耗が早い。しかし、ユニットコムが提案するシステムは、低コストでありつつも、耐久性も優れ、信頼のおけるものばかりです」と笑顔で語る。

  • 研究室にはGPUワークステーションが並んでいる

その効果は単純に演算が速いというだけでなく、低コストのために導入台数を増やすこともでき、短期間で多くの学習データをAIに覚えさせることができる。つまり、期間内に複数回の試行が可能となり、それだけ実装への期間も縮められ、効率化やコストカットへもつながるだろう。

「社会実装のための事業化を目指すフェーズに入っているので扱うデータ量も膨大になっています。さらに様々な学習パラメーターも試していかないとなりませんから、コンピューターへの要求はさらに厳しいものとなっています」と徳安教授。

ユニットコム(パソコン工房)はこのニーズに対して、自社製品だけにこだわらず、徳安研究室が目指すAI開発に最適なソリューションを届けるため、マルチベンダーでの提案を続けている。

  • 以前は医療画像データの前処理に利用されていた開発用PC、現在は高速通信Web会議システムに利用されている。データの増大と処理速度の向上に対応する為に、現在は更に高性能なワークステーションを運用している

「私がもっとも気にしているのは、コンピューターが信頼できる可用性を持っているのか、さらに万が一トラブルが起こってもスピーディーに対応してもらえるか、という2点です」

その点、ユニットコム(パソコン工房)は全国にある営業拠点をベースとしたワンストップサポートを提供しているので、きめ細かい現場対応も可能だ。

「ほかのメーカーだと何日もかかるような修理も、ユニットコムはすぐに対応してくれます。彼らが用意してくれたコンピューターはコストパフォーマンスに優れ、期待通りに動いてくれますし、サポート力もある。時間に限りのある重大な事業を推進しなければならない今の私にとっては、コンピューターのスペック以上に迅速なサポート体制は重要です」と語る。

充実の開発環境で学ぶ学生にも期待

現在、開発者向けのパソコン、ワークステーションをはじめ、ディープラーニング用スーパーコンピューターまで、あらゆる製品が徳安研究室に導入されている。

「もちろん、コンピューターはより高性能で開発環境はさらに充実させていくことも必要でしょう。しかし、もう1つとても重要なのはネットワークです」という徳安教授。

  • サーバー室に設置されたNVIDIA製ディープラーニング用スーパーコンピューター

産学連携で進めている今回のプロジェクトは、医学分野のパートナーとして大分大学医学部、デバイス開発・知的財産のパートナーはオリンパス株式会社、そしてAI開発を福岡工業大学情報工学部が担うという三者体制で研究を続けている。この三者がそれぞれの得意分野を活かして研究開発を行い、社会実装に向けて取り組んでいる。この連携において、データ共有は大変重要であり、それを可能としているのが学術情報ネットワーク「SINET6」を介してつながっている株式会社ミライコミュニケーションネットワークのデータセンターだ。

ユニットコムとも所縁が深いこのデータセンターには1件あたり数テラバイトにもなる医療データが大量に保管されている。それを研究室のコンピューターにダウンロードし、AIに学習させていくのだから、高速かつセキュアなネットワークは必須ということになる。

  • ネットワークの概要図。学術ネットワークを介して大量の医療データを安全・高速に取り扱うことが出来る

「10Gbpsで接続されたこの環境がなければこのAI開発には20倍以上の月日が必要だったことでしょう。しかし、ユニットコムが用意してくれたネットワークとクラウドストレージのおかげで数テラバイトのデータも手早くダウンロードできています」と徳安教授は微笑む。

また、徳安研究室ではAIの開発を進めるとともに、学業を通じて未来のAI開発者を育成するという試みも同時に行っている。

「徳安研究室では『次世代医療に向けたAIシステム開発を行っている』という話を聞いて、配属を希望する学生が大勢います。工業大学ですから、様々な分野に興味を持った学生がいますが、医療の分野に関心がある学生も多いのです」

例えば家族が医療機関のお世話になっている、医療で困っている人がいるが情報技術者として手伝えることはないかと考える学生が多いのだという。

「ですから、私の研究室には医療システムの開発に前向きな学生が多いと思います。特に、2週間に1度のペースで行っているゼミでは、それぞれの研究テーマについて進捗状況や新しくひらめいたアイデアなどをメンバーの前でプレゼンします。学生たちが意見交換をし合うことで、毎回とても活発な研究議論の場となっています」

その中から研究パートナーである大分大学医学部に赴き、自分の研究成果をプレゼンする学生もおり、医学生や外科医の先生方に大きな刺激を与えているという。

「近頃では、AI開発の可能性を大分大学医学部の先生方も興味を持ってくれて、AI開発の具体的な要望が寄せられるようになっています。大分大学医学部とは包括連携協定を結んでいますから、これからもお互いの刺激になるような共同研究が継続されることを期待しています」

  • 研究室では最新の開発環境でAI開発を学ぶことができる

最新のコンピューター環境で先進医療に役立つAI開発に携わる優秀な学生が社会へ出ていくことになる。まさに研究を軸とした教育が福岡工業大学では行われており、高いスキルを持った彼らが社会で活躍してくれる未来はすぐそこにある。

「いまは胆のうを対象とした内視鏡手術をターゲットにした研究開発をしていますが、医学界に聞くとこのテクノロジーは胃や大腸など、その他の臓器を対象とした内視鏡手術にも応用できることが分かっています。LCの社会実装ができた次には、AI✕内視鏡手術の開発責任者として、ほかの分野の内視鏡手術に対してもDXを進めていきたいと考えています」と最後に徳安教授は語ってくれた。

ユニットコムはこれからも福岡工業大学ならびに徳安研究室へのサポートを続けてゆく。

Fukuoka Institute of Technology
学校法人福岡工業大学
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福岡工業大学 情報工学部 システム工学科 徳安研究室
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