ヨーロッパの中でも地中海に面したイタリアは、日光浴好きの国民性も相まって、皮膚がんに悩む人の多い国だ。拡大鏡を使用して皮膚の状態を詳しく診察するダーモスコピーを積極的に取り入れる皮膚科医も多い。エンゾー・エリケッティ先生もその一人。カシオのダーモカメラ「DZ-D100」(以下、ダーモカメラ)とダーモスコープ「DZ-S50」(以下、ダーモスコープ)を愛用しているというエリケッティ先生に、イタリアの皮膚科事情やカシオ製品の評価について聞いた。

  • キャプション:エンゾー・エリケッティ(Enzo Errichetti)先生

イタリアの皮膚科医には、病変細部の臨床観察を重視する伝統がある

――エリケッティ先生はヨーロッパで最も定評のある皮膚科医の一人ですが、普段はどのような皮膚科医組織で活動していますか。

エリケッティ先生:「イタリア・ウディネにある『サンタ・マリア・デッラ・ミゼリコルディア』大学病院で上級皮膚科コンサルタントとして勤務、皮膚科の教授として国家資格を取得しています。また『イタリア皮膚科・非侵襲的診断協会』の書記長でもあります。

IDS(国際ダーモスコピー学会)では理事を務めており、同学会の『Imaging in Skin of Color』というテーマのタスクフォースの議長をやっています。専門は炎症性皮膚疾患のダーモスコピーと皮膚の色に関する研究で、200冊前後の医学文献を執筆しました。自分の仕事はマルチミッションだと考えています」

  • エリケッティ先生が勤務するサンタマリア大学

――イタリアは皮膚疾患診断にダーモスコピーを早くから導入している国ですが、これにはどのような背景があるのでしょうか。

エリケッティ先生:「イタリアはダーモスコピーを非常に伝統的なものと捉え、多くの医師が情熱(パッション)を持って取り組んでいます。なぜなら、イタリアの皮膚医はダーモスコピーの登場以前から、皮膚の病変や腫瘍の細部を分析してきたからです。 それこそ器具を使わずに肉眼だけで診察していた時代から続く歴史があるのです。いまではダーモスコピーは、皮膚検査における重要な役割を獲得しましたが、元々、臨床的な観点から病変の色や形を観察し、興味を持って研究している医師が多かったため、ダーモスコピーという新しい技術を採用して発展する土壌があったと言えるでしょう。これは国際的に見たときのイタリアの皮膚科が持つ特異性となっています」

――イタリアの皮膚科医が研究や日々の活動において抱えている課題はありますか。

エリケッティ先生:「一番の問題は医師が不足していることです。大きな公立病院はやらなければならい業務は多いのに医師の数が足りず、診療にも研究にも時間が取れなくなってしまいます。給与もあまり高くはないので人気がありません。ダブルワークする人もいて、公立病院より開業医などで働こうとします。

政府や公共団体から医療機器を買う資金援助がありますし、ダーモカメラを導入することで効率化が進み、時間も取りやすくなると思います。ただ、医師の数の絶対的な不足を補うところまでは難しいです」

  • カシオのダーモカメラ「DZ-D100」

「操作に迷ったことはない」優れた操作性と、ワンショットで3タイプの撮影ができる利便性

――臨床では⼀日に何人の患者さんを診ていますか。また、ダーモスコープで診療するのはどのくらいの割合ですか。

エリケッティ先生:「一日に25~30人ぐらいで、週だと約80~100人の患者をみています。1人の患者に掛けられる時間はせいぜい15~20分です。なかなか、一人に多くの時間を掛けられません。

ダーモスコープは基本的にすべての患者に使います。重要な疾患を見逃さないように、たとえば、爪の疾患や、ホクロなどもちゃんとダーモスコープで見ています。

  • カシオのダーモスコープ「DZ-S50」

患者の老若男女の数に特徴的な差異はなく、80歳を超える高齢者が訪れることもあります。ほぼ半数の患者がホクロのマッピングのために当院に来ており、多くの場合、そのホクロが悪性の腫瘍ではないかと心配してやってきます」

――日本ではホクロがメラノーマではないかと疑って来院する患者は、10~20%と言われています。それから見るとかなり比率が高いですね。ダーモカメラやダーモスコープが活躍するシーンも多そうです。ダーモカメラやダーモスコープは、普段どのように使っていますか?

エリケッティ先生:「カシオのダーモカメラは、これまで市場に出てきた他のカメラとは明らかに違うもので、現場の負担軽減につながるアイテムを世に出してくれたことに感謝しています。

実際に使ってみて、偏光/非偏光/UVでの撮影がワンショットでできるのが非常に便利だと感じました。画角だけでなく明るさが均一になることや、画像の端が歪まない点なども見やすくて良いです。これまで偏光/非偏光/UVの同一画角で撮影した3種類の画像をそろえるのは手間が掛かっていたので、撮影時間や診療時間の短縮とオペレーションの効率化につながっています。私自身は診察でUV画像をよく参照します。病変のリアルサイズをしっかり見たいときに役立ちます。

  • 3.M@ワンシャッターで偏光/非偏光/UV撮影が可能

撮影した画像はWi-FiでPCに取り込めるので手間いらず。操作系も非常にユーザーフレンドリーで操作に迷うことはありませんでした。軽量なのも大きなアドバンテージです。一眼レフカメラよりずっと軽くて、片手でも簡単に撮影ができます」

――ダーモスコープや、Windows用の画像管理ソフト「D'z IMAGE Viewer」はどうですか?

エリケッティ先生:「拡大鏡は市場にたくさんの製品があります。その中で、カシオのダーモスコープの良い点は軽いことと、大きなレンズを持っていることです。レンズが大きいほど重くなるので、バランスよく使いやすいサイズと重量でありながら、大きな病変も見やすいです。

  • ダーモカメラで撮影した画像を管理するPC用のアプリケーション「D'z IMAGE Viewer」も用意されている

PC用のアプリケーションは撮影した画像を表示するときに、血管の通っている部分を強調する『血管強調』機能※1で重宝しています。医師は病変を見逃すわけにはいかないので、強調機能などを使って病変をしっかり診ています」

※1:日本仕様のモデルをご使用頂いた先生の所感です。

――カシオのデバイスについて、なにか改善の希望や提案はありますか?

エリケッティ先生:「ハードウェアは完成度が高く満足しています。レンズの大きいタイプがあれば、大きい病変の撮影もできると思いました。アプリケーションは先の血管強調などの機能をブラッシュアップして、腫瘍や皮膚の色をよりクリアに識別できるように進化させてほしいです」

――本日はありがとうございます。

医療現場で使い込むユーザーが現れる、奥深さを備えたダーモカメラ

エリケッティ先生にインタビューして感じたのは、先生がダーモカメラをかなり使い込んでいるという印象だ。ダーモカメラが画像の中心と端で歪みが出にくいレンズを採用しており、見た目と同じ色や形の画像が撮影できることや、UVで撮影するとホクロの辺縁部が見やすくなることなど、使い慣れていないと気が付きにくいポイントもしっかりご理解された上で評価しているようだった。

ちなみにダーモカメラにはカメラの液晶画面やPC用のアプリケーションで、病変のサイズを正確に測るスケール表示機能※2も備わっている。エリケッティ先生は触れていなかったが、これだけしっかり使い込んでくれているのであれば、こうしたハードウェアの機能に隠れてしまいがちな便利機能も活用してくれていることと思われる。

※2:日本仕様のモデルの機能です。

  • ダーモカメラには病変のサイズが可視化できるスケール機能も備わっている

取材を通して海外展開を進めるカシオ製品が、皮膚がんの発生率の高いヨーロッパで現地の専門医から高い評価を得ていることがわかった。エリケッティ先生のような現場で実際に使い込んでくれるユーザーが増えることで症例データも充実すれば、次のAI診断サポートの開発にもさらに弾みがつくだろう。カシオ製品のさらなる展開と、皮膚がんの早期発見に向けた歩みに期待が膨らむ。

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