皆さんは「Solidigm(ソリダイム)」という企業をご存知だろうか? インテルは2021年12月30日にクライアント向けおよびデータセンター向けSSDを含むNANDフラッシュメモリ事業をSK hynixに売却。その傘下の企業としてカリフォルニア州サンノゼに本社を置くSolidigmが設立された。

つまり、インテルの技術がそのまま継承されているのだ。そんなSolidigmから、新作SSD「ソリダイム P41 Plus」が発売された。そこで今回、同製品を使ってゲーミングPCを組んでみることに。また、性能もしっかり検証してみたので、じっくりレビューしていきたいと思う。

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インテルの技術、製造の両方を継承するSolidigmが新モデルを発売

「Solidigm」を改めて紹介しておこう。2008年にスタートしたインテルのSSD事業は、そのブランド力、信頼性、安心感から自作PC市場で人気となる。SSDの黎明期に大ヒットとなった「X25」シリーズ、ハイエンドモデルとして注目を集めた「SSD 750」など自作ユーザーにとって思い出深い製品も多い。

そのSSD事業を製造工場も含め、丸ごと引き継いだのがSK hynix傘下の「Solidigm」だ。技術、製造の両面ともSSD市場を牽引してきたインテル時代と変わらないのが大きな強みといえるだろう。

Solidigmに変わってからも、これまではインテル時代からのSSD「670p」などを展開していたが、2022年9月2日にSolidigmの完全新作クライアント向けSSD「ソリダイム P41 Plus」が発売された。

  • 2022年9月2日に発売された「Solidigm P41 Plus」

Solidigm P41 Plusは、PCI Express 4.0 x4対応のM.2 SSDだ。144層3D NANDフラッシュメモリを採用、コントローラにSiliconMotionのSM2269XTFを採用している。容量は512GB、1TB、2TBの3種類があり、シーケンシャルリードは2TB/1TB版が4,125MB/s、512GB版が3,500MB/s、シーケンシャルライトは2TB版が3,325MB/s、1TB版が2,950MB/s、512GB版が1,625MB/sとなっている。

4.0 x4対応のSSDとしては最速クラスではなく、いわゆるエントリー向けという立ち位置だ。しかし、インテル時代の760pなどは実アプリでのレスポンスに優れていただけに、実際のテストでどこまで性能が出るのか気になるところ。そのほかスペックは下記の表にまとめている。

容量 512GB 1TB 2TB
実売価格 8,800円前後 17,300円前後 31,500円前後
フォームファクタ M.2 2280
インタフェース PCI Express 4.0 x4
NANDフラッシュメモリ 144層3D NAND
コントローラ SiliconMotion SM2269XTF
シーケンシャルリード 3,500MB/秒 4,125MB/秒
シーケンシャルライト 1,625MB/秒 2,950MB/秒 3,325MB/秒
総書き込み容量(TBW) 200TB 400TB 800TB
保証期間 5年
  • コントローラはSiliconMotionのSM2269XTFを採用

  • 144層の3D NANDを搭載。ロゴを見る限り、インテル製のようだ。なおキャッシュ用のDRAMは非搭載

  • CrystalDiskInfo 8.17.6での表示結果。4.0 x4対応であることが分かる

  • SSDの動作状況やファームウェアのアップデートが行える「Solidigm Storage Tool」も用意している

Solidigm P41 Plusでゲームもクリエイティブもこなせる自作PCを作る

ここからは、Solidigm P41 Plusを使って、ゲームもクリエイティブな作業もこなせる万能タイプの自作PCプランを考えてみたい。ゲームにしてもクリエイティブにしても昨今は大容量のストレージが重要になる。

AAA級のタイトルでは1本で100GB以上の容量が必要になることがあり、動画でも4Kの映像を扱う場合は1つの動画ファイルが数GBに達することも珍しくない。そのため、今回は2TB版をチョイス。大容量であるのに加え、シーケンシャルリード、ライトともにSolidigm P41 Plusの中で最速だからだ。

  • ストレージにはSolidigm P41 Plusの2TB版を選択

予算はOSなしで25万円前後とした。万能型を追求すると当然すべて最上位がベストとなり、高価になりすぎるためだ。CPUは、ゲームでもクリエイティブ作業でも重要になるため大きく予算を割き、インテル最新の第12世代Coreの中でも上位モデルとなる「Core i7-12700K」を選択。12コア20スレッド(Pコア8基、Eコア4基)のメニーコアCPUだ。

そしてマザーボードは、ASUSTeKのクリエイター向けブランド「ProArt」シリーズから「ProArt B660-CREATOR D4」を選択。負荷のかかる作業でも安定して動作できるように堅牢な電源供給と冷却設計をしているのが強み。今回のような目的にピッタリといえる。

バックパネルにDisplayPort入力を備え、ビデオカードの映像を同じくバックパネルにあるType-Cから出力できるのも大きな特徴。モバイルディスプレイや液晶タブレットなど、Type-Cによる映像入力が多いデバイスとの接続性に優れている。

  • CPUは12コア20スレッドの「Core i7-12700K」

  • マザーボードはB660チップセット搭載でクリエイター向けのASUSTeK「ProArt B660-CREATOR D4」

メモリはマザーボードに合わせてDDR4の16GB×2枚で合計32GBのCorsair「VENGEANCE RGB PRO CMW32GX4M2Z3600C18」を選択。そして、ゲームだけではなくクリエイティブなアプリでも重要になるビデオカードはアッパーミドルのGeForce RTX 3070搭載のMSI「GeForce RTX 3070 VENTUS 2X 8G OC LHR」を選択した。最近のクリエイティブ系アプリは一部の処理にビデオカードを利用するものが多く、高性能なほど処理スピードも向上することがあるためだ。

  • メモリはCorsair「VENGEANCE RGB PRO CMW32GX4M2Z3600C18」。DDR4-3600で16GB×2枚のセット。RGB LEDも内蔵する

  • ビデオカードはMSI「GeForce RTX 3070 VENTUS 2X 8G OC LHR」。GPUにアッパーミドルのGeForce RTX 3070を採用するモデルだ

電源はCPUとビデオカードに合わせて850W出力のCorsair「RM850x 2021」を選択。すべてのケーブルが分離しており、必要な分だけを接続できるフルモジュラータイプなので配線しやすい。ここまで黒色のパーツが多く、このままだと味気ないので、PCケースとCPUクーラーはホワイトカラーから選択することにした。黒と白のツートンカラーにして、ちょっとおしゃれ感を出そうというわけだ。

  • 電源はCorsair「RM850x 2021」。850W出力で80PLUS GOLD認証を取得している。奥行きは16cm

  • CPUクーラーはDEEPCOOL「AK400 WH」。コスパのよさで人気のAK400のホワイトモデル

  • PCケースはATXサイズのNZXT「H510 Flow Matte White」。側面に強化ガラスを備えながら、低価格で人気のモデルだ

今回のプランを下の表にまとめた。

カテゴリー メーカー名・製品名 実売価格
CPU Intel Core i7-12700K(12コア20スレッド) 60,000円前後
マザーボード ASUSTeK ProArt B660-CREATOR D4(Intel B660) 32,000円前後
メモリ Corsair VENGEANCE RGB PRO CMW32GX4M2Z3600C18(DDR4-3600 16GB×2) 20,000円前後
グラフィックス MSI GeForce RTX 3070 VENTUS 2X 8G OC LHR(GeForce RTX 3070) 80,000円前後
ストレージ Solidigm P41 Plus SSDPFKNU020TZX1(PCI Express 4.0 x4、2TB) 31,500円前後
PCケース NZXT H510 Flow CA-H52F(ATX) 11,000円前後
CPUクーラー DEEPCOOL AK400 WH(サイドフロー、12cm角ファン) 3,500円前後
電源ユニット Corsair RM850x 2021(850W) 17,000円前後
合計 255,000円前後

Solidigm P41 Plusの取り付けだが、今回使用したマザーボードのProArt B660-CREATOR D4は、3基のM.2スロットを備えているが、そのうち2基はヒートシンクを搭載し冷却対策はバッチリだ。また、M.2 SSDをツールレスで固定できる「M.2 Q-LATCH」を採用しているため、簡単に取り付けられるのも便利。なお、Solidigm P41 PlusはCPUに一番近いM.2スロットに取り付けている。

  • Solidigm P41 PlusはCPUに一番近いM.2スロットに取り付けた。ヒートシンクも備えている

  • ツールレスで固定できるM.2 Q-LATCHがあるので、取り付けはラクだ(ヒートシンクを外したり、付けたりにはプラスドライバーが必要だが)

  • すべてのパーツを組み込んだところ。そこそこいい感じにツートンカラーになっているのではないだろうか

  • 側面の強化ガラスを取り付けたところ。カジュアルながらも落ち着いた雰囲気に仕上がった

組み立てたPCでSolidigm P41 Plusの実力チェック

ここからは、組み立てたPCを使ってSolidigm P41 Plus(2TB版)の実力をチェックしていこう。Solidigm P41 PlusにWindows 11 Proをインストールした上でテストを実行している。まずは、SSDの基本性能を見る定番ベンチマーク「CrystalDiskMark」から。

シーケンシャルリードは4186.33MB/秒、シーケンシャルライトは3335.67MB/秒と公称を若干上回る速度が出ている。今回のPCは、Solidigm P41 Plusの性能を十分引き出せていると言えるだろう。また、注目はランダムアクセスだ。実アプリに影響が出やすいRAND4KQ1T1の結果はハイエンドクラスのSSDに引けを取らない速度になっている。

  • CrystalDiskMark 8.0.4bの結果

次は、実際のアプリケーションをエミュレートして速度を測定するPCMark 10のStorageテストを実行する。「3,026」というスコアはエントリークラスのSSDとして非常に優秀だ。ハイエンドクラスに近いスコアといってよい。最高速度こそ最速クラスではないが、実アプリにおけるレスポンスのよさが見える結果だ。

  • PCMark 10 Storageテストの結果

続いて、ゲームの起動やインストール、録画しながらのプレイ、セーブなどを実行してストレージの性能を測る3DMarkのStorageテストも試そう。「3,214」というスコアはハイエンドクラスのSSDといってよい高さ。ゲームでも強いことが分かる。とくに録画しながらのプレイ、インストールでの優秀さが目立つ。

  • 3DMark Storageのテスト結果

動画編集アプリの「DaVinci Resolve」で知られるBlackmagic Designが提供するストレージ向けのベンチマーク「Disk Speed Test」も試そう。Will It Work? に表示される対応するビデオフォーマットにぬけはなく、ビデオ編集において問題ない性能を持っているのが分かる。How Fast? に表示される読み書きのフレームレートも一世代前のハイエンドクラスに並ぶほどだ。

  • 「Disk Speed Test」のテスト結果

連続読み書き時の性能もチェックしておきたい。HD Tune ProのFile Benchmarkを用いて、200GBのデータを読み書きしたときの速度をチェックする。下の画面が実行した結果だ。青色のラインが読み出し、オレンジ色のラインが書き込みだ。

  • HD Tune Pro 5.75 File Benchmark(データ200GB設定)の結果

200GBを連続書き込みしても速度に変化はほぼなかった。ほとんどのSSDは容量の一部をSLCとして扱うことで書き込み速度をアップさせる、いわゆる「SLCキャッシュ」を採用しているが、Solidigm P41 Plusの2TB版はかなりの大容量をSLCキャッシュとして割り当てているようだ。200GB以上のデータを一気に書き込むような機会は少ないと思うので、空き容量が十分ある状況ならばSLCキャッシュ切れによる速度低下が起こることは少ないと考えられる。

温度もチェックする。TxBENCHでシーケンシャルライトを5分間連続して実行した時の温度と速度をHWiNFO64 Proで測定している。テストはマザーボードのヒートシンクを装着した状態で行った。マザーボードによるファンの制御はデフォルト設定のままだ。

最大でも温度は45℃とPCI Express 4.0 x4対応のSSDとしては驚きの低さだ。43℃になったところで微妙に書き込み速度が低下しており、温度が上がらないように書き込み速度を微調整している可能性もあるが、温度に関しては優秀と言ってよい。ヒートシンクがあれば何も心配はいらない。

続いて、今回組み立てたPCの基本性能も紹介しておこう。PCの基本性能を測定する「PCMark」、3D性能を測定する「3DMark」、CPUパワーを測定する「CINEBENCH R23」の結果を掲載する。参考にしてほしい。

  • PCMarkの結果

  • 3DMark-Fire Strikeの結果

  • 3DMark-Time Spyの結果

  • CINEBENCH R23の結果

PCMark 10は、Web会議/Webブラウザ/アプリ起動の“Essentials”で4,100以上、表計算/文書作成の“Productivity”で4,500以上、写真や映像編集“Digital Content Creation”で3,450以上が快適度の目安となっているが、すべて大きく上回っている。Digital Content Creationのスコアがとくに高く、クリエイティブ用途で十分活躍できる性能があるのが分かる結果だ。

3DMarkはFire StrikeとTime Spyのスコアから、WQHD解像度までなら描画負荷の重いゲームでも高画質でプレイできるだけのパワーがあることが分かる。ゲームでもクリエイティブ用途にも使えるスペックに仕上がっていると言ってよいだろう。

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