今年2月、史上最年少の19歳6ヶ月で五冠を達成するなど、その一挙手一投足が常に大きな注目を集める藤井聡太竜王(※2022年9月現在) 。彼が将棋AIソフトを使用するためにPCを自作しているニュースを見たことがある人もいるのではないでしょうか。藤井竜王をはじめ、現代の将棋界においては、将棋AIの活用はスタンダードとなっているようです。
そこで今回、将棋AIソフト「水匠(すいしょう)」の開発者であり、現役弁護士でもある杉村達也さんにインタビュー。AIと将棋の相性や開発の面白さ、将棋AIの未来などについて聞きました。
将棋AI「水匠」(すいしょう)開発者。2017年よりコンピュータ将棋の開発を始め、世界コンピュータ将棋オンライン大会2020にて優勝する。その後、第2回世界将棋AI電竜戦TSEC(2021)優勝、第3回世界将棋AI電竜戦TSEC(2022)準優勝。本業は弁護士(千葉県弁護士会所属)。
将棋AIソフト「水匠」ができるまで
――まずはご自身と将棋との関わりから聞かせて下さい。
幼稚園の時に祖父から将棋のルールを教えてもらい、そこから指すようになりました。対戦相手は祖父でしたが、孫である私が相手ということもあり、毎回わざと負けてくれていました(笑)。
――プログラミングに関してはいかがでしょう?
父がシステムエンジニアだったので、小学校低学年の頃からノートパソコンを使い、ゲームを動かしたりして遊んでいました。大学は文系でしたので、プログラミングを極めようというよりは、インターネットをはじめパソコン全般を楽しんでいました。
――将棋AIソフトの開発を始めたきっかけは何ですか?
これはもう偶然としか言えないのですが、ある日、たまたま将棋AIに関するブログ記事を見て興味を持ち、ソースコードを読み、プログラミングを始めたんです。それまでニコニコ動画の電王戦なども見ておりましたが、自分でもはっきりと分からない、というのが正直なところです。
――杉村さんは弁護士として働きながら将棋AIの開発を行ってますが、苦労はありますか?
将棋AIは開発にとても時間がかかるんです。プログラミングのコードを打つ時間より、対局データを集めて学習する時間の方がはるかに必要で、「待っている」ことが主な作業。例えるなら植物に水をあげて育つのを待つような感覚に近いですね。 結果が出るまで時間がかかるからこそ、その間を他の仕事に充てられ、おかげさまで両立することが出来ています。
将棋とAIはベストマッチな関係! 自己分析や事前研究と、プロ棋士も注目する将棋AI
――今の棋士にとって、将棋AIの活用はもはや常識なのでしょうか。
将棋AIが人間の名人に勝ったのが2017年(※1)ですが、それ以降、将棋AIが弾き出す局面の分析、どれだけ有利か、どれだけ不利かという数値みたいなものを多くのプロ棋士の先生も参考にするようになったと思います。
※1 将棋AI「ポナンザ」が佐藤天彦名人 (※2017年当時)に勝利を収めた
――それだけ将棋とAIの親和性が高かった、ということですか?
画像認識など他の分野でもAIが活躍していますが、人間がAIの結果から学習するという意味で、将棋は先駆けみたいなところがあるかもしれませんね。最初は「人間」対「AI」という対立構造でしたが、今やAIと協力することで人間が強くなろうとしているところが非常に興味深いです。
――プロの棋士はどのように将棋AIを使っていますか?
将棋AIの使い方は、おおまかに分けると2つあります。1つ目が自分の指した将棋の振り返りです。対局を将棋AIに解析させることで、自分が選んだ手が良かったのか、他の手を指した方が良かったのかが分かり、次は指さないようにしよう、という教訓に繋がります。
2つ目が事前研究です。将棋は相手がいるゲームなので、対局相手が決まった時から、相手が過去に残した棋譜をもとに、こういう作戦をとってくるだろう、それに対してはどう対処すればいいだろう、という分析が出来ます。
新しいPCがリリースされるとすぐにスペックをチェックします
――開発する上で使用されているパソコンにはどんなこだわりがありますか?
将棋AIの開発にはパソコンのスペックが非常に大事になってきます。強い将棋AI同士が繰り返し戦ったデータをたくさん集めなければならず、そうなると性能の良いCPUを使った方がより早く対局データが集まります。
そこで、インテルCore™ i9の7960Xという、16コア32スレッドのCPUを購入したのですが、それでも足りないということで2~3年前に発売された(※2)AMDのRyzen™ Threadripper™ 3990Xという、64コア128スレッドの普通の人は必要ないだろうというモンスターCPUを買いました(笑)。
※2 2020年2月8日発売
――開発には膨大なデータを処理する能力が必要なのですね。
計算力が速ければ速いほど質がよく、なおかつ量もこなせるとあって、新しい商品がリリースされるとすぐに詳細なスペックをチェックするようにしています。
――杉村さんが開発された将棋AI「水匠」は2020年2月、世界コンピュータ将棋オンライン大会で優勝するなど、近年、一般的にも将棋AIへの関心が高まっていると言えます。
「水匠」だけでなく、ソースコードを公開しているオープンソースのAIの中にも強くて技術力の高いものはいっぱいありますので、他のAIの存在は常に勉強になります。
――将棋AIの分野には、基本的にそれぞれライバルでありながらも、どこか同じ仲間という一体感のようなものを感じます。
それは間違いなくありますね! もちろん競争という面もありますが、その成果を公開することによって、戦いを重ねるたびに全体的に強くなっていくのは良い循環なのかなと思います。
「大局観のGPU」か「読むスピードのCPU」か
――「水匠」を使うために推奨するPC環境があれば教えて下さい。
「水匠」はどのようなスペックであっても楽しめます。ちなみにスマホでも動きます。「水匠」の強さはCPUの性能に依拠していますが、一般的なノートパソコンだと1秒あたり400万~500万手を読んで分析しますが、この8月に発売されたばかりのRyzen™ Threadripper™Pro 5000WXシリーズ最上位CPUだと、おそらく1秒間に8000万から9000万手を読めると思います。
――もはや素人には想像のつかない数字です(笑)。
人間に例えると、これからプロになろうとしている人と、名人くらいの差と言えばいいでしょうか。当然より強い方が良い指し手を教えてくれる、ということになります。
――「水匠」のようなCPUを使うソフトと、ディープラーニング系のGPUを使用するソフトを併用することのメリットについて教えて下さい。
まず、ディープラーニングとは、人間の脳を模したニューラルネットワークを使用した学習方法ですが、この場合、難しい計算を速く行うCPUより、単純な計算をたくさん出来るGPUの方が速度が出るんです。
水匠のような将棋AIとディープラーニング系の将棋AIとの違いは「大局観(※3)」と「読むスピード」に現れます。GPUは一目で見ただけで有利不利が瞬時に分かる「大局観」の精度は高いのですが、その代わり手を読むスピードが遅く、CPUの100分の1程度になります。それでも十分強いのですが。
※3 囲碁や将棋、チェスなどのボードゲームで、全体的な状況や優劣の判断を行う事
つまり勝負の序盤、まだどんな戦いになるのかいくら読んでも答えが分からない場合は、大局観をつかむことが得意なディープラーニング系の将棋AIが能力を発揮します。それに対して「水匠」は終盤、つまり答えが分かるような局面で強い。将棋は終盤になればなるほど勝敗がはっきり見えてきますが、そういう時は手を読むスピードが速いCPUが力を発揮する、ということになります。
将棋AI開発者とプロ棋士が協力する未来を目指したい
――人vs人の戦いだと、しばしば奇手や奇策のようなものが飛び出して不利な局面をガラッと変えたりすることがありますが、将棋AIにそういった機能はあるのでしょうか。
AIはひたすら正確に、相手が間違えないことを前提に手を読むので、一発逆転を狙うような意外な手はなかなか生み出せない、というのが正直なところです。通常、将棋AIが自己対局をした20億から30億の局面を学習していますが、対AIに関しては裏や穴を突くために学習するデータが足りないんですね。なので、そういった「逆転力」に関してはまだまだ課題と言えるかもしれないです。
――では、これから先の未来、将棋とAIの関係について、杉村さんのお考えを聞かせて下さい。
実際に毎年のように大会が開催されていることからも、AI対AIという局面はこれからも続いていくと思います。それに加えて、人間がAIを使ってどうやって学習すれば良いのか、という研究分野は個人的にも興味があります。
あとは、人間の指し手をAIがどれだけ再現することが出来るのか、というのも最近一部のコンピュータ将棋開発者の間でブームになっています。名だたる歴史上の棋士たちの棋譜をAIが学習することによって、歴代の棋士たちを現代によみがえらせることが出来るかもしれません。
――ご自身の目標はいかがでしょう。
すでにチェスの世界ではかなり進んでいるようですが、理想としてはF1レースにおけるドライバーとエンジニアのような関係というか。将棋AI開発者とプロ棋士がチームを組むような形で協力して対局に臨み、なおかつビジネスとしても成立することが理想です。
――最後に読者のみなさんにメッセージをお願いします。
改めて、将棋AIはとっても面白い分野だと思います。将棋が強くなりたいという人にとってはAIをどう活用するかは今後のテーマになっていくでしょう。AIを開発したい人にとっては、ほとんどのソフトがオープンソースで公開され棋譜などのデータも集めやすいので、非常に入りやすい世界ではないでしょうか。勝負事ですので必ず結果が出ますし、これをきっかけに他の分野にも活用することが出来るかもしれないと思うと、大きな可能性を感じますね。
――杉村さん、ありがとうございました!
将棋AIソフトも快適に。アークの高性能デスクトップPC2選
将棋AIソフトを快適に楽しむために、「水匠」はもちろん最近流行のディープラーニング系将棋AIにも使えそうなモデルを、パソコンSHOPアークのラインナップからご紹介します。
水匠5で1秒間に約1300万手を読む! CPU性能に特化したバリューモデル
arkhive BUSINESS B-I9M 第12世代インテル Core i9 搭載 AB-IC16Z69M-SH
基本スペック | |
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OS | Windows 11 Home 64bit 日本語版 |
CPU | 第12世代 Intel Core i9 プロセッサー i9-12900 |
CPUクーラー | Intel CPU用 標準クーラー |
メモリー | 16GB (8GBx2) - SanMax DDR4-3200 1.2Volt Micron(48M) |
マザーボード | ASRock Z690M Phantom Gaming 4 Micro-ATX |
グラフィックス | CPU統合型グラフィック |
ケース | Sharkoon SHA-S1000-V Micro-ATX |
価格 | 税込:149,800円~ |
「arkhive BUSINESS B-I9M 第12世代インテル Core i9 搭載 AB-IC16Z69M-SH」は、ビジネスラインながら、CPU演算用途を重視したメニーコア8+8コア24スレッドIntel Core i9 12900を搭載。水匠をはじめとしたCPUが力を発揮するソフトを快適に楽しめるPCです。
2つの120mmファンを前後に標準搭載し、内部パーツを効率よく冷却。オプションで前面にファンの追加も可能で、ミニタワー型ながら、長さ400mmのビデオカードや高さ約150mmの大型CPUクーラーにも対応できる高い拡張性が魅力です。
CPUには、第12世代「インテル® Core™ i9 デスクトップ・プロセッサー」を標準搭載。エフィシエントコアのE-コアを8コア、パフォーマンスコアのP-コアを8コアの計16コア搭載し、最大24スレッドの処理が可能になったことで、高負荷な作業も強力にサポートしてくれます。
メモリーには高い評価を受ける高品質の国内メーカー、「SanMax製 DDR4メモリー」を標準搭載。高い安定性と信頼性で、ゲームプレイやレンダリングなど負荷のかかる長時間の作業も安心です。
arkhive BUSINESSB-I9M 第12世代インテル Core i9 搭載AB-IC16Z69M-SH
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水匠5で1秒間に約2000万手を読む! ディープラーニング系でも高い性能を発揮するハイエンドモデル
arkhive Gaming Custom GN-A9G39R AG-AZ16X57AGA9-CM
基本スペック | |
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OS | Windows 11 Home 64bit 日本語版 |
CPU | AMD Ryzen™ 9 5950X |
CPUクーラー | Corsair iCUE H100i RGB PRO XT シリーズ [240mmサイズ水冷CPUクーラー] |
メモリー | 64GB (32GBx2) - SanMax DDR4-3200 1.2Volt Samsung (88S) |
マザーボード | ASRock X570S PG Riptide ATX |
グラフィックス | GeForce RTX 3090 - 24GB GDDR6X |
ケース | CoolerMaster MasterBox CM694 TG ATX 強化ガラスモデル |
価格 | 税込:529,800円~ |
「arkhive Gaming Custom GN-A9G39R AG-AZ16X57AGA9-CM」は、CPUの演算もさることながら、GPUを重視したディープラーニング系ソフトを高い水準で動作させるのにオススメしたいPCです。
CPUには、16コア32スレッドプロセッサー「Ryzen 9 5950X」を標準搭載。配信しながらゲームプレイといった複数作業や、動画のエンコードやコンテンツ制作など、高いパフォーマンスを発揮してくれます。
NVIDIA「GeForce RTX 3090」を搭載したグラフィックスカードを採用。大容量24GBメモリーを搭載し、ディープラーニングはもちろん、従来のグラフィックカードではなしえなかったリアルな描写でゲームへの没入感を高めてくれるなど、非常に優れたパフォーマンスを提供してくれます。
ケースには世界中で大ヒットしたCM690シリーズの後継モデル「MasterBox CM694」を標準採用。ストレージ収納力や高い冷却拡張性などを実現しながら、ケースの体積は従来比約10%のサイズダウンを実現するなど、こだわりぬいたデザインが魅力です。
arkhive Gaming Custom GN-A9G39R AG-AZ16X57AGA9-CM
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