PCゲームの快適度を決定付ける最大のパーツは「ビデオカード」だ。ハイエンドなビデオカードになるほど、高画質な設定でも1秒間に描画できるフレームレート(描画コマ数)は増え、快適にプレイできる。そして、その次に重要になるパーツが「CPU」だ。

せっかくのハイエンドビデオカードもCPUパワーが不足すれば、フレームレートが十分出ないことがある。では、どのCPUが現在のゲームプレイにおいて一番快適なのか。ここでは、ハイエンド中心に5種類のCPUを用意。ハイエンドビデオカード「GeForce RTX 3080」との組み合わせで、どれが一番フレームレートを出せるのかテストしていきたい。

意したCPUはCore i9-12900Kなど5種類

NVIDIAのハイエンドビデオカード「GeForce RTX 3080」と組み合わせるCPUとして用意したのは、Intelが第12世代のCore i9-12900KとCore i7-12700K。最新世代の上位モデルとなる。AMDがZen 3世代のRyzen 9 5900X、Ryzen 7 5800X3D、Ryzen 7 5800Xの3種類だ。スペックと価格は以下の表にまとめている。

Intel AMD
CPU Core i9-12900K Core i7-12700K Ryzen 9 5900X Ryzen 7 5800X3D Ryzen 7 5800X
実売価格 79,000円前後 56,000円前後 65,000円前後 67,000円前後 50,000円前後
コア数 16(8P+8E) 12(8P+4E) 12 8 8
スレッド数 24 20 24 16 16
定格クロック 3.2GHz 3.6GHz 3.7GHz 3.4GHz 3.8GHz
最大ブーストクロック 5.2GHz 5GHz 4.8GHz 4.5GHz 4.7GHz
3次キャッシュ 30MB 25MB 32MB×2 96MB 32MB
対応メモリ DDR4-3200/DDR5-4800 DDR4-3200/DDR5-4800 DDR4-3200 DDR4-3200 DDR4-3200
MTP※ 241W 190W 105W 105W 105W
内蔵GPU UHD 770 UHD 770 なし なし なし

※RyzenはTDP

IntelのCore i9-12900KとCore i7-12700Kは、パフォーマンス重視のPコア、効率重視のEコアを組み合わせたハイブリッドデザインを採用しているのが大きな特徴だ。ゲームやエンコードなどCPUパワーが求められる処理はPコアが担当し、サウンドなどCPUパワーは必要ないがバックグランドでずっと動く必要がある処理をEコアが担当するなど、効率的な役割分担をすることで性能を伸ばしている。

Core i9-12900KはPコア8基、Eコア8基で16コア24スレッドを実現し、最大ブーストクロックも高いため、ゲームはもちろん幅広い処理に強いのが特徴だ。Core i7-12700Kは、12コア20スレッドで5万円台と高いコストパフォーマンスが魅力といえるだろう。

  • Intel Core i9-12900K
    CPU-Zでの表示。16コア24スレッドのメニーコア仕様だ

  • Intel Core i7-12700K
    CPU-Zでの表示。Pコアが8基、Eコアが4基で合計12コア20スレッド仕様

AMDで注目はRyzen 7 5800X3Dだろう。5900X、5800Xは2020年11月発売とやや古さを感じさせるが、5800X3Dは2022年4月22日発売と新しい。3D V-Cacheテクノロジーの採用によって従来から3倍アップの3次キャッシュ(5800X3Dは96MB、5800Xは32MB)を搭載し、ゲームに強いことをウリにしている。ただし、3次キャッシュを増量した影響か、動作クロックは5800Xよりも下がっており、ゲームにおいてどこまで高い性能を発揮するのかは興味深いところだ。

  • AMD Ryzen 9 5900X
    CPU-Zでの表示。12コア24スレッドのメニーコア仕様だがTDPは105WとIntelに比べると大人しめ

  • AMD Ryzen 7 5800X3D
    CPU-Zでの表示。96MBという大容量3次キャッシュがゲームにどこまで有効なのかに注目だ

  • AMDのRyzen 7 5800X
    CPU-Zでの表示。8コア16スレッドCPUとして性能とコストのバランスがよく長期に渡って人気のCPU

番ベンチマークで基本性能をチェック

ゲームでテストする前に、まずは定番ベンチマークで汎用的な性能を見てみよう。テスト環境は以下の通りだ。

●Intel
・マザーボード:MSI MPG Z690 CARBON WIFI(Intel Z690)
・メモリ:Corsair DOMINATOR PLATINUM RGB DDR5 CMT32GX5M2B5200C38(PC5-41600 DDR5 SDRAM 16GB×2)※DDR5-4800で動作

●AMD
・マザーボード:MSI MPG X570 GAMING EDGE WIFI(AMD X570)
・メモリ:Corsair Vengeance RGB PRO CMW32GX4M2Z3600C18(PC4-28800 DDR4 SDRAM 16GB×2)※DDR4-3200で動作

●共通
・システムSSD:Western Digital WD_BLACK SN850 WDS200T1X0E(PCI Express 4.0 x4、2TB)
・ビデオカード:MSI GeForce RTX 3080 VENTUS 3X 10G(NVIDIA GeForce RTX 3080)
・CPUクーラー:Corsair iCUE H150i RGB PRO XT(簡易水冷、32cmクラス)
・電源:Super Flower LEADEX V G130X 1000W(1,000W、80PLUS Gold)
・OS:Windows 11 Pro

最初はWeb会議/Webブラウザ/アプリ起動のEssentials、表計算/文書作成のProductivity、写真や映像編集のDigital Content Creationで構成されるPCMark 10から。一般的な処理性能を確かめられるベンチマークだ。

コア数と動作クロックに優れるCore i9-12900Kがトップに。とくにDigital Content Creationで強さを発揮した。次点はCore i7-12700Kで、スコアは12900Kに肉薄しており、一般用途でのコストパフォーマンスは非常に高い。

続いてCGレンダリングでCPUの計算性能を見る「CINEBENCH R23」だ。全部のコアを使用するマルチコア、1つのコアだけを使うシングルコアのテストが用意されている。

マルチコアはコア/スレッド数が大きく影響するのでCore i9-12900Kがトップに立つのは順当だ。注目はシングルコアのテストでもトップに立っていること。マルチスレッド処理だけではなく、シングルスレッドにも強いことが分かる。このほか、同コア数の対決となるCore i7-12700KとRyzen 9 5900Xも注目だ。Core i7-12700Kが上回っており、Intelの第12世代Coreの強さが見える。

次はMicrosoft Officeを実際に動作させて性能を測定するUL Procyon Office Productivity Benchmarkを試して見よう。Microsoft Officeの快適度を確かめられるベンチマークだ。

ここでもCore i9-12900Kがトップと汎用性の強さが確認できるが、Core i7-12700Kも高いスコアを出しており、コスパのよさをここでも感じさせる。AMD系ではRyzen 9 5900XよりもRyzen 7 5800Xが好スコアな点に注目。5800Xは、5900Xよりもコア数が少ない分、高い動作クロックが出やすいのが影響していると考えられる。

3D性能テストの定番3DMarkも実行する。DirectX 11ベースのFire Strike、DirectX 12ベースのTime Spy、レイトレーシング性能を見るPort Royalを試している。

ここまでのテストと異なり、Ryzen 7 5800X3Dがすべてのテストでトップに立った。汎用性では後れを取ったがゲーム特化型CPUの強さをここでは見せつけた。次点はCore i9-12900Kだ。では、実際のゲームではどうだろうか。

気の5タイトルでフレームレートを測定

では、本題に移ろう。今回は以下の5タイトルでテストしている。

●レインボーシックス シージ
ゲーム内のベンチマーク機能を使用
●Apex Legends
トレーニングモードの一定コースを移動した際のフレームレートをCapFrameXで計測
●フォートナイト
ソロモードのリプレイデータを再生した際のフレームレートをCapFrameXで計測
●Forza Horizon 5
ゲーム内のベンチマーク機能を使用
●サイバーパンク2077
ゲーム内のベンチマーク機能を使用

まずは軽めのFPS「レインボーシックス シージ」の結果から見ていこう。すべての解像度の平均fpsでCore i9-12900Kがトップに立った。WQHDと4KはCPUでほとんど差が見られないのは、GeForce RTX 3080でもビデオカードがボトルネックになるためだ。

次点はRyzen 7 5800X3Dだ。Core i9-12900Kと価格差が1万円以上あることを考えると、優秀といってよいだろう。PCMark 10やUL Procyonで強さを見せたCore i7-12700KがここではフルHD解像度でフレームレートが伸びなかったのが意外な結果だ。

続いて人気のバトルロイヤルゲームの「Apex Legends」「フォートナイト」を見てみよう。Apex Legendsは「+fps_max unlimited」コマンドでフレームレート制限を解除しても、最大300fpsまでのゲーム。フルHD解像度なら、どのCPUでもRTX 3080をいかし切れてるといってよいだろう。

  • Apex Legends
    © 2022 Electronic Arts Inc. EA, the EA logo, Respawn, the Respawn logo, and Apex Legends are trademarks of Electronic Arts Inc.

  • フォートナイト
    © 2022, Epic Games, Inc. Epic、Epic Games、Epic Gamesロゴ、Fortnite、Fortniteロゴ、Unreal、Unreal Engine 4およびUE4は、米国およびその他の国々におけるEpic Games, Inc.の商標または登録商標であり、無断で複製、転用、転載、使用することはできません。

WQHD解像度ではCore i9-12900Kがトップ、4K解像度ではRyzen 7 5800X3Dが僅差でトップとほぼ互角の争いとなった。フォートナイトはRyzen 7 5800X3Dが強かった。大容量の3次キャッシュが効いた結果だろう。特定のゲームタイトルであれば、Core i9-12900Kを上回ることもあるというのが分かる結果だ。

次は重めでレイトレーシング対応ゲームということで「Forza Horizon 5」「サイバーパンク2077」を見る。レインボーシックス シージでは弱かったCore i7-12700Kが、どちらのゲームでもCore i9-12900K互角の勝負とトップ争いとなった。

  • Forza Horizon 5

  • サイバーパンク2077

ゲームの作りによって結果が異なってくるのが面白いところだ。それに続くのがRyzen 7 5800X3D。どのゲームでも上位に食い込んでおり、ゲーム特化型はダテではないといえる。

2 022夏、どんな場面でも強かったのは……

今回のテストでは、処理によってはCore i9-12900Kに肉薄することもある、Core i7-12700Kのコストパフォーマンスの高さ、一般的な処理では後れを取ったがゲームの種類によっては強さをしっかりと見せつけたRyzen 7 5800X3Dなど、それぞれに魅力を見ることができた。コア数や価格、アーキテクチャの違いなど、モデルナンバーだけではわからない性能の特徴は面白いところだ。では、よりベストな選択はどれなのかといえば、結論としては、Core i9-12900Kの優秀さ、万能さが目立つ。

Core i9-12900Kは、一般的な処理でもゲームでもトップに立つことが多く、苦手のない汎用性の高さを証明している。

もちろん、それぞれのユーザーのニーズによって必要な性能は異なるので、用途が絞られている場合ならコストパフォーマンスなども加味したいところ。価格的なお得感でいえば、Core i7-12700Kも光っていた。

しかし、ハイエンドビデオカードと組み合わせて高性能PCを自作する上で、今、最もベストな選択肢といえるのは、やはりCore i9-12900Kということになるだろう。この結果が、少しでもフレームレートを出したいというゲーム好きの参考になれば幸いだ。

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