KDDIが「Red Hatトレーニングサービス」を活用して、社内DXや顧客への価値提供の取り組みを加速させている。「au PAY」やIoTサービスのバックエンドを開発するアプリケーションエンジニアリング部では「Red Hat 認定システム管理者 (RHCSA)」の認定資格に3年で70名が合格した。スクラム開発のタスク管理に組み込みながら「業務と育成の両立」を実現。さらに、ジョブ型人事制度のなかで社員の保有資格を見える化し、タレントマネジメントやプロジェクト管理に適用するなど、取り組みのさらなる発展を目指している。
「DX人財の社内育成」に向け、KDDIが活用する「Red Hatトレーニングサービス」
「au」「povo」をはじめとする個人向け通信サービスや、5G、IoTを基盤にしたDX支援など幅広い法人向けサービスを展開するKDDI。あらゆるモノに通信が溶け込む時代のデジタルインテグレーターとして、新しい体験価値とビジネスの創造を目指して取り組みを加速させている。
そうしたDX推進で重要になるのが「DX人財の育成」だ。KDDIでは「人財ファースト企業への変革」を掲げ、KDDI版ジョブ型人事制度の導入や、KDDI新働き方宣言の実現、社内DXの推進を3つの柱として推進している。同社のアプリケーションエンジニアリング部ではその取り組みの一環として、レッドハットが提供する認定資格取得に向けた「Red Hatトレーニングサービス」を活用している。2017年から同サービスの利用を開始し、2019年からは社内教育プログラムの1つに位置づけて取り組みを本格化させてきた。KDDI エンジニアリング推進本部 アプリケーションエンジニアリング部 部長の鳥越裕貴氏は、こう話す。
「アプリケーションエンジニアリング部は、個人向けの決済サービス『au PAY』や、法人向けのIoTデバイス管理、端末認証などのサービスを開発・運用している部署です。お客様のニーズが多様化するなかで、"より速く、より安く、より品質の良い"サービスを提供することをモットーにしています。事業部や企画部門からの要請に応えて、ウォーターフォール型開発やアジャイル型開発などを組み合わせて、さまざまなシステムを開発・運用していますが、そのなかで、Red Hatトレーニングサービスは、システム開発・運用のベースになる知識と実践的なスキル、ノウハウを獲得するという重要な役割を担っています」(鳥越氏)
「手の内化」と「クラウド化」の土台として、Linux OSのスキル習得を重要視
鳥越氏は、同部のモットーである"より速く、より安く、より品質の良い"を実現するためには、人材育成における「手の内化」と「クラウド化」の2つがキーになると説明する。
「手の内化とは社員がPythonなどのプログラミング言語を習得することで、時には外部委託することなく内製開発したり、時には外部委託しつつも中身をブラックボックス化させる事無く設計内容を把握できたりする状態を保つことです。クラウド化とはAWS(Amazon Web Services)を始めとするパブリッククラウドのスキルの習得のことです。この2つの根っこには、Linuxを中心としたサーバOSのスキル習得があります。根っこの部分を大切にすることで、自分で手を動かして開発できる人材や、クラウドをより活用できる人材が育まれ、今後の大きな成長を支えていくと考えています」(鳥越氏)
プログラミングとクラウド管理の土台として、Linux OSのスキル習得を重要視しているということだが、システム開発の現場は、日々の業務をこなすことで手いっぱいになりがちだ。そのなかで人材育成を具体的な施策として実施する難しさがある。また、業務の合間を縫ってスキル習得の研修などを実施しても、知識の獲得だけで終わってしまうことも多い。実際、KDDIでもそうした課題に直面していたという。
「日々の業務と教育のバランスをどう取っていけばいいか、資格試験や研修を受けただけでは頭でっかちになりやすいことにどう対応するかといった悩みがありました。また、試験や研修を受け続けるためには、モチベーションも必要で、そうした環境をどう作っていくかも課題でした。そうしたなか、日々の業務のなかで取り組みやすく、内容も実践的で知識とスキルを身につけられるのがRed Hatトレーニングサービスだったのです」(鳥越氏)
KDDIでは、2019年から同社向けに個別にメニューをカスタマイズしてもらい、部内の認定制度やタスク管理に組み込んで運用する体制に切り替えた。これにより、人材育成が大きく進展することになったのだ。
実技を伴う本格演習で「業務に活かせる」実践的なスキルを習得
KDDIが利用しているトレーニングサービスは「Red Hat 認定システム管理者 (RHCSA)」の認定資格取得を目指す「RHCSA速習コース」だ。通常は5日間連続して受講するが、KDDIではレッドハットに依頼し、同じメニューを前半2日と後半3日に分割して受講できるようにした。また、復習セッションなどの特別メニューを追加してもらいながら、知識とスキルの定着化を図っている。さらに、必要に応じて個別にRed Hat Ansible Automation Platformに関する研修や、Red Hat OpenStack Platformに関する研修などを受講できるようにし、エンジニアが自発的にスキルアップできる環境も整えた。RHCSA速習コースで認定資格を取得したシステムアセットG コアスタッフ 上田智広氏は、トレーニングの効果をこう説明する。
「RHCSA速習コースは、Linuxの基本機能をおさらいしつつ、実機を使った演習で日々の業務に生かせる実践的なスキルを獲得できることがメリットです。以前は自分がよく理解していない項目を調べるのにかなり時間がかかっていたのですが、トレーニングサービスで基本をおさえることで、調べるための時間が削減され、開発生産性が高まったと感じています。例えば、Zabbixを使った監視システムの開発に携わった際も、監視項目がうまく取得できない原因がSELinuxの設定にあるとすぐに気づくことができました。トレーニングを受けていなかったら、原因の特定により多くの時間がかかっていたはずです」(上田氏)
まさに知識を習得するだけでなく、手を動かしながら日々の業務に生かすことができたわけだ。
受講スケジュールをスクラム開発のタスクとして管理し、業務と教育の両立
KDDIのコース設定がユニークな点として、アジャイル・スクラム開発のために利用されているタスク管理ツールと受講スケジュールが連携し、部内で共有されていることも挙げられる。
「自分やチームの稼働状況を確認し、隙間時間を活用しながら、効率よくトレーニングを受けることができます。試験を受ける仲間と一緒に勉強したり、同期でコミュニティを作って相談しあったりすることで、チームとしてのモチベーションを高めることにもつながっています」(上田氏)
新入社員はトレーニングの受講が必須で、ベテラン社員も本人の希望やチームの要望を受け、随時受講するかたちだ。若手とベテラン数十名が会場に集まり、世代を超えて取り組むことで一体感や新しい交流が生まれることもあるという。資格取得に向けて部内で認定制度を整備し、数値目標を明確化したこともあり、RHCSA資格取得者は3年間で70名を超えるまでになった。当面の目標は、部内の全員が有資格者になることだという。さらに有資格者を全社的に見える化し、タレントマネジメントにも活用している。
「ジョブ型人事制度を進めるなかで、KDDIの人事システムに保有スキルや資格を紐付けして、全社的に見える化することに取り組みはじめています。従来は、プロジェクトチームの人員が足りないときに稼働を増やして頑張るというやり方をすることが多かったのですが、今後は、適切な有資格者を適切なプロジェクトにアサインし、より高い価値を創出できるようになると考えています。そのための仕組み整備に取り掛かり始めています」(鳥越氏)
エンジニアが「自信」を持って仕事に取り組めるようになったことが最大の効果
鳥越氏は、トレーニングの最大の効果として「自信」を挙げる。
「資格取得者からよく聞かれるのは『トレーニングを通して自信がついた』という声です。机上の学習でなく、手を動かして知識やスキルを学ぶため、普段の業務に応用しやすいのです。それが自信につながり、生き生きと仕事に取り組めるようになる。Red Hatトレーニングサービスの最大の効果はそこにあると考えています」(鳥越氏)
こうしたエンジニアの自信や成長は、プロジェクトを成功に導くポイントになることも多い。レッドハット テレコム事業部 第二営業本部 KDDI営業部 チームリード 竹崎悦史氏はこう話す。
「コンサルタントが提案を行なう際は、オープンソースソフトウェアの基本的な用語の説明から入ることが多くあります。ただKDDI様は、Linuxを中心にオープンソースソフトウェアをよく理解されているため、基本の説明を省いてすぐにアイデアや価値創出のための議論に入ることができます。『コンテナとは何か』ではなく『DXにおけるKubernetesの価値』などからスタートできます。このことが、プロジェクト期間の短縮やコスト低減といった具体的なビジネスメリットにつながるのです」(竹崎氏)
レッドハット トレーニングサービス部 アカウントマネージャーの渡利雅之氏は、KDDIの取り組みのポイントをこう説明する。
「業務と育成のバランスをどうとるかに多くの企業が悩まれています。KDDI様は、エンジニアの稼働を確保しつつ、同時にエンジニアの成長を促していくような仕組みや体制をうまく作られました。また、部門での成功を他の部門にも発展させることで、全社的な『人財活用』も視野にいれています。レッドハットは今後も、最適なトレーニングサービスを提供していくことで、KDDI様のビジネスに貢献していきます」(渡利氏)
KDDIの「DX人財の育成」に対する社内の取り組みは、今後さらに加速しそうだ。
企業プロフィール
KDDI株式会社
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「au」「povo」をはじめとする個人向け通信サービスや、5G、IoTを基盤にしたDX支援など幅広い法人向けサービスを展開。また、「通信とライフデザインの融合」をスローガンに、コマース・金融・エネルギー・エンターテインメント・教育といったライフデザイン事業を積極的に推進。
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