過払い金請求は、利息制限法の上限金利を超えて支払ったお金を貸金業者などから返してもらう法律で認められた権利です。
借金返済で払い過ぎたお金が戻ってくるという明確なメリットがある一方、過払い金請求を行うことで発生するデメリットもいくつかあります。
すべてのデメリットに配慮して、自分だけの独力で手続きを進めることはなかなか困難です。無理せず弁護士や司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
そもそも過払い金とは
一般的に過払い金とは、その名の通り「過剰に支払ってしまったお金」のことです。
ただ、民事法的な世界で「過払い金」と言うときには、「何を基準にして『過剰に』支払ったのか」という点が限定的に捉えられます。それは、「利息制限法で定められている上限金利」のことです。
つまり、今回フォーカスする過払い金とは、「利息制限法で定められている上限金利で算定される金利額を超えて余分に返済しすぎていたお金」のことを意味することになります。
過払い金が発生するまでの流れを簡単にまとめると、
- お金を借りた
- 言われるがままの返済をずっと続けていた
- 実は違法金利だったことが発覚した
- 本来なら完済額に到達していたはずなのに余計に支払いをしてしまっていた
ということになります。
借りたお金を返済し、適正範囲で利息を支払うのは当たり前のことですが、それを超えて余分にお金を支払わなければならない理由などありません。
払い過ぎたお金はしっかりと返してもらわなければいけませんよね。これが過払い金にまつわる問題です。
過払い金請求の3つのデメリット
信用情報機関に登録される
過払い金返還請求の一番のデメリットは、借金を完済しないで行うと信用情報機関に事故情報が登録されてしまうことです。信用情報機関に登録されると新規の借入やクレジットカードの作成ができなくなるなど、様々なデメリットが生じます。
借金返済中の過払い金請求は債務整理と同様の扱い
借金返済中に過払い金返還請求を行うと、債務整理をしたのと同じ扱いとなってしまいます。債務整理と同じ扱いになると、信用情報機関に事故情報が登録される可能性は非常に高いため、注意が必要です。
借金を返済中に過払い金返還請求を行った結果、借金が1円でも残った場合には債務整理をしたのと同じ扱いになります。この場合には、信用情報機関に事故情報が登録されるため注意が必要です。また、過払い金返還請求をして利益が出た場合も、債務整理と同様の扱いで事故情報が一時的に信用情報機関に登録されます。
完済後なら信用情報機関に登録される心配なし
債務の完済後に過払い金返還請求を行う場合には、事故情報は信用情報機関に登録されません。ただし、クレジットカードのキャッシング枠では返済が済んでいてもショッピング枠に支払うべきものが残っているなど、完済していたと思い込んでいて実は残債があるケースも否定できないためよく確認した方が良いでしょう。
ただし同じ貸金業者からの借入はできない
債務を完済した後の過払い金返還請求であれば信用情報機関に登録されることはありません。ただし、その場合でも過払い金返還請求をした貸金業者内のリストには「社内ブラック」情報が登録される可能性が高いでしょう。過払い金返還請求を行った貸金業者では、再びで借入をするのは難しいと考えておいた方が無難です。
信用情報機関に登録された場合のデメリット
それでは、信用情報機関に登録されると一体どのようなデメリットがあるのでしょうか。事前にしっかり把握しておきましょう。
新規の借入やカード作成は困難
信用情報機関に登録されると新規の借入やクレジットカードの作成をすることは困難です。事故情報の登録期間は、各信用情報機関にもよりますがおよそ5年間とされています。この間は貸金業者やカード会社が信用情報機関に照会をかけると事故情報が見つかるため、新たな借り入れやクレジットカードの作成は難しいのが現状です。
ローンも組めなくなる
住宅ローンをはじめとした自動車ローン、教育ローンなどの各種ローンも信用情報機関に登録されると審査に通る可能性が極めて低くなります。
事故情報登録期間の約5年が過ぎるまではローンを組むことは諦めておいた方が良いでしょう。
自力での手続きは困難
過払い金返還請求は、素人では難しい手続きもあるため経験豊富なプロに任せた方がスムーズに進めることができます。債権者側に言い分を押し切られることなくできるだけ多くの過払い金を回収するためにも、過払い金返還請求は弁護士などの専門家に依頼するのがベストです。
過払い金返還請求を自力で行う難しさとは
過払い金返還請求は債務整理手続きと同様に自分で行うこともできます。ただし、利息の引き直し計算に時間を要したり債権者との和解交渉で揉めたりするデメリットが生じるのも事実です。
利息の引き直し計算は細かい計算が面倒
過払い金の引き直し計算は決して難しいものではないものの、細かい計算をしなくてはならないため苦痛に感じる方も少なくありません。インターネット上の無料計算ソフトをダウンロードするのも手ですが、弁護士に計算を依頼するのがよいでしょう。
和解交渉は債権者のペースになりがち
債務者が自力で和解交渉を進めようとすると、債権者は実際の過払い金よりも低い金額を呈示してくる可能性が高いです。素人相手には強気の交渉をしてくる債権者も多いため、高額での過払い金返還を希望する場合には弁護士などの専門家に依頼するのがおすすめです。
家族に知られてしまう可能性も
自分で過払い金返還請求をする場合には、債権者との書面上のやりとりも自ら行うことになります。書類は自宅に直接送られてくるケースが多いため、家族に内緒で借金をしていても知られてしまう可能性が高くなります。
過払い金請求の手続きや債権者との交渉は弁護士に依頼するべき
自分で過払い金返還請求を行うと、手間や時間がかかるほか債権者のペースで交渉が進んでしまう恐れがあります。できるだけ多くの過払い金を返してもらうためにも、交渉ごとや手続の一切を弁護士などの専門家に依頼した方が良いでしょう。
過払い金返還請求での債権者との和解交渉は、経験がものを言います。過払い金返還請求の実績が多くある弁護士などの専門家を探して手続を依頼することで、より高額な過払い金を取り戻すことができるでしょう。
過払い金返還請求にかかる弁護士費用は高い?
弁護士に過払い金返還請求を依頼したいものの、「費用が高くつくから」とためらっている方もいるのではないでしょうか。しかし、過払い金返還請求の弁護士費用は、思ったほど高額ではありません。
最高裁で過払い金返還請求が認められてから依頼者が急増したことにより、報酬額は下り傾向にあります。着手金や最初の相談料を無料にしている弁護士事務所もあるため、まずは一度相談してみることがおすすめです。
過払い金返還請求をするときの注意点
過払い金返還請求をする際には、気を付けなければならないことがいくつかあります。それらをよく把握した上で、失敗を回避できるようにしましょう。
全ての貸金業者に過払い金返還請求ができるとは限らない
過払い金返還請求は、借入をしていた全ての債権者にできるとは限りません。借入をしていた時期があっても過払い金が発生していないケースもあります。
過払い金が発生しないケースとは
2006年12月に出資法の上限金利が利息制限法と同じ水準に引き下げられたことにより、多くの貸金業者は2007年中に金利の改定を行いました。そのため、金利の改定以降の借入は過払い金が発生している可能性は低いです。さらに、金利の改定前の時期に借金をしていても、利息制限法で定められた金利の範囲内で借り入れをしていた場合には、過払い金は発生しません。
倒産している貸金業者も
最高裁が過払い金の返還請求を認めてから、過払い金請求の依頼者が急激に増加しました。そのため、過払い金の支払に追われて倒産してしまった貸金業者もあります。合併等により会社の名前が変更になっている場合もあるため、まずは借入をしていた貸金業者が現在も存在しているかを確認しましょう。
過払い金返還請求には時効がある
過払い金返還請求の権利には消滅時効が存在し、債務の完済から10年経つと行使することができなくなってしまいます。時効が迫っている場合には弁護士などに依頼して迅速に手続を進めることが大切です。
時効は完済から10年
「ある人が他の人に対して一定の行為を請求する権利」のことを債権といいますが、過払い金返還請求権もこれにあたります。そのため、過払い金があるのにもかかわらず返還請求をせずにいると、10年で請求できる権利が失われることになるのです。
過払い金返還請求の時効については、起算日を過払いが発生した日にするか債務を完済した日にするかで判断が分かれていましたが、2009年最高裁は「取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当である」と判決を下しました。これにより、過払い金返還請求の時効は、原則として取引の終了から10年と定められています。
まとめ
過払い金返還請求はデメリットや時効で諦めず弁護士に相談を
完済から10年近く経過していて消滅時効が迫っている場合には、速やかに過払い金返還請求をする必要があります。
過払い金請求のプロに依頼すれば迅速に手続を進めてくれるので、時効が近づいている方は弁護士や司法書士などの専門家に相談してみてください。
過払い金返還請求は、法律でも認められている正当な権利です。自分で手続を行うのが難しいなどのデメリットもありますが、法律のプロである弁護士や司法書士の手を借りて払い過ぎたお金をしっかり返してもらうようにしましょう。
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