MR-Gは最高峰のG-SHOCKである。いつの間にか、誰もがそう思い込んでいたところに発表された「MRG-B5000」。それはG-SHOCKが単なる時計を超え、もはや哲学であることをあらためて感じさせる、まさに衝撃的なプロダクツだった。今回は、そのフォルムとディテールについて、豊富な写真とカシオの開発担当者の解説とともに紹介する。
まずはMRG-B5000の概要について紹介しよう。1983年に登場したG-SHOCK初号機「DW-5000C」はいわゆるオリジン。そのデザインを踏襲しつつ、外装をフルメタル(ステンレス)化した「GMW-B5000」が発売され、爆発的な人気となったのが2018年だ。その後、外装にチタンを使用した「GMW-B5000TB」(現在は生産終了)や「GMW-B5000TR」(現在は生産終了)もまた高い支持を得た。そんな歴史を踏まえ、2022年3月12日に発売予定のモデルがMRG-B5000である。
写真からもわかる通り、オリジンのデザインをほぼ忠実に再現。メタル外装ならではの美しい仕上げが隅々にまで施されている。機能はマルチバンド6対応電波時計に加え、無料の専用アプリ「CASIO WATCHES」とBluetoothで連携。自動時刻修正をはじめ、世界300都市以上のワールドタイム設定や携帯電話探索、タイム&プレイスログ、リマインダーなどを利用できる。また、山形カシオが生産する高級モデルならではのモバイル連携機能としてPremium Production Line生産証明書表示のほか、時計ステータス表示、セルフチェックも搭載しているのだ。
サイズは49.4×43.2×12.9mmで重量は114g。風防は内面反射防止コーティングのサファイアガラスで、もちろん20気圧防水。タフソーラーで駆動する。ミラーブラックの「MRG-B5000B-1JR」462,000円と、シルバーの「MRG-B5000D-1JR」396,000円(価格はともに税込)がラインナップされる。
では、そのディテールを見ていこう。まず目を奪うのは、フルメタル外装の圧倒的な精度と仕上げの美しさだ。「(材質の差こそあれ)同じメタル外装のGMW-B5000とどこが違うの?」と思われる方もいるだろう。
その答えはズバリ“外見ではわかりにくいが、まったく違う”だ。思わず頭上にクエスチョンマークが浮かびそうだが、これこそがMRG-B5000の真髄といってもいい。
たとえば、トップベゼルはカバーパーツとは別体構造となっている。これにより、折り曲げ部やエッジの造形精度が大きく向上。これは仕上げに関しても同様で、そのままでは研磨板が入らない溝や折り返しも、パーツを分割し別体化してしまうことで隅々まで研磨が可能になるのだ。おかげで時計全体が引き締まった印象を与えるのだが、ぱっと見ただけではわかりにくいだろう。
この構造の思想はMR-G全体に通底している。特徴的なケースのバンド接続基部・バンドのディンプル(バンド基部両脇にある◎型の凹み)もそのひとつ。そもそもオリジンのベゼル(ケースカバーパーツ)のデザインは樹脂で成型、つまり一体成型で強度を確保することを前提に成立しており、GMW-B5000でも素材をプレスして成型・研磨している。が、MRG-B5000のディンプルはまず穴を開け、ケースラグ部はビス、バンドはピン(ビス状のパーツ)で塞ぐことで再現。この構造のおかげで、穴の側面とパーツを別々にしっかりと研磨でき、エッジのシャープさと面の平滑を極限まで追求した。
MRG-B5000はオリジンの形状を徹底的に追求しています。テーマは「極(きわみ)」。最高のオリジンは最高峰のG-SHOCK「MR-G」で作るべき、という使命感を持って、最高の5000シリーズ・オリジンを極めようという意気込みで開発にあたりました。(企画担当) |
トップベゼルは別体です。が、実はその下のカバーパーツも1パーツではなく、トップベゼルとカバーパーツだけで計25個のパーツに分けています。本当はこの部分の形状を(もっと作りやすい形に)アレンジしようと思っていたのですが、設計担当者から「元のデザイン再現にチャレンジしてみます」と逆提案がありまして……。おかげで、きわめてオリジンに近い形とフル研磨が両立できました。このデザインを守りたいという、オリジンだからこその思いだったのでしょう。関係者全員がとにかくオリジンというモノを大切にしていることを再認識しました。(デザイン担当) |
今回特徴的なのは、四隅のT字パーツの下に板バネでトップベゼルを持ち上げる構造を取っていることです。これらと他の緩衝材とを合わせた「マルチガードストラクチャー」により、様々な方向からの衝撃を吸収する仕組みです。(デザイン担当) |
つまり本作は、今までの5000シリーズとは耐衝撃構造から実はまったく違うのです。
カバーパーツのバンド基部へ向かう緩やかな傾斜も見どころ。樹脂モデルではこの部分が3次曲面的に折れていたが、本作では折れ角が若干強調され、稜線が引き立つように処理された。デザインの印象を大きく変えることなく、研磨の美しさを際立たせ、元の柔らかな膨張感を引き締めている。
フェイスには、オリジン伝統のレンガ模様と赤いフレームを再現。左上の「SHOCK RESIST」はプレートになり、同じく立体的なMR-Gの文字とともに高級感を演出している。ケースバックは、MR-Gのロゴが彫り込まれたスクリューバック。
今回1番こだわったのが、このカバーパーツの稜線。この稜線をわずかに立てることで、樹脂のデザインからメタルデザインに進化できたと思います。ただ、浅い角度なので加工は大変でした。なお、フェイスの赤いサークルは、クリアレッドに蒸着を重ねて深みを出しました。(デザイン担当) |
スクリューバックの素材は「64チタン」。ケースやバックルも64チタンを使っています。ちなみにトップベゼルの素材は、純チタンの約4倍の硬度を持つ合金「コバリオン」。バンドは純チタンの約3倍の硬度の「DAT55G」を採用しました。コバリオンは非常に硬いのでプレス加工が使えないため、すべて無垢材から削り出しています。時間もコストもかかりますが、その分モノは良いですね。(企画担当) |
コバリオンは東北大学、DAT55Gは大同特殊鋼株式会社で開発された素材です。日本には、こういった一般に知られていない素晴らしい技術がたくさんあります。MRG-B5000は山形カシオで生産されるジャパンメイドの製品。「日本で作るのだから、日本ならではのモノづくりをしたい、日本で開発された素材を使いたい」と考えました。MR-Gは、日本の技術や文化を製品に乗せて、世界に発信していけるブランドにしたいと考えています。(企画担当) |
そして最も目を引くのは、そのカラーと仕上げだろう。とくにMRG-B5000B-1JRのブラックは、今までにないグロッシーな美しさ。そのポイントはいうまでもなく細部まで丁寧に、見事に磨き上げられた鏡面処理だ。鏡面研磨は、一般に地となる素材が硬ければ硬いほど美しくなる。その分設計や加工は困難だが、開発スタッフにそれらを乗り越えさせてしまう力がG-SHOCKスピリッツであり、オリジンへのリスペクトであり、MR-Gのステータスなのだ。
軽量で硬質な最新素材を使用した効果は、見た目とメッセージだけでなく、快適な装着感にも結び付いている。1日装着したままでも疲労感のない、わずか114gの重さ。チタンの無垢材を駒に使用しながら、柔らかに手首に沿うバンド。それらに加え、滑らかで心地よい肌触りが着ける喜びを感じさせる。さらに、傷付きにくい材質と表面処理(ブラックはDLC、シルバーはチタンカーバイト)で、その美観と喜びを長く味わえるのだ。
MR-Gのタフネスは「落としても壊れない」に留まらず、そのひとつもふたつも上を行く「着ける喜び、持つ喜びを感じ続けたい」を満たすタフネスだ。そのために詰め込まれた「見えにくい極み」の数々。でも、じっくり見つめればわかるはず。ぜひ店頭で感じて、発見してほしい。
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