半年に一度のペースで新製品が登場するスマートフォン(以下、スマホ)の世界においては、各社が機能性やスペックの高さを競い合っています。そんな中、その価値観に一石を投じる斬新な商品がシャープから誕生しました。
その名も「AQUOS wish(アクオス ウィッシュ)」。多様化する現在の価値観の中で“モノを持ちすぎない”“気に入ったモノを長く大切に使い続ける”という志向に向き合い、「シンプルで飾らないスマホ」をコンセプトに開発された商品です。
どのようにして「AQUOS wish」は生まれたのでしょうか?着想の経緯や開発秘話に迫ります。
新しい価値観や消費行動の元に誕生した「シンプルで飾らないスマホ」
今回、取材を受けてくださったのは、通信事業本部 海外事業統轄部 マーケティング推進部に所属する福永 萌々香さんと、同事業本部 パーソナル通信事業部の回路開発部で機構開発に携わる松本 大さん。
福永さんが企画し、松本さんが開発した「AQUOS wish」は、昨今のスマホとは一線を画すコンセプトが最大の特徴です。
「AQUOS wish」は、シャープの「AQUOS」シリーズから新たに誕生したエントリーモデルです。 機能面も価格面もベーシックであることを目指し、機能を厳選し、おサイフにやさしい価格設定にしています。また、外観にはシンプルながら温かみのあるデザインを採用しました。 |
そして、スマホとして例を見ないのが「地球環境への配慮」。筐体に再生プラスチック材を35%使用し、パッケージの紙の使用量を削減するなど、世界的なSDGsの取り組みに呼応しています。
ターゲットに想定したのは、若年層を中心とした社会意識の高い幅広い年代層のお客さまです。 具体的には、詰め替え用の洗剤を買ったり、コンビニやスーパーにはマイバッグを持参したりして、自分たちにできることで社会課題に向き合おうとする、ゆるやかな積極性を持つ人たちを思い描きました。 |
入社2年目の福永さんは、物心ついたときからスマホが身近にある世代。技術進化に偏重する業界の風潮に疑問を抱いたことも大きかったそうです。
すでにスマホは当たり前に便利なものなので、これ以上の機能やスペックを求めない人も一定数いるのではないかと感じました。 その人のライフスタイルやリテラシーに合った商品を選べるように、スマホのラインアップは幅広い方が良いと思ったんです。 |
「シンプルで飾らないスマホ」というコンセプトの背景には、若い世代を中心に急速に浸透する新しい価値観やエシカルな消費行動があったのです。
「シンプルライフスタイル」と「ソーシャルグッド」。前例がないからこその苦しみに直面
ただ、このコンセプトをカタチにするには一筋縄ではいきませんでした。
「AQUOS wish」の「シンプルで飾らないスマホ」というコンセプトは、大きく「シンプルライフスタイル」と「ソーシャルグッド」に分けられます。 まず前者を実現するために必要最低限の機能だけ厳選しようとしましたが、スマホとしての利便性を損なわないための線引きが難しかったですね。 |
カメラの画素数やディスプレイの大きさなど、あらゆる項目をソフトとハードの両面で細かく検討していったのだとか。
防水・防塵・耐衝撃に対応し、2年間で最大2回のOSのバージョンアップをサポートしたり、「おサイフケータイ」に加えて決済アプリを一瞬で起動する「Payトリガー」機能を搭載したり、これらは厳しい“仕分け”の結果、必要と判断されたものなのです。
後者の「ソーシャルグッド」については、本当に頭を悩ませました。 「AQUOS」としても前例のない取り組みですし、社会課題と一言で言っても内容は多岐にわたり、その手段に正解はありません。 |
実際、社内でも首をかしげる人が少なくなかったと振り返ります。
「すごく良いことを言っている気はするけど……」と、ソーシャルグッドであることがお客さまに受け入れられるのかわからないといった意見が最初は圧倒的でしたね。 ただ、漠然と自信はありました。 |
「価値観に寄り添う」というのは抽象的であるがゆえに、社内を説得するには時間がかかったそうです。「AQUOS wish」の企画を担当するようになったのは、入社してまだ間もなかった昨年5月のこと。
福永さんは覚えたてのエクセルを駆使して手作りしたアンケートを30~40人の同期社員に配布し、どういったスマホが欲しいかをヒアリング。自身の肌感と照らし合わせることで自信を深めていきました。
他にも内定者研修に立候補して若者世代の生の声を収集したり、他業界のサステナビリティ事例を研究したりして、半年がかりで上層部から承諾を得ました。 粘り勝ちです。 |
福永さんの執念が実り、ようやく「AQUOS wish」はスタートラインに立つことができたのです。
譲れなかった「再生プラスチック35%使用」。開発段階も苦難の連続
しかし、ほっとしたのも束の間。商品として完成しなければ、絵に描いた餅で終ってしまいます。前例のないコンセプトだけに、開発においても苦労は尽きなかったと松本さんが明かしてくれました。
製品設計に落とし込む際にこだわった点は3つあります。まず、製品自体の形状については、手に馴染む丸みを帯びた形状に収まるように部品の選定と配置を行いました。 次に、構造です。背面から見た際も側面からの一体感を出すためにひとつの部品で形成しようと考えましたが、非常に難易度が高く、何度も金型の修正を繰り返しました。 そして、自然に溶け込む色感と手で触れた際に感じる適度な触感の仕上げです。優しい風合いを工業用製品で再現するのは得意ではないですが、何度もトライ&エラーを重ねました。 |
そんな松本さんも、初めてコンセプトを聞いたときには懐疑的だったそう。「正直、ピンとこなかった」と苦笑いします。けれど、従来の技術的な進化とは異なるアプローチに次第に手応えを持つようになっていきました。
「再生プラスチックを使用」という「AQUOS wish」ならではの特長をかなえられたのも、松本さんの努力によるものです。
再生プラスチックの使用については、材料選定が大変でした。世の中には多種多様の環境配慮材料が存在しますが、工業用製品で使う以上、入手性と材料特性とコストのバランスを意識しなければなりません。 それらを鑑みつつ、強度シミュレーションを繰り返すことで「再生プラスチックを35%使用」に行き着きました。 |
実は、再生プラスチックを使用すれば製造コストは上がるそう。とはいえ福永さんは、コンセプトを死守するために譲れなかったと言います。
社会課題に対して、自分たちにできることを。「再生プラスチックを使用」と「パッケージの紙の使用量を削減」は、「AQUOS wish」としての姿勢を示しているのでしょう。これは、コンセプト立案時に想定したターゲットの価値観に寄り添うことにもつながっています。
他社に真似される製品を。「AQUOS wish」が「Be Original.」を体現
紆余曲折あって生まれた「AQUOS wish」は、苦労の甲斐あって高評価を得ているそうです。
キャリアさまや販売店さまからは「ベーシックな機能面や温かみのある質感のデザインがおすすめしやすい」と評価いただいています。 加えて、SNSでも「AQUOS wish」のコンセプトに共感いただている投稿が目立ち、とても嬉しいです。 |
「関わるすべての人が幸せになりますように」。そう“願い”を込めて「AQUOS wish」と名付けたとあって、その表情には安堵の色が見えました。
「AQUOS」として長年大切にしている理念はそのままに、「こうあるべき」といった既存概念にとらわれずに新たな一石を投じることができたのは、他社に真似される製品を作ろうという“Be Original.”なマインドが根付いているからだと思います。 そもそも、入社したての新入社員におもしろがって企画を任せてくれるのは、まさにシャープっぽいですよね(笑) 文系出身でモノづくりに接点はなく、まさか自分がスマホを作ることになるとは思いもよりませんでしたから。 |
これまでにはない発想を貪欲に取り入れようとする。このスタンスが、シャープの独自性を担保し続ける所以でしょう。
「最新機能」「ハイスペック」という業界のトレンドから少し距離を置いた「AQUOS wish」を輩出できたこと自体が、挑戦を前向きに後押ししてくれる社風を物語っていると思います。 このコンセプトに共感し、共に開発に携わっていただいたすべての関係者の方々に感謝したいですね。 |
「AQUOS」が人々の生活に寄り添うブランドである以上、その多様性を広げていきたいと福永さんは力を込めました。
スマホは、もはや人間の身体の一部と考えています。 人類がこれから生きていくうえで課題は山積みですので、スマホを通じて解決できるように取り組んでいきたいですね。 |
福永さんのアイデアノートには、企画の種がいっぱい書かれてあるそうです。次はどんな花が咲くのか、「AQUOS wish」に続く新製品にも期待が高まります。
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