結婚する前に現在抱えている借金を何とかしたいと考える方は少なくありません。債務整理を利用した場合、結婚に何らかの影響はあるのでしょうか?
債務整理とは、膨れ上がった借金を整理して返済しやすくする、返済義務から解放されるなどして、人生の再スタートを切るために認められている法的手続きです。 たとえば、任意整理や個人再生、自己破産などの手続きがあります。
債務整理は結婚にどう影響する?
結婚する前に現在抱えている借金を何とかしたいけれど、債務整理の手続きを利用することにより結婚に何らかの悪影響が及ばないか不安になる方は多いでしょう。
結論から述べますと、債務整理をしたことによって結婚の手続き自体が法的に制限されるということはありません。債務整理を利用していたとしても、問題なく婚姻届を提出して受理されます。
「債務整理の必要な借金があった事実」が結婚の障害になることも
ただし、"債務整理をしなければならないほどの多額の借金を抱えていた"という事実が、結婚相手に不安を与えてしまうということは十分考えられます。
借金の有無は、これから生計を共にする結婚相手にとっても重大な関心事です。借金自体が良い悪いというよりも、多額の借金を隠したまま結婚することが信頼関係を損ねること繋がり、婚約破棄や離婚という結果になることにもなりかねません。
借金をしてしまった原因について正直に説明し、「一時期やむを得ず借金をしてしまったけれど、現在は堅実な金銭感覚を身に着けて二度と借金しない」などと強い決意を見せて誠実に対応することが大切です。
債務整理が婚約者にバレる原因
原則として、債務整理に関する情報は本人にしか開示されません。 したがって、別々に暮らしている場合には、婚約者に秘密にしたまま債務整理をすることも可能と考えられます。
しかし結婚前から同棲している場合については、注意が必要です。 債務整理の手続きを依頼している弁護士から郵便物が届くと、婚約者に発覚することが考えられます。 債務整理の手段としてよく用いられている任意整理と自己破産について、順番に詳しく説明します。
任意整理は「郵便物」でバレる
まず任意整理とは、弁護士に債権者(貸金業者)との交渉を依頼して、経過利息・将来利息・遅延損害金を免除してもらうなどして、借金の減額をする手続きのことです。減額された借金は、返済計画に沿って通常3~5年間かけて返済していくことになります。
弁護士に任意整理を依頼すると、債権者は債務者に直接取り立ての連絡をすることが法律で禁止されます(貸金業法 21条1項9号)。弁護士が受任して以降は、貸金業者は弁護士に対してしか連絡できなくなります。
そのため一度任意整理を弁護士に依頼すると、債権者から督促状などの郵便物などが自宅に届いたり直接電話がかかってきたりすることはなくなるのですが、一方で弁護士から任意整理関連の郵便物が届く可能性は考えられます。
もしも結婚に先立って同棲している婚約者にバレたくないのであれば、弁護士に事情を説明し、
- 目立たない封筒で郵便物を送ってもらう
- 本人限定受取郵便にしてもらう
- 弁護士事務所に直接書類を受け取りに行く
などの工夫をするとよいでしょう。
自己破産は身辺調査でバレる可能性も
次に自己破産についてですが、これは裁判所に申立てをして借金の支払い義務を免責してもらう制度です。
税金や養育費、不法行為の損害賠償責任など一部の"非免責債権"(破産法253条1項)を除いて、ほぼ全ての借金がゼロになるという非常に強力な制度です。
自己破産の手続きに関する情報も原則として本人以外の人には開示されませんが、官報には氏名住所が掲載されます。官報は図書館や市区役所などで閲覧できるほか、インターネット上でも公開されています。
一般の人が官報に目を通すことはあまりないですが、結婚前の身辺調査を相手が興信所に依頼していた場合などには、発覚する可能性があります。
個人再生も官報で公開される
また、裁判所を介して借金の減額を図る個人再生を行った場合も、官報に掲載されます。
官報に掲載されるのは、裁判所を介した債務整理手続きを行う場合です。 任意整理なら、裁判所を介さない手続きなので、官報で個人情報が公開されることはなく、比較的、結婚相手に知られにくい方法と言えます。
債務整理が結婚後の生活に及ぼす影響
結婚前の借金は本人の債務。結婚相手に返済義務はなし
結婚前に発生した借金は、その人だけが負うべき債務ですので、結婚相手に返済義務はありません。 ただし婚約者が保証人になっていた場合には、保証人が代わりに返済する義務が発生しますので注意が必要です。
また、結婚後に生活のために発生した借金については、原則として夫婦で協力して返済する義務を負います。
ブラックリスト期間中はローン契約・クレジットカード作成がNGに
結婚後に自動車や住宅などの購入やクレジットカードの作成を検討する場合にも、注意が必要です。
債務整理の結果として個人信用情報に事故情報が登録され、いわゆるブラックリスト入りにされてしまった場合には、その期間中(完済後約5年間)は自分名義ではクレジットカードを作成したり、住宅ローンや自動車ローンを組みにくくなります。
結婚相手名義でのローン契約なら可能だが……
配偶者の信用情報には影響がありませんので、債務整理をしていない方の配偶者名義でローンを組むなどの対策を取る必要が出てくるでしょう。
配偶者に黙った状態で債務整理をしていた場合、自動車や住宅の購入といった重要な局面で初めて発覚することになるため、夫婦の信頼関係が大きく損なわれるおそれもあります。
債務整理するなら結婚前・結婚後どちらがよい?
債務整理をするなら、結婚前のなるべく早い段階から着手することが大切です。 借金には利息や遅延損害金も発生しますので、対処が遅れれば遅れるほど、借金が雪だるま式に膨れ上がっていくからです。
借金を隠して放置すると後々の弊害に
そして前述の通り、借金を隠したまま結婚することで、夫婦の信頼関係が崩れるリスクも考えられます。また完済後一定期間は自動車ローン・住宅ローンが組みにくくなる、クレジットカードが作成できなくなるなどの弊害も生じます。
借金の存在を正直に打ち明けるのもひとつの手
借金の存在を正直に打ち明けてふたりで協力しながら返済していくのも一つの方法ですが、その場合でもなるべく結婚前の早い段階から債務整理に真剣に取り組み、自力で解決しようとする姿勢を示した方が、相手からの信頼度も高まるのではないでしょうか。
まとめ
債務整理を利用しても、それによって結婚が制限されるということはありません。しかし多額の借金を返済できなくなり債務整理をしたという事実が、結婚相手の心情に何らかの影響を及ぼすということは十分に考えられます。
やむを得ずしてしまった借金については、その事情を誠心誠意説明することが、信頼関係の維持に繋がるでしょう。
どうしても債務整理を結婚相手に知られたくないという場合は、なるべく早めの段階から弁護士に相談することをお勧めします。
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