流れるようなスリムケースと、光を集めてきらめくザラツ研磨。そして、青く輝くサファイアガラス。OCEANUS(オシアナス)のプレミアムライン、Manta(マンタ)の最新モデル「OCW-S6000」が発表された。
※「CMF」とは、Color(色)、Material(素材)、Finish(仕上げ)の頭文字を取った製品デザインの考え方を意味する言葉。 色、素材、仕上げは、時計のデザインを決める基本的かつ重要な要素だ。
10月発売予定のラインナップは「OCW-S6000-1AJF」(27万5,000円/税込)と、チタン製ケースとバンドに硬化処理DLC(Diamond-Like-Carbon)を施した「OCW-S6000B-1AJF」(30万8,000円/税込)の2モデル。
今回は、OCEANUSプロジェクトを代表する2人、商品企画担当の佐藤 貴康氏とデザイナーの藤原 陽氏に、本モデルのコンセプトから精緻なディテールの解説まで、たっぷりとお話を伺った。
サファイアガラス技術の集大成
---さて、早速ですがこの「OCW-S6000」、大変シャープといいますか、今までのMantaと大きくイメージが変わりましたね。私も含め、大変驚いている読者(ファン)も多いと思うのですが。
佐藤氏「驚いたと言っていただけるのは大変嬉しいですね。私たちはただ美しく高品質であることに留まらず、皆様に常に驚いていただける製品づくりを心がけていますから」
---今までのMantaよりスポーティーな印象です。スリムなケースとサファイアガラスというMantaの2大特徴をしっかりと押さえつつ、さらに強調したような。
佐藤氏「その通りです。コロナ禍によりリモートワークが増え、ビジネスパーソンのファッション需要が変化しています。バリバリのスーツ姿からノーネクタイにジャケットといったカジュアルなものに、これまで以上にシフトしているのではないでしょうか。おのずと時計に求められる要素も変わっていくだろうと思ったんです。これまでのビジネスウォッチに捉われず、もっと使う人の個性や遊び心を表現する時計があってもよいのではと考えました」
---OCEANUSはビジネスに合うクロノグラフでありながら数々の表現に挑戦していて、同ジャンル、同価格帯のなかでも個性的な時計だと思いますし、元々そういう志向の方々に選ばれているという印象がありますが。
佐藤氏「ええ。ですから、その世界観にさらに踏み込もうと。時計を見るたびにモチベーションが上がるような、豊かな時計表現を目指して開発したのが『OCW-S6000』なんです」
---そのコンセプトを体現しているのは、やはりこのサファイアガラスの塊ともいえるベゼルでしょうか。
藤原氏「はい。このモデルをひとことでいうと、OCEANUSがこれまで培ってきた『サファイアガラス技術の集大成』です。サファイアガラスは『オシアナスブルー』の世界観と非常に相性がいいことから、私も色々と研究を重ねてきました。その結果、サファイアガラスをもっと大胆に露出させたベゼルはどうだろうかと、『OCW-S6000』のベースとなるアイデアが浮かんできたんです。ただ、サファイアガラスを全面に押し出すことで、宝飾的になってしまう可能性もあります。それはブランドイメージとして避けたかったので、あくまでOCEANUSのためのサファイア表現として、形状や配色を考えました」
サファイアガラスむき出しのベゼルは非常識?
---それはMantaとして新しい表現ですね。ただ、従来のブランドイメージが変わってしまう可能性もあるように感じます。企画検討の段階で抵抗を感じるといった意見はありませんでしたか?
藤原氏「企画検討時にモックアップの検証を同時に行ったので、抵抗意見はありませんでした。言葉やラフスケッチ だけではイメージを伝えきれないと思い、このようなプロセスを踏みましたが、やっぱり形になったものがあると違いますね。モックアップはサファイアの美しさを最大化したかったので、まずは製造やコストを考慮せずに作成してます」
---では、ディテール各部分の魅力を教えてください。
藤原氏「最大の特徴は、先ほどもお話したサファイアガラスがむき出しになったベゼルです。従来のようにサファイアガラスのパネルをチタンのベゼル枠にはめ込むのではなく、サファイアガラスの塊をベゼルとして、ケースの上にセットしているイメージです。
ケースサイドをよく見ていただくとわかるのですが、ラグの上端がベゼルに被るようになっています。ダイヤモンドの指輪の爪が、石を引っかけて固定しているデザインから発想しました」
---形状も宝石のようにカットされていますね。
佐藤氏「ファセットカットという、宝石のカットでも使われている手法を使用しています。こうすることで、ベゼルへの入射光がなかで乱反射して綺麗に光るんです。横に12面さらに斜面に12面、計24面のカットを施しています」
藤原氏「『OCW-S6000』では光をデザインしているともいえます。ちなみにファセットカットは、側面と斜面の角(かど)を合わせるのが大変なんですよ。通常の機械仕上げでは精度をだすことができなかったので、仕上げは職人にお願いしました」
---そこは譲れない。藤原さんのこだわりですね(笑)。
藤原氏「こだわりだらけですね(笑)。実はこのサファイアベゼルの露出部分の割合や斜面カットの角度、着色法なども先行試作と製品版では大きく違っています。これは、製品版が社内の耐衝撃規格に合わせて計算され、製造されているからです。むき出しのサファイアガラスは一見割れてしまいそうな繊細さを感じさせますが、耐衝撃性能も防水性能も従来のMantaと同様です」
---凄い! そんなことができるんですね!
藤原氏「サファイアガラスに従来の(ベゼルプレートの)約2倍の厚みを持たせて、耐久性を上げています。本当はもっと厚くしたかったのですが、やはりMantaですからケースの薄さも維持しつつ、9mmは切りたかった。そこで設計に頼み込んで、モジュールを高密度積載技術で再設計してもらい、結果的にわずか8.7mmというManta最薄のケースを実現しました」
佐藤氏「初めてこのデザインを見たとき、外装部署の担当者が頭を抱えてましたよ。『いや、これベゼルが割れるだろ』って(笑)」
藤原氏「非常識ですよね(笑)。でもね、普通の時計のガラス風防だって、ぶつければ割れるじゃないですか。それを可能な限り割れないようにできるなら、このデザインでもできるでしょうと依頼しました」
---理屈的にはそうですが……。外装担当の方が頭を抱えるのも十分理解できます(笑)。あと特徴的なのが、ベゼルと風防の上面がツライチになっていることですね。まさに地続き。別パーツとは思えないほどです。
藤原氏「まさにここが勘所です。『OCW-S6000』はラグスポなので硬質な、いかにもインダストリアルデザイン然とした直線的なラインで全体を構成したかった。そこで、風防もこれまでのデュアルカーブサファイアガラスをあえてやめて、シャープなフラット面にしました。ただ、ここでベゼルの天面との境目に段差ができてしまうとフェイスがとても狭苦しく見えてしまうんです。できれば、ベゼル上に刻まれた都市コードもフェイスの一部に見えるくらい広いフェイスに感じさせたいと思い、限界までパーツ同士の段差をなくしています。
また、この境目にはチタン製のリブが走っているんですが、これもシルバーのままだとやはりフェイスが狭く見える。そこで、このリブをブルーにすることで違和感を吸収しています」
佐藤氏「これも藤原はさらっと言っていますけど、そのためにパーツを2色掛けにしたりマスキングをする手間が増えたりと、非常に生産効率が悪いんですよ。でも、できたものを見ると、明らかにその効果があるんです。あぁ、この工程は要るなと(笑)」
---極めて精密な組立て技術と、美しさへの執着がなせる業ですね。藤原さんって、すごく研究熱心じゃないですか。だから「こうすればできるんじゃないか」って言えちゃうんですよね。となると、やらざるを得ない。実際にいいものができるわけだし、何だかんだ言って佐藤さんも結局妥協できないタイプですよね(笑)。
佐藤氏「そう言っていただけると嬉しいです(笑)。今回、27万5,000円という強気な価格にみえると思いますが、価格以上の満足感を提供できる製品に仕上がったと、胸を張って言えます。ぜひ、店頭で実物をご覧ください」
---それが少しでも読者に伝わる記事にできるよう頑張ります! 今日は楽しいお話をありがとうございました。
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