再生可能エネルギーの普及を促進し、エネルギーフリー社会を目指す企業、Looop。彼らが描く「エネルギーフリー社会」とはどのようなものだろうか。
同社が運営する”泊まれる発電所”こと「Looop Resort NASU」(栃木県那須郡那須町)にて、代表取締役社長の中村創一郎氏に、Looopが見据える未来について話を伺った。
――まず、Looopとはどのような会社なのか教えてください。
太陽光発電所の建設から、O&M(運用・保守)などのマネジメント、法人や家庭向け太陽光発電設備の導入、業界で初めて基本料金0円を導入した電気小売事業「Looopでんき」など、再生可能エネルギーを中心としたエネルギーサービス事業を国内外で展開しています。 当社の事業を通じて再生可能エネルギーを普及させ、エネルギーを自由に使える「エネルギーフリー社会」を実現させることが企業理念です。
――「エネルギーフリー社会」とはどのようなものですか?
人々がエネルギーをめぐる制約から解放され、より自由に知恵や情熱、フィロソフィを拡大して活動できる社会のことです。
再生可能エネルギーは、太陽光や風といった自然界に普遍的にある力を利用します。その普及が実現できれば、エネルギーをめぐる争いはなくなる。また、産地を選ばないので移動や輸送のコストもフリーになり、さまざまな社会課題の解決にもつながります。
そのためにも、「再生可能エネルギーといえばLooop」、そして「エネルギーといえばLooop」といち早く言っていただけるように、事業をどんどん拡大させていきたいと考えています。
――再生可能エネルギーに着目したきっかけは?
最初に興味を持ったのは大学生の時です。フリーマン・ダイソンという科学者の本を読みまして、そこに書かれていた「太陽光」のことに惹かれました。
ダイソンは宇宙に行くことを想定して、その時のエネルギー源は太陽光しかないと考えているんですね。宇宙船に太陽光パネルの帆を張って、そこでエネルギーを受けながら宇宙を探検する――という内容が書かれていたんです。そのうち宇宙で大航海時代が始まって、宇宙船に乗って他の星に行き資源を回収して地球に帰ってくる――。そんな未来に憧れたのが最初のきっかけだったように思います。
――その後、2011年4月に株式会社Looopを設立されます。どのような経緯で設立されたのでしょうか。
2011年の東日本大震災が起きた時、私はニュースで被害状況を見て、「何かできないか」と太陽光パネルを手配して被災地に向かいました。電気が灯ると、子どもたちが「これで安心してトイレに行ける」と喜んでいるのを聞いて、人の役に立つ再生可能エネルギーの可能性を感じました。それがLooopの設立のきっかけです。
震災当時、太陽光パネルはとても高額でしたが、中国では1/5程度の価格でした。その価格差に気付き、ビジネス面でのチャンスを感じたのも理由の一つです。
――太陽光発電は、今後どのような形になるのがベストだと考えていますか。
まず、出力を増やせるパネルを作るべきです。1枚の出力が300 Wから500 W、600 Wになれば、単純に効率が良いですよね。
次に、いつでも使えるようにすること。太陽光は日が出ている時しか使えませんが、蓄電池を付けるなどしていつでも電気を使えれば、より便利になります。
また、人工物である太陽光パネルをいかに自然と調和させていくかも考えていくべきだと思います。たとえば、畑も人の手による人工物ですが、景色って美しいですよね。太陽光パネルも、自然景観を破壊しない、環境にフィットするものを作っていくべきです。道路を太陽光パネルにするなど、そこにあると気付かないような、環境に溶け込んだデザインが好ましいと思いますね。
――今後、Looopで実現していきたいのはどのようなことですか。
再生可能エネルギーを主力電源にすることです。そのための課題をすべて解決していきたいと思っています。「晴れている時にしか発電できない」という太陽光発電の課題には、蓄電池やVPP(バーチャルパワープラント)の導入が有効だと考えています。また、風力、地熱、水力など、いろいろな再生可能エネルギーを組み合わせることで、短所を補い合いながら主力電源にできるでしょう。
とはいえ、太陽光発電はコストが一番安いので事業の中心になります。多くの方に再生可能エネルギーを選んでいただくためには、安さは大きな動機になりますから。
「Looopは再生可能エネルギーの技術がすごい」「再生可能エネルギーは安い」など、他社が追随できないくらい認知してもらいたいですね。
――本日お伺いした「Looop Resort NASU」はどのような施設なのでしょうか?
「自然との共生」をコンセプトにした、世界的にも珍しい発電所兼宿泊施設です。
最大8人まで宿泊できる宿泊棟のほか、キッチンのある共用棟、温泉に入れる温泉棟があり、家族や友人での宿泊のほかワーケーションなどさまざまなシーンで利用可能。栃木県・那須の豊かな自然やきれいな星空を楽しみながら、再生可能エネルギーを身近に感じられる施設となるよう、2019年に設立。
――デザインなどのこだわりは?
それぞれの屋根に載せた太陽光パネルには、光が透過するスケルトンタイプを採用し、木洩れ日を表現しています。発電量を確保しながらも周囲の自然との調和を意識し、伐採量なども最小限に抑え、建物を高くするなどの工夫をしています。
――施設が完成して、周囲の反応などはいかがですか?
那須町長にも来ていただきましたが、すごく喜んでくださいましたね。建設するにあたり、まわりが自然豊かなリゾート地であることもあって「太陽光パネルは景観を損なう」というイメージがあったため、地元の方からもたくさんのご意見がありました。ですが、完成後は「こういう施設なら歓迎」という声をいただいています。
現在、ここと同じようなコンセプトで新しいグランピング施設を構想中です。経済性が合えば、各地にあるパネルを置いただけの太陽光発電所をこの施設のように環境にフィットしたものに作り替えていきたいと思っています。
――さまざまな社会課題の解決のために分散型社会の実現が望まれているなかで、再生可能エネルギーはどのようなことが求められていくでしょうか。
まずは、再生可能エネルギーが安くなることですね。実は、現在の電気代の半分以上は送電コストです。再生可能エネルギーの発電所が各地に点在し、送電コストがかからなくなれば、単純に電気代は半額になります。それをきっちりと証明していくことです。
また、再生可能エネルギーの強靭性が高いということも証明しなければと考えます。安くて強靭であれば、使わない理由がないですから。
再生可能エネルギーは、環境負荷が低いことやCO2が出ないことなどがアピールポイントになりがちですが、それだけでは刺さらない方も多いです。エネルギーがいつでも使えて、安い。多くの方にとっては、それが重要だと思います。
――環境負荷などは、提供する側がしっかり考えれば良い、ということですね。
もちろん、なかには再生可能エネルギーの環境面に興味を持つ方もいますし、しっかりと理念を伝えることは大切です。そのためにも、我々が自信を持って再生可能エネルギーの素晴らしさを認識しなければなりません。
――目指すべき未来のために、若い世代へどのようなメッセージを送りたいですか?
「人生はリロードできない」ということですね。今の自分に投資しないでどうするんだ! と伝えたいです。私自身、30代の時にもっとやるべきことがあったなと思っています。
私は、最近人気のいわゆる”転生モノ”のコミックが大好きなんですが、現実はセーブポイントに戻ったり、リロードしたりできません。将来やりたいと思っていることも、今やればいいんです。
――思い返すと、あの頃できたはずなのにやらなかったという場面もありますよね。
そうなんです。もちろん、若い世代の中にもできている人はいますが、「言われたことをやる人」と「自分で決めたことをやる人」で二分していて、その差が開いてしまっている感じでしょうか。
あれをしなさい、こうしなさいと決断を用意する教育ではなく、自分で考えて答えを出すことが大事。そしてやる気になった時に、どれだけ大人がプッシュできるかです。年齢ではなく、やる気があるタイミングできちんと背中を押せるかが教育の重要性だと思います。
――社会に変化をもたらすため、どのようなことに興味がありますか。
私は、地球に何か貢献したいと強く思っています。そのためにどんなことが必要か。最初は、エネルギーフリー社会になれば大きく世の中が変わる、と考えていました。しかし、だんだんと「あまり大きな変化はないのかな」と思うようになって。
では、大きな変化をもたらすことは何かなと考えると2つあり、1つは健康です。健康なまま、寿命が50年伸びたらすごく幸せですよね。そうしたら世の中はすごく変わると思います。
もう1つは、天才児が世の中にたくさん生まれること。かつての日本は、粘り強く働いてくれるような教育を施し、国際社会の中で大きな成長を遂げました。ですが、今は世界から見てどんどん存在感が薄れてきているのが現状です。その原因は、教育の変化がなかったことにあると思っています。その教育を変えたいという気持ちがあるんです。
正直なところ、健康も教育も、エネルギーとは直接関係がありません。ですが、エネルギーを軸として、ヘルスケアや教育分野にも携わる未来を描いています。
――アートにもご興味があるとお聞きしましたが、いかがでしょうか。
はい。なぜかというと、文化はお金で買うことができないからです。だからこそ、何としても残さなければいけないと思います。
日本人は優秀だと思っていますし、より良い教育によって優秀な日本人を育てていくことは、世界のためになると考えています。そういう人材が増えたら、新たな文化やアートが生まれるのではないでしょうか。アートを通して再生可能エネルギーの素晴らしさを知る、というコンセプトもあり得るかもしれません。
――たしかに、最近は体験型のアートも増えました。若い世代はアートの新たな捉え方を持っているかもしれません。
現代アートはすごく面白いんです。現代アートの評価方法はいくつかありますが、そのうちの1つが以前と以後」「です。そのアートやアーティストが登場するまではなかったものが、登場してからは一般的なものになるかどうかが、現代アートでは重要な評価軸になっています。
私も「Looopという会社ができる前とできた後では社会が変わった」、と言われるようになりたいと思っています。それは、現代アートから学んだ非常に重要な評価軸です。今後、ビジネスとアートをどういうふうに誘導していくかも考えていきたいですね。
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再生可能エネルギーは今後、未来を支える非常に重要な軸となるだろう。自然と共生する「Looop Resort NASU」は、そんな未来の形に触れられる発電所であり、中村社長の再生可能エネルギーにかける想いが込められた場所でもある。
Looopが描くエネルギーフリー社会を実現するために、今できること、今できる選択があるはず。ぜひ、あなた自身もどのような未来を描きたいのか、考えてみてはいかがだろうか。
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