夫婦喧嘩というと、よくある日常的な出来事に思えるかもしれません。

しかし夫婦喧嘩が離婚の引き金になってしまうこともあります。積もり積もった不満が夫婦喧嘩をきっかけに爆発することもあれば、夫婦喧嘩の最中に決定的な出来事や言動があり、許せなくなって離婚に至ることも。

今回は、夫婦喧嘩が原因で離婚するパターンと対策についてご紹介します。

夫婦喧嘩が離婚につながるケース

夫婦喧嘩から離婚に発展するパターンは、夫婦関係によっても喧嘩の内容によっても異なります。

まず離婚をするためには、

  1. 相手の同意を得て離婚届を提出する(協議離婚)
  2. 法律が定める離婚事由(民法第770条)

いずれかに当てはまる必要があります。

法定離婚事由(民放第770条)

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄(生活費を入れない、同居しない等)
  • 3年以上の生死不明
  • 強度の精神病に罹り、回復の見込みがないこと
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由があること(DV、借金、モラハラ、長期間の別居等)

法定離婚事由について詳細はこちら>>

相手の同意がなく、法定離婚事由の証拠もなければ、離婚は難しい

夫婦喧嘩をしたものの、相手に「別れるつもりはない」と言われてしまった場合には、上記の法定離婚事由の証拠がないかぎり離婚することは難しいと言えます。

夫婦喧嘩の原因がそもそも上記の法定離婚事由であった場合には、証拠さえ揃っていれば、相手が離婚を拒否していても、家庭裁判所に離婚調停を申立てて離婚することができる可能性があります。

実際には、夫婦で話し合って離婚届を提出する協議離婚によるケースが約9割を占めています。夫婦喧嘩によりお互い頭に血が上って、衝動的に離婚届に記入してしまうケースも少なくありません。

では具体的にどのような行動や言動が決定打となるのでしょうか。

夫婦喧嘩で離婚につながる行動

相手の人格を否定、侮辱する

喧嘩の内容とは直接関係のないことを持ち出して、相手の人格やアイデンティティそのものを否定したり侮辱する言動は、離婚につながることが多いと言われています。

とくに相手の出身地・人種・家柄・家族・学歴・職業・身体的特徴など、努力では変えられない生まれつきの特徴やアイデンティティを構成する要素を否定してしまうと、人生そのものを否定しているといっても過言ではありません。そのため、喧嘩中に出たとっさのひと言でも修復不可能になってしまうおそれがあります。

どんなに感情的になっていても、絶対に超えてはならない一線というものがあります。その一線を越えてしまったら、謝っても許してくれなくなるかもしれません。言われた相手を傷つけるだけでなく、発言者の人格が疑われる可能性があります。喧嘩の原因と関係ないことはなるべく口にしないようにしましょう。

「結婚するんじゃなかった」など結婚自体を否定するセリフ

「結婚するんじゃなかった」「そもそも好きじゃないのに妥協で結婚しただけ」など、結婚自体を否定する言動も謹むべきでしょう。売り言葉に買い言葉であっても、相手を深く傷つけてしまうおそれがあります。

“相手の人格を否定、侮辱”する発言と同じぐらい、一度きりでも致命的になる可能性があります。

脅すつもり、試すつもりで離婚を切り出すのもやめたほうが良いでしょう。

感情的になりすぎる

上記のような暴言・失言はなくても、あまりにも感情的になりすぎると、相手を疲れさせてしまうことがあります。 もっとも喧嘩ですから、ある程度感情的になることは仕方がないと言えます。

人間には気持ちの浮き沈みがありますし、体調不良で気持ちが不安定になることもあるでしょう。あまりにも冷静すぎると、かえって相手の気持ちを逆なでしてしまうこともありますから、多少のストレートな感情表現は夫婦関係のスパイスになることもあります。

しかし何事にも限度があります。

  • 感情的になるあまり大声で泣き叫ぶ
  • モノを投げつけたりひっくり返したりして暴れる
  • 相手が反論する隙がないほど一方的に怒鳴り続ける

などのレベルにまで達すると、建設的な話し合いが不可能となり離婚に繋がることもあります。

話を聞く耳を持たない、無視する

夫婦の片方が話し合いを望んでいるのに、もう片方が無視したり話をきちんと聞かないケースも非常に多いです。

もちろん夫婦によっても異なりますが、妻が“感情的になりすぎる“のに対し、夫が”無視する、逃げる“という組み合わせがよく見られます。

夫が逃げれば逃げるほど、妻がより一層感情的になっていくことも考えられます。 夫婦喧嘩が発生した際には、面倒くさがらずに相手としっかり向き合いながら、率直な意見を交わすことも大切です。

ごまかしたり茶化したりして適当に謝る

こちらも夫側によく見られる行動ですが、夫婦喧嘩のテーマについて真剣に話し合うことなく、のらりくらりとかわして誤魔化したり、「謝っておけばいいんだろう」という投げやりな態度で表面的な謝罪を述べるなどの行為です。

とくに妻が子育てや家計や義家族とのことで深刻に悩んでいるにもかかわらず、夫が茶化したり見て見ぬふりばかりを決め込む場合には離婚を決意することが多いようです。 この場合、妻が感じるのは怒りだけではありません。「今後の人生でもうこの人は頼りにできない」という冷やかな失望も、離婚を後押しします。

関係ない過去のことを蒸し返して怒る

これは妻に多いのですが、一度決着がついた過去のことまで蒸し返して怒る行為も、何度も重なると相手をウンザリさせてしまうことがあります。

数か月以内ならまだしも、数年前、さらには数十年前のことまで持ち出して怒られては、相手も何度謝っても切りがありません。

もちろん、不倫や姑問題など何十年経っても心の傷が癒えないことはあるでしょう。 しかし過去のことで相手を何度も責め立てても、それをきっかけに相手が心の底から反省するとはかぎりません。むしろ逆効果になることがほとんどでしょう。

“自分は夫婦関係を続けたいのか壊したいのか”を自問自答して、喧嘩中でも冷静になるようにしましょう。

無断で家を出ていく

相手に何も言わないまま無断で家を出ていくのも、なるべく避けた方が良いでしょう。「相手に心配してほしい」と思うかもしれませんが、気持ちを試す行為は逆に相手の心を冷えさせてしまうおそれがあるからです。“離婚の意思表示”と勘違いされる可能性もあります。

しばらく距離を置いて冷静になりたい場合には、事前にメッセージを送るなどして正直にその旨を伝えておきましょう。

なお正当な理由なく同居を拒み続ける場合には、前述の民法第770条の“悪意の遺棄”に該当する可能性があります。

離婚前の別居について詳細はこちら>>

夫婦喧嘩を原因とした離婚を回避するには?

お互いに相手の話に耳を傾け、真剣に向き合う

自分の言いたいことは3~4割にとどめ、なるべく相手の言い分を聞くことに集中しましょう。

「はい、はい」と頷くだけでは聞いているフリとしていると思われかねないため、相手の言い分を踏まえた上で「今後はこのようにして改善していきたい」と前向きに提案するようにしましょう。その際、「でも」「いや」と否定語から入らないことが大切です。

「そんなに怒るなよ」「プレゼントあげるから機嫌なおして」など、問題と真正面から向き合わずに別方向に逸らそうとするのはご法度です。 本人は優しいつもりかもしれませんが、言われた方は「逃げてばかりで不誠実な人だ」と失望することになりかねません。

喧嘩内容と関係のないことには極力触れない

前述のように、過去のことを蒸し返したり喧嘩と関係ないことまで持ち出したりして、相手の人生そのものを否定するなどの言動は絶対にやめておくべきでしょう。

“離婚”という単語も、脅し文句として軽々しく使うべきではありません。 “離婚”を匂わせて相手をコントロールするつもりが、相手に見透かされて幻滅されてしまうリスクもあります。

まとめ

夫婦喧嘩自体は、決して悪いものではありません。ときには感情や意見をぶつけ合って発散させることが、かえって夫婦円満に繋がることも多々あります。

しかし夫婦喧嘩の原因や、そもそもの相性によっては、そのまま離婚に発展してしまうこともあるでしょう。

本気で離婚を考えはじめたら、早めに弁護士にご相談ください。離婚までの手続きや離婚後の生活について、アドバイスを受けることができます。

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