日本社会の結婚観・家族観の変化に伴い、年々“離婚のカジュアル化”が進んでいると言われています。
ひと昔前までは「よほどの理由がない限り夫婦は添い遂げるべき」「離婚は世間体が悪い」などの理由で耐える人が多かったですが、現在は性格が合わないのに無理をして結婚生活を続けなくてもいいという考えが浸透しつつあります。
そこで統計データやアンケート調査結果なども踏まえて深堀りしていきます。
離婚のカジュアル化は進んでいる?
離婚のカジュアル化は比較的新しいトレンドだと思われるかもしれませんが、実は2000年以前にはすでに語られていたテーマです。
ネットで検索すると、1996年にはすでに「カジュアル離婚」をタイトルに掲げた本が出版されています。
社会全体の価値観の変化は急にやってくるものではなく、長い時間をかけてじわじわと浸透していくものなのでしょう。
芸能ニュースも影響? 離婚式に婚前契約書に事実婚
そして、芸能人の浮気や不倫、離婚・再婚などがメディアで日常的に報道されていることも、もしかしたら人々の心理に少なからず影響を及ぼしているのかもしれません。
有名人の行動が世の中に与えるインパクトは非常に大きいものです。
憧れの芸能人が離婚後さらにイキイキと活躍している姿を見て、勇気をもらったり、背中を後押しされているような気分になる人も少なくないでしょう。
従来と異なる価値観の離婚が日本にも登場
最近では、離婚を選択するだけでなく、事実婚や契約結婚など、従来の結婚の形にとらわれない有名人も増えています。
とりわけ最近注目されたのが、“婚前契約書(プレナップ)”です。
結婚生活のルール、不倫・暴力などが発生した場合のペナルティ、離婚に至った場合の財産分与の取り決めなどが定められている契約書で、揉め事を予防するために婚前に締結されます。
アメリカのセレブの間では一般的とされており、最近では日本の芸能人や若い夫婦の間でも作成する人が増え始めていると言われています。
巨大IT企業の創業者が婚前契約を交わしていなかったために離婚手続きが遅れているという報道も、世間に大きな衝撃を与えました。
まるで最初から離婚を前提としているようにも取れる合理的でドライな制度は、従来日本人には馴染まないとされてきました。
しかし近年日本でも普及しつつあるということは、価値観が少しずつ確実に変化しているのかもしれません。
さらに“離婚式”なる新しい種類のセレモニーも話題となりました。関係にけじめをつけて、離婚による新たな門出を祝福するというものです。
離婚式を開催できるのは円満離婚のケースに限られますが、離婚を前向きな決断と考える点では時代の流れに沿っていると言えるでしょう。
夫婦の離婚はどう変わった? 平成~令和の離婚原因の推移
では平成から令和までの間に、日本の離婚原因は具体的にどのように推移していったのでしょうか?
裁判所が公表している司法統計『家事事件 婚姻関係事件数-申立ての動機別申立人別-全家庭裁判所』を参考に見ていきましょう。
平成~令和における離婚原因の推移(妻)
離婚原因 | 2000年(平成12年) | 2009年(平成21年) | 2019年(令和元年) |
---|---|---|---|
性格が合わない | 20.6% | 20.2% | 23.1% |
暴力を振るう | 13.7% | 13.4% | 12.1% |
異性関係 | 12.2% | 11.7% | 9.1% |
精神的に虐待する | 10.2% | 11.5% | 14.9% |
生活費を渡さない | 9.8% | 10.9% | 17.3% |
浪費する | 7.8% | 7.3% | 5.8% |
家庭を捨てて省みない | 7.0% | 5.5% | 4.3% |
家族親族と折り合いが悪い | 4.9% | 4.0% | 3.8% |
酒を飲み過ぎる | 4.8% | 4.1% | 3.7% |
異常性格 | 4.0% | 4.6% | |
性的不調和 | 2.9% | 4.3% | 3.9% |
同居に応じない | 1.4% | 1.3% | 1.0% |
病気 | 0.7% | 1.1% | 1.1% |
妻の離婚理由不動のトップ「性格が合わない」
同データによると、妻側から申立てた場合の離婚理由で2000年から2019年にかけて常にトップなのが「性格が合わない」。性格の不一致による離婚は年々増加傾向にあります。
他に増加している離婚理由としては、「精神的に虐待する」「生活費を渡さない」がありました。
逆に減少傾向にあるのは、「暴力をふるう」「異性関係」「浪費する」「家庭を捨てて省みない」という原因となっていました。
性格の不一致・経済的、精神的DVによる離婚が増加傾向
昔から“浮気・借金・暴力”が三大離婚原因と言われており、身の危険を感じるような深刻な事情がない限りは耐えるべきだという考えが根強く残っていました。
しかし近年では、性格の不一致や経済的DV・モラハラによる離婚が増えていることが大きな特徴と言えます。
平成~令和における離婚原因の推移(夫)
離婚原因 | 2000年(平成12年) | 2009年(平成21年) | 2019年(令和元年) |
---|---|---|---|
性格が合わない | 34.5% | 33.6% | 36.5% |
異性関係 | 10.5% | 9.8% | 8.1% |
家族親族と折り合いが悪い | 9.6% | 8.5% | 7.9% |
異常性格 | 7.9% | 8.1% | |
浪費する | 7.5% | 7.2% | 7.3% |
精神的に虐待する | 6.5% | 7.4% | 12.2% |
性的不調和 | 6.1% | 7.3% | 7.2% |
同居に応じない | 5.9% | 5.5% | 5.4% |
家庭を捨てて省みない | 4.8% | 3.5% | 3.3% |
暴力を振るう | 2.9% | 4.0% | 5.5% |
病気 | 1.9% | 2.4% | 2.4% |
酒を飲み過ぎる | 1.2% | 1.3% | 1.4% |
生活費を渡さない | 0.8% | 1.4% | 2.6% |
男性の離婚理由でもDVが増加傾向
一方、夫側からの申立てによる離婚理由でも2000年から2019年にかけて「性格が合わない」が一位となっています。
年々増加傾向にあることも、妻側と同様です。
他にも「精神的に虐待する」「暴力を振るう」「生活費を渡さない」も増加傾向にありました。
男女平等の考え方が根付き始めた結果、男性側もDV・モラハラ被害者として声を上げやすくなったことも起因していると考えられます。
逆に年々減少しているのは「異性関係」「家族親族と折り合いが悪い」「家庭を捨てて省みない」という離婚原因でした。
第三者の絡まない離婚原因が目立つ
妻側・夫側の統計データから共通して読み取れるのは、不倫相手や親族などの第三者が絡まない、夫婦間の関係に基づく離婚原因が目立ち始めているということです。
人間関係のトラブルは、関わっている人数が増えるほど複雑になり、抜き差しならない状況に陥る傾向があります。
そうなると離婚もやむを得ないと考えることは当然と言えるかもしれません。
暴力や借金などを伴わない夫婦間の性格の不一致であればお互いに歩み寄るのも一つの方法ですが、そうではなく別々の道を選ぶ人が増えていることが、時代の流れを反映していると言えます。
カジュアルな離婚、みんなはどう見てる?
離婚のカジュアル化について、世の中の人々はどのように見ているのでしょうか?
離婚に肯定的・結婚にとらわれない人が増加
博報堂生活総研が2年に1度定点調査を行っている生活者観測データ※によると、「夫婦はどんなことがあっても離婚しない方がよいと思うか」という質問に対して2020年は19.1%の回答者が「はい」を選択しています。
前回の2018年からほぼ横ばいですが、年々緩やかに減少しています。
年代別にみると、若年層の方が離婚に対してより肯定的であり、特に20代は全体より約3ポイント低い16.3%でした。
※出典元:博報堂生活総合研究所「生活定点」調査
離婚観の変化は最新テレビドラマに影響も
時代の流れや価値観の移り変わりは、最新のテレビドラマのテーマにも反映されています。
別れた夫婦間の人間関係を描く物語、離婚を望む夫婦の物語など、結婚・離婚を人生のゴールではなく通過点と捉え、離婚をカジュアルで前向きな選択として扱う作品が多数放送されています。
こうしたドラマについて、インターネット上では
- 「離婚がわりとかるーく描かれてるのがよかった! こんな感じで結婚も離婚も簡単で普通な世の中のほうがよくない?」
- 「夫婦の形はそれぞれでいい。型にはまらなくていい。幸せの形はそれぞれだから」
- 「0日婚とかスピード離婚とか、そういうのが珍しくなくなってきた令和の日本。『離婚』や『バツイチ』がもうネガティブなイメージではなくなってきた」
とはいえ、離婚が全ての人にとって一大事であることには変わりありません。
第三者の目にはカジュアルに見えたとしても、当人なりに真剣に考えた結果の決断が離婚なのです。
まとめ
できることなら離婚することなく生涯夫婦として添い遂げたいと願っている人がほとんどでしょう。
しかし一度きりの大切な人生を、辛い結婚生活に耐えながら過ごすというのはもったいないかもしれません。
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