現代のプロモーション戦略は、企業から消費者へダイレクトな情報発信が必要不可欠となっている。そのような状況を受け、オウンドメディアを立ち上げているというマーケッターも少なくないのではないだろうか。
今回は、マイナビニュースがアリナミン製薬のオウンドメディア「健康サイト by アリナミン製薬」の担当者を招き、ウェビナーを開催。担当者が実際に直面した運営課題や解決策などについてヒアリングし、実例をもとにオウンドメディアに必要なノウハウなどを分析していく。
アリナミン製薬での事例
ウェビナーは、マイナビ コンテンツメディア事業部 ソリューション開発部の松山尚哉を進行役に、アリナミン製薬 マーケティング部 サイエンスコミュニケーショングループの渋井千春さんを招いて行われた。
「健康サイト by アリナミン製薬」は、健康サイトのオウンドメディア。昨年度から、運用を渋井さんが所属するサイエンスコミュニケーショングループが管轄する形になったという。
以前のサイトは製品ページがメインだった。広告の補完というコンテンツにとどまっていたが、外部環境やユーザーの行動を捉えながら、生活者の健康に関する悩みや欲求が解決できるコンテンツを再開発するためにリニューアル。現在は、製品紹介にとどまらない「健康になりたいと願うお客様のNo.1健康ポータルサイト」として運営されている。
なかでもメインコンテンツの「症状・疾患ナビ」は、延べ241の症状・疾患の原因や予防法、対処法などが解説されており、そのすべてに専門家による監修が行われている。また、季節や時流に合わせた特集コンテンツや、昨年からは「教えて! 先生 知って得するカラダと薬のこと」という読み物記事も専門家の監修のもと制作している。ほかにもビタミンやミネラルに関する情報など、毎日を健康に過ごすためのきっかけになるような情報を掲載しているという。また、マーケッターや広告担当者と横の連携を取れるようにしている。
課題の解消と解決法は?
オウンドメディア運営の課題は、3つあったという。まずは「コンテンツの質に関する課題」。担当した当初は自社製品に関連する情報を発信することを第一とし、製品以外の情報は次のステップと考えていた。だが、ただ情報発信するだけではユーザーには見てもらえないというのが実情だったと渋井さんは語る。
この場合の有効な解決策として、「パートナー会社から、要素チェックなどフィードバックをもらうこと」が挙げられた。中立な立場の第三者から、読者のニーズについて意見をもらい、読者起点の発想でコンテンツを整理することが問題解決の糸口となる。
アリナミン製薬の場合は、閲覧ユーザーのペルソナやユーザーインサイトの共通認識を持つため、パートナー会社であるマイナビと綿密なミーティングを実施しており、SEOで狙うキーワードをともに考える機会にもなっていた。それによって、担当者がユーザーのイメージを掴みやすくなったという。
制作進行の工程でも、事前のミーティングでニーズについての共通認識を作り上げるため、修正の工数も減り効率的な制作ができる。製薬会社のコンテンツならではの薬事チェックなど確認に手間と時間がかかるだけに、工数が減らせるのは大きなメリットとなっている。
ふたつ目の課題は「社内ノウハウ」について。よくある課題としては、定期的な担当変更で、担当者のリテラシーレベルにバラつきが起こってしまうといった状況だ。
「アリナミン製薬の場合、担当する部署が変わって担当も1名から5名になりましたが、5名ともオウンドメディアの制作をするのは初めてでした」と渋井さん。手探りの状況で、ノウハウの面でも不安が大きかったと当時を振り返る。
その解決策として、「並走してくれるパートナー会社を選定すること」が大いに役立ったという。自分たちでは見えていなかった課題を提案してもらえるというのが、非常に大きかった。特に、システムに関する部分は専門ではなかったので深堀りできていなかったが、「よいコンテンツを作っても、SEOなどテクニカルな部分が伴っていないと届きにくい」という指摘をマイナビから受けたことは、非常に参考になったそうだ。
そして、3つ目の課題は「流入数」。2020年5月にGoogleコアアルゴリズムアップデートの影響でサイト流入数が下落したが、どこから手を付けるべきか優先順位が分からない状況だったという。
その解決策は、「しっかりとした調査・分析を行ってから対策を検討し、実行すること」だ。アリナミン製薬の場合も、複数の会社から調査や分析などの提案を受け、マイナビもそのうちの1社として提案していた。調査・分析を行い、数字を含めて社内で認識を共有し、その上で対策の洗い出しから優先事項を検討。まずはスモールスタートで実績を上げ、半年から1年をかけて右肩上がりで成長させることに成功した。
2020年12月には目標数値をクリア。当時、新型コロナウイルス関連の記事をアップしたことが数字に繋がっており、ユーザーにとって有益な情報を今後も発信するように促されたという。
「専門性の高い経験豊富なパートナー会社に入ってもらったことは心強く、非常に良い結果につながったと考えられます」と渋井さんは語る。
よくある質問を実例から回答
ウェビナーの後半では、オウンドメディアの運営に関するよくある質問について、実際どのように運営しているのかを渋井さんに回答してもらう場面もあった。その内容をQ&A形式でまとめて記載する。
Q.コンテンツの更新頻度は?
新規コンテンツの更新が滞っていたことは、過去の課題にありました。現在は人数を増員し、品目ごとに担当者を分けることで更新頻度を上げるように改善に努めているところです。
Q.コンテンツのテーマ設定はどのようにしているか
まずは製品に関連する悩みからテーマを拾い、広げています。「疲れ」や「睡眠」など、ブランドの周辺キーワードをしっかり網羅していくことを意識しています。
Q.コンテンツの生産体制、外注とインハウスのバランスは?
バランスは難しいですが、パートナー会社に並走してもらいながら、できることからインハウス化しています。そこを徐々に進めていけば、最終的に良いバランスのラインが見えてくると考えています。
Q.目標数値、KPIの決め方は?
昨年は数値が下がっていたので、まずはお客様に良いコンテンツをお届けして数値を戻すことを目標としました。目標を達成してからは、サイト内で様々なコンテンツを回遊してもらえるように工夫したいと考えています。
オウンドメディアの今後の展望
現在右肩上がりで伸びているアリナミン製薬のオウンドメディアだが、今後はどのような展望をしているのだろうか。
「記事の生産スピードに関しては、1本の記事あたりにかける制作時間をもう少し短くしたいと思う反面、薬事の確認や専門家の監修に十分な時間を確保するべきとも考えています。そのことが、より正しく信頼できる情報の提供につながるはずです。結果として、今のスピード感が良いのではないかと感じてます」と渋井さん。
ただ、更新に関してタイムラグが発生していることは課題だ。そこは、自社内で完結させることで解決ができないか検討している。社内で対応することで、自社ブランドサイトへの流入などにも還元できるのではないか、と考えているそうだ。
「理想としては、いつもユーザーのそばにあるヘルスケア領域の辞書のような位置づけで活用してもらい、何かあれば『健康サイト』としていきたいです。そのためにも、必要とされているサイエンス情報をすぐにユーザーに役立てていただけるような形で更新していくことが目標。正しい情報を掲載していくというのが、あたりまえだけれども大切にしていくべきことだと思っています」と締めくくった。
今回のアリナミン製薬の事例を受け、オウンドメディアの作成については、企業目線ではなくニーズ起点を徹底することが大切ということがわかる。
そして、専門的なナレッジを持ち、なおかつ施策を「点」ではなく「線」で提案してくれるようなパートナーを社外に持つことが、課題解決に大きく役立つはずだ。
また、SEO対策については、現状調査や分析をしっかりと行い、対策を洗い出してから優先順位をつけて実行していくのが有用だ。実行した後に振り返りを行い、それを一連のフローとしてPDCAを回していけば、結果がついてくる。結果を焦らずに続けていくこと、それがオウンドメディアの成功につながるのではないだろうか。
[PR]提供:マイナビコンテンツメディア