夏は満員電車内での痴漢が増加傾向になる季節と言われています。都市部に通勤通学している人にとって、毎日の満員電車は避けられないもの。痴漢の被害に遭ってしまった場合、そして痴漢の疑いをかけられてしまった場合には、どう対処するのが正解でしょうか?

女性が電車内で痴漢にあった場合、どう対処すればいいか

一般的に痴漢と言われている"衣服の上からまたは直接体を触る行為"は、刑法ではなく各都道府県の迷惑防止条例で処罰されています。各都道府県によって痴漢の定義もそれに対して科せられる刑罰も微妙に異なるため、注意が必要です。
ただし痴漢の態様がより卑劣で深刻な場合には、各都道府県の条例ではなく刑法第176条の強制わいせつ罪となる可能性があります。

痴漢被害の証明になる客観的証拠

いずれの場合でも、痴漢被害を客観的に証明する証拠がカギとなります。

  • 加害者の手を爪で引っ搔いた場合に爪に残る皮膚片
  • 加害者が被害者の衣服に触るなどした場合、衣服に残る皮膚片や体液
  • 防犯カメラの映像
  • 目撃者の証言
  • スマホカメラで撮影した加害者の画像
  • など

痴漢の証拠保存には「ひっかき」が有効

痴漢が触ってきた手をひっかくのは痴漢の証拠保存として有効な方法です。ひっかいた自分の手に加害者の皮膚片や体液などが付着していれば、DNA鑑定によって証拠と認められる可能性があります。気持ちが悪くても、洗い流したりするまえに警察に提出することが大切。その際、自分の手でもその箇所をなるべく触らないことです。
なお、加害者の手を安全ピンなどの凶器で刺すと、過剰防衛とみなされるおそれがあるため要注意。

目撃者の証言を確保するコツ

満員電車に偶然居合わせた目撃者の証言を証拠としたい場合には、その人の氏名・住所・連絡先を聞いておくと、後日依頼しやすくなります。
目撃者に代わりに110番通報をしてもらうのもひとつ。通報を受けた警察に記録が残るため、警察が捜査する際に目撃者に証言を求めやすくなるというメリットがあります。

刑事事件の「証拠」について詳細はこちら>>

痴漢にあわないための注意点

もちろん、痴漢をする方がいかなる場合も100%悪いことには間違いありません。被害者側が防衛策を一方的に求められ、それが足りなかったとして非難されるというような"二次被害"は、あってはならないことです。
しかし痴漢の被害に遭うリスクを少しでも軽減できる可能性がある対処法については、身の安全を守るためにもぜひ取り入れてみることをお勧めします。

  • ドア付近、改札口近くの車両、車両連結部などを避ける
  • 女性専用車両に乗る
  • できる限り乗車時刻や乗車車両などの行動パターンを変える
  • 痴漢対策の防犯アプリをダウンロードする
  • 防犯ブザーをカバンの目立つところに付け、防犯意識をアピール

痴漢しやすい環境をなるべく回避する

ドア付近と改札口近くの車両は、痴漢加害者が逃走しやすいと言われています。ドア付近は混雑しやすく、乗り降りの際などに接触しやすい場所でもあります。また車両連結部は他の乗客の目や防犯カメラから死角になりやすいことから、避けた方が良いでしょう。

同じ時間・同じ車両に乗る日常が痴漢のリスクを上げる

いつもと同じ行動パターンを無意識に繰り返している人も要注意です。同じ人が同じ時間帯に乗ることが多い満員電車では、加害者が日頃からターゲットにする女性を物色していることがあるからです。できる限り意識的に不規則な行動を心掛けることでリスクを軽減できる可能性があります。

痴漢対策アプリを活用しよう

最近では痴漢対策のスマホアプリもリリースされています。たとえば警視庁のアプリ『デジポリス(Digi Police)』は、痴漢被害情報の提供だけでなく、防犯ブザー機能や周囲に無言で助けを求めるための機能などが搭載されています。
RadarLab株式会社の『Radar-z』も、地域の痴漢被害情報の共有やSOS機能などが利用できます。

男性が電車内で痴漢と間違われた場合、どう対処すればいいか

反対に、無実の男性が痴漢と間違われるケースもあります。たとえば、他の人が犯人なのに人違いで疑われたり、たまたまカバンなどが女性に当たってしまっただけで「手で触った」と勘違いされたりするなど、思いがけない形で巻き込まれることがあるようです。 仕事のために満員電車に乗らざるを得ない人にとっては、戦々恐々の毎日でしょう。

無実の痴漢で万が一通報されてしまった場合には、以下のような行動を取ることが大切です。

  • すぐに弁護士を呼ぶ
  • 絶対に走って逃げない
  • 個人情報、連絡先は伝える
  • 「すいません」「ごめんなさい」など咄嗟に謝罪しない
  • 痴漢の罪はキッパリと否定、駅員室に入らない

痴漢に間違えられた場合はまず弁護士を呼ぶ

痴漢として駅員に引き渡されそうになったら、すぐに弁護士を呼びましょう。弁護士を呼んで無罪を主張してもらうことで、現行犯逮捕を回避できる可能性があります。すぐに連絡が取れる弁護士がいない場合には、家族に連絡して弁護士を探してもらうという方法もあります。

「走って逃げる」「とりあえず謝る」は逮捕リスクを上げる行動

また走って逃げる行為は非常にリスクが高いため、絶対にやめましょう。「逃げるのはやましい気持ちがあるからだ」と思われるおそれがありますし、逃亡のおそれがあるとして逮捕される確率も高まるからです。個人情報と連絡先をしっかりと伝えることも、逃亡のおそれなしと判断されるためには大切です。

日本人は何かあると悪いことをしていなくても咄嗟に「ごめんなさい」「すいません」と謝ってしまうことが多いですが、その場合も逮捕のリスクが高まるため要注意。 一貫して「何もやましいことはない」という気持ちで、堂々とした態度を取ることが重要となります。

無罪・有罪問わずにダメージの大きい痴漢冤罪

人間違いで痴漢を疑われても、原則として間違えた人が処罰されることはありません。もしも痴漢の加害者を間違えたことに重過失があり、それによって解雇や離婚などの深刻な状況に発展した場合には、相手に対して損害賠償請求をできる可能性があります。

しかし痴漢冤罪の場合は、最終的に損害賠償金を受け取っても取り戻すことができない有形無形の損失が発生することがあります。とくに一度付いてしまった悪いイメージは、あとで無罪が証明されたとしても、なかなか払拭しづらいという厳しい現状があります。

そのような最悪の事態を極力防ぐためにも、普段からいざという時のために頼れる弁護士を探しておくことも大切でしょう。

痴漢に巻き込まれ後日逮捕の可能性も…詳細はこちら>>

痴漢に間違われないための注意点

痴漢と判断されない行動を意識する

考えられる対処法のひとつとして、満員電車内では女性の近くを極力避けるということが挙げられます。勤務先がフレックスタイム制や在宅勤務制を導入しているなどの理由で可能であれば、混雑している時間帯も避けることがお勧めです。

あえて防犯カメラに映りやすい位置に立ち、両手でつり革を握るなどの対策も考えられます。
先にご紹介した「痴漢被害の証明になる客観的証拠」の真逆を行く形で、痴漢と判断されない行動を取ることで、痴漢冤罪のリスクは下げることができます。

痴漢冤罪をサポートする保険サービスも

そして前述のとおり、万が一の場合にいつでも相談できる弁護士を日頃から把握しておくことも非常に重要です。痴漢冤罪への危機意識が高まっている昨今では、民間保険会社による痴漢冤罪保険などのサービスも増えています。

痴漢冤罪保険は、月々の保険料(安価であることが多いです)を支払うことにより、いざという時に弁護士にすぐに法律相談をしたり、現場に呼ぶことができるというもの。

痴漢による逮捕後の流れについて詳細はこちら>>

まとめ

痴漢被害に遭った場合には、物的証拠や目撃者の証言がカギとなります。被害に遭うリスクを少しでも軽減するために、乗車位置や行動パターンにも少し工夫してみるとよいかもしれません。
また痴漢冤罪のリスクを抑えるためにも、乗車位置や時間帯に気を付けるなどの対策があります。

また弁護士は、トラブルが起こる前の段階から予防的に頼ることも可能です。まだ痴漢冤罪に巻き込まれていなくても、もしもの場合に備えてあらかじめ対策を講じておくこともお勧めです。
トラブルに遭われた方はもちろん、万が一の事態が心配な方も、弁護士に相談しましょう。

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