1995年のテレビアニメ放送開始から26年。2007年の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ開始からも14年という年月を経て、完結編となる『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が3月8日に封切りとなった。公開から21日間で 興行収入は60億円を突破、観客動員数396万人と、怒涛の大ヒットを記録。リピーターも続出し、まだまだ記録を伸ばしていくことは間違いない。今回は、このメガヒット作の副監督を務めた谷田部透湖さんに、アニメーターを志すまでのお話や制作の裏側など、たっぷりと話を聞いた。

アニメーターを目指すきっかけは、絵を描くことが好きだったから

小さい頃から、絵を描くことが好きだったという谷田部さん。マンガやアニメなどの仕事をしてみたいな、と具体的に意識し始めたのは中学3年から高校生のときという。その後は美術大学に進学し、本格的なアニメ制作をはじめることに。

――美術大学では、どのようなことを勉強しましたか?

私が進学したところは映像学科。映画やドラマといった実写映像、写真、手書きアニメーション、3DCGなどの授業があり、映像にかかわることを入門編的に広く学ぶことができました。私としては、色んな映像作品を作りたい人たちが一箇所に集まる場所に居られたことは良かったと思います。当時、授業の制作と並行して自主制作アニメを作っていたのですが、その作品を芸術祭で発表したりすると、それを見た趣向の近い仲間が集まってきたりとかして。そうして仲良くなって情報交換しあったり。大学で出来た縁は今も繋がっていたりするので、その出会いには感謝しています。

――卒業後、現場で働いてみて大学時代の経験とギャップはありましたか?

全部ほぼ自分ひとりがなんとかする規模での自主制作アニメと、プロの現場での仕事はもちろん全然違いました。アニメの現場は分業で、ひとつひとつの仕事に素晴らしい技術を持った方がいます。カラーに入社して、まずは動画検査の村田さんの元で学びながら動画マンとして仕事していました。動画マンの仕事はコツコツと目の前のカットのみに集中してこなしていくという日々だったので、ギャップを感じて新鮮でした。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の制作に携わって

――先日公開されました『シン・エヴァンゲリオン劇場版』に携わることが決まったのはいつ頃でしたか?

以前、鶴巻監督の長編アニメ『龍の歯医者』にコンテ演出で参加させていただいたんですが、それが終わって他社作品へ参加することが決まっていた時に『エヴァ』が動くときには戻ってきてほしい」と言われていたんです。なので、動き始めた時に声がかかって、当初は原画マンとしてだったんですが、演出もやってほしいと言われたのは嬉しかったです。以前の仕事を評価していてくれたんだな、と感じました。今回原画もやっていますが、メインは演出のお仕事ですね。

――携わったシーンはどのあたりですか?

コア化した大地をシンジたちが歩くアバン2と、第3村の色んな人々のさまざまな日常を描くAパートなどを手がけました。

――アニメの現場ではデジタル作画などもされているかと思います。はじめてデジタルで絵を描かれたのはいつごろ?

大学生の頃です。最初は板タブを使っていて、途中で液タブのCintiq 12に買い換えました。おそらく、最初に出た液タブだったんじゃないかと思います。それで卒業制作もつくりました。今はWacom MobileStudio Pro 16を使っています。あと、スタジオに来て作業するときにはWacom Cintiq Pro 16も使うことがありましたね。ペンは付属のものではなくて、Wacom Pro Pen slimを使っています。ペンの軸が細い方がペンだこができにくいかも?と思って、Wacom Pro Pen slimにしてみました。

――『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の現場では、主にWacom MobileStudio Pro 16を使われていたとのことですが、具体的にはどういう作業になるんですか?

自分のカットの作画作業や、制作終盤、仕上げ素材をディティールアップしたり、意図通りになっていないところの修正などで使っていました。通常そういったリテイク作業は色んな部署をまたぐことになるので、ちゃんと通常の順序を踏もうとすると大掛かりになるんですが、デジタル素材に直接書き込むことで時間をかけずに済むんです。終盤の時間がない時には、本当に頼りになりました。作品のクオリティに大きく影響しますから。

――『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の制作を振り返ってみて、どういう現場でしたか?

やはり大きな作品ですし、自分もファン側から作る側に入ったので、エヴァに関わる人たちの想いの強さや作品のすごさから当初は緊張感を持っていました。実際に携わってみると、迷ったり行き詰ったりしたら、すぐ鶴巻監督や庵野総監督に聞きに行ける環境でした。相談してすぐに解決することもありましたし、その場で解決できなかったら一緒に考えたり。変に一人考え込んでどん底、みたいな事態にならなかったので良かったです。

――庵野総監督にも聞いていたんですね! どんな方なんですか?

妥協しない方。映画冒頭の映像を2019年に「0706作戦」として先出ししていたんですけど、その時も液タブを使ってギリギリまで修正をしていました。その時、私のデジタルで修正しているところを見て庵野さんが「良いな」と思われたみたいで、デジタルでの指示を出されることも多くなりました。選択肢が増えた感じですね。 庵野さんは、いろいろなことを挑戦されたり試したりを積極的にしますし、それを実際に活かすスピードも早い。そういう瞬発力がある方ですね。ラッシュチェックでリテイク指示を出すスピードもとっても早くて、わかりやすく明確でしたね。あと、アフレコの時、何パターンも声を録られていて後からチョイスする作り方を目の当たりにして、一貫しているなあと思いました。

――谷田部さんがオススメする、みどころシーンは?

やっぱり後半のシーンですよね。劇場で見て欲しい自分のパート、で推すなら、自然の描写や水の表現などを見てほしいです。美しく見えるように、美術、作画、CGや特技や撮影処理などとの合わせ技で作っているカットも多いので、劇場の大きなスクリーンでそういう部分も楽しんでいただきたいです。何度もご覧くださっている方は、そういう細かい部分にも注目していただけると嬉しいです。

――今後、やってみたいお仕事は?

演出は引き続きやっていきたいですね。ひとつひとつ積み上げてシーンを完成させる工程はやりがいがありますから。あとは、ミュージックビデオなど、疾走感がある短編作品やPV作品も、いつか作ってみたいですね。

――楽しみにしています。本日はありがとうございました!

インタビューで登場した液晶ペンタブレット製品はこちら

谷田部さんが「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の制作現場で使用していた Wacom MobileStudio Pro 16

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  • Wacom Pro Pen slim

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インタビュー時に使用していたWacom Cintiq Pro 16

  • Wacom Cintiq Pro 16

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映画情報はこちら
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』全国の映画館で絶賛上映中!

企画・原作・脚本/庵野秀明
総作画監督/錦織敦史


作画監督/井関修一、金世俊、浅野直之、田中将賀、新井浩一

副監督/谷田部透湖、小松田大全

公式サイト

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