「プラズマクラスター」。それは空気中の菌やウイルスの作用を抑制したり、ニオイを消臭したりするシャープ独自の空気浄化技術。今では私たちの生活の中に当たり前のように溶け込んでおり、そのロゴマークに見覚えがある人も多いのではないでしょうか?
そんなプラズマクラスター技術が誕生したのは今から20年も前のこと。
当時の空気清浄機は、部屋の空気を吸い込みフィルターで浄化する「待ち受け型」が主流で、イオンの発生・放出によって部屋の空気を浄化するような「能動型」は存在していませんでした。
目に見えない、誰も想像がつかない技術――。
シャープはどのようにこのプラズマクラスター技術を開発し、普及につなげたのでしょうか?
空気清浄の歴史を変える発明!プラズマクラスターの効果と誕生のきっかけ
今回取材を受けてくださったのは、PCI企画開発部の大江さんと国内PCI技術部に所属する山本さん、濱野さん。
大江さんはプラズマクラスターの核となるイオン発生ユニットを、山本さんと濱野さんは空気清浄機やイオン発生機などを設計・開発しています。
3人ともモノづくりが大好きで、独自色を打ち出すシャープに惹かれて入社を決めたそうです。
大江さん、山本さん、濱野さんらが手がけるプラズマクラスターは、自然界にあるのと同じ水素のプラスイオン(H+)と酸素のマイナスイオン(O₂-)をプラズマ放電により作り出して空気中に放出し、浮遊ウイルスや浮遊カビ菌などの作用を抑える技術。
プラスとマイナスのイオンが浮遊ウイルスや浮遊カビ菌に付着した際、非常に酸化力の強いOHラジカルに変化することで表面のタンパク質から水素を素早く抜き取り、その作用を抑制します。抜き取った水素はOHラジカルと結合し、反応後は速やかに水(H₂O)となって空気中に戻っていきます。
これが今では除菌や消臭のみならず、静電気抑制や肌保湿といった効果も実証されているのです。
そんなプラズマクラスターが誕生したのは、今から20年前のこと。きっかけは、当時の技術者たちの将来に対する危機感だったそうです。
私が入社する前のことですが、当時、エアコン以外の空調事業の主力製品は石油暖房機でした。 しかし、室内の暖房はエアコンへの移行が進むなど、石油暖房機の需要が減少していくのは明らかだったんです。 |
そこで、新たな事業の柱を作ろうと目を付けたのが、自然界に存在するプラスとマイナスのイオン。 人工的に作り出せれば部屋の菌を抑制できるのではないかという仮説に基づき、5年ほどの時間をかけて開発にこぎ着けました。 |
汚れた空気を吸い込み、綺麗な空気を吐き出す循環型の空気清浄機が一般的だった時代、放出されたイオンによって空気中に浮遊する菌の作用を抑制するプラズマクラスターは非常に画期的で、シャープ社内でも注目を集めるテクノロジーでした。
しかし、理解されにくいのが新技術の宿命。目に見えないイオンやその効果をどう訴求すればいいのか、知恵を絞ったといいます。
どうすれば効果を伝えられるかという問いには、開発当時から頭を悩ませたと聞いていますが、この難題に向き合う姿勢は現在も変わっていません。 科学的なエビデンスを取得し信頼性を高めるべく、第三者機関を通じて積極的に実証試験を行っています。多種多様な側面から検証をすることで、 あらゆる可能性を探っています。 |
今では、自動車や鉄道をはじめ、教育施設や福祉施設、ホテルやスーパーマーケット、フィットネスクラブなど、いたるところで見かけるようになったプラズマクラスターのロゴマーク。コラボレーションする企業の数は実に27社(2020年3月時点)に上ります。
20年もの間、地道に実証試験を重ね、誠実に効果を訴えてきた努力が実を結んだ結果と言えるでしょう。
技術者同士が切磋琢磨。進化を続けるプラズマクラスター!
社外とのコラボレーションだけではなく、数多のシャープ製品にも搭載されているプラズマクラスター。空調機器以外にも、冷蔵庫や洗濯機、ドライヤーといった数々の商品に採用されてきました。
事業部の垣根を越えて連携できるのがシャープの良いところです。
以前のトイレ向けのイオン発生機は電源が無いと使えない仕様だったため、照明と一体化した製品を提案したことがあります。 天井からイオンが降り注ぐイメージですね。 その際、照明に関する技術については専門外のため、他部署にヒアリングしながら製品化を成し遂げました。 |
これは、取り扱う製品の種類が豊富なシャープならではのこと。すべてを自社で賄えるのも強みです。
製品を企画する部隊からオーダーを受けて、イオン発生ユニットを開発することもありますよ。 たまに意見がぶつかりますが(笑)。 |
例えば、クルマ用カップホルダータイプのイオン発生機は山本さんと大江さんとで作った製品。
車載のためサイズをコンパクトにしたい山本さんと、とはいえイオン濃度を高めるためにユニットを大きくしたい大江さんとの間で熱い議論が交わされたそうです。
しかしそれは「いい商品をつくりたい」という共通の想いがあってのこと。何でも言い合い、技術者同士が切磋琢磨できるからこそ、プラズマクラスターは今も進化し続けているのでしょう。
「プラズマクラスターNEXT」は、その最たるもの。従来の高濃度タイプの約2倍以上の空間イオン濃度を実現し、試験環境における技術試験の成果として、ストレスがたまりにくく集中力を維持しやすい環境を創出するなど、新しい効果が次々と実証されています。
「こんな製品があればいいな」。若いうちからアイデアを提案できる環境
そんな先輩たちの姿を見て、若手の濱野さんも意欲的に働いています。
性能測定が主な仕事ですが、いずれは製品を一から設計し、開発したいです。 自分が設計した製品が店頭に並ぶ日が待ち遠しいですね。 |
若いうちから挑戦できるのがシャープで働く魅力と山本さんは言います。
年齢に関係なく、手を挙げれば任せてもらえる環境です。 年長者が若手の意見を尊重し、サポートする風土が根付いているように感じますので、「こんな製品があればいいな」というアイデアもどんどん提案できます。 |
先述したクルマ用のイオン発生機では、以前のモデルだと「音が気になる」との理由で、運転モードの「強」はあまり使われていない実態があったそうです。
ただ、山本さんはイオンの高濃度を実感してもらいたいとの思いから、最初の25分だけ「強」になり、時間が経てば自動で弱まる「おまかせモード」を提案。 消費者に寄り添ったアイデアは、製品の品質と満足度を向上させることになりました。
もちろん、製品化に至る過程では苦労が尽きません。
いかに効率良くイオンを飛ばすか、何度も試験を実施しますが、製品内にイオン発生ユニットを設置する角度や風路を少し変えるだけで結果は異なります。 最適な構造を突き止めるまで、試験を行っています。 |
それでも、課題が解決した瞬間や、携わった製品を街で見かけたとき、努力が報われた気持ちになると3人は声を揃えました。
プラズマクラスターはシャープだけ!独自技術を発展させる飽くなき探求心
「プラズマクラスターを通して、より快適なライフスタイルを提案したい」 「もっと街中にプラズマクラスターを広めていきたい」
現状に満足することなく、プラズマクラスターをさらに発展させ、世の中に広めていこうとする熱量は、開発当時から変わらないどころか、受け継がれていくうちにますます高まっているように感じました。
常に新しいものを生み出そうとする飽くなき探求心。それを秘める技術者たちの情熱が、“Be Original.”なシャープを支えているのです。
Photo:hiroshi tokioka
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