歴代「仮面ライダーシリーズ」の変身ベルトを"大人向け"としてグレードアップさせたバンダイの人気シリーズ「COMPLETE SELECTION MODIFICATION(CSM)」。その最新作は、2013年放送の『仮面ライダー鎧武』の変身ベルト・戦極ドライバーに決まった。「CSM戦極ドライバー」は10月25日より、プレミアムバンダイにて予約受付がスタートする。

  • 左から佐野岳、小林豊

『仮面ライダー鎧武』とは、2013(平成25)年10月6日から2014(平成26)年9月28日まで、テレビ朝日系で全47話が放送された連続テレビドラマ。本作は「ライダー戦国時代」というキャッチコピーが示すとおり、主人公の葛葉紘汰(※葛の人は人でなくヒ)/仮面ライダー鎧武のほかにも多数の仮面ライダー(劇中では"アーマードライダー"と呼称)が続々と登場し、それぞれの性格や立場の違いを明確に打ち出して「天下」を取るべくぶつかり合う「仮面ライダーによる群像ドラマ」が指向されている。

経済、教育、医療、福祉などあらゆる面で人々の生活を支える巨大企業「ユグドラシルコーポレーション」傘下にある計画都市・沢芽(ざわめ)市では「ビートライダーズ」と呼ばれるストリートダンスチーム同士の勢力争いが激化していた。元「チーム鎧武」のメンバーだった葛葉紘汰(演:佐野岳)は、異世界の「森」の中で不思議なベルト「戦極ドライバー」と錠前型アイテム「ロックシード」を拾ったことにより、アーマードライダー「鎧武」に変身する。人間を超える強大な力を手にした紘汰は激しく戸惑いながらも、危険な怪物インベスから人々を守るため戦う決意を固めた……。

ここでは「CSM戦極ドライバー」発売を記念し、仮面ライダー鎧武/葛葉紘汰を演じた佐野岳と、紘汰と常に反発し合うライバルで、何者に負けない"強さ"をひたすら追求する孤高の男・仮面ライダーバロン/駆紋戒斗を演じた小林豊に対談インタビューを敢行。放送開始から7年という歳月が流れてもなお、作品を愛するファンが多く存在する『仮面ライダー鎧武』への思いや、変身ポーズが完成するまでの裏話、そして本商品の目玉となる豊富な音声ギミックのうち、紘汰と戒斗の印象的な「セリフ」を収録した直後の感想を尋ねてみた。

――「CSM戦極ドライバー」の音声収録、お疲れさまでした。声のみとはいえ、久々に葛葉紘汰、駆紋戒斗を演じてみて、どのような感想を持たれましたか?

小林:それぞれ2時間以上かけて、いろいろなセリフを収録してきました。大変ではありましたけど、特に大きな問題もなくスムーズに進みましたね。

佐野:この日のために、『仮面ライダー鎧武』のテレビシリーズをざっと観返してきたんです。紘汰は常に声を"張って"いるんですよね(笑)。印象的なセリフをピックアップすると、どうしても"叫び声"が多くなるのかもしれません。

小林:"叫び"系は僕もけっこうありました。最初のうちはまだ出やすいというか、声を作らなくても自然と役に入れる感じでした。

佐野:エピソードをひとつひとつ、改めて作品の持つ意味とかを理解しながら続けて観ていくと「深いな~」とうなる場面があったりして、放送当時より言葉の意味を理解することが多かったです。

小林:うんうん。わかるわ。

佐野:放送当時は、台本をその都度もらっていましたから、先の展開のことなどまったく読めない。一度、最終回までのストーリーを理解した上でもう一回見直すと、オンエアを観ていたときとは違った感覚になるみたいなんです。

小林:改めて、脚本家の虚淵玄さんってすごいホン(脚本)書くんだなあって感心しました。

――紘汰、戒斗ともに、役を演じる上で心がけているのはどんなところでしょうか。

小林:オーディションのときからプロデューサーの武部直美さんたちに言われていたことで、特に印象に残っているものがあります。例えば、男の子が木に登ったまま降りられなくて困っているときに「おい坊主、いつまでそこにいるつもりだ?」って声をかけるとすると、僕の中には「仮面ライダー=子どもたちのヒーロー」という思いがあったものですから、いかにもヒーロー的な、優しい声のかけ方をしたんですね。そうしたら「違う!」と怒られまして(笑)。戒斗はたとえ相手が子どもでも、大人と変わらない応対をするんだって言われたんです。初めは不思議でしたけど、演じていくうちに戒斗とはこういう奴なんだ、とわかってきました。でもあんまりいないですよね。普段からあれだけ誰に対しても"凄んでる"奴は(笑)。

佐野:紘汰の場合、最初は普通の青年という感じで演じていましたから、普段の自分とのギャップはそんなにありませんでした。でも劇中で「ぜってえ許さねえ!」ばっかり言ってるもんですから、SNSとかを見ていると佐野岳が「許さねえ人」みたいに思われているフシがあるんだよね(笑)。「佐野岳だったら許さないだろうな」とか。いやいや、許す許す(笑)。

小林:「絶対に許さねえ!」に代表されるようなパワーワードが『鎧武』にはいくつもあって、それらはみんな印象に残るセリフとして多くの人たちから愛されてるんだよね。ちゃんとしたセリフとは違うんだけど、『鎧武』の放送が始まるとき「部屋を明るくして画面から離れてご覧ください」ってテロップが出るじゃない。第46話の冒頭に「人類を滅ぼし……」っていうナレーションがあるんだけど、テレビで「字幕」を表示していると「人類を滅ぼし、部屋を明るくして画面から離れて……」なんて、つながって読める画面になったんだって(笑)。

佐野:テレビを観るのにはまず人類を滅ぼしてからか。ハードル高けえな(笑)。そうやって好きな人たちの間で盛り上がってくれているのがうれしいね。

小林:今回の収録で大変だったセリフもありました。「これがヘルヘイムの力……世界を蝕み、染め上げる力……、フハハハ!」(第43話)を言おうとしたら、ぜんぜん声が出なくて……。「自分、どれだけ当時低い声出してたん?」って思いました。

佐野:そんなに声を低くしてたんだ。

小林:セリフの"深み"がすごすぎて、椅子に座ったままでは当時のあの声が出せなかった。そこで急遽、スタンドを用意してもらって立ったままセリフを言ったんです。

佐野:あの当時、現場で芝居をしているからこそ出せる声ってのもあるね。

小林:そう。動きながらしゃべるセリフとか、前後の芝居でテンションが上がりに上がって、盛り上がった上で出す言葉とかがあるから、そのあたりはかなり意識しながら収録しました。

佐野:紘汰もずっとハイテンションな"叫び"が多かったけど、「神」になってからは意識して穏やかな話し方に変えています。監督からも「"神紘汰"は達観した感じで」と言われていましたし、自分でもそうしたかったですね。それまでは「ぜったい許さない」紘汰でしたが、神になってからは「ぜったい許せる」(笑)!

小林:戒斗が"最後"に近づいていくあたりの一連のセリフは、自分の中でも思い入れが強いのもあって、収録でも力が入りました。あそこでの戒斗は、一回"死んで"ますからね。狂いに狂って、全部が爆発してからの状態なので、当時の現場の空気じゃないと出せないニュアンスとかもあったんだなあって、しみじみと思います。ものすごいテンションでしたけど、撮影当時はスムーズに出すことができたんですよ。今回は、あのときの映像をもう一度観返して、現場のテンションを再現しないといけなくて、かなり疲れました。近年のどんな仕事よりもしんどかったかもしれない(笑)。

――仮面ライダーの見せ場といえばなんといっても「変身」ですが、お2人の変身ポーズが誕生したいきさつを教えていただけますか。

佐野:紘汰の変身は、鎧武のスーツアクターをされていた高岩成二さんと一緒に考えながら決めていきました。僕は「激しい」動きを入れたいと思っていたんです。

ロックシードを構えて「変身!」と言ったあと、そのまま手を高く上げるんですが、その際に戦極ドライバーへロックシードを装填しやすくするため、一度手の上で握り直すんです。そのあたり、高岩さんが「こうしたほうがカッコいいよ」とアドバイスしてくださったところです。

そうして完成した変身ポーズですけど、勢いがあるがゆえに思いっきりカットを割らないといけなくなりました。ロックシードの鍵を開けて、ベルトに装填して……という一連を一気に撮るぞ、と言われる日がいつ来るか、とドキドキしていました。でも、その時が来たらもう、やるしかない!と腹をくくって、ワンカット変身に臨みました。

でも、ノールックでロックシードをベルトにはめようとしたら、はじかれてロックシードがあらぬ方向に飛んでいったこともあった……(笑)。やっぱり手元を見ないで正面を見つめながらやったほうが、カッコいいですから、それを目指して頑張るんですよ。撮影の前日は家でも練習しました。何回かに一回はノールックでロックシードがガチャン!とはまって「よーし、よしよし!」なんて言ってました(笑)。

小林:先に岳の変身が決まったから、僕の変身はどんな風にしようかって。事前にいろいろカッコいい動きを試してみたんだけど、いざやってみようとなったとき、あえてシンプルな動きで行こうと決めたんです。岳が身体を大きく動かす変身だから、逆にこっちは動かさずにやりたいと。で、ロックシードを指でクルンと回せばカッコいいんじゃないかって考えて、バロンのスーツアクターの永徳さんと話し合いながら作りました。

でも最初のころは、ロックシードを回していると、外れて遠くに飛んでいっちゃったりもしましたね(笑)。バナナロックシードって、現場に予備の小道具がなくて、落として壊したりしたら大変なんですよ。スタッフさんから「本当に落とさないでね!」と念を押されたので、直前まで別のロックシードを使って練習してから本番に臨んでいました。ときどき"寄り"で変身するときがあって、もうめちゃめちゃ練習しましたよ。落としても怒られますし、ビビッて回らなかったらそれでもNGだし、どうしよう……と思いながら変身してたんです(笑)。

佐野:『鎧武』のライダーはみんな個性的な変身ポーズで、どれも好きですね。あとから変身する人が増えていくたびに「そう来たか!」と感心しました。

小林:いちばん衝撃的だったのは、斬月の(久保田)悠来くんだね。

佐野:ロックシードを"投げた"(笑)!!

小林:そうそう(笑)。あれにはびっくりしたよね。上に放り投げて、受け止めてから「変身!」だから、こりゃカッコいいぞって。

佐野:オレもロックシード投げてみたかった……。

小林:ほかの人の変身を見て、いいなあ~と思う一方で、自分の変身はオレひとりだけなんだぞ、という自負もあるよね。

――テレビ放送が終了した後もスピンオフ作品や舞台、小説などで『鎧武』の世界が続いていき、現在進行形でファンの方たちが楽しんでいる感覚があります。このように『鎧武』が現在でも根強い支持を得ていることに対して、どんな風に思われますか。

小林:素直にうれしく思っています!

佐野:ほんと。オレ昨日も別の現場で言われたんですよ。「鎧武やってましたよね」って。放送から7年も経ったという感覚がないんです。なんとなく4年前くらいかな~なんて思ってて。

小林:一緒一緒! まだ5年か?とか(笑)。放送が始まってから7年ってことなんだよね。終了後もスピンオフで『仮面ライダー斬月&バロン』『仮面ライダーデューク&ナックル』をやっていたから、終わってずいぶん時間が過ぎたという気分じゃなくて、少し前って感じ。

佐野:豊とは、7年もの間ずっと毎年正月に会ってるし、普段から連絡取り合ってる(笑)。

小林:テレビシリーズが終わった段階で「ああ終わったなあ」というイメージがあったんですけど、そこからさらに作品が続いていき、ゲームが出たり小説が出たり、こうして大人向けの変身ベルトが発売されたり、『鎧武』がどんどん続いていくのはありがたいことです。これはやっぱり、応援してくれてるファンの方たちのおかげですよね。みなさんの期待に応えるため、これからもどんどん『鎧武』を盛り上げていけたらいいなと思ってます。

佐野:本当にそう。ファンのみなさんには、いつまでも『鎧武』を愛してもらいたいですね。まずは「CSM戦極ドライバー」を、存分に楽しんでください!

(C)石森プロ・東映

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