デスクワークに欠かせないパソコン。中でも、長時間PC操作をするビジネスパーソンは、会社支給のマウスやキーボードではなく、自分で選んだものを使っている人も多いはず。ビジネスで使うPCアイテムは、どのような基準でチョイスしているのだろうか。
みんなはどうやってマウスを選んでいる……?
まず、マイナビニュース会員1,002人へのアンケート調査によると、会社支給のマウスではなく自分で用意したマウスを使っている人は65.8%だった。
選ぶときのポイントとしては「価格(24.5%)」、「形(19.5%)」、「機能(19.3%)」を挙げる人が多く見受けられた。
また、会社でどれくらいマウスを使用していると聞いたところ、3時間以上の人が約半数を占める結果となった
しかし、マウスは長時間使用している人が多いからこそ、選ぶ際に着目してほしいポイントがある。それは「健康」という観点だ。今回はヘルシーコンピューティングについて研究し、キネティックアクトの代表取締役で理学療法士・医学博士の岡崎倫江さんに、プロの目線での選択基準などについて話を聞いた。
ヘルシーコンピューティングの目線から選ぶマウスとは
――本日はよろしくお願いいたします。岡崎博士はどのようなことを専門に研究されているのでしょうか。
岡崎博士:理学療法士としての知見や医学的根拠を背景に、身体が効率よく無理のない使い方ができるようになるための研究をしています。運動関連用品やフットバンド、腹巻、タンクトップ、美容パッチなどさまざまな製品を開発してきましたが、「人が使うもの」はすべてが対象です。矯正ではなく、使うだけで動きやすくなることを心掛けて開発しています。
――このような研究に進んだきっかけを教えてください。
岡崎博士:学生時代にバスケットボールをやっていたのですが、故障して接骨院などに行くことが多くありました。そこでよく言われたのが「痛くなくなったら動かしていい」ということでした。どうしたら治っているのかが曖昧で、また同じところを痛めることも多くありました。どの動きが問題なのか、ちゃんと身体の仕組みから理解しておかなければダメだと思い、この分野に興味を持ちました。進学してからは研究を進め、現在では理論やデータで裏付けされている運動方法やアイテムの開発など、身体本来の機能を取り戻すサポートをしています。
――そのひとつが、ロジクールと共同開発しているヘルシーコンピューティングなんですね。この研究ではどのようなことがポイントになるのでしょうか。
岡崎博士:ヘルシーコンピューティングの研究では、良好な姿勢に正すことで身体の負担を減らすことを目指しています。デスクワーク中心の方々には、首や肩、背中のコリや身体の硬さ、重さを感じられることが多く、眼精疲労、まぶたの痙攣、肩こり、頭痛、腰痛、などの症状として表れることもあります。これらの症状に対して、姿勢やディスプレイの高さは指摘されていましたが、マウスに関してはあまり報告がありませんでした。今回の共同研究ではマウスに着目し、手の使い方が変わることで、関節の動きの幅が広がることや、腕や肩の筋肉の硬さが減少すること、猫背の姿勢が改善されることを、数値として明らかにすることができています。
――具体的に、どのくらいの違いが数値で明らかになったのでしょうか。
岡崎博士:エルゴノミックマウスという良好な姿勢を作ることができるマウスを被験者に使用してもらう実験では、肩こりにつながる筋肉の硬さを69%低減するという結果が出ています。また、腱鞘炎につながる筋肉の硬さも73%低減となりました。4週間使用してもらったところ、首の可動域も10度ほど広がっています。首だけでなく肩や腕、手の関節の可動域も広がっていることが数値として明らかになったので、継続的に使用することで違いを実感できるのではないかと思います。
――身体の動きにあったマウスを使うことで、そんなに身体に変化が起こるんですね! 身体に合ったアイテムを選んだ後、どのような使い方をしていけばよいでしょうか。
岡崎博士:人の身体は道具を使う際、負担がかかる体勢であってもその環境に合わせて “ラクな姿勢(=不良姿勢)”をとろうとします。そのため、良好な姿勢に直すために道具を変えても、最初は違和感があるかもしれません。1~2週間使い続けていただくと筋肉が育っていき、“良好な姿勢”になるので、使い心地も良くなると思います。道具が変わることで、自然と身体が変わっていく感覚をぜひ体験していただければと思います。
健康に着目したマウス選びの基準は4つ
マイナビニュース会員へのアンケート調査では、マウスを選ぶ際、健康に着目した選び方があることを知っていると答えた人は、わずか3.2%。PC作業時に何かしらの不調を感じている人は全体の約75%と多くいるにも関わらず、使う道具によって健康で快適な環境を整えられるということは残念ながら浸透していないのが現状だ。
岡崎博士が提案する、ヘルシーコンピューティングに着目したマウス選びのポイントは4つ。ぜひ、お手元にあるマウスが以下の項目を満たしているかチェックしてみて欲しい。
1) マウスの傾き
小指側に向かって傾きがあり、手のひらが握手に近い形になるように傾きがあるもの
→腕の骨がクロスせず、関節への負担が軽減される
2) 縦アーチの頂点の位置
人差し指が位置する縦アーチの頂点が人差し指の付け根に来るもの
→頂点の位置が合うと、腕の筋肉が緩み、インナーマッスルが使いやすくなるので、手や指の関節を無理なく動かせる
3) 小指の位置
小指が添えられるくぼみがあるもの
→1)と2)の条件を満たし、自然な状態で小指を添えることで負担が軽減される
4) 親指の位置
小指と向かい合うようにしっかりと握ることができる形状のもの
→この位置がズレてしまうと、手のインナーマッスルに負荷をかけてしまう
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これらのポイントを押さえたマウスを選ぶことで、不自然になっていた姿勢を良好な状態にし、肩こりや腱鞘炎につながる筋肉や関節への負担を減らすことができる。現代のデスクワークにおいて相棒ともいえるマウスを、自分の身体に合ったものに変えてみてはいかがだろうか。
■取材協力
株式会社キネティックアクト代表取締役
岡崎倫江 先生
理学療法士、医学博士。「カラダの仕組みを整える」方法を生み出し、ケアを実施。そのコンセプトに基づいたウェアや運動関連グッズなどを開発している。併設するプライマリメディカルサポートでは、フィジカルコンディショニングサービスを提供。食コンディショニングトレーナーの知識も生かし、医学的根拠を背景にして“動きを治療する”、正しいカラダの使い方の指導に尽力している。
Webサイト:KINETIC ACTマウスについてのアンケート
調査時期:2020年5月13日
調査対象:マイナビニュース会員(セグメント:22~60歳の会社員)
調査数:1,002名
調査方法:インターネットログイン式アンケート
[PR]提供:ロジクール