志田未来さんと花江夏樹さんがW主演を務めるアニメーション映画『泣きたい私は猫をかぶる』が6月18日、いよいよNetflixにて全世界独占同時配信される。
同作は『ペンギン・ハイウェイ』を手掛けたアニメーションスタジオ「スタジオコロリド」が放つ、長編映画の第2弾。猫に変身できる不思議なお面を手に入れた少女・ムゲと、彼女が想いを寄せる少年・日之出のファンタジックな物語となっている。
そして今回は、本作で美術設定、作画監督、原画を務めた永江彰浩さんと、原画を担当した篠田貴臣さんに、デジタル作画の制作環境や作品の魅力について、たっぷりとお話をうかがった。
―― 本日はよろしくお願いします。それではまず、簡単な経歴とアニメーションの道に進むことになったきっかけをお聞きしたいと思います。
篠田 「私は主に原画を担当しています。大学3年の時にアニメーションを専攻したことがきっかけです。当時宮崎駿監督の『風立ちぬ』が話題になっていて、商業アニメーションでもこんな表現ができるのか、と思ったんです」
永江 「僕は作画監督をメインに行っています。小さい頃からアニメーションは好きでしたが、実際に制作側に進むことを考え始めたのは大学の終わり頃。宮崎駿監督作品のメイキングを見て、すごい人が作っているんだ、ということに気づいて……そこから意識し始めました」
―― ジブリ作品がきっかけという点では、お二人の感性も近しい感じがしますね。
永江 「実は篠田くんとは愛媛で同郷なんです。時期こそ違いますが通っていた画塾も同じなんですよ」
篠田 「入社したら、たまたま永江さんがいらっしゃいました。(笑)」
永江 「画塾が一緒なんで先生とかも同じだったから、そういう話ができたことは嬉しかったですね。もともと東京にいた人とはやっぱり感覚が違う部分があると思います」
制作裏について
―― そんなお二人が作った『泣きたい私は猫をかぶる』ですが、どのようなところを担当されたんでしょうか。
篠田 「私は原画で、いなくなってしまったムゲを探して日之出くんが雨に打たれながら神社に居るシーンなどを担当しました。日之出くんの気持ちになって描きましたね。
あまり原画マンらしくないかもしれないのですが、表情をこうしたいな、とか感情描写までイメージしました。作画監督の永江さんが汲み上げてくれたのは嬉しかったです」
永江 「背景美術のデザインや設計の部分を全般的に担当しています。舞台が常滑と決まっていますので、ロケハンに行ったときの空気感、土地の感覚や気分がでるよう意識しました。常滑を知っている方ならすぐにわかる部分がたくさんあると思います」
平地が広がって、その向こうに海が見えて、でも起伏があるところにはあって……。というようなバランスも常滑らしさとして大切にしました。焼き物の町なので、レンガが積んであって、町が赤いんですよ。その赤と、空や海の青との対比を感じていただけたら嬉しいです」
デジタル作画の世界
――デジタル作画はどのようなツールを使っていますか?
篠田 「TVPaintというソフトを使って作画をしています。液タブはワコムのCintiq 13HDですね。
※ 現在は後継機として「Wacom Cintiq」、「Wacom Cintiq Pro」シリーズが発売中
入社して支給してもらったペンタブレットがこれで、ずっとこちらを使っています。1度だけ同じHD解像度のWacom Cintiq 16も使ったんですが、環境が変わると対応できないタイプなんで、すぐに戻しちゃいました(笑)」
永江 「僕はWacom Cintiq Pro 24ですね。13インチを支給されて使っていたことがあったんですけど、自分としては小さかったんです。僕の体が大きいというのもあって(笑)。24インチを使うようになって、すごく快適になりました」
―― デジタル制作に切り替える際に、戸惑いなどはありましたか?
永江 「抵抗とかは全然なかったな。液タブの解像度もすごく高いので、絵が変にブレないんですよ。ちゃんとそこに絵がある感じを保ってくれる。また、24インチになってからは、画面が広く拡大しても絵がすべて表示されるので、全体を把握しやすくなりました」
―― 美術設定を考えるうえで、全体を把握しやすいというのは重要かもしれないですね。篠田さんはいかがですか?
篠田 「僕も本当は解像度が高くて大きい方がいいなと思いますね(笑)。しかも液タブは紙に書いている感覚に近くて、違和感が少ないのも魅力のひとつですね。なんでもっと早く使わなかったんだろう……って後悔したくらい(笑)。プレビューとかアンドゥも簡単だし、くだらないことですけど、手も汚れないですから」
※アンドゥ : 直前に行った作業を取り消してもとの状態に戻す操作のこと
永江 「液タブと板タブで、感覚も大きく違うよね。昔、板タブで絵を描いていた時期もあるんだけど、板タブのときは"描く"というよりも"作っている"感じ。しかし液タブだと、直接描いている感覚に近いんですよ。液晶のガラスの厚さも薄くなって、"描いている"感じが高まっていることに進化を感じます」
若手がつくる映画の世界とは
―― 本作は若手のクリエイターが多く参加している作品とお聞きしています。若いスタッフが多いからこそのエピソードなどはありますか?
篠田 「やってみたいことを相談しやすい環境だったと思います。さらに実験的というか。入ったばかりの原画マンが、普通なかなかやらないような作業をやっていたりして。そういう挑戦的な雰囲気はあったかもしれません」
永江 「僕も一部始終を見ていたのですが、緻密なコミュニケーションができていないと実現できないことだったと思います。
イレギュラーを新人が担当し、直接監督から指示ももらう。それって、僕の経験上ではほとんどありえないような制作環境なんですよね。でもコロリドだとそれが成立していて、同じような目線で話しているんです。
そういうやりとりの感じは、そのまま画面に出ていると思います。ともすればリスキーで、良くも悪くもかも知れないですが(笑)」
Netflix公開に際して
―― 全世界独占同時配信ということで、何度もリピートすることもできちゃいますが、2週目3週目で注目してほしい点などはありますか?
篠田 「ムゲが日之出くんに手紙を書いて渡そうとしたときに、クラスの子に取られちゃうシーン。そこでのキャラクターのそれぞれの動きの生々しさは注目してもらえると嬉しいです。
画面に入ってくる人物の表情とか、このキャラクターの性格ならこうするよな、とか。脇に居るようなキャラクターの所作も含めて意識しています。派手なアクションとかのシーンではないんですけど、そういうのが見えてきてワクワクできると思います。」
永江 「一瞬で通り過ぎるシーンでも、美術としてすごく描き込まれたシーンはたくさんあるんです。そういった背景の美術もくまなく見ていただけたら嬉しいですね。
サラッと流れているけど、スゴイ描き込みなんですよ。アニメーションの背景美術を担当したBambooさんの仕事ぶりというか、力なんですけど。人が描いているものなので、しっかり観ていただけると仕事をした方々が報われます(笑)」
―― 最後に、作品を楽しみにしている方へメッセージをお願いします!
篠田 「家族や友人と、リラックスして楽しんで観ていただければ嬉しいです。みんなで楽しめるエンターテインメントとして作っていますので、存分に楽しんでください」
永江 「本当に、単純に楽しんでいただきたいです。不思議な体験をして、少しでも前向きな気持ちになってもらえたならば、それで十分。観てくれた方が、そうなってくれることを願っています! 」
▼インタビューで登場した液晶ペンタブレット製品はこちら
篠田さんが使用するCintiq 13HDの後継機
Wacom Cintiq シリーズ
※ シリーズ内でも製品のスペックが異なる場合がございます。詳細は公式サイトにてご確認ください。
永江さんが使用する
Wacom Cintiq Pro シリーズ
▼映画情報はこちら
「泣きたい私は猫をかぶる」
Netflixにて6月18日(木)より全世界独占配信決定
出演
志田未来 花江夏樹 小木博明 山寺宏一
監督
佐藤順一・柴山智隆 脚本 : 岡田麿里
主題歌
「花に亡霊」ヨルシカ(ユニバーサルJ)
企画
ツインエンジン
制作
スタジオコロリド
製作
「泣きたい私は猫をかぶる」製作委員会
サイト/SNS
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