昨年リリースされた配信シングル『別の人の彼女になったよ』がロングテールのヒットを続けている5人組のポップ・ロックバンド、wacci(ワッチ)。

「普段の生活の中で通り過ぎてしまう何気なく素晴らしいことを表現する」をコンセプトに、聴く人の心の隣にそっと寄りそう音楽を届ける彼ら。今年でバンド結成10年を迎え、現在、全国47都道府県を回るツアーを敢行中の5人にこれまでの歩み、そしてこれからへの想いを聞いた。

  • wacci
    「泣きっ面にワッチ」。聞く人全ての「暮らし」の中にそっと入り込んでいけるようなPOPSを作るべく結成したバンド。公式ページはコチラ
    メンバーは、左から小野裕基(YUKI ONO)さん、因幡始(HAJIME INABA)さん、橋口洋平(YOHEI HASHIGUCHI)さん、村中慧慈(KEIJI MURANAKA)さん、横山祐介(YUSUKE YOKOYAMA)さん

インデックス

――まずは結成10周年を迎えた率直な感想からお聞かせ下さい。

気づいたら10年経っていた、という感覚ですかね。決して短くはなかったですし、あっという間とも思わないんですけど、バンドとしてはスタートが遅く、20代後半からの10年なので、改めて重みはずっしり感じます。


バンドを始めて10年というより、自分の人生においてひとつのことを10年続けたことって、思い返してもないんですよね。アルバイトで9年かな(笑)。その時間の経ち方が自分ではまだ長いか短いかはわかりませんが、振り返るといろいろな思い出が確実にあるので、駆け抜けてきたんだなって実感はありますね。


20代後半で組んだバンドですし、僕なんかは脱サラして、音楽1本で食っていくんだという決意のもと、ここまでやってきたつもりです。そのためにはどうしたらいいのか、いろいろなことに挑戦してきましたし、エンターテイメントとして楽しめるライブも追求してきました。音楽で夢を叶えるために手段を問わず全力疾走してきた10年であり、胸を張って誇れる10年だと思います。


僕も小野くんと同じで、気がついたら10年経っていた、という感覚の方が大きいですね。今年4月に初めての全国47都道府県ツアーをしたのですが、そのファイナルでミュージシャンとしてずっと憧れていた光景に出会えたんです。それと同時にまた新しいスタートラインに立ったんだなと思いましたね。


僕も橋口と一緒で脱サラしてミュージシャンになったんですけど、10年経ってよくよく考えると、実際にサラリーマンをしてたのは2年くらいなので、もうほぼミュージシャンと言って良いのではないかなと(笑)。もはや社会人経験がどうとか偉そうなこと言えないですよね。


俺も会社勤めしてたのは通算で3年くらいだから、そう考えるともう「脱サラ」じゃないなって(笑)。


――“別カノ”こと『別の人の彼女になったよ』がロングヒットを続けていることについてはいかがでしょう。

今朝たまたま聞いた話なんですけど、ある日友人が飲み屋さんにいた時、隣の席の男女グループから「だからおまえ、wacciの歌みたいに電話しちゃうんじゃないの?」って会話が聞こえてきたそうなんです。これはだいぶ溶け込んだなと思いましたね(笑)。曲が流れるのも嬉しいけど、話題になるというのがすごい嬉しかったです。


でも、リリース前はかなり賛否両論で、「こんな歌、誰が聴きたいんだ」「気持ち悪い」といった意見もたくさんあったんです。ただ、賛成意見も反対意見も、“熱量”がものすごかったので、これは何かあるんじゃないかと思っていて。実際にリリースした後も両方の意見が同じくらいの勢いなのは変わらず、賛否両論あったからこそ広がっていってくれたのかなと思いますね。

あとやっぱり、曲を聴いた方がYouTubeのコメント欄に自分の恋愛エピソードを書いてくださって、そのコメントがバズッたりしたことも印象的でしたね。その意味では、僕らの想像を越えて、いろいろな角度からいろいろな出来事を起こしてくれた1曲だなと思ってます。

――ところで、現在みなさんは全国ツアーの真っ最中ですが、10年を振り返ってツアーやライブでの印象深い出来事やハプニングを教えて下さい。

思いつくところを僕、まとめてきたので最初に発表してもよろしいでしょうか(笑)。まず1番近いところでは、今年2月に村中がインフルエンザにかかりまして、全国47都道府県ツアーの3本を4人でライブをするというのがwacci史上初めての出来事でしたね。


確かに。


次から弱くなるんですが(笑)。大阪府からの翌日、茨城県のライブへの車移動中に豪雪に遭い、ライブに間に合わないかもしれないという事態が発生しまして。


あったね、あった。


仕方なく機材車を降りて、メンバーが電車で移動したんですが、駅についたら車の方が先に着いて待っていたという(笑)。



ライブが出来る最低限の機材だけ自分たちで持ち運んでね。


2013年か2014年ごろかなぁ。


そういう状況になったのは初めてだったよね。


ライブに間に合わないから電車に乗って移動したんだけど、結局途中でさっき乗っていた車にまた乗ってライブハウス入りして「(さっきの時間は)何だったんだろう?」という(笑)。


最後は僕の話で恐縮ですが、あるライブでストリングスの音を流す機械の再生ボタンが陥没してしまい(笑)、冷や汗モノの経験を味わいました。


僕も個人的な話なんですが、前回のツアーのファイナルで気合が入りすぎて開始2曲目で足がつりました(笑)。


暗転中ストレッチしてたよね。


すっごいしてた(笑)。もう後はなるようにしかならないな、と思いながら続けましたね。


僕はファーストワンマンの時、バスドラムのペダルのバチがアンコールの最後のサビの直前に抜けました。



ミクロ中のミクロだね(笑)。


最後の最後で感動的に音を出そうと踏み込んだら「スン……」って(笑)。


今、ライターさんのノートに「スン……」ってメモられてるし。


そこだけ大きな見出しで書かれちゃうから!(笑)。


wacci 10年間のハプニング

・wacci4人ライブ事件
・ライブに「間に合わないかも?」事件
・因幡さんの再生ボタン陥没事件
・村中さんの2曲目で足つり事件
・横山さんのバスドラム「スン……」事件

――ツアー中はそれぞれルーティンのようなものはあるのですか?

前回の47都道府県ツアーの時、会場入りする前に神社巡りをしてましたね。そこまで強い想いはなく、比較的神社が好き、という程度ですが(笑)。



僕はいつも「平常心」でいたいというか、特別なことをして日常が「特別」になってしまうのが苦手で、なるべくそういうものを作らないようにしています。


ライブ会場では弁当が出るんですが、僕は必ずその土地の食べ物を1品買って一緒に食べる、ということをよくしてましたね。例えば山口県だったらフグの……皮とか(笑)。珍しいお魚の刺身とかスーパーで買って食べたり。前回のツアーでは炊飯器を持ち込んでお米炊いてたんですが、お客さんからはたくさんご飯のお供をいただきましたね。


僕はライブ前に大好きなアイドルの「でんぱ組.inc」のライブ映像を見たり曲を聴いたりして、泣いて気持ちを高めてから本番に臨むようにしてます。「ちょっと『でんぱ』入れてくる」って言って(笑)。



僕はツアー中にドラム叩くのが下手になるのが嫌で、毎日でも自分の手が動くか叩いて確かめるために練習するんですけど、部屋でそれをやると迷惑になるので、Googleマップで緑の場所を探して、そこで練習してます。あとはサウナですね。現時点で18都道府県回れたので、次のツアーで完全制覇したいです(笑)。

――みなさんオススメのご当地メシはありますか。

沖縄のタコス専門店で『メキシコ』っていう店があるんですけど、そこはオススメですね。タコスしかメニューにないから、店に入るとすぐさま「何個ですか?」って聞かれるんですよ(笑)。


あそこのタコスは美味しかったね~。


沖縄の人は〆にステーキを食べるらしくて、4日間滞在中の3日はステーキ食べてました。食材にも興味ありますけど、僕は食文化の方が興味ありますね。


前回のツアーで長崎に行った時は、毎日の昼ごはんは必ずちゃんぽんか、かた焼きそばでした。


  • hairmake:大八木智之(eclat)、stylist:ホカリキュウ

――wacciファンを始め、これからwacciを知る方々に、メンバーそれぞれがオススメするwacciの「この1曲!」をぜひ教えて下さい。

僕はファーストアルバムの『日常ドラマチック』に収録されている『変身』です。なかなかライブではやらないですけど、歌詞が刺さる人はきっと多いんじゃないかなって。


『自分を無理に誰かと比べたり 誰かになろうとするのではなく
僕は僕のままで 君は君のままで 信じて生きていくのがいいよね』

という曲です。


新しいアルバム『Empathy』の『足りない』は、いわゆる失恋ソングですけど、思いが強すぎて自分の嫌なところが出てしまう、そういう時に聴きたかったなと思わせる曲というか。「失恋ってこれだな!」って思わせる歌詞にどんどん共感してどんどんヘコんで欲しいです(笑)。


僕はセカンドアルバム『感情百景』の『あいかわらず』です。あくまで自分の感覚ですけど、wacciを結成した当初の橋口の世界観がすごく出ている歌詞とメロディーかなと。ミクロで具体的な生活を切り取りつつ、大きな枠について歌うバランス感が絶妙で、生活にすっと入っていけるような歌詞なんですよ。最近wacciを知った方だと、こういうアプローチの曲にまだ出会ってない人もいるかなと思って。


僕も新しいアルバムから『どうかしている』。自分でアレンジさせてもらったというのもありますし、橋口くんの新しい一面が出てきたのかなと思う曲ですね。彼が過去にイジめられていた経験に基づいて書かれていて、1人で悩みを抱えている人や、今まで僕らに興味を持ってなかった人にも届く曲だと思います。「僕」で始まった歌詞が最後には「僕ら」になっているところがすごくこのバンドらしいし、すごく大事だなって。


僕はセカンドシングルの『東京』です。この曲はインディーズ時代からある曲で、

『ねぇ どこかで出会って もう忘れた人達へ
僕が消えたらどんな気持ちになりますか?
驚いて 頷いて 数分後には元通り 悲しいけれど 僕もおそらく同じです』

という歌詞があるのですが、この曲を超えたくてずっと曲を作っているし、この曲がなかったら生まれなかった曲もたくさんある。こういう視点はこれからも大事にしていきたいと改めて思う曲です。“別カノ”をはじめ、wacciとの出会いにはいろいろな入り口があると思いますが、ぜひそこから掘り下げていただいて、僕らの色々な曲と出会ってほしいです。

メンバーがオススメする「wacciこの1曲!」

・横山さん:「変身」(1st.アルバム『日常ドラマチック』収録)
・村中さん:「足りない」(最新アルバム『Empathy』収録)
・因幡さん:「あいかわらず」(2nd.アルバム『感情百景』収録)
・小野さん:「どうかしている」(最新アルバム『Empathy』収録)
・橋口さん:「東京」(1st.アルバム『日常ドラマチック』収録)

――結成10周年記念のアニバーサリーライブ、独占インタビューや47都道府県ツアーの裏側に密着したドキュメンタリーを含めたwacci結成10周年記念特別企画が、チャンネルNECOで来年1月から放送予定です。ご覧になる視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。

ここまで長く密着していただいたことって経験がないですし、素というか、僕らが普段こういう風に音楽と向き合っているんだという姿をそのまま撮ってもらっていると思いますので、僕らも見るのが楽しみですね。


僕ら後列のメンバーは表情とか動きを寄った映像で見てもらえるので、そこが嬉しいです(笑)。


ありのままを見てもらうのはありがたいですけど、同時にいろいろな面も見えてしまいますし……(笑)。それはさておき、自分たちがこの10年、真剣に音楽と向き合ってきたんだということをしっかり見てもらえる内容だと思っているので、ぜひ見ていただきたいです。その上で、どんな覚悟で、どんな気持ちで僕らがステージの上に立っているのか、どれだけ前を向いてまとまっているのかも見てもらえると思うので、ぜひ、ご覧下さい。

――wacciのみなさん、本日はありがとうございました。

  • photographer:田中史彦

[PR]提供:日活