「保育園の送り迎えが大変」「共働きは時間に追われる」など、先輩ママたちから話をきくにつれ、「自分にできるんだろうか」と育休からの復職前に不安になる人もいるのではないでしょうか。子育てには不測の事態が起きるもの。だからこそ、「育休の復職前後にどうすればよいのか」考えておきたいですよね。そこで、育児と仕事の両立セミナー講師などをつとめる林田香織先生に、職場メンバーとの関係づくりについて、大切なポイントを伺いました。

◆プロフィール
林田香織
ワンダライフLLP 代表
NPO法人ファザーリング・ジャパン 理事

自治体・企業にて、育休前・復職前セミナー、夫婦向けコミニュケーションセミナーなどを全国で実施。育児と仕事の両立、1人ではなく周りを巻き込みながらチームで育児をする「チームわが家」を提唱する。プライベートでは3人の子育てに奮闘中。

「やる気はあるのに業務がない」~職場復帰したママの悩み~

――インタビューに先立ち、マイナビニュースの子育て中の読者に対して、「育児に関するアンケート」を行いました。ママから寄せられた回答をみると、業務量とやる気のバランスがうまくとれていないようなコメントがみられました。


Q:復職後、職場でどのようなことが障壁となりましたか?

時短勤務の為、簡単な仕事しか出来ない。あまり職場に貢献できてないような気がしてモヤモヤする。(愛知県/32歳/女性)

業務量が減らされ、暇になった。(東京都/30歳/女性)

林田先生
なるほど。「産後」を周囲に考慮されるあまりに、産前と同じような業務量が与えられず悩んでいる方が多い印象ですね。これらを解消するには職場のメンバーとの関係づくりが重要です。特に業務とやる気のバランスに関しては、上司とのコミュニケーションが大事かなと。

――業務量とやる気のバランスを解決するには、上司とどのようなコミュニケーションをとればいいでしょうか。


林田先生
育休から復職して時短勤務だと、「できないこと」についつい目が向きがちですが、大事なのは「ここまでだったら、できる」「この仕事はやりたい」という気持ちを伝えることです。そうすると、上司も「ここまでだったら任していいんだな」と考えられます。そのためには、育休中から上司とコミュニケーションをとっておくといいですよ。

――どんなことを話せばいいでしょうか? 育休中だし、なかなか仕事のことをすぐには考えられない気もします。

林田先生
例えば、職場の仲間の最近の状況でもいいし、自分が引き継いだ案件が今どうなっているかでもいい。オフィスのレイアウトが変わったなどの雑談でもいい。育休から復職した時に浦島太郎状態になるよりは、職場に溶け込みやすくなります。そうすれば、上司に対するコミュニケーションもとりやすくなりますよ。

「育休なんかとりやがって」~育休取得するパパの悩み~

――なるほど。ポジティブなコミュニケーションをとるために育休復帰前から土壌を整えていくというイメージですね。 男性も最近では育休の取得が増えているのか、マイナビニュース読者へのアンケート回答をみても約半数以上が育休取得経験があるようです。やはり男性の場合も上司とのコミュニケーションが大切なのでしょうか。

林田先生
そうですね……。ただ、男性の場合は復職後よりも、育休を取得するタイミングでハードルがいろいろあると思います。実際、マイナビニュースの読者アンケートでも、パパからは育休取得時に困ったという回答が多く寄せられていますからね。

Q:復職後、職場でどのようなことが障壁となりましたか?

そんなの取りやがってという目で見られた。(岐阜県/45歳/男性)

会社の理解が少なくてあまり休めなかった。(静岡県/36歳/男性)


――たしかにそうですね。ちなみに、ハードルとは具体的にどのようなことでしょうか?

林田先生
男性の育休って制度的にはあるけど、風土的にはまだ根付いていない企業が多いんですよ。だから、雰囲気的に後ろめたさを感じるとか、とれたとしても短期間だったり繁忙期を避けてなど条件がついていることが多くて、なかなか思うようにとれません。だから男性の場合は、育休前の種まきが一番大切だと思います。

――種まきとは具体的に何を指しますか?

林田先生
例えば、周りに育休を取得している人がいなければ、妊娠が発覚した時点から少しずつ「育休を取得したい」というイメージを植え付けておいたり、周りにとっている人がいればアドバイスを聞いたり、とにかく「僕は育休を取得しますよ」というのを少しずつ周囲に知らせることですね。

――「育休をとるんだな」と思わせておくことで、周囲もそれに備えられますよね。周囲に知らせる際にどのような内容を共有するとより理解が得られますか。

林田先生
業務の繁忙期と避けて取得するよう相談してみたり、ずっと忙しいところであれば引継ぎを行う時期を具体的に決めたり、男性は産後8週間以内に取得すれば2回に分けて育休を取得することもできるので、「周りの負担にならないように私はこうしたい」ということを具体的に伝えておくと周囲も安心できますね。


同僚からフォローされても”申し訳なくない”

――なるほど。では職場でのコミュニケーションでも、女性は育休取得後、男性は取得前を大切にすることで、育児と仕事の両立がしやすくなるんですね。そもそも気を付けるポイントが違っていることに驚きです。 また、他のアンケートをみると、同僚のフォローがとても助かったというエピソードが多いようですが、同僚とのコミュニケーションで気を付けるポイントなどはありますか

Q.:育児と仕事を両立するうえで、職場に「あってよかった」と思ったことがあれば、具体的なエピソードを入れて教えてください

急な休みをもらうことになっても周囲がフォローしてくれた。(東京都/39歳/女性)

同僚たちがフォローをしてくれました。(埼玉県/39歳/男性)


林田先生
フォローをしてもらったことに感謝をしつつも、制約があることに対して「申し訳ない」という気持ちを必要以上にもたないことがポイントです。そのためには、自分もできるときには周りを助けていきましょう。「自分もみんなを助けたい」と発信していけば、お互い様になりますよね。「私ができるときはあなたを助けるから、あなたも私を助けてね」と双方向の関係を築く認識を持つことが重要です。

――確かに、フォローしてもらうだけでは申し訳なくて頼みにくくなります。互いに助け合って、大変なのは、自分だけではないという認識を持つことが大切というわけですね。

林田先生
そうですね。育児だけでなく、介護、自分の体調などによって、誰もが働き方に対して何かしらの制約が出てくる場合がありますから、制約は別に特別なことではないんです。だからこそ、職場のメンバー誰もが休みやすく、帰りやすい雰囲気になると同時に、お互いの状況に応じてカバーしあえる職場はいいですよね。

そうやって、一人ひとりが意識をしていけば、会社全体の意識もかわっていくと思います。時短で帰ることや休むことを必要以上に申し訳ないと思わず、みんなでお互い様という気持ちで働けば、ワークライフバランスがとりやすくなるのではないでしょうか。

――林田先生、ありがとうございました。

育児と仕事の両立というと、自分の業務の効率化や、同僚にどうやって頼むかといった身近なことに目がいきがちでしたが、今回お話を伺って、「自分ができること」「自分がやりたいこと」をしっかりと周囲の方に伝えていくことが、両立のための準備になるのだなと思いました。


なお、今回のインタビューについて、ピジョンのオウンドメディア「コモドライフ」と「ChatCast」でも違った視点の記事を掲載しています。「コモドライフ」では「家庭」にフォーカスしたお話を、「ChatCast」では林田先生のインタビュー全文を公開中。ぜひ、チェックしてみてくださいね。

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【産後の育児に関するアンケート】
調査時期 : 2019年9月5日
調査対象 : マイナビニュース会員(セグメント:20代~40代/子持ち/会社員)
調査数  : 200人
調査方法 : マイナビニュースインターネット調査

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