子供が産まれて育児休暇から職場への復帰は、ワクワクもするけれど不安もあるもの。初めての育児と仕事の両立には、家族や保育園との協力はもちろん、職場のサポートも欠かせません。

多くのママ・パパが働き、ワークライフバランスの向上に取り組む企業は、どのような取り組みをしているのでしょうか。今回、全日本空輸株式会社(ANA)で子育てをしながら働くママと、人事担当の方に話を聞き、育児と仕事のバランスの取り方や不安の解消の仕方を探ります。

▼お話を聞いた方

(中央)デジタル変革室 サービスプラットフォーム部グローバル戦略チーム
マネジャー 図子絵梨奈さん

(左)人財戦略室 人事部 ダイバーシティ&インクルージョン推進室
コーディネーター 角亜紀子さん

(右)人財戦略室 人事部 ダイバーシティ&インクルージョン推進室
和知恵美さん

育休復帰後、短時間勤務は何時間にする?

今回お話を伺うのは、小学校3年生と保育園年中のお子さんを育てている図子絵梨奈さんと、産休育休からの復帰をサポートする人財戦略室人事部の角亜紀子さんと和知恵美さんです。

――今日はよろしくお願いします。図子さんは二度の育休・復帰を経験されたそうですね。初めて育休から復帰された頃を振り返って、改めてお話を聞かせてください。

私は現在、IT・デジタル技術を活用して新たな国際線サービスを導入するプロジェクトマネジャーをしています。第一子の時は、はじめての復帰ということもあったので、最初は1日当たり5時間の短時間勤務からはじめ、子どもの様子や仕事の量などをみながら、6時間、7時間というように少しずつ勤務時間を増やしていきました。


  • 二人のお子さんのママで、現在は国際線サービス関連のプロジェクトマネジャーである図子さん

――短時間勤務でも、状況に応じて勤務時間を変えていけるんですね。

いざ育休明けに出勤すると、自分がどこまで働けるかとか、子どもが体調を崩しがちだとか、ペースがつかみにくいこともあります。当初は5時間勤務だけだったのですが、実際に短時間勤務をする社員から意見が出て、6時間、7時間、フルタイム(8時間)と選べるようにしています。また、客室乗務員など業務特性により短時間勤務が難しい職種は、1日の労働時間は通常通りで、年間勤務日数を少なくする"短日数勤務制度"もあります。


5時間勤務だと、9時に出社して退社が14時なので、家事をしてから保育園へ迎えにいく、ということができるんです。子どもの世話や家事と仕事のバランスがとりやすくて、これなら仕事と子育てを両立できそうだなという自信につながりました。


部署で初めて産休育休を取得。その時同僚は……?

――図子さんの部署は、育休・復帰するメンバーは多いのでしょうか。

男性が多い部署で、実は私が最初に育休を取得したんです。前例がないから、「何かあったら相談してね」と周囲のメンバーがサポートしてくれて助かりました。今は育休中の方が3名、短時間勤務をしている方が1名います。私は現在フルタイム勤務ですが、突発的に子どもが体調を崩した場合なども、業務が支障なくできる環境であれば、テレワーク制度を利用し、自宅で業務をすることも認められています。


――時間や場所含めて、働き方を柔軟に選べるんですね。

そうですね。結婚・出産を経て、就業継続するためには何が必要かということで、2007年頃から本格的に仕事と育児の両立支援体制を整えてきました。さらに社員の声を聞いて反映するうちに、今のように働き方の選択肢が増えていきました。


  • 人財戦略室 人事部 ダイバーシティ&インクルージョン推進室 和知さん・角さん。働くママへのサポートはもちろん、パパの育休促進や、イクボス(部下のワーク・ライフ・バランスを考え、その人のキャリアと人生を応援しながら、チームの業績も出しつつ、自分も仕事と私生活を楽しめる上司のこと)の推進といった取り組みも手掛ける

――少しいじわるな質問になりますが、短時間勤務などをする人が増えると、フルタイムで働くメンバーが不公平感を感じることはないんでしょうか。

育児に限らず介護との両立のために短時間勤務を選択する社員もいますし、生活の変化にあわせて働き方を柔軟にするのは、「お互い様」という思いを持っているようです。子育て中の社員が制度を使って働く姿を見ると、「自分が将来そのステージに立ったとき、こういう働き方ができるのか」とイメージできますしね。


――図子さんは育児をしながら働く先輩ママでもありますが、後輩からどのような相談を受けますか?

勤務時間や業務内容の相談よりも、制度や生活に関する相談が多いですね。会社の制度を利用するための申し込み時期や、保育園を探す時期、上司との復職面談をいつやるのかとか、子どもが病気になったときにどうすればいいか……とか、みんなわからないですよね。


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家族も一緒に! 先輩の体験談が聞ける社内セミナー

――図子さんは、ご自身が産休・育休を取得する前に、自社の制度について把握していましたか。

実際に取得するまで詳しくは知らなかったです。でも産休前、同時期に産休育休を取る人に向けて、サポート部署が制度に関する説明を実施してくれ、そこで詳しく知ることができました。また復職前は、上長と復職にあたっての心配事などを相談する機会がありました。


社員個人単位のフォローだけでなく、客室乗務員やグループ社員全体に向けて、「仕事と育児の両立支援セミナー」も実施しています。セミナーでは先輩社員から仕事と家庭を両立するためのノウハウを聞いたり、復職後に利用できる制度の説明を行ったりしています。最近は、社員本人だけでなくて、家族と一緒に参加する方も増えているんですよ。


  • 「仕事と育児の両立支援セミナー」社員だけでなく、パートナーや子どもも一緒に参加できる

私も参加しました! 以前は、社員だけが対象でしたよね。


3年ほど前から家族も一緒にご参加いただけるスタイルを取り入れていて、今では参加者の8割ほどがご家族と一緒に参加しています。復職後の仕事と育児の両立は、やはり家族の理解が大切なんですよね。客室乗務員の場合、宿泊を伴う勤務で数日家を空けることもあるので、先輩家族の経験談はとても参考になると言われます。


先輩社員には、実際に過ごしている一日のスケジュールやパートナーとの家事育児の分担なども細かく紹介していただきます。事前に「先輩社員に聞きたいこと」を参加者にアンケートで伺うと、夫婦ともにシフト勤務の場合の子供の送迎やベビーシッターなど、外部サービス利用についての話題があがってきますね。


復職後どういう生活をしているのか想像がつかなかったので、セミナーで具体的なスケジュールを教えてもらえたのはよかったです。先輩の話を聞いてから自分に置き換えたり、他のママとの保育園の情報交換をしたりすることなども役立ちました。


  • 説明会やセミナーで配布される「仕事と育児の両立支援ブック」。内容には先輩社員の1日のスケジュールなども書かれています

――制度もセミナーの内容も、産休育休を経験した社員の意見を取り入れてブラッシュアップしているんですね。

そうですね。社員提案型の企画で実現したことだと、企業内保育所を、2018年4月から開園しました。シフト勤務者に利用しやすいととても好評です。


  • 東京モノレールで羽田空港から1駅の新整備場地区にある保育園の内観。「オムツなどの準備が不要で手ぶらで預けられる」「朝7時から22時まで、365日開園」ど、利用しやすい工夫もしています

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産休・育休中はいろいろ不安が募ると思います。取得された方は、一定期間お休みをしているだけでそれまで培ったその人自身の能力や知識はそのまま。むしろ、育児経験が業務に活かせることも多いと思います。だから、ご自身のキャリアを活かして働けるよう、安心して戻ってきてもらえる環境作りをしたいと思っています。


もし、育児休暇・職場復帰前の自分に声をかけるとしたら?

――最後になりますが、もし今職場復帰前の自分に声をかけるとしたらどう伝えますか?

職場によると思いますが、ANAの場合は比較的育児と仕事を両立しやすい体制が整っていると思います。子どもがいることで業務を任せてもらえないといった不満を感じたこともありませんし、特別扱いされることもありません。復職前は、自分の体調や子どものこと、一変する生活サイクルなどいろいろな不安がありました。でも、職場で待っていてくれる同僚が自然に受け入れてくれるという環境があるから、安心していいよ、と伝えたいですね。


――図子さん、角さん、和知さん、本日はありがとうございました。

初めての子育て、そして初めての働きながらの育児は不安が多いもの。会社によって制度はさまざまですが、今回、「短時間勤務の勤務時間を選べる制度」を活用し、仕事と育児のペースを掴むことで、「これならやっていけるかも」という自信につながった、という図子さんの話は特に印象に残りました。

自分の会社にどんな制度があるか、またその制度はどう使えるか、さらに、社内で手助けしてくれる人がいる環境や風潮ができているかといったことを、産休に入る前、また育休明けの前に確認してみてはいかがでしょうか。

また、育児や仕事のやり方を、同じような業務内容、同じような勤務体系の先輩からを聞くというのも、非常に具体的で、不安が和らぎそうです。「復帰後の具体的なイメージ」と持つこと、「育児と仕事を両立させる自信を持つこと」は、職場復帰のための大切なポイントかもしれない、そんなことを感じた取材でした。

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