「Dynabook株式会社」に社名を変え、シャープ傘下でスタートしたノートPCブランド「dynabook」(ダイナブック)。同社が30年間培ってきた技術力と、シャープとのシナジーを凝縮した渾身の一台が、「dynabook G」です。
「dynabook G」の“G”は、「正真正銘、本物」という意味の英単語“Genuine”の頭文字から命名されました。「dynabook」のコンセプトである“いつでも・どこでも・だれでも”を目指し、高みのバランスを追求した本機。その中身はどのような作りになっているのでしょうか。Dynabook株式会社、PC設計部の杉浦氏が直接分解し、解説してくれました。
dynabook Gの第一のポイントは“軽さ”
杉浦氏は最初に「dynabook Gの開発は、軽量化を第一のポイントとして進めました」と設計思想について語ります。dynabook Gの設計に当たって重視されたのは、軽さと価格、堅牢性を両立させることです。
dynabook Gのボディはマグネシウム合金を主として利用しており、最軽量モデルは約779gを実現しています。これだけでも十分軽量ですが、実はもっと軽くすることも可能でした。しかし、高価な素材を使うと本体価格も上昇してしまいます。「一人でも多くのお客様に届けるため、コストとのバランスを考えて、本体価格が高くならないように設計しています」と杉浦氏は説明します。
堅牢性も重視されています。dynabook Gはモバイルノートであり、多くの人が外出時に持ち歩くでしょう。ですが、破損しやすく取り扱いが難しいようであれば使い勝手は低下してしまいます。杉浦氏は「持ち運び中に壊れてしまう、キーボードの使い勝手が良くない、といったPCは、dynabookクオリティに達していません。品位の部分にも妥協しないようにしました」とそのこだわりを熱弁しました。
底面のネジを外してカバーを取り外す
ここから実際にdynabook Gの分解がスタート。杉浦氏はまず、ドライバーを使って底面からネジを取り外していきます。底面はほとんど平面に見えますが、実はうっすら中央がへこんだ、すり鉢状の形になっています。これは、底面から力を加えた時に液晶ディスプレイが破損しないようにする工夫だといいます。現在、液晶パネルは軽量化のため、ガラスなどがより薄くなっているため、製品の天面から押した時に底面をたわませることで、ダメージを減らしているのです。
本体を支えるゴム足は、白いゴム素材と黒いプラスチック素材で構成されています。真ん中には穴が開いており、外から押したときにへこんで微妙な高さの違いを吸収する作りになっているそうです。2つの素材はカバンに入れた際に外れたりしないよう溶着された一体成型になっています。
ネジ1つ1つにも工夫が施されています。ネジは、衝撃などで徐々に緩んでいくパーツです。これを防止するために、ネジにはゆるみ止め接着剤を塗布し、ゆるみを防ぎます。
内部の基板やバッテリーをチェック
底面のカバーが空くと、本体内部の基板やバッテリーなどが現れます。基板にはあえて10層貫通基板を使用したと杉浦氏は語ります。ビルドアップ基板を用いた方が基板を小型化できるのは確かですが、そのぶんコストもかさみます。基板のレイアウトを最適化し、安価な構造で実装したことも工夫の1つといえるでしょう。
メモリはオンボードとSO-DIMMスロットの2通りで実装されています。オンボードの方が軽量化の面で有利ですが、そのぶんコストが高いそうです。また基板の裏側にはM.2スロットがあり、SSDが搭載されています。この箇所はキーボード上部の高さがある箇所に入り込んでいます。
CPU性能を最大限に発揮するため、冷却設計についても工夫が見られます。空気の流れや温度分布予測を可視化する熱流体解析により、効率的な冷却システムを実現。排気は液晶ディスプレイの開閉角度によっても変わるため、様々な角度から冷却効率のシミュレーションを行い、排気による熱影響を受けにくく、冷却できる吸気位置、排気口形状を決定したそうです。これにより効率的な吸排気を実現しています。
バッテリーは4セル、2セルの2種類。パームレスト部の内部に当たるため、バッテリーに負荷がかからないよう、しっかりとした梁が作られています。また2セルの場合、左右のスペースが空くことになりますが、“ダミーバッテリー”と呼ばれるプラスチック製のスペーサーを配置することで強度を保っているそうです。
スピーカーにもこだわりを見せており、老舗音響メーカーであるオンキヨーとともに設計・開発したモジュールが搭載されています。スピーカーの音を良くするためにはボックスを大きくするのが簡単ですが、ノートPCの限られたスペースでは難しく、またそれだけ重くなってしまうため、最適な容量と質量で設計したといいます。
液晶パネルと基板の接続部は、本体の開閉などの負荷によって外れやすく破損しやすいため、ケーブルに遊びを持たせたうえでしっかりと補強されています。誤って抜けてしまう可能性もあるコネクタには金属レバーによるロックも設けられているのがわかります。
キーボードと無線アンテナの特殊な構造
無線LANのアンテナ位置は独特で、本体の両肩に配置されています。従来は液晶ディスプレイの両端に配置されていましたが、これにより液晶ディスプレイの狭額縁化を実現しています。また、フットプリントの小型化にも貢献、小型化も可能となりました。
しかし、本体部にアンテナを実装すると、アンテナ特性がPCを設置する場所などの影響を受けやすくなってしまいます。そこで、dynabook Gではアンテナエレメントの改善、周囲の導体からの離隔距離の調整、ケーブルの短縮などの対策をし、液晶ディスプレイの上部に配置した場合とほぼ同等のアンテナ性能を確保しています。
dynabook Gの堅牢性を感じる最大の箇所が、キーボードです。打鍵感と安定した動作を実現するため、キーボードは60本を超えるネジで固定されています。またフレームを単純に平面で打ち出すと強度が出ませんので、1つ1つに壁を作ることで剛性をあげているそうです。
杉浦氏はさらにキーボードカバーの厚みについて言及。「キーボードのカバー側は、強度を保つために質量とのバランスを考えながら肉厚にしたり調整しました。計測上は問題ないのですが、実際に試作機を社内でレビューするとキーボード周囲の強度が十分ではないという意見が出たからです。人の手がもっとも触れるところですから、質感には妥協しませんでした」と、dynabookクオリティへのこだわりを熱く語りました。
シャープとの協業がいきるIGZOパネル
続いて杉浦氏は、ギター用のピックを使って液晶ディスプレイの分解に取り掛かります。液晶ディスプレイにはシャープのIGZOパネルを採用しており、dynabook Gの魅力の1つといえるでしょう。
液晶ディスプレイの上部中央に取り付けられているのは、可視光と赤外線光の両方を感知できる小型顔認証対応HDカメラモジュールです。これにより、カメラモジュールの高さを8mmから6mmに縮め、面積、質量ともに約50%削減できました。また、顔認証対応HDカメラ向けに最新のRGB-IR CMOSセンサーを採用することで、従来機種と同様の顔認証性能を維持しています。
分解はさらに進み、ついに液晶パネルが天板から取り外されました。液晶パネルはやわらかくガラスも非常に薄いため、周囲にゴムクッション、中央にはスポンジを配置して衝撃を逃がしています。また、前から押した際にもたわんで割れたりしないよう、下部には横一線にプラスチックバーも取り付けられています。液晶パネル側のコネクタも本体側同様、金属レバーによってロックされており、外れにくくなっています。
質量とコスト、質感のバランスを追求したdynabook G
こうしてdynabook Gの分解がすべて終了しました。あらためて並べると、パーツ1つ、ネジ1つに対してもこだわりにこだわり抜いた設計が行われていることが分かります。開発を進める中で、杉浦氏はどのような点に苦労したのでしょうか。
「dynabook Gの開発を行う中でもっとも大変だったのは、やはり軽量化と堅牢性、コストのバランスです。軽くするだけなら高価な素材やパーツを使えばよいので簡単ですが、現実的な値段で提供できなければ、dynabookのコンセプトの1つである“だれでも”は達成できません。また、軽量化を追い求めると当然、堅牢性が不安になってしまいます。そうしたバランスを整えるのが一番の難題でしたね」
今回は専門家が分解を行いましたが、PCの分解は感電などの恐れがある行為です。ユーザーの手で分解した場合、メーカーの保障が受けられなくなる場合がありますので、故障の際はユーザーサポート窓口に相談し、サービスマンによる対応を受けるようにしてください。
最後に、dynabook Gに触れるユーザーにぜひチェックして欲しいと思う箇所を杉浦氏に聞いてみました。
「キーボードの打鍵感やその周囲の強度に触っていただいて、持ち運ぶ際に安心して使っていただける堅牢性を備えているということを確かめてほしいですね。軽いからといってペコペコしたりすることはありません。ぜひ店頭などでその感触を体験してください」
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