時代の移り変わりとともに、何を学ぶか、どのように学ぶかが教育の大きな課題となっています。そんな中で注目を集めているのが、ICT教育。学習意欲や情報活用能力の向上、授業の効率化などにつながると多くの効果が期待されています。
今回マイナビニュースでは、立命館大学がICT教育の一環として「BIG PAD」という電子黒板を導入しているとの情報をキャッチ。なんでもキャンパス全体を学びの場にするべく、多様な学習スタイルに対応できる教学環境を整備しているのだそうです。
ICTで教育はどう変わるのか?その実態を調査すべく、現役立命館大学生の梅村遥奈さんに学校を案内してもらったので、その様子をリポートしていきます。
電子黒板「BIG PAD」って?プレゼン中の授業に潜入!
やって来たのは、JR茨木駅から徒歩約5分のところにある「立命館大学大阪いばらきキャンパス」。2015年4月に開設したばかりの同校は「キャンパス全体をラーニング・プレイスに」とのコンセプトで設計され、2015年度グッドデザイン賞を受賞しています。
BIG PADが普段どのように使われているのか、まずは授業中の教室にお邪魔しました。
ドアを開けると、プレゼンテーションの真っ最中。教養科目の授業で、この日は各自が調べたテーマ(グローバル・コミュニケーションの経験とソーシャル・イノベーション)について、BIG PADに資料を映しながら英語でプレゼンをしていました。
すると、「何か気づきませんか?」と梅村さん。そのヒントは、プレゼンを聞く学生たちの手元にありました。
紙の資料が配られていないんです。プロジェクターだとどうしても見にくくて、それを補うために紙の資料が配布されるんですけど、大画面で見やすいBIG PADならその必要がありません。紙を配ると聞き手は下を向きがちですが、BIG PADに映しておけば全員が前を見ます。“聞いてもらえている感”があれば発表者も話しやすいので、プレゼンに一体感が生まれるんです |
プレゼンといえば暗い中でスクリーンだけが煌々と照らされているイメージですが、訪れた教室は明るく活発な印象を受けました。高輝度のBIG PADが、プレゼンの雰囲気を変えていたのです。
プロジェクターの場合、ひとつの発表が終わるたびに照明の明るさを調整したり、発表者ごとにパソコンをつなぎ直して動作確認をしたりして流れが止まってしまいますが、BIG PADのおかげで授業をスムーズに進行できているそうです。無駄な時間を省き、密度の濃い授業が展開されていました。
BIG PADの特徴はこれだけではありません。梅村さんが実演してくれました。
ペンで書くとシャッシャッと音がして、まるで紙に書いているような書き心地なんです。反応が早いので、ストレスを感じません |
画面に触れるだけで画像を簡単に拡大・縮小できて、直感的に操作できるのが嬉しいですね。日本の学生だけではなく、海外からの留学生もすぐに使いこなせています |
映したレジュメに直接書き込めて、それをワイヤレスで飛ばして自分のタブレットやスマホに保存できるのがとても便利です。また、複数人で同時に書き込めるので、グループワークやミーティングなどで資料を共同で作成するときにも役立っています |
ICT教育で未来を体験!BIG PAD導入のきっかけと活用方法
学生たちの学びに大きな変化をもたらしているBIG PADですが、立命館大学は、どのような狙いがあってBIG PADの活用を始めたのでしょうか?導入担当者の倉科健吾さんと、生命科学部の山中司教授にインタビューしてみました。
BIG PAD、すごく便利なのですが、そもそもどうして導入されたんですか? |
今、学生や先生たちのニーズは多様化していて、ひと昔前のように画一的なシステムでは対応できない現実があります。キャンパス設計段階で先生方とディスカッションをした際に、設備が固定されていることが、先生方が挑戦されようとする新たなスタイルの授業実践を妨げていると痛感しました。授業スタイルを新しくするには、設備も動かないといけない。そのため柔軟性のある設備環境を整える必要があり、自由度の高いBIG PADは非常に魅力的だったんです |
なるほど!具体的にはどういったところに魅力を感じたんでしょうか? |
可動式であること、専用のソフトだけではなく先生方が使い慣れているアプリの画面をそのまま映して書き込めることなどですね。あと、プロジェクターとスクリーンを組み合わせて施工するのと変わらない費用感と、メンテナンス性や耐震性の良さも導入の決め手でした |
いばらきキャンパスには100台ほど設置されているそうですね!最近ではどのように活用されていますか? |
PowerPointやKeynoteでのプレゼンはもちろん、タイマーを表示させたり、WordやPDFをBIG PADに映して授業を行うケースが多いように見受けられます。特に、企業の決算書や国際機関の統計など細かい数字が羅列しているような生データを映せば、必要な箇所だけをその場で拡大したり、補足情報を書き込めたりするので、「資料作成にかかる時間を削減でき、俯瞰的な解説ができるようになった」と先生方からも好評です。また、共用スペース設置のBIG PADはクラブ活動や学園祭で学生たちが自由に利用しています |
私の授業では、当キャンパスと韓国と台湾の大学、それから日本の早稲田大学をスカイプでつなぎ、遠隔でグループディスカッションを行うのですが、画面を4分割してBIG PADに映しています |
大画面で臨場感がありそうですね! |
等身大に近いのですぐそこにいるかのようなリアリティがありますね。ですので気が抜けません(笑)。学生たちには良い刺激になっています |
ほかには、どんなふうに利用されているんですか? |
補講用や基礎的な内容の再履修用の授業コンテンツをムービーで撮影して流したり、図書館では、海外からの留学生向けに全世界の新聞を読めるようにしたりと、画面の見やすさとタッチパネルの利点を生かした使い方をしています |
キャンパスライフに欠かせない存在になってきていますね!最後に、今後目指すICT教育について大学のビジョンを教えてください |
2030年を視野に入れた学園ビジョンをまさに策定中で、そのなかで多岐にわたる分野でICTは重視されています。ニーズは幅広いので、現段階では「多様化」へどう応えるかがキーだと考えています。事実、先生方の授業をサポートしている教学部門のスタッフと話をしていても、様々なニーズが日々湧き出していることを感じます。当キャンパスには1,000名ほどの先生がいらっしゃいますが、その数だけ教育におけるICTにニーズがあると言っても過言ではありません。それらに対応するためには、BIG PADのように操作が直感的かつシンプルで、誰でも簡単に自由に使えるツールが求められます。ひと言で表すと「利用者が使い方をデザインできる」というのがポイント。BIG PADを中心に据え、よりフレキシブルで多様なICT教育を実現できる環境を整えていきたいですね |
大学というのは、少し先の未来を教える場所であるべきだと思うのです。いずれBIG PADのような電子黒板が学校やオフィスに当たり前にある社会になります。その前に慣れ親しんでおき、学生たちには未来について考えてほしい。例えば、学会ではポスター発表を行いますが、やがて様変わりするでしょう。というのも、どうしても紙のポスターでは表現に限界があるからです。それなら、映像や音を埋め込んだ先進的なポスターを作成しBIG PADで発表する経験を今のうちに積んでおけば、学生たちの将来に大きなアドバンテージになります。世の中に先んじて未来を体験できるように、これからもICT技術を積極的に活用していきたいと思います |
少し先の未来を学べる場所って素敵な響きですね!本日はありがとうございました! |
立命館大学のICT教育を支えるBIG PAD!生みの親たちが抱く思いとは?
学生たちの可能性を広げるICT教育。今回登場したBIG PADは「ひとりひとりによりそいこれからの学びをサポートしたい」というコンセプトで、シャープが開発した教育ソリューションだったのです。後編では、そんなBIG PADの開発を手がける生みの親たちの熱い想いに迫っていきましょう。
後編もお楽しみに!
後編は7月31日公開予定
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