世界中で楽しまれているお酒といえば、やはりウイスキーだろう。日本でもウイスキーをソーダ水で割ったハイボールが年代問わず人気であり、そこからウイスキーの奥深さに魅了されていく人も多い。
とはいえ、ウイスキーといっても様々な種類がある。本日紹介するのは「シングルモルトウイスキー」。ウイスキーを飲んでいるとよく耳にする用語ではあるが、その意味を詳しく知っているという人は意外と少ないのでは。
シングルモルトウイスキーがどんなウイスキーなのか、そしてどんな楽しみ方をすればいいのか。そこで今回は、全てのシングルモルトの原点とされる「ザ・グレンリベット」、マスターディスティラー(最高蒸留責任者)であるアラン・ウィンチェスター氏に伺った。
全てのシングルモルトの原点「ザ・グレンリベット」
その味わいは……?
――アランさん、こんにちは。今回初めて日本にいらしたと伺いました。
はい、日本に初めて来ることができました。今回来日した目的の一つは、「ザ・グレンリベット ウィンチェスターコレクション50年 ヴィンテージ1967」の日本発売です。このコレクションは50年間熟成させた逸品で、世界で155本しか生産していません。日本では2本限定で発売します。
――非常に貴重なウイスキーですね! さすがにこのウイスキーを飲める幸運な人はそういないと思いますが、同じく「ザ・グレンリベット」から発売されているシリーズでしたら私たちも手軽に楽しむことができるかと思います。これからシングルモルトウイスキーに挑戦しようと思っている方に向けて、ぜひシングルモルトウイスキーの魅力を教えてください。
ではまず、「シングルモルトウイスキー」とはどんなウイスキーなのかをご説明しましょう。「モルト」とは麦芽のことで、この麦芽100%からつくったウイスキーのことをモルトウイスキーと呼びます。ウイスキーには他にも原料の違うグレーンウイスキーや、グレーンとモルトをブレンドしたブレンデッドウイスキーなどがあります。
次に、シングルモルトウイスキーの「シングル」ですが、これは単一の蒸留所でつくったウイスキーという意味です。つまり、シングルモルトウイスキーとは、「単一蒸留所でつくった麦芽100%原料のウイスキー」ということなのです。
――「ザ・グレンリベット」は全てのシングルモルトウイスキーの原点と呼ばれていますが、それはなぜでしょうか?
「ザ・グレンリベット」の歴史を18世紀後半までさかのぼりご説明します。 当時、アメリカ独立戦争のあおりを受け、スコットランドでも多くの会社が倒産するなど財政的に厳しい状態が続いていました。ウイスキーに対する税制も厳しくなり、その結果、蒸留所の多くは税を逃れてウイスキーを密造するようになっていきました。
1822年、そんな密造蒸留所が集まっていた地域であるスペイサイドを、当時のイギリス国王だったジョージ4世が訪れます。彼はこの地でウイスキーが密造されていたことを知っていました。そのうえで、密造されたウイスキーを飲んでみたのです。
――密造酒ですが、味はどうだったのでしょうか?
これがとてもおいしいということで、ジョージ4世はスペイサイドのウイスキーにライセンスを与えることを許可しました。そこで最初に認可されたのが、「ザ・グレンリベット」の創始者であるジョージ・スミスだったのです。グレンリベットはしばらく、スペイサイドで唯一のライセンスを持つ蒸留所としてウイスキーを作っていました。しかし、そんなグレンリベットにあやかろうと、他の蒸留所が勝手にグレンリベットの名前を使い始めます。ジョージ・スミスはグレンリベットを守るため、裁判所に提訴しました。そして1884年、オリジナルである私たちのグレンリベットだけが、本物の証拠として「THE」をつけて「ザ・グレンリベット」を名乗ることが認められたのです。
――「ザ・グレンリベット」の「THE」にはそんなストーリーがあったのですね。そんな「ザ・グレンリベット」は、味わいや香りなどの面で他のシングルモルトウイスキーとどう違うのでしょうか。
スペイサイドのシングルモルトウイスキーは全体的にフローラルでフルーティーという特徴を持っています。その中で「ザ・グレンリベット」はパイナップルやバナナ、トロピカルフルーツの香りなども感じられ、よりフローラルでフルーティーな要素が強いのです。
こうした味わいや香りの違いを生むのは蒸留器や水などが大きな要因です。私たちが使っている銅製のランタン型蒸留器はウイスキーによりフルーティーさを与えます。さらに、仕込み水はジョシーズウェルという採水地の湧き水を使用しており、豊富なミネラルが含まれています。加えて、樽や麦芽の違いも香りや味わいに違いを生んでいます。理由はどれか一つというわけではなく、これらの要素がすべて相まって「ザ・グレンリベット」のシングルモルトウイスキーが出来上がるのです。
また、何よりも味の決め手は職人の力によるところが大きいです。たとえていうなら料理におけるシェフのようなものですね。仮に材料や調理器具が同じでも、シェフが違うとできあがる料理はまったく違います。ウイスキーもそれと同じことです。
アラン・ウィンチェスター氏に聞く、ウイスキーの楽しみ方
――シングルモルトウイスキーのおすすめの楽しみ方を教えてください。
「お客様の好きなように楽しんでいただきたい」というのが私の思いです。ただ、これからシングルモルトウイスキーの世界に入っていかれる方のために、2つのおすすめの楽しみ方をご紹介しましょう。
まず、ウイスキーはいろいろな食べ物に合います。ダークチョコレートやチーズなど、リッチな味わいのものとは特に相性が良いです。それから、ウイスキーを飲むときはぜひ香りを楽しんでいただきたいです。最初はストレートで少し飲んで、アルコールが強いと感じたら、次は水を入れて香りを楽しんでみる。何度も繰り返して好みの味わいを見つけてみてください。私は今回、初めて日本に来ましたが、とても暑い日だったのでハイボールを飲みました。フレッシュで、こういうウイスキーの楽しみ方もいいなと思いました。
また、日本はバーテンダーの方がとても優秀です。ですから、ぜひバーに行ってバーテンダーの方にどう楽しんだらいいか聞いてみてください。ウイスキーの楽しみ方の一つはコミュニケーションでもありますから。
「ザ・グレンリベット」おすすめのシリーズは?
――「ザ・グレンリベット」シリーズの中でアランさんのおすすめを教えてください。
とても難しい質問ですね。娘たちの中から誰か一人を選ぶようなものですから……(笑)。でも、もし皆さんが私の家に遊びにいらっしゃったら、お出しするのは「ザ・グレンリベット18年」です。熟成にスパニッシュオークを使っているのでスパイシーさがあり、18年の熟成で香りにもより甘みが出てきています。シナモンやナツメグなどの要素が感じられ、私も大好きです。
どのウイスキーを選ぶかは、飲むタイミングでも変わります。たとえば今日みたいに暑い日でしたら、さっぱりしたものが飲みたいですから、「ザ・グレンリベット12年」をハイボールにして飲みたいですね。仕事で疲れて、夜にリラックスしたいなら、やはりしっかりとした味わいの「ザ・グレンリベット18年」をロックでゆっくりと楽しみたいです。
気分やムード、天気、時間帯によっても、どれを飲みたいかは変わります。ぜひ、いろいろなシーンで「ザ・グレンリベット」をお楽しみください。
また最後に、アラン・ウィンチェスター氏はインタビューで実験をするかのようにいろいろな飲み方で「ザ・グレンリベット」を楽しんでほしいと語った。シングルモルトウイスキーは数多くの種類があり、楽しみ方の幅も広い。彼の言葉を参考に、その奥深い世界へ足を踏み入れてみてはどうだろうか。
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