カシオが開発中の「ダーモカメラ」は病変のある部位全体を、通常のカメラとして撮影できるのはもちろん、皮膚に接写して病変の拡大画像を撮影することもできる。また、シャッターボタンを1回押すだけで偏光/非偏光/UVの3種類の光を自動で切り替えて照射し、同時に3枚の写真を撮影するので、撮影時間を大幅に短縮することができるという特徴を持っている。

今回は、開発中のダーモカメラに対する期待と印象を、よみうりランド遊園地前でクリニックを営む、ともこ皮ふ科 院長の大塚知子先生に聞いた。

  • ともこ皮ふ科 院長 日本皮膚科学会認定 専門医 医師 大塚知子 先生

気軽に使えるところがとても良い

――早速ですが、ダーモカメラの試作機にどんな印象を受けましたか?

大塚先生:「コンパクトで軽いのが良いなって思いました。これなら必要なときにサッと取り出して、患者さんをあまり不安がらせずに撮影できそうです」

――撮影時に不安になる患者さんが多いのですか?

大塚先生:「それは多いですよ! 皮膚科に来る患者さんは、あたりまえかもしれませんが、皮膚にコンプレックスを持っている人が多くて、そういう方々は医師の私に見せるのすら大変な勇気が要るんです。看護師にも見せたがらないですよ。病変を撮影したいと言っても、そうした患者さんは嫌がりますから、実は私はそれほど多く撮影していません。撮影できないのです。もちろん、これは悪性かもしれないというケースや、経過観察が重要だと判断するケースでは、お願いして撮影させてもらいます。ただ、必要最小限です」

――確かに見せるだけでも嫌ならば、写真に残すのはもっと嫌がりそうですね。女性の患者さんなど、特にそうなのではと感じます。

大塚先生:「その通りです。女性は特に嫌がります。それと、いま使っているカメラは、カメラマンが使うような一眼レフなんですが、物々しいので警戒させてしまうんです」

――ああ、確かにゴツくて大きくて真っ黒ですものね。

大塚先生:「『先生は大したことないと言っているけれど、実は私は重病なんじゃないか』って、必要以上に身構えさせてしまうんです。構えると今度は記録として『残る』ことにも抵抗感を抱くようになります。なので、このダーモカメラは患者さんを不安がらせずに使えそうなところがとても良いです」

  • カシオが開発中のダーモカメラ

スピーディに扱えることの大切さ

大塚先生:「不安がらせないのと同時に、サッと持ってきて、パッと撮影して片付けられるスピーディに扱える点も重要だと思います。当クリニックは老若男女に利用してもらっています。子供も来ますし、老人保健施設が近くにあるので100歳超のお年寄りの方が診察を受けに来ることもあります。

沢山の患者さんが比較的カジュアルに相談に来るので、様々な臨床データを大量に集めるには大学病院などの大きな施設より向いているかもしれません。私としても後進の医師たちの勉強の役に立てるなら、ぜひ協力したいと思います。

とはいえ、患者さんが沢山来るということは、一人ひとりの患者さんに今までより長く診察時間を掛けにくいということでもあるんです。たとえば、一人に1分長く診察時間を取って撮影に充てたとしたら、100人の患者さんがくれば、100分の時間が余計に掛かることになるのです」

――今まで診察できていた人数が診察できなくなってしまいますね。

大塚先生:「そういうことです。時間を掛けずにさりげなく簡単に撮影できれば、患者さんを不安がらせずに済みますし、一人ひとりに掛ける時間を伸ばさずに済みます。撮影した画像を液晶画面で患者さんに見せて、こういう所見だったら大丈夫ですよと見せたりもしやすくなりますね。あと、同じ部位を時系列で患者さんに見せることもしやすくなりますね」

――患者さんを安心させるための道具にできるわけですね。簡単操作でスピーディに使えることを重視する場合、撮影したデータをPCに取り込んで、SDメモリーカードの空きを確保する手間が簡略化されたほうが便利そうですね。

大塚先生:「そこはとても重要です!いくら簡単でも、『メモリーの容量がいっぱいで撮影した画像を保存できません』と表示されたら、使うのが面倒になってしまいそうです。私たち医師は必ずしもデジタル製品に詳しい人ばかりではありませんから、操作だけでなくメンテナンスも簡単にしてほしいです。誰でも扱えるくらい簡単で、看護師や事務員に『取り込んでおいて』と頼めると、患者さんを診察する時間が圧迫されずに済んで助かります」

――操作が簡単なら、看護師さんに撮影までやってもらうこともできそうですね。

大塚先生:「悪性のものなど、注意が必要なものは私が撮影すると思いますが、良性のものや、念のために残しておこうかなという程度のものであれば、そうなると良いなと思います」

診察現場で「可愛い」の要素が重視されるワケ

――他に何か気が付いた点はありますか。改善を希望するところなどでもあればお聞きしたいです。

大塚先生:「今でもかなり小さくて軽くて良いのですが、よりコンパクトに、より軽量になると、他の先生方も使いやすいのではないかと思います。私はグリップが本体の両側にあって、両手でしっかりホールドできるタイプもあると嬉しいのですが、片手でも十分撮影できるくらい軽いのでそれほど気になりません。それから操作は戸惑わないようにシンプルにしてほしいです。男性だと『そのくらい簡単でしょ』って思うようなことでも、女性には難しい、面倒くさいって感じることって結構あるんですよ」

――女性目線で見て扱いやすい、取っ付きやすいって大事ですよね。特にモノを普及させたいときには大事な視点だと思います。

大塚先生:「女性目線は大事ですよ。『可愛い』という感覚も大事。そういう意味では、色のバリエーションがあると良いかも。本体が丸みのあるフォルムなので、肌色やピンクなど、柔らかい色だともっと可愛いくなりますね」

――思い切ってリボンでも付けますか。

大塚先生:「それは良いですね!冗談ではなく良いアイデアだと思います。可愛いのが良いのは、女性の先生が好んで使いそうだからというだけではないですよ。このカメラを向けられた患者さんが不安を感じないからです。もちろん、リボンが付いていたら、お堅いご年輩の患者さんだと『ふざけているのか』と感じるかもしれないので程度の問題はあるかもしれません。しかし、当院のような小さな子供の患者さんも多く来る場所では、子供が安心してリラックスできるアイテムはとても大事なんです」

――なるほど!小さな子供の患者さんは注射器ひとつで泣くほど怖がりますからね。『得体の知れない道具が近づいてくる』と思われるよりは、『なんだか可愛い道具が出てきたぞ』と思われるくらいのほうが、心理的な抵抗感が減って良いのですね。

大塚先生:「最近の子供はスマートフォンやデジカメなどで撮影されることには慣れています。可愛いカメラを向けて『撮らせてね~』と笑顔で言えば、大人より撮影はしやすいと思います。子供を例にしましたが、子供でなくても不安がる患者さんをいかに安心させるかという意味で、『可愛い』という要素はとても重要なんです」

――そうなんですね。

大塚先生:「当院のような地域に密着したクリニックは、患者さんのいろいろな心配事を軽減することが診察の中で一番大切なことと考えています。診察は真面目にやっていますから、道具は少し遊び心を出した方が患者さんの不安が軽減できるかなと思っています。それから、このダーモカメラで手軽に撮影できれば、時間を掛けずに診察の精度も上げられるので、医師の負担も軽減できます。我々は診断を間違えてはいけないというプレッシャーが常にあります。このカメラを使えば、一見大丈夫そうに見えて実は悪性という病変を見落とす心配が減るので、医師のストレスもその分低減できるのではないかと期待しています」

――本日はありがとうございました。

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