カシオ計算機から、音楽ファンの心をつかむ電子ピアノが登場した。誕生から15周年を迎えたPrivia(プリヴィア)シリーズの最新モデル「Privia PX-S1000」「Privia PX-S3000」だ。家具やインテリアに調和する上品なデザインで、奥行きわずか232mmと非常にスリム。それでいてグランドピアノの音色や弾き心地にも迫る仕上がりになっている。足元のペダルを踏めばPDFの楽譜のページをめくれ(※)、乾電池での使用にも対応。鍵盤を弾かないときは、Bluetoothスピーカーとして大迫力の音楽を聴くことも可能だ。この機能美あふれる新製品は、どのような経緯で開発されたのだろうか? カシオ計算機本社で開発担当者に詳しい話を聞いた。
※スマートデバイスやケーブルが別途必要です。
さらなるスリム化へ
PX-S1000、PX-S3000ともに本体サイズは1,322(W)×232(D)×102(H)mm。現行モデル(PX-160)と比較すると、奥行は61mm、高さは39mmもスリムになった。Priviaシリーズは今なぜ、再びスリム化を目指しているのだろうか。カシオ計算機株式会社 事業戦略本部 楽器BU 商品企画部 第三企画室の池田晃氏は、市場では依然として小型化のニーズが根強いと指摘する。
池田氏:「Privia初号機PX-100が発売されたのは2003年のことでした。当時、あれほどコンパクトなピアノは世の中になく、お客様に与えたインパクトは大きかった。伸び悩んでいた市場が一気に拡大しました。それから15年が経ち、コンパクトな電子ピアノもたくさん登場しています。しかしお客様アンケートでは、さらなる小型化を望む声が絶えません」
「そこで、今回は改めて”Privia”の原点に立ち返りました」と池田氏。ハンマーアクション付きの88鍵盤で、スピーカー内蔵モデルとしては業界最短の奥行きを実現した(2019年1月25日時点、カシオ計算機調べ)。当然のことながら、その裏側では大変な苦労があったようだ。例えば、本来ならテコの原理を利用して調整される打鍵の感触だが、鍵盤に使える奥行は非常に限られたものとなる。そこでハンマーアクション機構を一新し、小型化と良好な鍵盤タッチ感を両立するとともに、音域ごとの発音タイミングの違いや発音の大きさを1鍵ごとにデジタル制御した。この結果、グランドピアノと同じ大きさのハンマーアクション機構であるかのようなバランスの良い鍵盤を開発できたという。
また箱容積が小さくなる中、スピーカーの改良も進めた。「磁気回路を強化し、追加部品によりバッフルの剛性を高めるといった工夫を重ねました。今回のモデルのために開発した、専用のスピーカーを採用しています」(池田氏)。また、スピーカーの音に対しピアノ本体が振動して不快な音を出さないようにするため、主要部品の一体化構造をとることで本体の剛性も高めている。こうした改良の積み重ねにより、背面に配置された薄型高性能スピーカー2基からは8W×8Wの迫力ある音が出るようになった。池田氏は「この製品のサイズ感からは想像できないほど、大きな音が出ます」と自信をのぞかせる。
サイズを小型化しつつも、弾き心地の良さはむしろ向上した。音色に関しては、定評のある「マルチ・ディメンショナル・モーフィングAiR音源」を採用。美しく豊かなグランドピアノの音と響きに迫っている。また、強化した「アコースティックシミュレーター」機能を搭載した。本物のピアノでは、鍵盤を弾くとハンマーが叩いた弦の振動によって、倍音関係にある他の弦が共鳴する。またダンパーペダルを踏むことで共鳴の仕方も変わる。さらにはピアノ特有のノイズもある。これらを全て、デジタル処理で再現しよう、という意欲的な機能だ。
「グランドピアノでは、弾いたとき、鍵盤を戻すときに、かすかなノイズが発生します。それもデジタルで音源をつくり、再現しました。どうですか、ノイズが聞こえるでしょうか」と解説しながら、鍵盤を静かに押下する池田氏。たしかに、わずかだけれど聞き取れる。それにしても相当なこだわりようだ。聞けば、開発者にはピアノ経験者が多く、音楽大学の出身者も複数在籍しているとのこと。かくいう池田氏も、母親がピアノ教師の家柄だという。
カシオ計算機では、最上位機種の電子ピアノ「CELVIANO Grand Hybrid」シリーズ、多機能キーボードの「CT-X」シリーズなども展開しているが、各製品の開発で得られたノウハウやエッセンスは共有し”DNA”として本製品にも継承している、と池田氏。CELVIANO Grand Hybridは本格志向のクラシック寄り、Priviaは気軽に楽しめるポピュラー寄り、という棲み分けがされている。
スマートデバイスとの親和性
池田氏は「本製品は、ライフスタイルとの調和をキーワードとして意識しながら開発しました。スマートデバイスとの親和性を追求したのも、その一環です」と紹介する。試しにインタビュー中、筆者のスマホとBluetooth接続して、好きな音楽をPX-S1000のスピーカーから流してもらった。なるほど、かなりの迫力でお気に入りの楽曲が楽しめる。音質も良く、またサウンドモード機能を使ってバーチャルサラウンド再生もできるため、部屋の大きさ、ムード、ジャンル等に最適な状態で音楽を楽しめそうだ。
ところで本製品では、LEDによるグラフィカルなタッチセンサーを採用している。音質の切り替え、伴奏のオン / オフ、MIDIレコーダーによる録音といった操作は、このシンプルで使いやすいタッチパネルを通じて行える。一方で、複雑な設定をしたい場面もあるだろう。そんなときは、手持ちのスマートデバイスをコントローラーにできる。
Priviaに有線ケーブルで接続したスマートフォン / タブレット端末をコントローラーにできる専用アプリ「Chordana Play for Piano」を使えば、より直感的な操作が可能になる。アプリはPDF楽譜ビューワー機能にも対応。足元のペダルで譜めくりできるので、ストレスなくピアノ演奏を楽しめそうだ。
スリム化にともない、持ち運びの需要が高まることも考えられる本製品。そこで電源はACアダプターのほか、単3形アルカリ乾電池×6本でも駆動できる仕様になった。スタジオでは置き場所を選ばず、また屋外でライブも行える。ユーザーの音楽活動の範囲が広がりそうだ。
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池田氏は、最後に次のように話した。
池田氏「小さい頃、ピアノを習っていた方も多いでしょう。社会人になり、しばらく離れていたピアノをもう一度やりたい。そんな方たちに、気軽に手にとってもらえれば。昔の電子ピアノやアップライトピアノは大きなイメージがありましたが、新しいPriviaは、部屋のどこに置いても邪魔にもならないほどスリムになっています。いまの時代に合わせたスマートデバイスとの連携も考えられており、例えばお気に入りの楽曲を流しながら一緒にセッションするなど、これまでは容易に実現できなかった使い方も提案しています。新しいPriviaで好きな音楽を奏でて、人生を豊かにして頂けたら幸いです」
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