様々な作品が読め、クリエイターのポータルサイトとしても盛り上がりを見せている「note」。ここを舞台に「#描くようになったきっかけ 投稿コンテスト」が開催されている。
これはクリエイターを目指す、あるいは現在活躍している人が作品を描くようになったきっかけをテーマに、漫画やイラストでそれを表現してもらうという内容だ。
このコンテストの審査員には、漫画家としてはもちろん、原作者としても人気急上昇中のかっぴーさんが参加。彼自身が描くようになったきっかけや、作品への思いを語ってもらった。
かっぴー。漫画家・原作者として活躍するほか、株式会社なつやすみの代表取締役社長も務める。「SNSポリス」「左ききのエレン」「アイとアイザワ」「アントレース」などの作品に代表されるように、ギャグ、シリアス、SFなどさまざまなジャンルで多彩な才能を見せ、多くのファンの心を掴んでいる。公式Twitterはこちら |
最初は学級新聞でクラスメイトを笑わせるノリだった
かっぴーさんは、本コンテストにおいて審査員だけでなく、「#描くようになったきっかけ」をテーマにしたお手本作品も描いてくれている。実際の作品はこちら。
――本日はよろしくおねがいします。今回、かっぴーさん自身の漫画も描いてくださっていますが、具体的に漫画家になろうと思ったきっかけについて教えていただけますか?
漫画を描き始めたのは、社会人になってからですね。漫画家になろうと思ったわけではなくて、広告代理店から転職した先の制作会社で日報に漫画を描いたのがはじまりでした。
その会社では新人が全社員へ向けて日報を書くという文化があって、早く覚えてもらうために自分に何ができるのか考え、前職でやっていたCMコンテを作るノリで書いてみようと思ったのです。
実はそこで描いたのが「SNSポリス」の前身だった「フェイスブックポリス」だったんですよ。
――それは社員の人たちも喜んだんじゃないですか?
はい。日報の漫画の話題で初めて声をかけてくれた人もいたので、印象を与えるという意味ではとても良かったと思います。
――その反応から「漫画家でもやっていける」と思われたのでしょうか?
まったく思いませんでした(笑)。その時はメールで配信するだけでしたし、そういう意図もなかったんです。
しかしある時、会社の人から「Webにアップしないの?」と言われ……。その方は自分の作品をネット公開していて、話してみると説得力があり、それをきっかけに「note」に作品の投稿を始めましたね。
――そこから「cakes」のコンテストで特選に選ばれるなど、漫画家としての道が始まったんですね。漫画家として活動を始めるにあたって何か自分の中で変化はありましたか?
大きな変化は2回ありましたね。ひとつは「会社を辞める決意をした」ということ。それまではただ楽しいから描いていたんです。例えていうなら、学級新聞でクラスメイトを笑わせるノリです。
でも、noteに漫画を掲載するようになり、顔も知らない人たちが喜んでくれているのを見て、何か世の中に価値を提供できている可能性がある、と感じました。
もちろん、その当時はある程度仕事になり得ると思ったから会社を辞めたのですが、まだ一生漫画で食べていくというよりは、とりあえず挑戦してみようという気持ちでした。
漫画家である程度の収入を得られる見込みもありましたし、社会人としてのキャリアもあったので、いざとなったらサラリーマンに戻ることもできるかなと思っていました。
――なるほど。そこからさらに変化があったのは?
もうひとつの大きな変化は、「左ききのエレン」を描き始めてからです。
ストーリーが進むにつれて、キャラクターにもどんどん感情移入してしまい、内容が辛すぎて描くことができなった時期もありました。でも、その時に初めて「漫画を描くってこんなに大変なんだ」と実感しましたね。
その時まで、自分は漫画家として独立したのに、より良い漫画を描くぞという覚悟が足りなかったんです。それに気付いてからは、「漫画家として評価されたい」、「漫画を評価してもらいたい」とはっきりと強く意識するようになりました。
自分には価値がないものも、読む人には意味があったりする
――そこで、ほんとうの意味でのかっぴーさんの漫画家人生がスタートしたんですね。キャラクターに感情移入してしまうくらいこだわりを持って描かれていると思うのですが、どうやって作品を作り出しているのでしょうか?
初期の頃から変わっていないのですが、まずはパソコンに向かって文章で書き起こします。漫画家によっては、シーンから入ったりアクションから入ったりするのですが、僕の場合は文章で、しかもほとんどがセリフの流れです。
このセリフの流れができたら、次はネームに移ります。そこからは、タブレットで作業することが多いです。
――どういうときに文章の発想を得るんですか?
自然にやっているので、再現性があることをいうのが難しいのですが……僕の場合は、自分が常に考えていることを文章にしています。
発想自体を文章に書き起こすのはそんなに難しくないのですが、それよりも文章のメモをネームにしていくほうが難しいんですよ。
例えば、自分の畑があったとして、そこで育った野菜がにんじんなのかキャベツなのか、それともスイカなのかによって、料理の仕方も変わってしまうので。
作品の発想自体がなかなか出てこないという人は、実はせっかく畑に育ったものを美味しくなさそうだなと捨ててしまっている可能性はあります。
自分にとっては意味がないと思っても、読む人にとっては意味があったりするんじゃないかなと思うんです。
例えば、自分が持っている黒歴史なんて、実は美味しいところだと思いますよ。恥ずかしい内容だとしても、漫画なので笑い飛ばしてもいいし、フィクションとして描けばいいんですから。
――ネームを描くときに何か気を付けていることはありますか?
先ほどお話したように、ぼくはセリフファーストのタイプなので、いかにテンポよくそれを表現するかですね。凝ったネームを作るよりは、とにかくリズムがあることを心掛けています。
変更点は熟考の末に原作を越えられたという確固たる意志
――最近では漫画をご自身で描くほかに、原作者としてもご活躍ですが、作画までするときと原作だけのときでスタンスの違いはあるのでしょうか?
基本的には変わりませんが……自分が一度描いている作品の場合、明確なイメージがあるので、作画への要望が変わりますね。
特にぼくは表情を大切にしているので、そこが違うだけで違和感があります。なので、ただ絵が上手いというだけではなく、そのあたりの感覚を共有できる作画の方とご一緒しています。
――「左ききのエレン」はまさにそうでしたよね。作画のnifuniさんとも議論されたのですか?
はい、物凄く議論を重ねましたね。あるシーンは、僕が実際に演技をしてそれを動画で送ったこともあるぐらいです。そもそもnifuniさんはエレンのファンだったので、そういう信頼関係もあり、深い議論ができた部分もあると思います。
今はリメイク版に取り掛かっていますが、原作版をそのままネームとして使えることは少なく、ほとんど書き直しをしています。
1話20ページぐらいになるのですが、それを書き上げるのに60ページがボツになったりもしょっちゅうです。衝動で描いていた頃の自分をいかにして超えるか、それがリメイク版だと思っています。
――それはファンとしては、ますます読むのが楽しみです。
原作通りにやっているところは考え抜いた結果、それがベストだったところ。原作から変わっているところは、熟考の末に原作を越えられたという確固たる意志を持ってアップデートしたところです。ファンの方には、そこの違いを感じてもらえるとうれしいですね。
――今後は漫画と原作、どちらに比重を置いていくのですか?
これはどうしても原作になると思います。漫画も描きたいんですけど、作画までやるとなると多作になれないですから。今は、とにかく多くの作品を描いていきたいなと思っています。
――これからの作品も楽しみにしていますね。それでは最後に、「#描くようになったきっかけ 投稿コンテスト」への参加者に一言お願いします。
ひと昔前とは打って変わって、漫画雑誌だけでなく、Webサイトや広告など、世の中での漫画へのニーズが増えています。
漫画が持つコミュニケーションのスピードが非常に速いために、様々な媒体で需要があるのだと思います。特にスマホ世代には漫画が強いメッセージになることが多いですからね。
それに漫画家になる方法も増えていて、出版社へ持ち込んで自分を売り込むだけでなく、Webサイトのコンテストもたくさんあるし、Web媒体で連載をすることもできます。
漫画が求められるフィールドやそこへ加わる方法もたくさんあるので、今回の企画にもぜひチャレンジしてみてください。良いきっかけになると思いますよ。
――本日は、ありがとうございました。
▼「#描くようになったきっかけ 投稿コンテスト」 詳細情報!
「#描くようになったきっかけ 投稿コンテスト」では、入選作品には副賞としてデスクトップPCや液晶ディスプレイを用意しているほか、マイナビニュースでの連載のチャンスも!
今回かっぴーさんには、グランプリ受賞賞品であるマウスコンピューターのクリエイター向けPC「DAIV」のデスクトップPCを、実際に体感してもらった。
コンテストの応募をきっかけに、素晴らしい作業環境を手に入れれば、これこそ一石二鳥ではないだろうか。ぜひみなさんも、奮って参加してみてはいかがだろうか。
[PR]提供:マウスコンピューター