地球規模で存在する課題や世代をまたいで存在する中期的な課題についてコンテンツを通して解決を試みるデザイン・映像コンペティション「CREATIVE FOR THE EARTH」。今年のテーマは「高レベル放射性廃棄物の処分問題」。全国各地で展開するデジタルハリウッドSTUDIOの受講生とデジタルハリウッド大学の在学生が参加した。

10月30日にはデジタルハリウッドにて優秀作品の発表会および授賞式が開催。最優秀賞には大洞博美さんの映像作品「キミは、どう思う?」、審査員特別賞に財津顕さんの映像作品「ON LINE MESSAGE」、村上祥子さんのポスター作品「知ることで未来は変わる」、オーディエンス賞にVC1712の「キッズ国際会議」が選出された。

高レベル放射性廃棄物の処分問題をテーマに13作品がノミネート

テーマは「高レベル放射性廃棄物の処分問題に対する関心喚起に向けたデジタルコンテンツの制作」。電気を使用する以上、誰もが当事者である課題だが、その内容まで十分に知っていると言える方が必ずしも多いとは言い難い。このような問題を次代を担う若い人たちに真剣に考えてもらうには、今回のコンペティションは最適な催しだ。

「CREATIVE FOR THE EARTH」にノミネートされたのは13作品。全国8拠点に及ぶデジタルハリウッドの学生たちによる作品である。審査委員長はデジタルハリウッドの杉山知之学長、審査員には同校の小倉以索准教授、栗谷幸助准教授が務めた。またゲスト審査員としてタレントの大東めぐみさんも登場した。

  • 審査員の紹介/(左から)審査委員長:杉山知之(デジタルハリウッド大学学長)、審査員:小倉以索(デジタルハリウッド大学 専任准教授)、栗谷幸助(デジタルハリウッド大学 専任准教授)、大東めぐみ(タレント/家庭の省エネエキスパート)

発表会にはノミネート作品の制作者が集合。作品を上映すると共に制作のポイントや苦労、作品に込めた思いなどを熱くプレゼンテーションした。優秀作品は審査員全員によって決定される最優秀賞、審査員特別賞の他、インターネット投票によるオーディエンス賞など計4作品が選ばれた。

  • 発表会には作品の制作者勢が参加。その場で各審査員が世の中にある課題に対してクリエイティブの視点で解決(表現)できているかを評価していく

最優秀賞は大洞博美さんの映像作品「キミは、どう思う?」

最優秀賞に選ばれたのはSTUDIO渋谷の大洞博美さんによる映像作品「キミは、どう思う?」。“ノンちゃん”と“フクちゃん”と名付けられた2人のキャラクターとイモムシ先生による掛け合いを通して地層処分について理解を深めていく。背景や人形はすべて手作りという労作である。審査員の全員一致という文句なしの最優秀賞となった。


大洞博美さん(STUDIO渋谷)の作品「キミは、どう思う?」

同作品について杉山学長は「完成形だと思う」と絶賛。「大人っぽく作っていて、でも(最後は)かわいいところに戻るというギャップが良い。最後のセリフをどうしゃべらせるか悩んだというところが多くの人に『だよね』と思わせてくれる」と評した。

杉山学長が言う「最後のセリフ」とは、作品のラストでキャラクターが発する「そんな難しい話、ぼくにはわからないよ」というつぶやき。高レベル放射性廃棄物の処分問題という大きなテーマに対しての素直な思いを表現したセリフが審査員の心を打った。

最優秀賞の受賞について制作者の大洞さんは「重い賞をいただいた。私自身、最後に『わからない』といってしまったキャラクターに近い。課題について考え続けていくことが結論なのかもしれない」とコメントした。

審査員特別賞は財津顕さんの「ON LINE MESSAGE」と村上祥子さん「知ることで未来は変わる」

審査員特別賞には2作品が選ばれた。

財津顕さん(STUDIO渋谷)の作品「ON LINE MESSAGE」

<ポスター>



村上祥子さん(STUDIO米子)の作品「知ることで未来は変わる」

STUDIO渋谷の財津顕さんの「ON LINE MESSAGE」は、チャットアプリのLINEに似せたインターフェースで会話しながら地層処分について学んでいくという映像作品。大河ドラマとしても話題の「西郷隆盛」を起用したのがユニークで、テンポの良い会話劇に思わず引き込まれていく。LINEの吹き出しが地層に変化するというラストの演出も高く評価された。

普段はクリエイターではなく、広告代理店でクリエイティブを発注する側だという財津さん。「映像を作ったのは初めてだったが、ソフトの立ち上げから指導していただいて制作することができました」とコメントした。

STUDIO米子の村上祥子さんの作品はポスター「知ることで未来は変わる」。子どもの顔のイラストを大胆に配置し、LINE@へリンクしたQRコードを表示した。ポスターを見た人がQRコードを読み取り、LINE@でのクイズを通して地層処分への理解を深めていくという仕掛けだ。

村上さん曰く、このユニークな仕掛けは「どうやったら押し付けではなく知ってもらえるかを考えた」結果だという。別のメディアへと展開する斬新さが評価されての受賞となった。

オーディエンス賞はVC1712の「キッズ国際会議」

VC1712(STUDIO福岡)の作品の「キッズ国際会議」

インターネット投票で、823票中211票を獲得。見事オーディエンス賞に輝いたのは、STUDIO福岡のVC1712による「キッズ国際会議」。高レベル放射性廃棄物の処分問題は日本だけでなく世界全体の問題でもあり、子どもの世代にも関わる長期的な課題であることを表現するため、様々な国の子どもたちを起用。地層処分について語る国際会議という形で表現した。

制作チームであるVC1712の2人は受賞について「子どもたちのおかげ」とコメント。出演した子どもたちはモデル事務所に所属する子役だというが、全員演技は初めてだったとのことで苦労も多かったという。

  • 「キッズ国際会議」の制作風景。子ども達も楽しみながら撮影に参加している様子がうかがえる

その他、惜しくも受賞を逃したノミネート作品もいずれ劣らぬすばらしいものばかりだった。最後に杉山学長は全作品を振り返り、「皆さんがそれぞれ異なる表現方法を持っていたのが良かった。一つの題材に対してこれだけ違うアプローチがあることに感銘を受けた」と講評。「小さいコンテストではあるが、波及していく先は大きい。処分問題について考える機会として、今後も続けていきたい」と今後の開催にも意欲を示した。

  • 授賞式後は、参加者全員の笑顔が会場全体に広がった

地層処分について

エネルギー資源に乏しい日本では、原子力発電で使い終えた燃料(使用済燃料)から再利用できるウランやプルトニウムを取り出し、再び燃料として利用することとしています。

この過程で残る放射能の高い廃液を高温のガラスと融かし合わせ、ステンレス製容器に流し込んで固めたものをガラス固化体(高レベル放射性廃棄物)といいます。 高レベル放射性廃棄物の処分方法として、人間の生活環境から長期間にわたり隔離するために、深い安定した地層中に処分することにしています。これを「地層処分」といいます。

高レベル放射性廃棄物の地層処分に向けた取り組みについては、この事業を行う「原子力発電環境整備機構(NUMO)」のホームページからチェックしてみよう。

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